第104回日本選手権男子・女子20km競歩が、延期により本年夏の開催となった東京オリンピック(同種目は北海道札幌市にて開催)の代表選考会を兼ねて、2月21日、兵庫県神戸市の六甲アイランドで開催されます。2月20日午後には、すでにオリンピック代表に内定している5選手による大会前日会見が行われました。
新型コロナウイルス感染拡大防止の対策として、オンラインでの実施となった会見に出席したのは、男子20kmでオリンピック代表に内定済みの山西利和選手(愛知製鋼、前回優勝者)、池田向希選手(東洋大)、高橋英輝選手(富士通)、女子で代表内定済みの岡田久美子選手(ビックカメラ、大会6連覇中)、藤井菜々子選手(エディオン)の5名。それぞれに、ここまでの経過や現在の体調、レースに向けての思いなどを述べたのちに、メディアからの質問に応えました。各選手のコメントは以下の通りです。
【前日会見コメント(要旨)】
◎山西利和(愛知製鋼)
ここまで問題なく、ケガもなく順調に、周りの方々のサポートを得ながら、トレーニングを進めてくることができた。明日は、(気象)コンディションにもよるが、少しでもいい記録、かつ順位を目指して勝負したい。(初優勝した)去年の日本選手権以来1年ぶりの20kmのレースとなる。きちんと勝つこと、20kmのレースの中で勝負勘を磨き、勝負所を逃さないことが、一つのポイントになると考えている。(東京オリンピックが延期になったことで、代表権を持った3人が揃って出場することへの感想を問われて)「だから、どう」という思いはない。もちろん(開催年によっては)代表権を狙って…ということもあるが、「日本一」を決める戦いである日本選手権では、まずは「ここで勝つ」ことが一番大事になってくる。(今回についても)そこになんら変わりはないと思う。ただ、そうはいっても、代表権(争い)を意識した立ち回りがないことによって、本当の意味で「日本一」を決める戦いになるのかなという気持ちもある。そういう意味でも、明日のレースは、しっかりと勝ちきりにいきたいなと思っている。
基本的なトレーニングの方向性は、この1年間で特に変わってはいない。きちんと自分のベースを上げていくことが大事だという思いでやってきた。一定の手応えを得られているので、明日のレースで、そこを確認したい。具体的にトライしているところとか、チャレンジしている部分はいろいろあるが、競技である以上、それらはすべて結果に集約できなければ評価されない。まずはきちんと結果を出すことで、取り組みの正当性や方向性がわかってくる。レースは、さまざまな挑戦や取り組みに対する答え合わせだと思っているので、(明日も)しっかり結果にこだわっていきたい。
◎池田向希(東洋大学)
ここまで新型コロナウイルスの感染防止対策を万全に行い、順調に練習を継続させることができた。高橋選手、山西選手とは、オリンピック本番でも戦うことになるわけだが、こうやって3人がオリンピック前に20kmで戦えるのは、おそらく明日の日本選手権が最後になると思う。そのなかで今の自分の実力が、どこまで通用するか試せる場ともいえる。しっかりと合わせていきたい。(例年だと)日本選手権は、何かしらの選考にかかわってくることが多いわけだが、今回はオリンピックの代表に3名が決まったなかでのレースとなる。自分としては、気持ちの面で、少し(例年とは)違った緊張感がある。今までは、選考がかかっているから、それを目指すという緊張感だったが、今回は、今の実力がどれだけ山西選手や高橋選手に通用するかという、「自分との戦い」「自分がどれだけ成長できているかを試す場」といった緊張を感じている。ただ、やることは同じ。ここで勝つための準備は、しっかりしてきたので、(明日は)落ち着いてレースに臨みたい。
この1年間は、ケガすることもなく練習を継続することができた。スピード面、技術面、体力面ともに強化できたと思っている。特にスピード面では秋に出場した記録会で、5000m、10000mともに大幅に自己ベストを更新し、スピードという強みを、自分のなかでも実感することができた。今回(のレースで)は、そういったところが生かせるのではないかと思っている。
また、(コロナ禍を経験して)「大会が行われること」が当たり前ではないということを実感する1年にもなった。よりいっそう周りの方々や大会を開催してくださる方々への感謝の思いを持って、レースに臨みたい。
◎高橋英輝(富士通)
(昨年9月の)全日本実業団以降は、順大記録会に出場しながら、スピードの強化と自分の動きを整える部分に注力してトレーニングを進めてきた。今のところ大きなケガもなく順調に、(今回の)日本選手権、そしてその先に向けてトレーニングできている。日本選手権は、国内のライバルたちと世界レベルのレースをすることができる大会。その意味でも、また、私の場合は歩型が課題なのだが、この大会で自分の歩きが通じるかどうかをみることができるという意味でも、非常に価値のある大会だと思っている。
すごく強いライバルと一緒に戦えるのは、自分自身を高めることにつながる。そういう意味で、一緒に歩くことができるという点に、まず価値を感じている。また、山西選手も池田選手も2人とも、きれいな歩型を20kmずっと維持して歩くことができて、そこは見習いたいと思っているところでもある。また、2人とはオリンピック本番も確実に競ることになるので、本番を意識したレースをできることは意味がある。明日は、オリンピック本番を意識して、自分のレースをしたい。
前回の日本選手権からのこの1年の間に、オリンピック代表に内定して、オリンピックが延期になって、さらに(コロナ禍により)試合のない期間が続いたわけだが、この間に、改めて、競技をする意味を考えたり、たくさんの人に応援してもらえていることを感じたりすることができた。陸上競技を、またみんなで思いきり楽しめる状況になったときには、最高のパフォーマンスをして、多くの人に何かを感じてもらえたらいいな、伝えられたらいいなと思う機会になった。去年はただ、「(オリンピック)代表になりたい」としか考えていなかったが、そこは1年経って変わった面かなと思う。明日のレースでも、そういった部分を出せればいいなと思う。
◎岡田久美子(ビックカメラ)
20kmのレースは、1年ぶりとなる。完全に調子を上げてきているわけではないのだが、オリンピックをイメージしながらトレーニングを積んできたので、明日は、今のできる限りの力を出しきっていきたい。昨年、少し体調を崩す時期があって、そこから、少しずつ立て直して、このレースを迎えることができた。明日は、優勝を目指して頑張りたい。体調不良については、さまざまな検査をしたのだが、原因は特定できていない。リンパ節が腫れる症状が出て、昨年の3~10月くらいまで7カ月ほど調子の悪い状態が続いた。ただ、今はもう落ち着いている。そのことは言い訳にせず、明日は一所懸命歩きたい。
そうした(体調を崩す)期間があったので、オリンピックが1年延期となって、正直、ホッとした思いがあった。昨年は、少しずつ体力を戻していき、回復してからは10~11月の記録会に出場することからスタートした。記録会は、1人でのレースではなく、男子選手に引っ張ってもらうような環境を選び、そこから徐々に調子を上げていった。年明けに出場した元旦競歩(10km)も男女混合のレースで、このときは高校生の力をお借りした。
明日は、連覇についてはあまり深く考えていないけれど、「優勝」ということを1つの目標としている。タイムとしては、(自身の持つ)日本記録(1時間27分41秒、2019年)は厳しいものがあるように思っているが、後半にペースアップしていけるような展開を目標にしているので、それがうまくいけば、タイムもついてくるのかなと考えている。
藤井さんとは、試合自体は、ドーハ(世界選手権、2019年)以来となるが、昨年は夏や冬も一緒に練習をしていたので、一緒に歩くこと自体は久しぶりではない。お互いに楽しむというか、いい勝負ができれば…。オリンピックは2人とも代表に内定しているので、いい形でオリンピックを迎えられるようなレースにしたい。
◎藤井菜々子(エディオン)
私は、この1年間では、能美大会(全日本競歩、3月)しか出場していない。昨年は、「鍛錬の年」と位置づけて、試合に出場しない選択をした。昨年、こういう(コロナ禍によって活動しづらい)状況となったが、(競歩の場合、通常であれば)大きな国際大会が毎年のようにあるために、1年間しっかりと身体をつくり直したり、心を休ませたりする期間は、なかなか得ることができない。そこで、ここはチャンスだと思い、この1年間を有効利用しようと考えた。レースに出場するのではなく、しっかりと練習を積みながら、焦らずにゆっくりと、余裕を持った練習をしていきたいという気持ちから、こういう選択となった。
具体的には、(東京オリンピック代表内定を確定させた)能美大会のあと、気持ちが切れたり、やや体調を崩したりしたことで、一回休ませようと練習量を落とし気味にし、本格的な練習は昨年の10月くらいから再開している。このため、レースペースなどの練習は、ドーハ(世界選手権、2019年)に向けての準備状態に比べると8割程度の状態にある。
明日は、約11カ月ぶりのレースとなるので、少々不安もあるし、100%練習が積めてきたわけではないので、そこは無理せずに…という気持ち。東京のオリンピックへの強化の一環として、今、自分がどこまで歩けるか。自分に挑戦するつもりで、丁寧に歩けたらいいなと思っている。
昨年は、1年を通して気持ちに波があったように思う。オリンピックの延期自体については、「世界との差を縮められる期間」と捉えて、ポジティブに受け止めていて、練習にも地道に励むことができていたのたが、モチベーションを維持することが、とても大変だった。
岡田選手とのレースは、ドーハ(世界選手権)ぶりとなる。練習や合宿などで一緒に歩くことは年間を通してやっているが、レースとしては久しぶりなので楽しみ。一緒に、いいレースができればいいなと思う。
大会は2月21日、例年同様にU20選抜競歩大会とともに兵庫県神戸市の六甲アイランドで開催。前回から新たに設定された甲南大学西側20kmコース(1周1kmの周回路)を用いて行われます。当日は、8時50分にスタートする日本選手権男子20kmで競技開始。その後、日本選手権女子20kmが10時40分から行われ、12時45分にU20男子10kmが、そして13時50分にU20女子5kmが続くタイムテーブルです。
今回は、国内外の新型コロナウイルス感染拡大による影響で、海外から国際競歩審判員を招聘できず、ワールドアスレティックス(WA:世界陸連)の公認条件(国際競歩審判員3名以上)を満たせないなかでの開催を余儀なくされています。記録自体が国際競技会の参加資格記録やワールドランキング、世界記録(エリア記録)の対象外となるため(ただし、日本記録や国内競技会の資格記録としては有効)、東京オリンピック代表枠があと1つ空いている女子については、今大会で内定済みの岡田・藤井選手を除く日本人最上位となって、6月13日までに公認要件を満たすレースで派遣設定記録(1時間30分00秒)を突破すると代表に内定します(詳細は、2月1日に更新された東京オリンピック代表選考要項 https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202008/21_173016.pdf をご参照ください)。
また、大会は、日本陸連で策定した「ロードレース開催についてのガイダンス」( https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202006/30_172327.pdf )に則って、細心の注意を払って実施されますが、この影響により、今回は会場での応援についても禁止とし、ファンの皆さまにも無観客開催へのご理解・ご協力をお願いしています。大会の模様は、
・日本陸連公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=Ek2uMf5MFCs )
・応援TV・日本陸連公式チャンネル(https://ohen.tv/channel/)
・日本陸連公式Twitter(https://twitter.com/jaaf_official)
にてライブ配信を予定していますので、ぜひ、画面越しでの熱い声援をお願いいたします。エントリーや配信等、大会に関する詳細は、https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1506/ をご参照ください。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)