2019.10.04(金)その他

【記録と数字で楽しむドーハ世界選手権】男子4×100mリレー

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9月27日(金)から10月6日(日)の10日間、カタールの首都ドーハで「第17回世界選手権」が開催される。ここでは、日本人が出場する種目を中心に、「記録と数字で楽しむドーハ世界選手権」を紹介する。

なお、これまでにこの日本陸連HPで各種の競技会の記事で筆者が紹介したことがある同じ内容のデータも含むが、可能な限りで最新のものに修正した。






★男子4×100mリレー★

2014年5月に日本男子ナショナルリレーチームの愛称となった「韋駄天スプリンターズ」が悲願の「金メダル」に挑戦する。予選が10月4日21時05分(日本時間5日3時05分)、決勝が10月5日22時15分(6日4時15分)。

今回エントリーしている日本人選手の2019年ベストと自己ベストは、19年の記録順に、

サニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大3年/9秒97=2019年)
小池 祐貴(住友電工/9秒98=2019年)
桐生 祥秀(日本生命/10秒01。9秒98=2017年)
多田 修平(住友電工/10秒12。10秒07=2017年)
白石黄良々(セレスポ/10秒19=2019年)
ケンブリッジ飛鳥(Nike/10秒20。10秒08=2017年)
山下  潤(筑波大4年/10秒43=2019年)

2016年のリオ五輪でアメリカに先着して「銀メダル」を獲得。17年のロンドン世界選手権でも「銅メダル」をゲット。陸上関係者のみならず国民的なレベルで注目されることになった。今回のドーハと2020東京五輪での「金メダル」を期待する人も多いことだろう。



世界選手権が始まった1983年以降の「世界選手権」と「五輪」での日本の成績をまとめると以下の通りだ。


「◎」はメダル獲得、「〇」は入賞。

1983年    不出場
1984年 五輪 不出場
1987年    準落 39.71
1988年 五輪 準落 38.90 =アジア新
1991年    予落 39.19
1992年 五輪 6位〇38.77 =アジア新
1993年    準落 39.01
1995年    5位〇39.33(予選で38.67のアジア新)
1996年 五輪 予落 失格
1997年    準落 38.31 =アジア新
1999年    不出場
2000年 五輪 6位〇38.66(準決で38.31のアジアタイ)
2001年    4位〇38.96/注
2003年    6位〇39.05/注
2004年 五輪 4位〇38.49
2005年    8位〇38.77
2007年    5位〇38.03 =アジア新
2008年 五輪 2位◎38.15/注
2009年    4位〇38.30
2011年    予落 38.66
2012年 五輪 4位〇38.35
2013年    6位〇38.39
2015年    予落 38.60
2016年 五輪 2位◎37.60 =アジア新
2017年    3位◎38.04
・「注」=上位国のドーピング違反で順位が1つ繰り上がった。


世界選手権が始まった1983年以降「不出場」だった3回(83・84・99年)を除き、1987年の世界選手権からと88年以降の五輪には22回出場し、メダルが3回、8位以内入賞は14回を数え「入賞率63.6%」だ。21世紀以降に限れば14回中の12回が入賞で、入賞率は「84.6%」にもなる。2000年から09年には、五輪と世界選手権で8大会連続入賞も果たしている。

「世界選手権」に限ると、出場した14大会中8回入賞で入賞率は「57.1%」だが、21世紀以降では9回中7回入賞で入賞率は「77.8%」である。



これまで16回の世界選手権での入賞回数の上位国は以下の通り。


1)10 ジャマイカ
2)9 アメリカ
3)8 イギリス、ドイツ、カナダ、日本
7)7 フランス
8)6 イタリア、ブラジル
10)5 トリニダードトバゴ、ポーランド


なお、アメリカは、どの大会でもメンバーの個々の走力からして、「普通に走れれば、メダル獲得率100%」であろうが、バトンパスに難があり16回のうち7回が「失格(3回)」か「途中棄権(4回)」に終わっている。

今回の世界選手権代表にはならなかった選手も含め、2019年の記録で日本の100mは、9秒台2人、10秒0台が1人、10秒1台が5人、10秒2台が10人。10傑平均は10秒111(10月3日現在)となった。従来の10傑平均の最高である2017年の10秒104にトラックシーズンを1カ月ちょっと残してあと0秒007に迫っている。

「表」は、400mRに出場する16カ国について、今回の世界選手権の100m終了時点での2019年のシーズンベストまとめたものだ。100mや400mRにエントリーされていない選手の記録が含まれているかもしれないが、「上位4人の合計」と「10傑平均記録」も付記した。「四継」を占うための目安になりそうだ。

なお、参考までに9月22日時点での「エントリー記録による上位4人の合計記録」も最後に付記したが、アメリカが1人しかエントリーしていなかったり、他種目(200m、400m、110mH、走幅跳など)にエントリーしている選手も起用できるので、あまり参考にならないかもしれない。


【表1/男子400mリレーの出場16国2019年ベストの上位4人の合計記録と10傑平均、エントリー記録上位4人の合計記録】

2019年ベストによる上位4人の合計および10傑平均記録  エントリー記録

国名 順)合計記録  1位 2位  3位  4位  ~ 10位  順)10傑平均 順)4人計
USA  1) 39.42  9.76  9.86  9.87  9.93 ~ 10.05  1) 9.950   *****
NGR  2) 39.95  9.86  9.96 10.02 10.11 ~ 10.35  6) 10.161  1) 39.95
JAM  3) 39.99  9.96 10.00 10.01 10.02 ~ 10.15  2) 10.065  3) 40.12
GBR  4) 40.04  9.95  9.97 10.04 10.08 ~ 10.22  3) 10.098  4) 40.18
JPN  5) 40.07  9.97  9.98 10.01 10.11 ~ 10.22  4) 10.111  2) 40.08
CAN  6) 40.14  9.90  9.96 10.12 10.16 ~ 10.31  5) 10.160  5) 40.19
RSA  7) 40.20  9.92 10.05 10.08 10.15 ~ 10.26  8) 10.216  6) 40.22
BRA  8) 40.32  10.02 10.07 10.10 10.13 ~ 10.31  7) 10.178  7) 40.37
CHN  9) 40.35  10.01 10.05 10.12 10.17 ~ 10.39  9) 10.219 13) 40.88
ITA 10) 40.60  10.03 10.07 10.24 10.26 ~ 10.43 12) 10.304 11) 40.79
FRA 11) 40.62  10.02 10.12 10.21 10.27 ~ 10.42 11) 10.283  8) 40.62
GHA 12) 40.67  10.01 10.16 10.18 10.32 ~ 10.82 14) 10.394 14) 41.57
NED 13) 40.69  10.12 10.16 10.19 10.22 ~ 10.58 13) 10.341  9) 40.69
GER 14) 40.70  10.13 10.16 10.18 10.23 ~ 10.32 10) 10.242 10) 40.70
TUR 15) 40.82  10.14 10.16 10.19 10.33 ~ 10.61 15) 10.403 12) 40.82
QAT 16) 41.48  10.22 10.25 10.64 10.37 ~ *****   ****** 15) 41.84



上記の通り、「2019年上位4人の合計記録」で日本は「40秒07」で16カ国中の「5位」に位置する。ドーハには行っていない4位に位置する山縣亮太(10秒11)を除き多田修平(10秒12)で計算すると合計タイムは0秒01ダウンして「40秒08」になるが順位は変わらない。

100mの合計タイムの比較では日本は「メダルに届かない」ことになるが、そこは日本の「お家芸」ともいえるバトンのパスワークでカバーすることになる。

「表2」のデータは、日本が銀メダルを獲得した2016年・リオ五輪の決勝を走った8チームの各走者のリレー直前までの100mのシーズンベストの合計と実際のリレーのタイムを比較したものだ。なお、「失格」となったアメリカ(3位でフィニッシュ)とトリニダード・トバゴ(7位でフィニッシュ)のリレーのタイムも参考までに記載した。


【表2/2016年リオ五輪決勝の記録とリレー直前シーズンベストの合計タイムの比較】


順)記録  国名     100m合計(差) 1走  2走  3走  4走
1)37.27 ジャマイカ  2)39.60(2.33) 9.92  9.93  9.94  9.81
2)37.60 日 本    6)40.52(2.92)10.05 10.36 10.01 10.10
3)37.64 カナダ    5)40.37(2.73)10.16  9.96 10.34  9.91
4)37.90 中 国    7)40.70(2.80)10.30 10.08 10.08 10.24
5)37.98 イギリス   4)40.32(2.34)10.01 10.08 10.04 10.19
6)38.41 ブラジル   8)40.86(2.45)10.21 10.11 10.28 10.26
DQ (37.62) アメリカ   1)39.58(1.96) 9.97  9.80  9.97  9.84
DQ (38.09) トリニダード・トバゴ3)40.22(2.13)10.07  9.99 10.19  9.97


上記の通り、100mのシーズンベストの合計で日本は6番目。しかし、見事なパスワークで100mの走力の劣勢をカバーして「銀メダル」を手にしたのだった。

2016年の「合計40秒52」に対し、今回エントリーの上位4人のそれは「合計40秒08(今回不出場の10秒11の山縣亮太を除き10秒12の多田修平で計算)」。「たら、れば」の話になるが、2走以降の加速とパスワークによる短縮タイムが2016年リオ五輪と同じ「2秒92」とすれば、リレーは「37秒16」となる計算だ。

2007年の大阪世界選手権で38秒03のアジア新記録をマークして5位だった時のリレー直前までの4人の100mシーズンベストの合計は「41秒15」でその差3秒12。2008年・北京五輪で銀メダル(38秒15)の時は、「合計41秒17」でその差3秒02。これらと同じく3秒0~3秒1くらいを稼ぐことができれば、今回は「36秒9台~37秒0台」で走れても不思議ではない計算になる。



五輪を含む2007年以降の9大会の1~4番目でフィニッシュしたチームのタイム(カッコ内は失格になったチームのタイム)は下記の通り。


 年     1位  2位  3位  4位
2007年    37.78 37.89 37.90 37.99
2008年 五輪 37.10 38.06 38.15 38.24
2009年    37.31 37.62 38.02 38.30
2011年    37.04 38.20 38.49 38.50
2012年 五輪 36.84 37.04(38.07)38.12
2013年    37.36 37.66(37.80)37.92
2015年    37.36(37.77)38.01 38.13
2016年 五輪 37.27 37.60(37.62)37.64
2017年    37.47 37.52 38.43 38.34


このデータからすると、アメリカやジャマイカに「36秒台」とか「37秒0台」で走られても、日本チームがパスワークで07年・大阪世界選手権や08年・北京五輪並みの「3秒0~1」を稼げれば「金メダル」も十分に「射程圏内」といえることになる。



日本チームが予選を普通に走れればまったく問題ないが、参考までに「21世紀以降の決勝進出の最低ライン(通過最低記録)」と「決勝に進めなかった最高タイム(落選最高記録)」は以下の通りだ。


 年  通過最低 落選最高
2001年  38.97  38.71
2003年  38.63  38.66
2005年  38.65  38.67
2007年  38.70  38.73
2009年  38.72  38.93
2011年  38.47  38.66
2013年  38.41  38.46
2015年  38.57  38.41
2017年  38.48  38.61


そして決勝での「着順別最高記録」は、以下の通りだ。


1)37.04 2011年=ジャマイカ
2)37.52 2017年=アメリカ
3)37.83 1993年=カナダ
4)37.99 2007年=ブラジル
5)38.03 2007年=日本
6)38.39 2013年=日本
7)38.48 2005年=ドイツ
8)38.77 2005年=日本


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト

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