2018.11.29(木)その他

【Challenge to TOKYO 2020 日本陸連強化委員会~東京五輪ゴールド・プラン~】第2回 男子リレーの強化戦略(2)

第2回 男子リレーの強化戦略(1)」から
※この座談会の後、2019年のドーハ世界選手権ではワールドランキング制を取り入れないことを国際陸連が発表しました。
https://www.iaaf.org/news/press-release/revised-qualification-system-for-iaaf-world-a




リレー強化方針① 4継
東京での金メダルに向けて
2019年は「出場権獲得」が最低目標

――各種目の具体的な部分に入っていきたいと思います。まずは4継について今季の振り返りと、それを受けての今後の強化方針をお聞かせください。

土江 今シーズンは総じて、非常に良かったと思います。まず、シーズンに向けてのところで、これまでやってきたリレーの合宿をやめました。それぞれが個人の計画を持って、それぞれのやり方で競技を進めていくなかで、合宿で集めることによって、個人の流れを1度切るような部分がどうしてもありました。それぞれがしっかりとした環境の中でやっているので、個人の取り組みを尊重したということが1つあります。

そうなってくると、バトンパスの練習をする機会がなくなってくるので、個人を優先しつつリレーの試合に出て、そこでバトンパスの成熟度を上げていくという狙いでやりました。その結果、GGP大阪でも、DLロンドンでも良い結果が出ましたし、最終的にアジア大会の金メダル獲得につながったので、本当に目論見通りできたかな、と。記録でドーハ世界選手権の出場権を手中に収めておきたい、というところも狙い通り。計画としては完璧だったかな、と思っています。

山崎 以前から「合宿をすれば強くなる」という神話があるんですけど、それは断ち切ってほしいとかねてから言っていたのですが、その通りにやってくれたのが土江コーチ。バトン練習は最低限やらないといけないのですが、実戦に向けて短い期間で集中して練習していくという計画を立ててくれました。まず個人の走力をアップする、そしてバトンパスという組織的なものを高める、その両方をマッチできたのではないかと思います。

もちろん、DLロンドンで英国には走力で完全にやられたことで、東京五輪で金メダルを取るためには、4人全員が100m9秒台でいくくらいの個人の力が必要と選手たちもわかったでしょう。選手自身の動機付けもできて、やることが明確になってきた。いい流れになったのではないかと思っています。


――英国は昨年のロンドン世界選手権を国別世界歴代3位の37秒47で制し、今年のDLロンドンも37秒61で圧勝。その強さは今、際立っています。

高平 英国が強いのは以前から言えることですし、ジュニアからの流れもうまくやっている国の1つ。その上で、自分たちの強さを発揮できる自信を、リレーに対しても持ち込めてるなという印象があります。対して日本は、ある程度方針にのっとった上で結果が出たとは思うのですが、細かいことで言えば、37秒台はまだ同じメンバーでしか出ていません。誰が出ても(同じ力を出せる)、ということは達成しきってないと思うんですね。そこに関しては、英国のほうがやや上かなと感じています。



山崎 英国は、アテネ五輪で4継の金メダルを取って、その〝うまみ〟を知っています。100mの金メダルはなかなか取れないので、リレーに注力する。そして、ロンドン世界選手権でもうまくいきました。

土江 個人の結果も伴ってきていますね。DLロンドンで担当コーチと知り合いになれて、今後もコミュニケーションを取っていきましょうという話になったのですが、やり方は日本とすごく似ています。個人でしっかり強化するんですけど、集まってやるところはきちんとチームワークを大事にしてやっていく、と。似ているだけでなく、見習う部分も非常に大きいなと思っています。


――日本も選手層は上がっていると思います。

土江 これは僕の責任かもしれないんですが、「この選手は何走」と固定化しすぎている部分があります。代表を組んでいったときに似たようなメンバーになってくると、走順のバリエーションにチャレンジングなことをするのはなかなか度胸のいる話なんですよね。それを、どこかでテストしていかなくてはいけないとは思うのですが……。ただ、選手層は実際に厚くなっているわけで、多田選手(修平/関学大)、サニブラウン選手(アブデル・ハキーム/フロリダ大)らも当然、主力として走らないといけないし、経験を積ませなくてはいけない選手。どこかで必ず走ってもらわなくてはいけないと思っています。


――今年の結果を踏まえて、今後の強化プランはどこまで固まっていますか?

土江 基本的に冬の過ごし方は今年と同じです。それぞれの強化選手が計画したやり方で、しっかりとやっていただくということ。来年は、世界リレーに向けてしっかり準備をしていきます。アジア選手権は、4継は組まずに、ワールドランキング制における個人のポイント稼ぎにしっかり注力してもらいます。世界リレー後は、基本的にはまた個人でしっかりと。7月のDLロンドンでは来年も4継が実施される見通しとのことなので、そこで実戦的なバトン練習をして帰ってくる、そういう流れでいきたいと思っています。

そして一番の目的は、当然個人もあるのですが、ドーハできちんと東京五輪の出場権を獲得すること。2020年にあわてて記録を狙いにいくという課題が残らないようにしたいですね。「今年が良かった」のは来年につながっているというだけで、2020年にはまだ届いていないんですよ。だから、余裕があるという感覚はありません。来年の世界リレー、DLロンドンで37秒台をポンポンと出しておいて、心理的に余裕のある状態でドーハに行けるというのがベストかなと思っています。

もう1つ、スタンスとして気をつけていることは、基本的には各選手のパーソナルコーチとコミュニケーションをとっていくということです。どうしても、我々強化が上にいて、下に伝えるというイメージができてしまうのですが、そうではなくて、我々はあくまでも〝コーディネーター〟。パーソナルコーチと同じ机に並んで密に連携を取り、リレーの重要性などは共有しつつ、選手が世界の大会で戦えるように、そのための環境を整備することが我々の役目だと思っています。


――高平さん、東京までの2年で、選手としては何が大切になるでしょうか。

高平 先ほども話に出たように、「金メダル」を明確にターゲット化していくべきだと思います。今の日本の4継は、「こういう状況になったから、やっぱりメダル圏内でいいや」ということにはならないと、僕は思うんです。金を目指して、その結果として銀や銅なのは仕方ない、というレベルに間違いなくきていると思っています。土江さんがおっしゃったように環境作り、それぞれの指導者との密な連携も大事ですが、結局、それも選手にとっては伝言ゲームになってしまいかねません。銀や銅メダルを取っているメンバーしか現実感がない、という点も正直あるのです。だから、選手間の温度差が生まれないようにしなければ絶対にいけないと思います。土江さんの手前で大変申し訳ないのですが、僕は、アテネ五輪の時にそう思えていなかった。日本チームが「メダルを狙う」というのがリアルなんだろうか、って感じる場面が……。

60年に1回しかない東京五輪で花を咲かせるためには、若い選手、新しい選手が入ってくることも想定しつつ、誰が入っても、どのようなかたちになっても「金を目指すぞ」というチームになれるかどうかが最終的に問題だと思います。それは強化委員会の方々をはじめスタッフだけでなく、選手を含む〝チームジャパン〟全員がそこに向かうために取り組むべきことだと思います。


――今後、メンバーはある程度絞る方向でしょうか。それとも門戸を広げるのでしょうか。

土江 広げるタイミングではもうないのかなと思っています。当然、(急成長で)出てきた選手を排除することはありえないですが。今いる主力メンバーは7、8人といった感じで、いわゆる経験値の高い選手はまず個人に注力をしてほしい。さらに、若い選手もいるので、そういった選手の様子も見ながら強化をしていく必要があると思っています。出てきた選手に関しては、どこかでチャンスを与えなくてはならないし、当然、東京だけを考えていてはダメ。2024年のパリ、2028年のロサンゼルス五輪も見据え、次の世代にどうやって重ね、つなげていくかも考える必要があります。そういった〝伝統〟があったからこそ、今があるので。つなげる作業は絶対に怠ってはいけないと思っています。


――4継の項の締めくくりとしてはいかがでしょうか。

山崎 例えば、海外勢が今の日本のような短い練習期間でやっても、バトンパスはうまくいかないと思うんです。日本はやはり、中学、高校でリレーの教育をきちんとしてくれているので、オーバーハンドだろうとアンダーハンドだろうとクオリティが高い。日本のリレーは本当に中学、高校のお陰で成り立ってるな、と。とても感謝しています。

麻場 今、プロセスを非常に明確にしてくれています。私の立場としてはそれを、どうやって気持ち良く実現してもらうか、なのです。構想していることがきちんと進むようにしていきたいと思っています。


第2回 男子リレーの強化戦略(3)」に続く…


写真提供:フォート・キシモト

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