今年から再編成された日本グランプリシリーズで、グランプリ鳥取大会に位置づけられた布勢スプリントが6月3日、コカ・コーラ ボトラーズジャパンスポーツパーク(鳥取県立布勢総合運動公園)で開催されました。この大会は、直線のスプリント種目を中心とした競技会。風の条件がよく、「記録の出る大会」として知られています。男女100mと男子110mH、女子100mHの4種目が、グランプリ種目として行われました。
■男子100mで今季日本最高が誕生! レースは山縣選手が制す
男子100mは、海外でトレーニング中の日本記録保持者、桐生祥秀選手(日本生命)を除くリスト上位者がエントリー。昨年もこの大会で好記録が続出したこともあって、“日本選手権前哨戦”として注目を集めました。
4組1着+12の条件で行われた予選では、1組目に登場したケンブリッジ飛鳥選手(Nike)が、今季日本最高となる10秒12(+0.9)をマーク。3組目では山縣亮太選手(セイコー)も同じく10秒12(+0.7)をたたき出しました。飯塚翔太選手(ミズノ)や多田修平選手(関西学院大)も1着で通過して行われた決勝では、山縣選手がスタート直後にややもたつきを見せたものの、中盤に差しかかる前にはトップに立つと、そのまま他を寄せつけることなくフィニッシュ。0.7mの向かい風のなか、予選と同じ10秒12で優勝を果たしました。
熾烈となったのは2位争い。中盤過ぎで2番手にいたケンブリッジ選手を飯塚選手が激しく追い込む形で2人が並んでフィニッシュ。同タイムの10秒21ながら着差ありで、飯塚選手が2位、ケンブリッジ選手が3位となりました。また、10秒24で上位3選手に続いたのは、織田記念で10秒20をマークしている小池祐貴選手(ANA)。注目選手の1人だった多田選手は、10秒40で7位にとどまりました。
ケンブリッジ選手と山縣選手がマークした10秒12は、アジア大会代表選考の資格記録において「東京オリンピックターゲット記録(スタンダード)」に据えられている記録。これにより、日本選手権3位内で最上位者となれば、その時点で代表に内定します。
春先に行われた日本GPシリーズとGGPをすべてライバルたちに先着。さらに内定に必要な資格記録も突破して、大きなアドバンテージを得た山縣選手は、「100点のレースじゃないなりに、まあまあの形でまとまってくれた。内容は少しずつだけどよくなっている。向かい風のなかシーズンベストだし、評価していいのかなと思う」と好感触を得た様子。激戦必至の日本選手権に向けて、「今日手応えをつかんだスタートの安定を、いつでも出せるように繰り返し練習したい。また、身体づくりが途中なので、ベストの状態をつくっていきたい。日本選手権では少しでも内容がよくなれば、10秒0台は出すチャンスがある。そこを目指しながら、それ以上の記録を期待したい」と本番を見据えました。
2位に食い込んだ飯塚選手は、「100mを走るのは1年ぶり。200mとは違ったレース展開を、いいメンバーとできてよかった」と、声を弾ませつつ振り返りました。また、終盤に強いケンブリッジ選手に、その終盤で競り勝ったことは自信となった様子。日本選手権は200mに絞る意向であることを明かし、「今までにない好感触がある。日本選手権ではベスト(20秒11)を切るつもりで行く」と頼もしい言葉を聞かせてくれました。ケンブリッジ選手は、「予選のほうが流れはよかった」と反省しつつも、「状態は確実によくなってきている」と上り調子にある様子。「今季はまだ1回も勝てていないが、日本選手権ではしっかり勝てるようにしたい」と話しました。
一方、「納得のいく走りが全然できていない」と振り返ったのは7位にとどまった多田選手。「スタートから中盤の加速が一切ない。自分はそこで勝負するタイプなのに、武器がない状態になっている」と反省し、「バネがないと感じているので、その部分を鍛えていきたい」と課題を掲げました。今後は、昨年、追い風参考(+4.5)ながら9秒94をマークした日本学生個人選手権を経て、日本選手権に挑む予定です。
■女子100mは市川選手が自己タイでV 男女ハードルは今季日本最高記録
追い風1.8mという好条件下で行われた女子100mは、市川華菜選手(ミズノ)が先行するオクケラ・マイリー選手(ジャマイカ)を終盤でとらえて、同時にフィニッシュ。同タイム着差なしで優勝を分け合いました。優勝記録の11秒43は、市川選手にとって、自身3度目の自己タイ記録。今年になって一度も勝てていなかった福島千里選手(セイコー、3位・11秒46)にも勝利しました。
昨年も出場し、第1レースで11秒43(+1.1)をマークすると、第2レース(決勝)では11秒38(+2.1)で優勝。この好成績を弾みに日本選手権100m・200m2冠を達成しています。昨年と同様の上昇カーブを描きそうな結果に、「この大会はタイムが出ると感じていたし、去年もこの大会がきっかけになったので、ここで自己ベストを出して、日本選手権のイメージをつくりたいと思っていた。また、アジア大会のことを考えると、アジアメダル期待記録の11秒45はどうしても切りたかった。“ああ、よかった”と思う」と、心からほっとした表情を見せました。
今季はなかなか思い通りのレースができなかったといいますが、「でも、そのぶん1回1回のレースがすごく刺激になった」と市川選手。そこで見つけた課題を1つずつクリアしていくことで、「ようやく噛み合ってきた」状態で大会を迎えていました。決勝は、スタートで力みが出てやや出遅れたものの、「そのぶん、後半が伸びた」とコメント。その要因に、マイリー選手と競り合った予選を挙げ、「予選で、競り合ういいレースをできていたことが、よかったんじゃないかと思う」と分析しました。
日本選手権は、ディフェンディングチャンピオンとして迎えることになりますが、メディアから抱負を求められると、「でも、福島さんは強い。自分はいつまでもチャレンジャーの気持ちで向かいたい」と答えていました。
なお、この日の決勝では、4位でフィニッシュした世古和選手(クレイン)も11秒50の自己新記録をマークしています。
男子110mHでは、今季好調の金井大旺選手(福井県スポ協会)が、自己新記録で今季日本最高となる13秒52(+0.5)で制しました。しかし、金井選手当人は「少なくとも13秒4台は出そうと思っていたので、正直悔しい」と不満が残った様子。初優勝を期す日本選手権に向けて「経験値の多い選手は、記録が出ていなくてもピークを合わせてくる。負けないようにしっかり集中して走りたい」と話していました。また、女子100mHも、紫村仁美選手(東邦銀行)が今季日本最高の13秒18(+0.6)で優勝。「徐々に調子が上がってきている感覚がある。日本選手権では12秒台目指して頑張りたい」と意欲を見せていました。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト
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