第53回織田記念陸上は4月27~28日、カタール・ドーハ世界選手権の日本代表選考会を兼ねて、広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島)において行われました。この大会は、日本グランプリシリーズでグランプリプレミア「広島大会」と位置づけられ、会期も昨年から2日にわたっての開催となっています。グランプリ種目として男子7種目(100m、5000m、110mH、棒高跳、走幅跳、三段跳、やり投)、女子5種目(100m、5000m、100mH、棒高跳、やり投)が行われたほか、チャレンジ種目、パラ陸上競技種目、ジュニア種目、広島県内種目が実施。また、学生競技者にとっては、7月にナポリ(イタリア)で開催されるユニバーシアードの代表選考会にもなりました。
この大会は、スプリント種目をはじめとして好記録がアナウンスされることで知られており、例年多くのトップ競技者が出場しますが、今回は、ドーハで行われたアジア選手権直後の会期ということもあり、帰国直後に出場を見合わせる選手も多く出てしまいました。また、両日ともに気温が上がらず、肌寒さを覚えるコンディションに。パラ種目(女子100m)で日本新記録、チャレンジ種目(男子2000mSC)でU20日本新記録が誕生しましたが、グランプリ種目においては、新記録のアナウンスはありませんでした。

女子100mは、日本記録保持者の福島千里選手(セイコー)のエントリーはなかったものの、昨年の日本選手権覇者の世古和選手(CRANE)、昨年、11秒43の自己タイ記録をマークしている市川華菜選手(ミズノ)ら、女子リレー特別強化プロジェクトの代表候補メンバーに選出された選手たちのほか、昨年、高校生ながらアジア大会に出場した御家瀬緑選手(みかせ・みどり、恵庭北高)、U20日本記録・高校記録保持者(11秒43)で社会人2年目の今季、長い低迷から復調の兆しを見せている土井杏南選手(JAL)らが出場して行われました。
予選では、土井選手が11秒66(+1.5)と、出雲記念で出していたシーズンベスト(11秒68)を上回るタイムをマークして、全体トップで決勝へ。スタートを一度やり直しての出発となった決勝では、土井選手が前半でリードを奪いましたが、御家瀬選手が中盤で土井選手をかわすと、後半追い上げてきたライリー・デイ選手(オーストラリア)との競り合いになり、両者がほぼ同時にフィニッシュ。11秒54(+1.9)の同タイムながら着差ありでデイ選手が優勝、御家瀬選手が2位となりました。
御家瀬選手の11秒54は、U20日本歴代および高校歴代2位(髙橋萌木子、2006年)と並ぶタイ記録。この大会では、11秒6~7台を目指していたという御家瀬選手は、レース後、「出ても(11秒)6くらいかなと思っていたし、自己ベストが出るとは思っていなかったので、自分でもびっくりしている」とコメントしつつも、「思わぬところで記録が出てうれしい」と笑顔を見せました。
北海道では札幌ハイテクACが持つインドアスタジアムを練習拠点としていることもあり、「屋外で走るのは、今日が初めて」でしたが、「私が得意とするのは、中盤から後半にかけての加速の部分。今日は、勢いよく加速に乗れて、そのまま後半も落とさず行けたところがよかったと思う」と、昨年の11秒63から大幅な自己新記録を達成したレースを振り返りました。
昨年は、女子4×100mRで日本代表に選出され、アジア大会を経験。「走りも、何もかも、自分はまだまだだなと悔しく思ったので、この冬は“今年は絶対にやるぞ”という気持ちで練習した」と言い、なかでも上半身の強化に取り組んできたといいます。今季の目標は、11秒43のU20日本記録・高校記録の更新に据えているという御家瀬選手。次のレースは、インターハイに向けた予選大会となる札幌支部大会ということです。
御家瀬選手に続いたのは、そのU20日本記録・高校記録を持つ土井選手。11秒64とシーズンベストを再び上回ってのフィニッシュとなりました。「グランプリのこの大会に戻ってくることはできたけれど、負けてしまったのは悔しいのでまだまだ。次は勝てるように頑張りたい」と力強い言葉を残しました。11秒74で日本人3番手の4位となったのは市川選手。春先に熱が下がらない体調不良に陥っていたことで状態が懸念されましたが、予選(11秒91)からタイムを上げての結果に、回復傾向にある様子がうかがえました。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト
この大会は、スプリント種目をはじめとして好記録がアナウンスされることで知られており、例年多くのトップ競技者が出場しますが、今回は、ドーハで行われたアジア選手権直後の会期ということもあり、帰国直後に出場を見合わせる選手も多く出てしまいました。また、両日ともに気温が上がらず、肌寒さを覚えるコンディションに。パラ種目(女子100m)で日本新記録、チャレンジ種目(男子2000mSC)でU20日本新記録が誕生しましたが、グランプリ種目においては、新記録のアナウンスはありませんでした。

■御家瀬選手、女子100mでU20日本歴代2位タイの11秒54
女子100mは、日本記録保持者の福島千里選手(セイコー)のエントリーはなかったものの、昨年の日本選手権覇者の世古和選手(CRANE)、昨年、11秒43の自己タイ記録をマークしている市川華菜選手(ミズノ)ら、女子リレー特別強化プロジェクトの代表候補メンバーに選出された選手たちのほか、昨年、高校生ながらアジア大会に出場した御家瀬緑選手(みかせ・みどり、恵庭北高)、U20日本記録・高校記録保持者(11秒43)で社会人2年目の今季、長い低迷から復調の兆しを見せている土井杏南選手(JAL)らが出場して行われました。予選では、土井選手が11秒66(+1.5)と、出雲記念で出していたシーズンベスト(11秒68)を上回るタイムをマークして、全体トップで決勝へ。スタートを一度やり直しての出発となった決勝では、土井選手が前半でリードを奪いましたが、御家瀬選手が中盤で土井選手をかわすと、後半追い上げてきたライリー・デイ選手(オーストラリア)との競り合いになり、両者がほぼ同時にフィニッシュ。11秒54(+1.9)の同タイムながら着差ありでデイ選手が優勝、御家瀬選手が2位となりました。
御家瀬選手の11秒54は、U20日本歴代および高校歴代2位(髙橋萌木子、2006年)と並ぶタイ記録。この大会では、11秒6~7台を目指していたという御家瀬選手は、レース後、「出ても(11秒)6くらいかなと思っていたし、自己ベストが出るとは思っていなかったので、自分でもびっくりしている」とコメントしつつも、「思わぬところで記録が出てうれしい」と笑顔を見せました。
北海道では札幌ハイテクACが持つインドアスタジアムを練習拠点としていることもあり、「屋外で走るのは、今日が初めて」でしたが、「私が得意とするのは、中盤から後半にかけての加速の部分。今日は、勢いよく加速に乗れて、そのまま後半も落とさず行けたところがよかったと思う」と、昨年の11秒63から大幅な自己新記録を達成したレースを振り返りました。
昨年は、女子4×100mRで日本代表に選出され、アジア大会を経験。「走りも、何もかも、自分はまだまだだなと悔しく思ったので、この冬は“今年は絶対にやるぞ”という気持ちで練習した」と言い、なかでも上半身の強化に取り組んできたといいます。今季の目標は、11秒43のU20日本記録・高校記録の更新に据えているという御家瀬選手。次のレースは、インターハイに向けた予選大会となる札幌支部大会ということです。
御家瀬選手に続いたのは、そのU20日本記録・高校記録を持つ土井選手。11秒64とシーズンベストを再び上回ってのフィニッシュとなりました。「グランプリのこの大会に戻ってくることはできたけれど、負けてしまったのは悔しいのでまだまだ。次は勝てるように頑張りたい」と力強い言葉を残しました。11秒74で日本人3番手の4位となったのは市川選手。春先に熱が下がらない体調不良に陥っていたことで状態が懸念されましたが、予選(11秒91)からタイムを上げての結果に、回復傾向にある様子がうかがえました。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト