2019.02.01(金)その他

【Challenge to TOKYO 2020 日本陸連強化委員会~東京五輪ゴールド・プラン~】第4回 「ゴールドターゲット」に成長した競歩(3)

第4回 「ゴールドターゲット」に成長した競歩(2)』から



東京五輪で金メダルを取るために

──2017年のロンドン世界選手権50kmで荒井選手が銀メダルを獲得し、日本競歩界のターゲットはついに金メダルというレベルにまで来ました。

今村 私たちの時代は自己ベストを出しても優勝は無理で、「どうやって入賞しようか」というレベルで戦っていました。今は自己新を出せばメダル、金メダルのチャンスもあります。特に東京五輪を考えた場合、優勝記録は下がってくることが考えられます。そうなると、今やっている暑さ対策とかコンディショニングが非常にウエイトを占めるだろうと、私は思っています。速さより技術や暑熱馴化ですね。夏場は北海道の千歳で合宿することが多いのですが、そこからいつ移動して、調整期を経て本番を迎えるか。2年かけて対策を練っていく、非常に重要なポイントです。

杉田 ジャカルタのアジア大会50kmはかなりの酷暑条件でした。中国の選手も日本の選手もフラフラになりました。今までも本気でしたけど、あれを見た時、暑さ対策にワンランク上の本気度が求められていると思いました。それをこの前のフィードバック研修会でみんなにお伝えして、もう一歩踏み込んだ対策として「こういう視点と具体的取り組みが必要だよ」と提案させてもらいました。やはり試合に臨む前の暑熱馴化と、当日の早朝対策と、当日のレース中の暑さ対策、この3つが大事です。具体的には今後詰めていきます。

今村 この前の研修会では「科学リテラシー」という言葉がキーワードだったのですが、いろんな測定をする中で、どういうふうに自分に合ったデータを有効活用できる方法を見出せるか。「この選手はこれ」と個々に合った暑さ対策になってくると思うので、全体ではやってますけど、あとは取捨選択ですよね。好むと好まざるとに関わらず、これはチームとしてやらないといけない、ということも出てくると思います。そういった対策を、時間をかけて丁寧にやっていきたいと思っています。

谷井 私は発汗量が多いタイプなので、かなり給水しないと体重の減少率が高いのですが、逆に汗が出にくい選手もいますし、そこをどういうふうにカバーしていくのか、個々の暑熱対策に関わる部分だと思います。2019年の夏ぐらいまでに、しっかり東京に向けた対策を練習段階から取り入れて、オリンピック本番の時にはそれが自分の中で確立された状態になるように、練習でやっていかないといけないでしょうね。データに基づいた個々の意識が大切になります。

 

──そのあたりの意識は、選手の中でだいぶ高まっていますか。

谷井 皆が認識してきているので、あとはそれに対する対策を自分自身でしっかり把握して、早い段階でやっていく必要があると思います。

杉田 競歩は全員のデータを一緒に図表にして、みんなに配るんです。自分のものだけだと、他の人に比べて自分がどうなのかわからないからですね。誰一人としてそれを嫌がらず、それがいいなと私は思っています。私が印象に残っているのは、そうやってデータも含めて選手に話をした時に、「練習や試合の前に身体を冷やした方がいい」とレクチャーしたことがあるのです。そうしたら、谷井君は直前ではなく、ホテルから練習場に来る前に、ホテルのユニットバスで水風呂に浸かってから来るようになりました。

谷井 14年~15年頃ですね。

杉田 そうすると身体が冷えるので最初は動きづらいけど、発汗量が少なくて、楽に歩けるようになったと言ってくれました。暑さ対策というのはさっき言った対策も必要なんですけど、いい状態でいい練習を継続することも大事なので、彼は暑さの中でいい練習をするために水風呂をうまく活用してくれましたね。

谷井 レースの2ヵ月ほど前からやっていました。水風呂に入ると、アップしてスタートしても最初は身体が動かないんです。「動き始めてきたな」と感じるのが、だいたい20kmぐらい。ですから、ロングの時にはできるけど、スピードを上げる時は難しいなと思って、長い距離の時だけにしました。それをずっとやっていたら、水風呂に入らない時のスタート時の心拍数も低くなっていることに気づいて、北京世界選手権の時はレース前には入らず、レース前日とか散歩から帰ってきた時に入りました。結果的に、動き始めた時の心拍数をいかに低くするかを考えて、水風呂に入ってましたね。





 

50kmだけでなく20kmでもメダルを

──16年のリオ五輪は20kmでも松永大介選手(東洋大/現・富士通)が7位に入賞しましたが、20年は50kmだけでなく20kmでもメダルが欲しいですね。

麻場 もちろん、そうしたいです。ただ、メダルというのは結果論で、そこに向けてどういう戦略をもって歩んでいくかが一番大切です。ここまでの話を聞いても、今の競歩チームがいかに合理的な取り組みをしているのかわかりますし、これからどうしたらいいかもきちんと見据えている。それを1つひとつやっていくことが大事だと思いますね。

 

──以前の競歩は国内の大会で記録が出て、世界ランキングで上位者が出るけど、いざ世界大会に行くと戦えないという状況が見受けられました。50kmに関してはそこから脱却したと見ていいのですか。

今村 50kmの主要国際大会に向けた流れも、そこをチューンアップして現在があるんですね。20kmは3月に選考会が終わっていますので、それからその年の主要大会までの流れが良くなかったかな、というのが最近スタッフと話していることです。もう1回、合宿の周期を見直すべきなのかな、と。50kmは1年間を、輪島に向けたシーズンと、輪島が終わってから4ヵ月かけてその年の主要大会に合わせていくシーズンの2つに分けているのですが、20kmは1年という括りでやっていたのです。

 

──20kmの場合は何が違うのですか。 

今村 やっぱり速い動きですから、ヨーロッパのジャッジを受けた方がいいのかなと思って、国内のトラックレースだけでなく海外のレースに出て行きました。そこをもう一度見直そうと思います。あとは、20kmも暑さが対策の肝になってきますね。(ペースが)速くて歩型が崩れるというのが今までの定説ですけど、今度は遅くても上下動が出やすい状況なので、そこも「歩型を考えたペースのキャパシティを広げないといけないよね」という話をしています。

 11月の合宿では逆にゆっくりの練習を多くして、行きたいところを少し抑えながら歩く、というのもやり始めました。気温が高ければ当然ペースは落ちるので、落ちる中で今までと同じような身体の使い方をしていれば、上下動が出てきますから。

 

──女子はまだまだ人材が不足していますが、男子に続いてほしいですね。 

今村 目的が合えば、女子も一緒に合宿しています。女子は(練習の)距離もペースも男子と異なるので、専任のスタッフがうまく配置できるようであれば、ということになりますね。集めて練習するというのは本来の目的ではなくて、ちゃんと目的に合ったメンバーとか態勢がそろっていれば、です。どういう時期にどんなメンバーで合宿を配置するのかは、非常に重要です。

 

──年が明けて、ドーハ世界選手権の代表選考レースが本格化します。選手に求めることは何でしょうか。

今村 1月中の合宿は従来通り進めていく中で、最近は記録重視という面があるので、そこでも低速でしっかり身体を使えるような準備を心掛けつつ、いつでも速く歩けるということを忘れなければ大丈夫だと思います。03年から始まって、技術をいかに高めるかを意識してやってきていますので、原点回帰ですね。ただ、トップの選手が集まると、必然的に質が高くなります。特に50km組が非常に苦しい展開になって、設定よりかなり速くなってしまうので、「これ以上行ったら……」という時には私が抑えるか、練習を変えます。

谷井 目的に合わせたタイムの幅は持ってるんですけど、やっぱり一緒に練習することによって質が高まることはありますね。別に競争しているわけではないんですけど(笑)。

今村 「あくまで合宿中の練習や合宿そのものは手段であって、目的じゃないよ」という話はよくしています。私がお世話になったイタリアのコーチは、2月にハイパフォーマンスを出すことに懸念は見せていました。ピークは絶対に夏ですから。選考会も戦わないといけないのですが、大きな目標は夏に行われるオリンピックや世界選手権です。

 

──競歩はドーハ世界選手権でメダルを取った最上位の選手は東京五輪の代表に決まるわけですから、道筋がはっきりと見えてますね。

麻場 ドーハでは真夜中のスタートになりますが、過酷な気象条件が予測されます。代表になった選手はしっかりと準備をして、ぜひとも五輪代表切符を勝ち取ってもらいたいですね。


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