2020.12.17(木)その他

【ライフスキルトレーニングプログラム】談話~自分の最高を引き出す技術~



ライフスキルトレーニングは、いわば、「“自分の最高”を引き出す技術」を身につけるためのトレーニング。これを習得することで、「競技力向上」と「キャリア自立」の両方の場面で、自身の持つ「ライフスキル」を強みとして生かしていくことができるようになります。

プログラム開始に際して、特別講師を務めるスポーツ心理学博士の布施努先生から寄せられた談話をご紹介しましょう。

談話

ライフスキルトレーニングプログラム開始にあたって

特別講師
スポーツ心理学博士 布施努



「ライフスキル」というのは、自分が最もやりたいこと、熱意を持ってやれることに従事しているときに身につくスキルのことです。アスリート、特に今回の対象者のようなトップアスリートの方々は、記録の向上やチャンピオンになることを目指して切磋琢磨しているわけですが、その過程で自然と身についているライフスキルは、きちんとトレーニングすることによって、汎用性を持たせることができるのです。

今回進めていくプログラムでは、受講者の皆さんが陸上競技に取り組むなかで身につけてきたライフスキルを、「ライフスキルトレーニング」によって、きちんと認識し、それを使いこなせるようにしていくことで、社会人として働く場面、あるいは競技生活を終えたあとのキャリアになったときに生かしていけるようにしていきます。また、この取り組みによって、アスリートとしての今のパフォーマンスも高めていくことが期待できます。この点も、このトレーニングのもう一つの魅力といえます。

これから4回にわたってプログラムを進めていきますが、第1回では、まずアスリートの皆さんに「役割性格」ということを知ってもらおうと思っています。例えば、「最初に発言したい人」と投げかけたときに、すぐに手を挙げる人がいるかもしれないけれど、挙げられない人もいます。これは本来の性格によって出てしまう違いなのですが、例えば、もし、これが就職活動の最終面接の場だったら、「何か言いたいことはありますか?」と聞かれた場合は、みんな手を挙げることでしょう。それは、最終面接の場で“こういう自分を見せよう”と自然とやっていることなのです。

ライフスキルトレーニングでは、それをきちんと言語化して、再現性を持たせるような形にして、受講者の皆さんに知ってもらいます。そうすると、例えば、次の大切な試合のときに「自分はどういう選手像で、その試合に向かうか」という「役割性格」をつくって臨むことができるようになるわけです。この点は、リサーチ(研究)では成果があることが報告されています。例えば、コーチとのやりとりにおいても、「オリジナルの自分」でやりとりするのではなくて、「選手としてこういう自分」を演じてやりとりできるようになると、厳しいフィードバックでも素直に受け入れられるようになるという報告があります。スポーツ心理学の観点で有効な方法というわけです。

このフレームワークを理解できると、まず、今取り組んでいる自分の競技生活のキーポイントになっていきます。さらに、競技生活を終えたあとでは、例えば「ビジネスパーソンとして、どういう役割性格をつくっていくか」といったような応用が可能になるのです。今回は、そうした点を、ブレイクアウトセッション(少人数グループでのディスカッション)などを交えながら、実際にやっていく計画です。

アスリートが持つ「ライフスキル」は、顕在化して認識させることによって、競技場面でも、また社会人としてのキャリアの場面でも、大いに生かすことができます。多くのスポーツ選手は、よく会社員として企業に入ったときに、「いやあ、自分はスポーツばかりやってきたから…」と言うのですが、そんなことはありません。スポーツをやっている間に、すごいスキルが身についているはずなんです。ただ、それを、会社という場面でどう使えばいいのかのフレームワークができていないだけのことなんですね。

今回のライフスキルトレーニングでは、まずは、きちんとそのフレームワークを理解してもらって、学生アスリートとして競技に取り組んでいる今のうちにスキルアップしてもらうことで、競技成績に反映させることと同時に、競技の第一線を退いてからのキャリアでも目いっぱい使ってもらえるようになってもらおうと思っています。

構成・文、写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)


■ライフスキルトレーニングプログラムの受講生はこちら
https://www.jaaf.or.jp/news/article/14514/

■第一回ライフスキルトレーニングプログラム実施レポート
https://www.jaaf.or.jp/news/article/14540/

■【ライフスキルトレーニングプログラム】対談~ 各団体に先駆けて始動するまでの経緯と期待~
https://www.jaaf.or.jp/news/article/14570/

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