2021.02.22(月)大会

【日本選手権20km競歩】男子は山西利和選手が2大会連続優勝!女子は藤井菜々子選手が日本選手権初優勝!/レポート&コメント



第104回日本選手権男子・女子20km競歩が2月21日、延期により本年夏の開催となった東京オリンピックの代表選考会、第32回U20選抜競歩を兼ねて、兵庫県神戸市の六甲アイランド甲南大学西側20kmコースにおいて開催されました。朝から晴天に恵まれ、最高気温が20℃に達するなど春の陽気ともいえる1日となり、例年に比べると競技者にとっては暖かさを通り越して、「暑さ」を感じるコンディション下のレースとなりました。

オリンピック代表に内定している3選手および補欠競技者2選手が出場した男子20kmは、2019年ドーハ世界選手権20kmで金メダルを獲得し、この大会では前回初優勝を果たした山西利和選手(愛知製鋼)が、常にコントロールする形でレースを進める展開に。13km付近で、同じく代表に内定している高橋英輝選手(富士通)、池田向希選手(東洋大学)を突き放すと、その後は「独り旅」。セカンドベストの1時間17分20秒で2連覇を果たしました。この優勝記録は、大会新記録。世界歴代4位で日本歴代2位となる自己記録1時間17分15秒にはわずかに届きませんでしたが、パフォーマンスで日本歴代3位となるハイレベルな記録です。2位には高橋選手が1時間18分04秒で続き、池田選手が1時間18分45秒で3位と、オリンピック内定者が上位を占める結果となりました。

女子20kmも、オリンピック代表に内定している岡田久美子選手(ビックカメラ)、藤井菜々子選手(エディオン、ダイヤモンドアスリート修了生)の「2019年ドーハ世界選手権入賞コンビ(6位・7位)」が揃って出場。スタート直後から、いつものごとく岡田選手が先頭に立って、レースは進められました。トップ集団は6kmあたりでこの2人となり、その後はマッチレースに。気温の上昇に加えて、風が強まった影響もあり、10kmあたりからペースが落ちるなか、15kmを過ぎたところで藤井選手が仕掛け、この1kmを大幅にペースアップすると、その後もハイペースを維持。6連覇中の岡田選手を突き放して1時間30分45秒で先着し、初の「選手権獲得者」となりました。岡田選手は、1時間31分51秒・2位でフィニッシュ。3位には、ベテランの渕瀬真寿美選手(建装工業、前20km日本記録保持者、50km日本記録保持者)が1時間36分49秒で続き、「東京オリンピック代表3枠目」候補の筆頭に位置する「内定済みの2選手を除く最上位者」となっています。

併催されたU20選抜競歩では、男子10kmと女子5kmの2種目が行われました。男子10kmは服部悠平選手(西脇工業高)が42分30秒、女子5kmは梅野倖子選手(宗像高)が22分28秒で、それぞれ優勝。ともに、高校最後のレースを有終の美を飾りました。

優勝した各選手のコメントおよび、今村文男競歩オリンピックコーチによる日本選手権総括コメントは、下記の通りです。


【日本選手権獲得者コメント】

 

 

■日本選手権男子20km競歩

山西利和(愛知製鋼)

優勝 1時間17分20秒 =大会新記録

まずは優勝という結果が出せて、ホッとした。

レースに向けては、これといったプランを初めから決め打ちしていたわけではなかった。ただ、勝負に勝つだけでなく、動きやレース全体、先頭集団全体を、自分がコントロールしたうえで勝つことをテーマの一つにしていたので、あまりスローペースになりすぎてもいけないし、かといって気温が高いので速すぎるのもリスキーかなというといった点を意識した。そのへんはうまくやれたかなと思う。

勝負所については、結果的にあまりここぞというのはなかったように思う。自分が少しペースを上げた12~13kmは、あとからみればポイントにはなっているが、そこで勝負を決めようというよりは、ふるいにかけいく流れのなかでのペースアップだった。(2選手との差を広げたときは)ラップを見ていただいてもわかるように3分50秒前後のイーブンで、ほとんど変わっていない。どちらかというと、あのペースで押していった結果、2人が離れていってくれたという感じだった。

「レースを自分でコントロールしていく、コーディネートしていく」という意味では、自分が序盤で流れをつくり、自分の行きたいところ…しかも中盤の段階でペースを上げていき、ラストでスプリント勝負に持ち込むことなく勝つことができた。ある程度、自分が(ここまでに注力してきた)「ベースをつくる」という面を(結果に)出せたのではないかと思う。

記録については、練習の段階で本当にコンディションが全部揃えば、3分50秒を切って3分47~48(秒)で押し切れる(=世界記録でもある日本記録を更新できる)くらいの力がついているんじゃないかなと手応えはあったのだが、結果的に、気温や風や体調などの面で(条件が)揃いきらなかったというのはある。一方で、そこが全部揃わなければ、世界記録(日本記録)に到達しないくらいの力しかないというのも事実。やはり、どういうコンディションでも、余裕で世界記録に到達できるような地力をつけていかなくてはならない。そこがまだまだ今現在足りていないと思っている。

東京オリンピック本番での目標は金メダルと言っているので、そこにどうトライしていくかは、これからの半年できっちり詰めていきたい。ベースアップするという基本的な方針は今後も変わらない。そこは引き続き取り組みつつも、最後の勝負所とか、ぎりぎりのところできちんと勝ちきれる勝負強さみたいなところも、しっかりつけていかなければならないと思っている。

 

 

■日本選手権女子20km競歩

藤井菜々子(エディオン)

優勝 1時間30分45秒

まずは、このような状況のなかで(大会を)開催していただき、本当に感謝している。今日は11カ月ぶりのレースということで、スタートラインに立てることが嬉しくて、ワクワクした気持ちで臨んだ。

特に細かいプランや計画は立てていなくて、スタートしてから自分で考えながらレースを進めていきたいなと考えていた。気温も高く、日差しもあったので、ドーハ世界選手権(※7位に入賞。深夜のレースながら酷暑のなかで行われた)のときを思いだしながら、ゼネラルテーブルの水をとるなどした。少し余裕をもったなかで、自分で考えながらレースを進めていけたことは、すごく収穫になったなと思う。

15km過ぎでのペースアップは、計画していたことではない。「ここだ」というところで判断して、最後の5kmを上げたわけだが、そこまでに少しペースが落ちていたので、私が1回タイムを戻したいと思い、先頭に出たわけだが、結果的にそこで切り替える形になった。20kmのレースで後半が落ちてしまうことが私の課題でもあった。国際大会は最後の5kmのペースがどんどんビルドアップしていくレースとなる。(今回は)そういうことを想定して、後半で上げていくことができた。また、いつもは、ペースが落ちると、肩が上がってわきが空いた腕振りになり、上体がぶれてしまうことが多いのだが、今回は、ペースを上げることができたなかで、肩が上がらない状態でリラックスした腕振りができ、楽に歩くことができた。今までのレースと比べると、後半の5kmがすごく成長したなと自分でも感じた。

岡田(久美子)さんと一緒のレースは、ドーハ以来。練習ではご一緒することも多いが、レースは久しぶりだったので緊張は少しあった。今まで勝てたことがなく、自分でも「岡田さんに挑戦してみたい」という気持ちはあったので、勝つことができたのは今後の糧になる。また、これまでいつも最後で(突き放されて)負けてしまうというレースパターンだったので、そこに一つ幅ができたことは、自分にとってはすごく大きな収穫だった。

オリンピックまで残り5カ月。今回のレースもオリンピックへの強化の一環として出場したわけだが、あと5カ月ということで、しっかりギアチェンジして、徐々に仕上げていきたい。今まで1年間(は「鍛錬の年」と位置づけて)、じっくり自分の心と向き合って練習も地道に積んできたので、ここから計画をしっかり見直して、オリンピックに向けて仕上げていけたらいいなと思っている。

昨年度以前に比べると、持久力は、測定合宿などの結果から、かなり上がっていることがわかっているので、あとはスピードをつけていきたい。今後は、メダルの常連者というか、「どの国際大会になっても外さない選手」「ほかの国の選手から常にマークされるような選手」、そういう強い選手になりたい。

 

【日本陸連総括コメント】

今村文男(競歩オリンピック強化コーチ)

男子はオリンピック代表内定者3名が出場した。昨日の記者会見でも各選手が述べていたように、ここに至るまでのプロセスや技術の確認、または目標記録へのチャレンジなど、それぞれに掲げた目標があったと思うが、そのなかで、今大会においては山西選手が、しっかりとレースプランを練りながら勝ちきったという内容だった。気温や風等々を含めると、大会記録を上回ってのこの優勝記録は、非常に評価できる結果といえる。

2位になった高橋選手に関しては、昨年のこの大会で2分のペナルティーを受けた経験から、対国際競歩審判員、そして世界基準の歩型を(確立する)ということで、1年をかけた取り組みを経てのレースだった。その課題をしっかりと改善できた内容だったのかなと思う。もちろん、これからも磨いていくべき部分はあるものの、技術的な課題は改善できつつあると考える。

(3位の)池田選手に関しては、このコロナ禍において、練習環境の面で非常に困難な状況にあったと聞いている。レースプランや最後の切り替えの準備については、しっかりとできていたという話だったが、残念ながら最後でペースダウンはしたものの、16kmくらいまではそれができていた。気温が上がるなどの今回の環境のなかで、残り4kmから、(他選手との)準備の差が出たのかなと思う。

このように3選手ともに、今大会の準備やレースを終えて、成果と課題が把握できたと思う。これから出場するレースや強化の合宿等で、その課題を改善していってもらいたい。

女子に関しても、代表内定者2名が出場した。岡田選手の7連覇を阻む藤井選手(の勝利)なのか、それとも、連覇にチャレンジする岡田選手(の勝利)なのかというところが見どころといえたが、思いのほか10kmすぎからの岡田選手のペースが上がらず、そのなかで満を持して藤井選手が先頭を歩くという結果になった。

藤井選手は、昨年の能美大会以降、1レースも出ていないが、そのなかでも自分の課題や目標に向けて準備できていたことが感じられる結果だった。なかでもペースの上げ幅というところでは、(1km)4分20~21秒まで引き上げることができている。しっかりとペースを切り替え、先頭を引っ張っていけた点で、ニューヒロインが誕生した大会ということができると思う。

女子の3枠目については、選考要項に記述した通りで、内定者(2名)を除く上位3選手を要項に基づきながら判断していくことになる。本日の結果でいうと、渕瀬選手が最上位でフィニッシュしている。また、女子の種目に関しては、これまでに行われた2020年日本選手権、2020年能美大会の結果も含めた形での選考となる。競歩ブロックとしては、この3枠目については、推薦に値する結果であれば推薦する。ただし、オリンピックの場合は派遣枠というものがあるので、最終的な判断は、陸上競技に与えられた枠の中で行われることになる。

 

【U20選抜競歩優勝者コメント】




■U20選抜競歩男子10km競歩

服部悠平(西脇工業高3年・兵庫)

優勝 42分30秒

今回は、コロナ禍の影響で無観客になるなど、開催されるか自体も危うい状態だったが、この大会で優勝することを目標にしていていたので、無事に開催され、そして優勝できて、今はホッとした気持ちが強い。

今日は、タイムも気にせず、順位にこわだって戦っていこうと考えていた。展開についても(事前には)特に考えていなくて、時計もつけず、そのときの自分の考えでレースを進めていった。というのも、ここまでの学校生活や寮生活で親や学校の先生方などに迷惑をかけてきたので、優勝することで恩返しがしたかったから。タイムは関係なく、「絶対に1位を」という気持ちで頑張った。強い選手たちが出場していて、持ちタイムで負けている選手もいたが、「気持ちだけは絶対に前向きに行こう」という思いで戦った。

昨年、(全国高校)リモート選手権で1位になった。このときは、正直なところ自分も驚く結果だったが、一緒に戦って出した記録ではないので、今回のレースに向けては、(そこで1位になったということは)あまり考えずに挑んだ。(実際にライバルたちとレースをしての優勝は)今後、進学するにあたって自信にしたい結果といえるが、タイムが速いわけでもないし、大学にも実業団にも強い選手がたくさんいるので、自分ではまだまだだと思っている。将来は、日本を代表するような選手になれるよう頑張りたい。

 

 

■U20選抜競歩女子5km競歩

梅野 倖子(宗像高3年・福岡)

優勝 22分28秒

今日は、去年のこの大会で藪田(みのり)さんが記録した22分12秒を上回り、21分台の大会新で優勝するつもりだった。言い訳になってしまうが天候(高温)と風の影響で21分台が出せず、しかも大会記録も出せなかったので、自分では少し悔しいレースとなった。

元旦競歩(高校5km)で優勝して以来のレースだが、そのときも自分の納得のいくタイムではなかったので、この大会に向けては、長い距離の練習のほか、今回は500mの折り返しコースということで500mを10本など、短い距離を速く歩く練習を取り入れてきた。

これが高校最後の試合となる。両親や妹、先生や学校の友達から、「結果にこだわると思うが、楽しんで悔いのないように歩いてきてね」と送り出してもらった。タイムにはちょっと悔いが残るけれど、レースを楽しむことができたのでよかった。

今日、日本選手権で優勝した藤井選手は、高校の学年は重ならないけれど、同じ福岡県の選手としてすごく憧れている。歩型がきれいなので、試合とかの動画もよく見ている。私自身の最終目標は、オリンピックに出ること。日本の女子競歩にメダルを持って帰ってきたい。

 

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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