国際陸連(IAAF)ワールドチャレンジ第2戦「セイコーゴールデングランプリ2018大阪」が、5月20日に開催される。舞台は昨年までの等々力競技場(神奈川県川崎市)から移し、2010年まで同大会の前身「国際グランプリ陸上大阪」が行われていた日本屈指の高速トラック・ヤンマースタジアム長居(大阪市)。男子11種目・女子8種目に加え、IAAFハンマー・スロー・チャレンジ(男子)も実施。さらには男子4×100mリレーをはじめとするオープン種目も設けられ、五輪や世界選手権のメダリストが多数参戦予定だ。
その〝世界〟に挑む日本勢ももちろん、各種目にトップ選手がエントリー。日本選手権、アジア大会を前に、シーズン序盤のビッグイベントに照準を合わせている。浪速の街を沸かせるビッグパフォーマンスがいくつ生まれるだろうか――。
(月刊陸上競技6月号より/一部加筆・修正)
男子のフィールド種目の日本勢で、もっとも注目すべきは走高跳の戸邉直人(つくばツインピークス)だ。4月22日の筑波大競技会で2m30、静岡国際は2m28で優勝と、久しぶりに存在感を示している。また、筑波大競技会では日本記録を1cm上回る2m34、静岡国際では自己記録よりも1cm高い2m32に挑戦し、いずれも惜しいジャンプを見せていた。3月の世界室内選手権6位の王宇(中国)、4月の英連邦大会覇者のブランドン・スターク(豪州)が相手でも、今の戸邉なら遜色はない。再び、日本新記録にチャレンジする場面を作ってほしい。
昨年、2度2m30をクリアするなど国内でほぼ負けなしだった衛藤昂(味の素AGF)は、昨年秋から踏み切り脚の膝を痛め、2月まで跳躍練習がほとんどできなかったという。静岡国際がロンドン世界選手権以来となる全助走での跳躍で、しかもこれまで11歩だった助走を9歩に減らす試みをしていることもあり、2m20にとどまった。競技場の広さに合わせて助走距離を変えられるよう試行錯誤中だが、5月12日の中部実業団対抗陸上では2m28(大会新)に成功。徐々に記録を狙う状態に仕上がりつつある。
海外勢では、やり投が非常に豪華なメンバーとなった。ロンドン世界選手権で銀、銅メダルを獲得したチェコのヤクブ・ヴァドレイヒとペトル・フリドリッヒが参戦。そして、昨年の台北ユニバーシアードで91m36のアジア新記録を打ち立てた鄭兆村と、86m64を持つ黄士峰の台湾コンビも出場する。スタジアムレコードは、2007年大阪世界選手権でテロ・ピトカマキ(フィンランド)がマークした90m33。5月4日のIAAFダイヤモンドリーグ・ドーハ大会では90m台を3人が記録するなど、近年、大台の「90mスロー」が次々と生まれている中、長居の空に再び大アーチが描かれるだろうか。日本の第一人者・新井涼平(スズキ浜松AC)にもその流れに乗ってほしいが、昨年3月に痛めた頸椎の回復が長引き、今季に向けての本格的な投てき練習は3月末からという状況。まずは80m台に乗せて、感覚を取り戻す作業が先決だろう。
日本のトップ3、澤野大地(富士通)、山本聖途(トヨタ自動車)、荻田大樹(ミズノ)に、江島雅紀(日大)がエントリーした棒高跳は、リオ五輪6位、ロンドン世界選手権4位の実績を誇る薛長鋭(中国)との夏のアジア大会を占う勝負が焦点。織田記念は荻田が5m50で制し、澤野と山本は5m40で2位、3位。江島は棄権と、出足はやや低調。精力的に冬季練習をこなした山本が、膝の痛みを回復させることを優先した荻田、日大教員として授業やコーチにも忙しい澤野よりもコンディションは上と見られ、世界の入賞者と競り合う高さまでバーを上げてほしい。
昨年、学生を中心に8mジャンパーが続出した走幅跳は、5月6日時点では日本選手権覇者の橋岡優輝(日大)と、日本インカレを18年日本ランク1位となる8m09で制した津波響樹(東洋大)の2人と、今春に日大を卒業した山川夏輝(東武トップツアーズ)と小田大樹(ヤマダ電機)がエントリー。ロンドン世界選手権銀メダルのジャリオン・ローソン(米国)、同5位の石雨豪と16年世界室内銅メダリスト・黄常洲の中国コンビを相手に、どこまで食い下がれるか。
砲丸投は16年世界室内銀メダルのアンドレイ・ガグ(ルーマニア)、21m35の自己ベストを持つダミアン・バーキンヘッド(豪州)らの20m前後の試技の中で、畑瀨聡(群馬綜合ガードシステム)、中村太地(チームミズノ)、山元隼(フクビ化学)は、早い段階で18m台に乗せていくことが大切。オープン種目の三段跳は、昨年のロンドン世界選手権代表・山本凌雅(JAL)を中心に16m台後半のジャンプがいくつ生まれていくかで、「17m」の大台が見えてくる。
男子ハンマー投はIAAFハンマー・スロー・チャレンジとして実施されることもあって、世界の一線級がずらりと顔をそろえた。世界選手権3連覇中のパウェル・ファイデク(ポーランド)、リオ五輪金メダルのディルショド・ナザロフ(タジキスタン)、世界大会3年連続(15~17年)銅メダルのボイチェフ・ノヴィツキ(ポーランド)らが、80mラインを越える大迫力の投てきを見せてほしい。日本勢にはその中でひるまず、70mラインをどれだけ越えていけるかが焦点になるだろう。
女子のフィールドは2種目のみだが、やり投は男子同様に豪華メンバーだ。15年北京世界選手権金メダルのカトリナ・モリトア(ドイツ)、ロンドン世界選手権銅メダリスト・呂會會と8位・劉詩穎の中国コンビがどんなアーチ合戦を繰り広げるかは、今大会のハイライトの1つ。特に中国勢は北京世界選手権で呂會會が銀メダルを獲得した時に作ったアジア記録(66m13)を、劉詩穎が前回大会で66m47に更新。それを呂會會がロンドン世界選手権(予選)で67m59に再度塗り替えるなど、激しいつばぜり合いを演じながら「世界一」に近づいている。
対する日本勢は斉藤真理菜(スズキ浜松AC)、宮下梨沙(大体大TC)、北口榛花(日大)が前回大会に続いて出場。織田記念は3人が上位を占め、斉藤が59m60で制して社会人ルーキーとして好スタートを切った。昨年8月のユニバーシアードで出した学生記録62m37の自己ベストはもとより、引退したチームの先輩・海老原有希が持つ日本記録(63m80)に迫るような投てきが見せられるか。宮下、北口も冬季に海外で合宿をするなど経験を積み、宮下59m12、北口58m62と出足は上々だ。
棒高跳も、仁川アジア大会女王の李玲(中国)ら4m60以上のボウルターがずらり。日本勢は少しでも同じ高さの試技ができるよう、バーを上げていきたいところだ。
その〝世界〟に挑む日本勢ももちろん、各種目にトップ選手がエントリー。日本選手権、アジア大会を前に、シーズン序盤のビッグイベントに照準を合わせている。浪速の街を沸かせるビッグパフォーマンスがいくつ生まれるだろうか――。
(月刊陸上競技6月号より/一部加筆・修正)
男子フィールド
戸邉に日本新ジャンプの期待
豪華メンバーのやり投は90mアーチなるか
男子のフィールド種目の日本勢で、もっとも注目すべきは走高跳の戸邉直人(つくばツインピークス)だ。4月22日の筑波大競技会で2m30、静岡国際は2m28で優勝と、久しぶりに存在感を示している。また、筑波大競技会では日本記録を1cm上回る2m34、静岡国際では自己記録よりも1cm高い2m32に挑戦し、いずれも惜しいジャンプを見せていた。3月の世界室内選手権6位の王宇(中国)、4月の英連邦大会覇者のブランドン・スターク(豪州)が相手でも、今の戸邉なら遜色はない。再び、日本新記録にチャレンジする場面を作ってほしい。
昨年、2度2m30をクリアするなど国内でほぼ負けなしだった衛藤昂(味の素AGF)は、昨年秋から踏み切り脚の膝を痛め、2月まで跳躍練習がほとんどできなかったという。静岡国際がロンドン世界選手権以来となる全助走での跳躍で、しかもこれまで11歩だった助走を9歩に減らす試みをしていることもあり、2m20にとどまった。競技場の広さに合わせて助走距離を変えられるよう試行錯誤中だが、5月12日の中部実業団対抗陸上では2m28(大会新)に成功。徐々に記録を狙う状態に仕上がりつつある。
海外勢では、やり投が非常に豪華なメンバーとなった。ロンドン世界選手権で銀、銅メダルを獲得したチェコのヤクブ・ヴァドレイヒとペトル・フリドリッヒが参戦。そして、昨年の台北ユニバーシアードで91m36のアジア新記録を打ち立てた鄭兆村と、86m64を持つ黄士峰の台湾コンビも出場する。スタジアムレコードは、2007年大阪世界選手権でテロ・ピトカマキ(フィンランド)がマークした90m33。5月4日のIAAFダイヤモンドリーグ・ドーハ大会では90m台を3人が記録するなど、近年、大台の「90mスロー」が次々と生まれている中、長居の空に再び大アーチが描かれるだろうか。日本の第一人者・新井涼平(スズキ浜松AC)にもその流れに乗ってほしいが、昨年3月に痛めた頸椎の回復が長引き、今季に向けての本格的な投てき練習は3月末からという状況。まずは80m台に乗せて、感覚を取り戻す作業が先決だろう。
日本のトップ3、澤野大地(富士通)、山本聖途(トヨタ自動車)、荻田大樹(ミズノ)に、江島雅紀(日大)がエントリーした棒高跳は、リオ五輪6位、ロンドン世界選手権4位の実績を誇る薛長鋭(中国)との夏のアジア大会を占う勝負が焦点。織田記念は荻田が5m50で制し、澤野と山本は5m40で2位、3位。江島は棄権と、出足はやや低調。精力的に冬季練習をこなした山本が、膝の痛みを回復させることを優先した荻田、日大教員として授業やコーチにも忙しい澤野よりもコンディションは上と見られ、世界の入賞者と競り合う高さまでバーを上げてほしい。
昨年、学生を中心に8mジャンパーが続出した走幅跳は、5月6日時点では日本選手権覇者の橋岡優輝(日大)と、日本インカレを18年日本ランク1位となる8m09で制した津波響樹(東洋大)の2人と、今春に日大を卒業した山川夏輝(東武トップツアーズ)と小田大樹(ヤマダ電機)がエントリー。ロンドン世界選手権銀メダルのジャリオン・ローソン(米国)、同5位の石雨豪と16年世界室内銅メダリスト・黄常洲の中国コンビを相手に、どこまで食い下がれるか。
砲丸投は16年世界室内銀メダルのアンドレイ・ガグ(ルーマニア)、21m35の自己ベストを持つダミアン・バーキンヘッド(豪州)らの20m前後の試技の中で、畑瀨聡(群馬綜合ガードシステム)、中村太地(チームミズノ)、山元隼(フクビ化学)は、早い段階で18m台に乗せていくことが大切。オープン種目の三段跳は、昨年のロンドン世界選手権代表・山本凌雅(JAL)を中心に16m台後半のジャンプがいくつ生まれていくかで、「17m」の大台が見えてくる。
男子ハンマー投はIAAFハンマー・スロー・チャレンジとして実施されることもあって、世界の一線級がずらりと顔をそろえた。世界選手権3連覇中のパウェル・ファイデク(ポーランド)、リオ五輪金メダルのディルショド・ナザロフ(タジキスタン)、世界大会3年連続(15~17年)銅メダルのボイチェフ・ノヴィツキ(ポーランド)らが、80mラインを越える大迫力の投てきを見せてほしい。日本勢にはその中でひるまず、70mラインをどれだけ越えていけるかが焦点になるだろう。
女子フィールド
中国コンビの投げ合いと
斉藤の日本新なるかに注目
女子のフィールドは2種目のみだが、やり投は男子同様に豪華メンバーだ。15年北京世界選手権金メダルのカトリナ・モリトア(ドイツ)、ロンドン世界選手権銅メダリスト・呂會會と8位・劉詩穎の中国コンビがどんなアーチ合戦を繰り広げるかは、今大会のハイライトの1つ。特に中国勢は北京世界選手権で呂會會が銀メダルを獲得した時に作ったアジア記録(66m13)を、劉詩穎が前回大会で66m47に更新。それを呂會會がロンドン世界選手権(予選)で67m59に再度塗り替えるなど、激しいつばぜり合いを演じながら「世界一」に近づいている。
対する日本勢は斉藤真理菜(スズキ浜松AC)、宮下梨沙(大体大TC)、北口榛花(日大)が前回大会に続いて出場。織田記念は3人が上位を占め、斉藤が59m60で制して社会人ルーキーとして好スタートを切った。昨年8月のユニバーシアードで出した学生記録62m37の自己ベストはもとより、引退したチームの先輩・海老原有希が持つ日本記録(63m80)に迫るような投てきが見せられるか。宮下、北口も冬季に海外で合宿をするなど経験を積み、宮下59m12、北口58m62と出足は上々だ。
棒高跳も、仁川アジア大会女王の李玲(中国)ら4m60以上のボウルターがずらり。日本勢は少しでも同じ高さの試技ができるよう、バーを上げていきたいところだ。
チケット販売は4月1日にスタート。ゴール付近のグラウンドレベルに設けられた100席のみの限定シート「セイコープレミアムシート」のみ3月26日に先行販売されたが、受付開始わずか2分で完売。メインスタンドのゴール付近「SS席」も前売りが完売となるなど、観客動員も好調の様子。日本屈指の高速トラックで繰り広げられる濃密なワン・デイ・ミーティングを、トラック編、フィールド編に分けて展望する。
vol.1 トラック編/vol.2 フィールド編/vol.3 総論
vol.1 トラック編/vol.2 フィールド編/vol.3 総論
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