『第12回 「ドーハ世界選手権」総括と東京五輪への取り組み(2)』から
──今年は日本新が多く出たこともあって、ドーハ世界選手権の出場人数が増えました。「当初の見積もりより20人ぐらい多かった」という、麻場委員長の現地でのお話でした。
麻場 確かに、想定していたより多くなりました。最終的に61人ですね。多くても50人かなと思っていたのに60人を超えてきたのは、大きな成果です。この8割方が来年の東京五輪のメンバーになるのではないでしょうか。
山崎 男子の出場者はアメリカの次に多いんですね。
麻場 さらに、戦略的にワールドランキングで入って来られそうな選手がいますから、今年の規模ぐらいの選手団になるのではないかな。「1人でも多く出場する」というのも我々の1つの目標ですから、成果だと思いますね。
河野 思った以上に「この選手も出られる」「この選手も……」となったのは、ありがたい話でした。現場の人たちのがんばりだと思います。
麻場 標準記録は突破できなかったけど、ワールドランキングでいくとターゲットナンバーに近くて、でも今回は出場できなかった、という選手が数名いるので、そういう選手たちがこれに加わってくれるといいですね。
──これから大事な冬季トレーニングの時期に入りますが、選手たちに求めるものは何でしょうか。
麻場 これからのオフの過ごし方については、それぞれの状況に応じたバックアップを強化として考えていきたいと思っています。もうちょっと具体的に言えば、標準記録を破っている選手たちは、とにかく日本選手権と東京五輪にきちんとピークが来るように、オフシーズンを過ごしてほしい。それから、オリンピック出場を狙う選手たちは、冬季の室内競技会などからきちんとポイントを稼いでいく。そういうところのバックアップをしていきます。いずれにしても8割方は顔が見えていますので、そういう選手たちを中心に、パフォーマンスを上げていけるようにしていきたいと思います。
──東京五輪までの大まかな流れはどうなるのでしょうか。
麻場 それも「状況に応じて」ということです。男子のマイルリレーチームはUSCへ行って、いわゆる武者修行ですし、4継メンバーは個々の過ごし方があるわけで、それを主にしてやっていきます。マラソンも、すでに決まっている4人に対しては、それぞれに応じて準備していかなければいけません。とにかくポイントを稼がないといけない選手たちには、アジア室内(2月12日~13日/中国・杭州)や世界室内(3月13日~15日/中国・南京)といった、海外の室内大会へ出られるようにバックアップをしていきます。ですから、全体として「こういう流れ」というわけではないんです。
河野 さっきも出たけど、おおよそ選手の顔が見えているので、直接その選手に強化費を出せますから、以前のようにブロックで何かをやるというシステムはなくなっています。あとは、標準記録を3人以上破った種目ですよね。そこはものすごく緊張感の高い日本選手権になるので、誰が破ってくるかでまったく変わってきます。例えば、女子10000mだと31分25秒00の標準記録を複数人が破ってくるでしょうし、そこにワールドランキングも関わってくるので、代表争いは熾烈です。そのように種目によって変わってきますよね。男子の100m、200mも壮絶な争いになるのではないですか。
──男子のショートスプリントはハイレベルでの代表戦いが予想されますが、世界選手権で連続銅メダル、リオ五輪で銀メダルの4継は「金メダル」を東京五輪の目標に掲げていますね。
山崎 リレーのエントリーが5人なので、そのうち3人は100mの代表になりますね。あと2人は200mの代表選手がきちんと選ばれることが大事なんですが、100mと200mの代表が重複すると、リレーが大変になります。今回、アメリカの成功例は先ほど示しましたが、カナダはアンドレ・デグラスとアーロン・ブラウンの2人が100m、200mとも決勝に進出しているにも関わらず、リレーは予選落ちしているのです。
──今回、日本はサニブラウン選手、桐生選手とも最初から100mだけに絞って、100m、200mの2種目に出た小池選手はリレーの決勝から外れましたね。
山崎 過去の事例から見て、100m、200mをやって、さらに4継の予選、決勝という流れで成功した例はほとんどないんです。ジャマイカのウサイン・ボルトがやっていましたけど、リレーの予選はボルトが出なくても通る力がありましたからね。日本はまだ予選で選手を温存して、というほど余裕はありませんので、リレーで金メダルを取るという前提でやるなら、そのあたりの戦略は重要になります。しかも、オリンピックは100m、200mを終えてから4継予選まで、中1日しかないんですよね。4継は万全の態勢で予選から臨んでいきたい、というのが強化の考えです。
──女子のリレーは昨年冬にプロジェクトチームを立ち上げて強化しましたけど、ドーハ世界選手権には出場できませんでした。東京五輪への出場は、もうあきらめているのですか。
麻場 いや、決してあきらめてはいませんよ。東京五輪を盛り上げる、陸上界ががんばっている姿を見せるという意味では、やはり女子のリレーが出ることがすごく大切です。
河野 ドーハ世界選手権では男女混合のマイルリレーで日本新(3分18秒77)が出ましたからね。予選で落ちて東京五輪への出場権は得られませんでしたけど、今ランキングで16番にいます。今後、この種目のレースがそう多くあるとは考えられないので、当落線上にいるということです。可能性がないわけではない。
麻場 特別プロジェクトが去年立ち上がりましたので、そっくり同じというわけではありませんけど、形を変えながら、来年に向けてプロジェクトは継続していきます。
山崎 ただ、4継でプロジェクトに入った選手たちが今季かなり不調に陥ってしまったわけですから、反省はして、少し変化は加えないといけません。
麻場 やっぱりそこはシステムややり方に問題があった、という評価を下さなければなりません。そういう意味で少し形を変えながら来年に向かっていく。これが4継です。マイルに関しては「十分な」とまでは言えないけど、ある程度の成果は出せた。その部分は踏襲しつつ、変えるところは変えながら進めていく。いずれにしても東京五輪に向かっていくことは確かです。
──そのプロジェクトで、現在決まっていることは何ですか。
山崎 決まっていることは「変える」ということです。400m系に関しては概ねうまくいってると私たちは思っていて、強化した選手たちがメンバー入りしています。ですから、そのあたりは踏襲しながらやります。
麻場 そこに、どういう新しい流れを加えられるかです。4継についてはプロジェクトに選ばれたメンバーが各大会の決勝にも残れないような状況になってしまっていたので、それはまずいということで話し合いが持たれているところです。11月の強化委員会で了解をもらって、スタートしたいと思っています。
河野 女子はリレーが代表に入らないと本当に限られた人数になってしまいますから、大きながんばりがほしいですよね。
麻場 何としてもリレーには出場してほしいです。
──来季の試合スケジュールで、ランキングを上げるために重要な大会はどこになりますか。
麻場 今季は国際陸連から競技会ランクのカテゴリーを6試合上げていいと言われ、全部秋の大会に持ってきたんですけど、来年は春の大会にして、ポイントを獲得することが最重要になっている選手にそういう機会を多く提供していきたい。これは冬場の室内競技会を含めてですけど、そういうチャンスが広がるような努力はどんどんしていきたいと思っています。今、そのスケジュール調整などを事務局中心にやってもらっているところです。
その一方で、標準記録を突破して出場の資格を持っている選手に関しては、本番に合わせて動いてもらえるようなスケジュールを作ってもらって、強化委員会が全面的にバックアップしていく。その二本立てです。標準記録を破っている選手というのは、本番でメダルや入賞を狙う代表組になります。
──オリンピックイヤーの日本選手権が新国立競技場で行われないので、本番会場で開かれる春のセイコー・ゴールデングランプリ(5月10日)や、その前のテストイベント(5月5日~6日)が大事になりますね。
麻場 そうです。今、各種目からいろんな要望が出ているので、その要望に添いながら、その周辺にあるグランプリ競技会と種目配置を検討しているところです。リレーのトライアルも含めて、ディレクター2人に考えてもらっています。
河野 今年と同様に日本選手権の10000mは5月に分離開催で調整中です。
──陸上競技の盛り上がりを期待しています。
東京五輪でも60人超の選手団を
──今年は日本新が多く出たこともあって、ドーハ世界選手権の出場人数が増えました。「当初の見積もりより20人ぐらい多かった」という、麻場委員長の現地でのお話でした。
麻場 確かに、想定していたより多くなりました。最終的に61人ですね。多くても50人かなと思っていたのに60人を超えてきたのは、大きな成果です。この8割方が来年の東京五輪のメンバーになるのではないでしょうか。
山崎 男子の出場者はアメリカの次に多いんですね。
麻場 さらに、戦略的にワールドランキングで入って来られそうな選手がいますから、今年の規模ぐらいの選手団になるのではないかな。「1人でも多く出場する」というのも我々の1つの目標ですから、成果だと思いますね。
河野 思った以上に「この選手も出られる」「この選手も……」となったのは、ありがたい話でした。現場の人たちのがんばりだと思います。
麻場 標準記録は突破できなかったけど、ワールドランキングでいくとターゲットナンバーに近くて、でも今回は出場できなかった、という選手が数名いるので、そういう選手たちがこれに加わってくれるといいですね。
──これから大事な冬季トレーニングの時期に入りますが、選手たちに求めるものは何でしょうか。
麻場 これからのオフの過ごし方については、それぞれの状況に応じたバックアップを強化として考えていきたいと思っています。もうちょっと具体的に言えば、標準記録を破っている選手たちは、とにかく日本選手権と東京五輪にきちんとピークが来るように、オフシーズンを過ごしてほしい。それから、オリンピック出場を狙う選手たちは、冬季の室内競技会などからきちんとポイントを稼いでいく。そういうところのバックアップをしていきます。いずれにしても8割方は顔が見えていますので、そういう選手たちを中心に、パフォーマンスを上げていけるようにしていきたいと思います。
──東京五輪までの大まかな流れはどうなるのでしょうか。
麻場 それも「状況に応じて」ということです。男子のマイルリレーチームはUSCへ行って、いわゆる武者修行ですし、4継メンバーは個々の過ごし方があるわけで、それを主にしてやっていきます。マラソンも、すでに決まっている4人に対しては、それぞれに応じて準備していかなければいけません。とにかくポイントを稼がないといけない選手たちには、アジア室内(2月12日~13日/中国・杭州)や世界室内(3月13日~15日/中国・南京)といった、海外の室内大会へ出られるようにバックアップをしていきます。ですから、全体として「こういう流れ」というわけではないんです。
河野 さっきも出たけど、おおよそ選手の顔が見えているので、直接その選手に強化費を出せますから、以前のようにブロックで何かをやるというシステムはなくなっています。あとは、標準記録を3人以上破った種目ですよね。そこはものすごく緊張感の高い日本選手権になるので、誰が破ってくるかでまったく変わってきます。例えば、女子10000mだと31分25秒00の標準記録を複数人が破ってくるでしょうし、そこにワールドランキングも関わってくるので、代表争いは熾烈です。そのように種目によって変わってきますよね。男子の100m、200mも壮絶な争いになるのではないですか。
今後のリレーチームの取り組み方
──男子のショートスプリントはハイレベルでの代表戦いが予想されますが、世界選手権で連続銅メダル、リオ五輪で銀メダルの4継は「金メダル」を東京五輪の目標に掲げていますね。
山崎 リレーのエントリーが5人なので、そのうち3人は100mの代表になりますね。あと2人は200mの代表選手がきちんと選ばれることが大事なんですが、100mと200mの代表が重複すると、リレーが大変になります。今回、アメリカの成功例は先ほど示しましたが、カナダはアンドレ・デグラスとアーロン・ブラウンの2人が100m、200mとも決勝に進出しているにも関わらず、リレーは予選落ちしているのです。
──今回、日本はサニブラウン選手、桐生選手とも最初から100mだけに絞って、100m、200mの2種目に出た小池選手はリレーの決勝から外れましたね。
山崎 過去の事例から見て、100m、200mをやって、さらに4継の予選、決勝という流れで成功した例はほとんどないんです。ジャマイカのウサイン・ボルトがやっていましたけど、リレーの予選はボルトが出なくても通る力がありましたからね。日本はまだ予選で選手を温存して、というほど余裕はありませんので、リレーで金メダルを取るという前提でやるなら、そのあたりの戦略は重要になります。しかも、オリンピックは100m、200mを終えてから4継予選まで、中1日しかないんですよね。4継は万全の態勢で予選から臨んでいきたい、というのが強化の考えです。
──女子のリレーは昨年冬にプロジェクトチームを立ち上げて強化しましたけど、ドーハ世界選手権には出場できませんでした。東京五輪への出場は、もうあきらめているのですか。
麻場 いや、決してあきらめてはいませんよ。東京五輪を盛り上げる、陸上界ががんばっている姿を見せるという意味では、やはり女子のリレーが出ることがすごく大切です。
河野 ドーハ世界選手権では男女混合のマイルリレーで日本新(3分18秒77)が出ましたからね。予選で落ちて東京五輪への出場権は得られませんでしたけど、今ランキングで16番にいます。今後、この種目のレースがそう多くあるとは考えられないので、当落線上にいるということです。可能性がないわけではない。
麻場 特別プロジェクトが去年立ち上がりましたので、そっくり同じというわけではありませんけど、形を変えながら、来年に向けてプロジェクトは継続していきます。
山崎 ただ、4継でプロジェクトに入った選手たちが今季かなり不調に陥ってしまったわけですから、反省はして、少し変化は加えないといけません。
麻場 やっぱりそこはシステムややり方に問題があった、という評価を下さなければなりません。そういう意味で少し形を変えながら来年に向かっていく。これが4継です。マイルに関しては「十分な」とまでは言えないけど、ある程度の成果は出せた。その部分は踏襲しつつ、変えるところは変えながら進めていく。いずれにしても東京五輪に向かっていくことは確かです。
──そのプロジェクトで、現在決まっていることは何ですか。
山崎 決まっていることは「変える」ということです。400m系に関しては概ねうまくいってると私たちは思っていて、強化した選手たちがメンバー入りしています。ですから、そのあたりは踏襲しながらやります。
麻場 そこに、どういう新しい流れを加えられるかです。4継についてはプロジェクトに選ばれたメンバーが各大会の決勝にも残れないような状況になってしまっていたので、それはまずいということで話し合いが持たれているところです。11月の強化委員会で了解をもらって、スタートしたいと思っています。
河野 女子はリレーが代表に入らないと本当に限られた人数になってしまいますから、大きながんばりがほしいですよね。
麻場 何としてもリレーには出場してほしいです。
オリンピックイヤーに向けて
──来季の試合スケジュールで、ランキングを上げるために重要な大会はどこになりますか。
麻場 今季は国際陸連から競技会ランクのカテゴリーを6試合上げていいと言われ、全部秋の大会に持ってきたんですけど、来年は春の大会にして、ポイントを獲得することが最重要になっている選手にそういう機会を多く提供していきたい。これは冬場の室内競技会を含めてですけど、そういうチャンスが広がるような努力はどんどんしていきたいと思っています。今、そのスケジュール調整などを事務局中心にやってもらっているところです。
その一方で、標準記録を突破して出場の資格を持っている選手に関しては、本番に合わせて動いてもらえるようなスケジュールを作ってもらって、強化委員会が全面的にバックアップしていく。その二本立てです。標準記録を破っている選手というのは、本番でメダルや入賞を狙う代表組になります。
──オリンピックイヤーの日本選手権が新国立競技場で行われないので、本番会場で開かれる春のセイコー・ゴールデングランプリ(5月10日)や、その前のテストイベント(5月5日~6日)が大事になりますね。
麻場 そうです。今、各種目からいろんな要望が出ているので、その要望に添いながら、その周辺にあるグランプリ競技会と種目配置を検討しているところです。リレーのトライアルも含めて、ディレクター2人に考えてもらっています。
河野 今年と同様に日本選手権の10000mは5月に分離開催で調整中です。
──陸上競技の盛り上がりを期待しています。