第105回日本選手権10000mは、5月3日に無事、大会が実施されました。日本陸連は、大会終了後に、尾縣貢専務理事および河野匡長距離マラソンディレクターによる大会の総括会見を行いました。
会見の要旨は下記の通りです。
■尾縣貢専務理事
コロナ禍が収まらないなか、静岡の地で開催させていただいたことに、まず感謝を申し上げたい。特に、静岡国際陸上の競技運営も含めて、朝の早い時間から審判・運営に当たっていただいた静岡陸協の皆さん、そして何よりも、競技場に足を運んでいただいて応援していただいた観客の皆さんに御礼を申し上げたい。この日本選手権、そしてオリンピック選考という場を盛り上げるために、私たちとしても最高の舞台を用意したいと思っていた。ここ静岡を会場とし、この日程で実施することは強化委員会の発案・希望によるもの。今日は、レースの前には強風が吹き荒れていて、「これはまずいな」と思ったが、(午後)7時前には、それがぴったりと止まった。河野ディレクターに、「だから(スタートは午後)7時なんです」と言われたときは、なるほどなと思い、その目を素晴らしいなと思った。
そういった私たちの思いを、選手たちは本当に走りで応えてくれたと思う。女子も男子も素晴らしいレースだった。これから多くの選手がオリンピックの出場権を狙って、いろいろな競技会に臨んでいくことになるわけだが、多くの人たちの勇気になったと思う。今回、オリンピックの出場権を得た3名は、迷うことなく、自信を持ってオリンピックまでの道を歩んでもらいたい。
■河野匡強化委員会長距離マラソンディレクター
女子については、廣中さんが参加標準記録を破るだろうなということは、(10000m初レースとなった4月の)金栗記念の10000mを見た段階で感じていた。30分台も余裕で行くのではないかと思っていた。10000mの経験と、オリンピックの選考がかかるレースということが、どう作用するかと思っていて、(実際に)レース中盤は不安げな感じで、安藤さんに前に出られたときは、「あれ、こんなところで前に行かせるのかな」と見ていたが、その後の、しっかり(勝負を)決められる地点まで我慢していき、ラスト3周で仕掛けるレース展開は、練習に裏付けられた実力。実際の力はもっと上のものがあると思う。安藤さんについては、先シーズンに(それまで取り組んできた)マラソンをいったん置いて、トラックに懸けてきた。そういったなかで10000mを狙うことは、永山忠幸監督も公言していたし、本人もその意思でやっていた。それをしっかりやりきったことを大きく評価したい。10000mの代表は、彼女のキャリアとして、それをさらに東京オリンピックの場で生かしてくれたら…と思うし、さらにマラソンの着地点も上がるのではないかと期待を抱いている。彼女の頑張りは、今後の女子長距離界においても、重要な役割を果たしてくれるのではないかと思った。
一方で、その2選手の層と後ろの選手の層の力の差が開いていることが課題。早い段階で手を打たないと、次の世代の選手の育成に時間がかかってしまう。トップの選手たちがしっかりやっている間に、それに続く選手を育成していかなければならないと感じた。
男子は、伊藤達彦くんが本命視されたわけだが、標準記録を破った状態でスタートラインに立つことには、大きなプレッシャーがあったと思う。それを見事に跳ね返したということで、彼の勝負強さや我慢強さがオリンピックの場で生きるのではないかと改めて思った。彼も、ニューイヤー(全日本実業団駅伝)後に故障したと聞いていたので、(ピークを)合わせるためには、精神的にも肉体的にもストレスがかかったと思うが、見事なレースをしてくれた。27分25という日本記録を昨年の12月にマークして、今回はしっかり勝ちきるレースをしたということは、彼の力も本物になってきたのかなと思った。
このレースに向けて、急場で合わせてきたと言っていたので、このあとしっかりケアをしてもらいたい。オリンピックで彼が頑張る姿、諦めない走りを見せてくれたら、きっと日本のファンに喜んでもらえるのではないかと思う。相澤くんとともに切磋琢磨してもらいたい。
また、男子で2・3位に入った田澤・鈴木の駒澤大コンビについては、我々の思っている以上の結果が出たと思っていて、若い力が着実に育っていることを実感した。男子は、次々に27分台で走ってくれたりレベルアップしてくれたりしているので、強化としては、男子についてはトラック、マラソン含めて、この流れをブラッシュアップしていくことをやっていかなければならないなと思っている。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
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