国際陸上競技連盟(IAAF)が主催するワールドチャレンジ第2戦、「セイコーゴールデングランプリ陸上2018大阪」が5月20日、大阪市のヤンマースタジアム長居において開催されました。
快晴となった当日は、気温21~23℃前後で40%を切る湿度と、やや風があったものの、さわやかな天候に。男子11種目、女子8種目のIAAFワールドチャレンジ種目に加えて、男子ハンマー投がIAAFハンマースロー・チャレンジ種目として実施されたほか、男女リレーを含む6種目とパラリンピック種目がオープンで行われ、国内外のトップ選手が集結しました。
来場した1万7000人を超えるファンを最も魅了したのは、オープン種目として行われた男子4×100mR。リオ五輪銀メダル獲得メンバーの山縣亮太選手(セイコー)、飯塚翔太選手(ミズノ)、桐生祥秀選手(日本生命)、ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)が再びチームを組んで出場し、今季世界最高記録となる37秒85の大会新記録で快勝しました。
このほか、女子やり投で劉詩穎選手(中国)が今季世界2位となる67m12(自身のアジア歴代2位を更新)をマークして昨年自身が樹立した大会記録(当時、アジア記録)を塗り替えたほか、女子800m、女子棒高跳でも大会新記録が誕生。男子砲丸投では、中村太地選手(チームミズノ)が18m85の日本新記録を樹立しました。
ここでは、日本選手の活躍を中心に、大会の模様をレポートします。
日本の男子4×100mRは、2020年東京五輪での金メダル獲得を実現するために、ナショナルチームとしてリレーの実戦を重ねていくなかで精度を高めていくことを、強化施策の1つとして掲げています(http://www.jaaf.or.jp/news/article/11547/ 参照)。その最初の試みの場となったのが、今回のゴールデングランプリ(以下、GGP)。オープン種目として4×100mRを設定、AとBの2つのナショナルチームを組んで、出場することになりました。
Aチームは、2016年リオ五輪で銀メダルを獲得した山縣亮太選手(セイコー)、飯塚翔太選手(ミズノ)、桐生祥秀選手(日本生命)、ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)が、当時と同じ走順でメンバーを組むことに。
また、Bチームは、2017年ロンドン世界選手権で銅メダルを獲得した多田修平選手(関西学院大)と藤光謙司選手(ゼンリン)が世界選手権同様に1・4走を担当、2・3走には今季日本GPシリーズで好走している原翔太選手(スズキ浜松AC)と小池祐貴選手(ANA)が入るオーダーとなりました。
さらに、U20世代でもナショナルチームが編成され、ダイヤモンドアスリートの塚本ジャスティン惇平選手(城西大城西高)と宮本大輔選手(東洋大)を1・2走に配し、3走を高木悠圭選手(東海大翔洋高)、4走を水久保漱至選手(城西大)が務めるオーダーが組まれました。
外国勢は、当初予定されていた3チームのうち、ナショナルチームの来日が実現した中国と、GGPに出場した米国選手でオーダーを組んだUSAオールスターズが出場。中国は、準エース格の謝震業選手が200mに専念(20秒16の中国新記録で2位)したため、大エースの蘇炳添選手を1走に置き、以下、梁勁生選手、別舸選手、許周政選手と、記録的にやや劣る若手がつなぐオーダーに。
一方、急造ながら豪華メンバーが揃ったUSAオールスターズは、やはり1走に大エースのジャスティン・ガトリン選手(2017世界選手権100m優勝)が入り、アイザイア・ヤング選手(同200m8位、100m9秒97)、ブランドン・カーネズ選手(100m10秒06)、ジャリオン・ローソン選手(2017年世界選手権走幅跳2位、100m10秒03)の走順です。
日本Aは7レーン、中国が6レーン、USAオールスターズが5レーン、日本Bが4レーンに入り、日本U20が3レーンに、さらに関西学院大(2レーン)と中央大(9レーン)が参加し、全7チームでのレースが大会最終種目として行われました。
スタート直後から日本Aの山縣選手は、内側のレーンにいる蘇選手、ガトリン選手を寄せつけず、むしろ差を広げようかという勢いでコーナーを抜けて、2走の飯塚選手へバトンパス。
春先の故障の影響でこの大会の200mが今季初戦だった飯塚選手は、200mは終盤で失速し8位(20秒75)にとどまっていましたが、リレーでは本来の伸びやかな走りを披露して2番手の中国との差を広げました。
そのリードは3走の桐生選手で盤石のものとなり、アンカーのケンブリッジ選手もバトンパスこそやや詰まり気味だったものの、持ち前の後半の強さで後続との差を広げ、37秒85の好記録でフィニッシュラインを駆け抜けました。
38秒64をマークして2位に食い込んだのは日本B。1走の多田選手が、外側のレーンの走るガトリン選手との差を明らかに縮める好走でバトンをつなぐと、2走の原選手でUSAオールスターズを逆転、さらに3走の小池選手が2番手を行く中国を追い上げ、藤光選手にバトンが渡ったところで2位に浮上し、そのまま逃げ切りました。
3位の中国は38秒72で続き、4位はUSAオールスターズで38秒98、日本U20が5位・39秒44で、それぞれフィニッシュしました。
日本Aがマークした37秒85は今季世界最高記録。リオ五輪の決勝と予選でこのメンバーがマークした37秒60、37秒68に続き日本歴代3位となる好記録です。また、2007年にこの会場で行われた大阪世界選手権決勝で当時の日本チーム(塚原直貴、末續慎吾、高平慎士、朝原宣治)がマークした38秒03(2016年リオ五輪まで日本記録)をあっさりと上回って、国内日本最高記録を37秒台へと引き上げました。
ミックスゾーンでガトリン選手と蘇選手が1走を務めることを知ったときの心境を問われ、「なんで1走に来るんだよと思った」と苦笑いした山縣選手。しかし、レースに向けては、「もともと個人(種目)ではあまり意気込まない」タイプにもかかわらず、「リレーはちょっと気持ちに高まるものもあって、そこは自分の力を見せるところかなと意気込んでいった」と振り返りました。走り自体は日本人トップとなった100m同様に「前半からしっかり出していく」ことを意識。「それがいい形で飯塚さんにつながったかなと思う」と、笑顔を見せていました。
3月の海外合宿時に生じた故障の影響で静岡国際200mを欠場し、この大会が復帰レースでもあった飯塚選手は、「やっとここまで戻ってきた」とほっとした表情を見せながらも、「200mよりも、リレーのほうがよく走れた。1本ごとによくなってきている。ここからいい流れができる」と手応えをつかめた様子。
「練習をやっていないなかで37秒8台が出たということで、まだまだ日本記録を更新できるなということをケンブリッジさんとも話した」と言ったのは桐生選手。「接戦だったら、もっと走れるという感じはあった」と振り返り、「世界大会になれば、(メンバー)全員がもっとタイムを上げると思う」と自信を見せました。
ケンブリッジ選手は、「(100mよりも)リレーのほうが走り自体はよかった。それを次のレースにしっかり表していけば、もっといいタイムで走れるんじゃないかと思う」と振り返り、自身の調子を高めていく上でも、よいきっかけとなった様子を伺わせました。
さらに、ケンブリッジ選手は、レース前にメンバー間で「37秒台を出したい」と話していたことを明かし、「どこまでリオのタイムに近づけるかというのを話していたし、たくさんの人が見に来てくれていたので、それに応えたいという気持ちもあった。そのなかで、ああいういいレースができて本当によかったと思う」と話しました。
また、メディアから出た「このメンバーでリレーを組むと相乗効果があるのでは?」という問いに賛同し、「頼もしいし、リレーを組んで、一緒に走るのがすごく楽しい。今日は(リレーの前に)100mもあって、(準備する時間も)短かったが、いい雰囲気でレースに挑めるそのチームワークはすごく大きいと今日改めて感じた。それがこのチームのよさだと思う」と、笑顔で答えていたことが印象的でした。
この大会では、男子4×100mRが最終種目として行われたため、ワールドチャレンジ種目とリレーの両方に出場する選手たちの負担を考慮し、男子200mがリレーの1時間39分前に、また、“メインイベント”的な扱いで最終種目になることの多い男子100mもリレーの1時間30分前に実施するというタイムテーブルが組まれました。
ファンの関心が高かったのは男子100m。日本からは桐生祥秀選手(日本生命)、山縣亮太選手(セイコー)、多田修平選手(関西学院大)、ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)、宮本大輔選手(東洋大)の5名が出場。日本選手間の勝負だけでなく、2017年世界選手権金・2016年五輪銀のジャスティン・ガトリン選手(米国)に、どんなレースを挑むのか期待が集まりました。
3レーンにガトリン選手、4レーンに桐生選手、5レーンに山縣選手、6レーンに多田選手、7レーンにケンブリッジ選手が入って、レースは一発でスタート。立ち上がりの段階からガトリン選手がリードを奪い、日本勢は、桐生選手が山縣選手にやや先行し、これに多田選手が続く形でガトリン選手を追う展開となりました。
しかし、60m付近で山縣選手が桐生選手を逆転、そのあたりから8レーンに入っていたアイザイア・ヤング選手(米国)とケンブリッジ選手が多田選手をかわして上位争いに迫っていきます。
最終的にガトリン選手がそのまま先着して10秒06で優勝。山縣選手はヤング選手の追撃を振り切り、同タイムの10秒13ながら着差ありの2着でフィニッシュ。桐生選手が10秒17で4着、ケンブリッジ選手が10秒19で5着と、ここまでが10秒1台をマーク。多田選手は6着(10秒32)、宮本選手が7着(10秒34)という結果でした。
0.7mの向かい風であったことを考えると、上々の結果といえる記録で日本人トップとなった山縣選手ですが、大会前の段階から「日本人トップではなく、優勝を目指したい」と話していたことと、織田記念の反省からスタートに重点を置いて練習してきたにもかかわらず、そこでやや遅れてしまった点に不満が残った様子。
「今回は、しっかりスタートからレースを制していくというイメージだったので、正直反省が多いレースになった」と振り返りました。その一方で、中盤以降の走りについては、「競り合いのなかで、このメンバーに勝てたことは自信になる」とコメント。「100%ではないけれど、自分が見ているテーマが間違っていないという手応えもあったので、次のレースにつなげられる。反省材料を1つずつクリアしていき、日本選手権優勝を目指したい」と話しました。
日本人2位となった桐生選手は、1週前の上海ダイヤモンドリーグ100mに続いてのレースで、これが100mの国内初戦。「40mくらいまではよかった」という上海のレースを経て、帰国後の4日間は特に、加速局面となる60m付近までにトップスピードをスムーズに上げていくことを課題に練習してきたそうで、この日のレースでは、「そこをどう走れるか」をテーマにしていたと振り返りました。
「もちろん、一番じゃなかったのはすごく悔しいけれど、この1週間で、スピードに乗る感じがわかってきたことが収穫」と話し、「まだ、自分のなかでキレがない状態。これでキレが出てくれば、同じことをやってもタイムは上がってくる。これから日本選手権まで1カ月あるので、さらに加速の部分をよくしながら、(まだ手をつけていない)後半のイメージを高めていきたい」と意欲を見せました。
「10秒1台前半に行きたかったのが正直なところ」と言いつつも、「初戦や織田記念と比べてよくなってきているし、今回走って、まだまだ上がってきそうな手応えも感じた」と振り返ったのはケンブリッジ選手。このところずっとスタートに注力してきましたが、このレースに向けては「自身の持ち味である後半の部分を意識してきた」そうで、「それはある程度表わせたかな」と評価しつつ、「でも、そうすると今度は前半が出遅れてしまう」と自ら突っ込んで周囲を笑わせました。しかし、その点に焦りはない様子。
「(スタートは)もともと苦手で、そんなに簡単にはよくならないことはわかっている。少しずつでも自分のものにして、走りの完成度を高めていきたい。それを(日本選手権までの)この1カ月でどこまで上げていけるか。それ次第でもっともっといいタイムが出ると思うし、ベストも狙える状態なので、しっかり準備していきたい」と前を見据えていました。
なお、男子100mの前に行われた男子200mには、昨年、この種目の世界リスト1位(19秒77)で、43秒72の自己記録(2015年)を持つ400mではダイヤモンドリーグ年間優勝を果たしているアイザック・マクワラ選手(ボツワナ)が出場し、19秒96(+0.9)の好記録で優勝。2位には、2018年世界室内60mで4位に食い込んでいる謝震業選手(中国)が続き、20秒16をマークして自身の持つ中国記録を更新しました。日本勢では藤光謙司選手(ゼンリン)が20秒61で4着に食い込み、日本人トップとなっています。
男子砲丸投では、中村太地選手(チームミズノ)が18m85の日本新記録をマーク。畑瀨聡選手(群馬綜合ガードシステム)が保持していた日本記録(18m78、2015年)を7cm更新しました。
この種目は、ワールドチャレンジ種目として実施されていたため、海外からは19m台後半から21m台の自己記録を持つ選手4名が来日。ダミアン・バーキンヘッド選手(オーストラリア)が20m42で優勝し、2位が20m16、3位が19m20と、日本ではなかなか見られないハイレベルな試合となりました。
中村選手も、上位選手と同様に、サークル内をターンすることで得たスピードを使って砲丸を投げ出す回転投法を用いています。体格や筋力の差から日本人が世界と水をあけられている種目の1つですが、今回はチャイニーズ・タイペイ記録保持者(20m58)でアジア大会やアジア選手権等で多くのメダル獲得を果たしているベテラン・張銘煌選手の逆転を許さず、4位に食い込みました。
中村選手は、この日、17m50で試技をスタート。2回目にシーズンベストとなる18m49を投げると、3回目には18m58と、昨年マークしていた自己記録(18m55)を3cm更新。4回目が18m33に、5回目は17m61にとどまったのち、最終投てきとなる6回目を迎えました。
砲丸投の競技自体は、比較的目の引きやすい第1コーナーの芝生付近で行われていたものの、トラックでは短距離やハードルの注目種目が立て続けに進行し、フィールド内でも男子走高跳・男子走幅跳が並行して行われ、砲丸投のピットのすぐ横では、砲丸投終了後にスタート予定の男子やり投が練習を始めていたこともあり、会場内は雑然とした状況に。
そんななか、中村選手が大きな雄叫びとともに放った砲丸は、19mラインに近い位置に落ちると、弾んで転がっていきました。残念ながら、ちょうどそのタイミングで、男子砲丸投の記録掲示に不具合が生じて、日本新記録となる18m85の表示は出ないままに。このため、新記録誕生がアナウンスされたのは競技が終わってからとなりましたが、場内で日本新記録樹立者へのセレモニーが行われたことで、会場は中村選手に贈られる賞賛と祝福の拍手に包まれました。
新記録樹立について、「やっと出たという感じ。時間がかかった」と感想を述べた中村選手。18m55をマークした昨年の段階で、身体的には日本記録を出せる力はあったといいますが、昨年は、その「投げよう、投げよう」という意気込みが、新記録樹立を阻みました。
記録と勝利を狙って挑んだ日本選手権では「1投目に緊張で脚が震えてしまって、そこでもうダメだと思った」と、力を全く発揮できず17m54で5位に沈みました。しかし、欲を持たずに緊張することなく投げることができた直後のアジア選手権では、思いがけず国外最高記録となる18m46(5位)をマーク。このことによって、意気込むと記録が出せないことに気づき、以来、「練習でも普通にやる。試合でも普通にやる」ことを心がけるようになったそうです。
「まずは、普通に18m台を投げるということを考えていた」という今シーズンは、東京コンバインドを18m22で、水戸招待を18m47で2連勝。「そろそろかな、と自分でも思っていた」という思いでGGPに臨んでいました。
1993年1月生まれの25歳。笠間高(茨城)時代は、砲丸投と円盤投に取り組み、円盤投でインターハイ優勝を果たしている選手。砲丸は、国士舘大に進んだ大学1年の春までグライドで投げていたそうですが、岡田雅次コーチの勧めで回転投法に転向。「大学4年間は1mも(記録が)伸びていない」という時期もありながら、地道な努力を積み重ね、時間をかけて技術と体力を磨き上げてきました。
今回の18m85の投てきは、会心の投げだったわけでなく、「技術よりも気持ちで投げた感じ。自分のなかで、“まだ行ける”という実感がある」と振り返った中村選手。「まだまだここから。まずは19m投げて、時間をかけてでもいいから、20mに挑みたい」と、その視線は、すでに次のステージへと向けられていました。
ワールドチャレンジ種目では、男子400mHと男子走高跳の2種目に日本勢が優勝を果たしています。男子400mHを制したのは安部孝駿選手(デサントTC)。今季は、静岡国際で48秒68の自己新記録をマークしている選手で、GGPでは、静岡でできなかった「7台目までのインターバルを13歩で走る」レースパターンに挑戦しました。
計画通り7台目までは13歩で押していけたものの、14歩に切り替えたあと9台目のハードリングで足を合わせてしまうミスが出てスピードダウン。ホームストレートでは終盤に順位を上げてきた岸本鷹幸選手(富士通)から猛追されたものの逃げ切り、自身3度目の48秒台となる48秒97でフィニッシュしました。
安部選手は、「14歩に切り替えてからがうまく行かなかったので、そこがちょっと悔しい」と反省しつつも、「満足いかないレースのなかでも48秒台が出ていることは、自信になる」と手応えをつかんだ様子。次の目標を問われ、「48秒前半。それを国内だけでなく、海外でも出し、自分のパフォーマンスを発揮できるようにしたい」と、きっぱり答えていました。
男子走高跳は、戸邉直人選手(つくばツインピークス)が2m30で優勝しました。静岡国際でも対戦したブランドン・スターク選手(オーストラリア、2m32)のほか、王宇選手(中国、2m33)、禹相赫選手(韓国、2m30)と、2m30台の自己記録を持つ海外勢3選手に加えて、昨年2m30を2回跳んでいる衛藤昂選手(味の素AGF)との対戦を制するために、この大会では「1本目に跳ぶこと」を重視したという戸邉選手。
勝負は、2m30に4選手が挑戦するレベルの高い内容となりましたが、想定通り2m15、2m20、2m25、2m28、2m30をすべて1回でクリアしたことが効き、戸邉選手は常に優位を保ったまま戦いを進めていきました。優勝争いは2m30を終えた段階で、戸邉選手と王宇選手の2人に。王宇選手が逆転をかけて挑んだ2m32を越えられず、この高さをパスしていた戸邉選手の優勝が確定しました。戸邉選手は、その後、2m34にバーを上げ、日本新記録に挑戦。残念ながら、その実現はなりませんでしたが、会場を大いに盛り上げました。
「この大会に向けては、あまり調整がうまく行っていなかった」そうですが、「そのなかで2m30が跳べたことは今後につながる」と評価。「今季はアジア大会で優勝に近づけるように、それまでに日本新記録を跳んで、2m40にどこまで近づけるかという挑戦をしたい」と、頼もしい言葉を聞かせてくれました。
オープン種目では、男子400mでウォルシュ・ジュリアン選手(東洋大)が序盤から果敢に飛ばしていくレースを展開して45秒63で快勝しました。レース後は、「静岡の記録が想像以上に悪かったことから、体調管理を徹底し、その結果、体重も4kgほど絞れた。そうした改善の成果が出たことが嬉しい」とコメント。「この先のビジョンは見えている。日本選手権で44秒台を狙いたい」と声を弾ませました。
また、男子三段跳でも山下航平選手(ANA)が16m42(-1.0)で優勝。筑波大4年の2016年に16m85を跳んでリオ五輪出場を果たしたものの、昨年は助走のスピードアップと跳躍とをうまく結びつけることができず苦しいシーズン送っていました。GGPでは風が回るコンディションとなった影響もあり、6回のうち4回がファウル。「このへんの安定性がまだまだ」と反省しましたが、復調に向けての手応えはつかめている様子。日本記録のなかで一番古い記録となった父・訓史さんが持つ三段跳の日本記録(17m15、1986年)について問われると、「さっさと更新してしまいたいですね」と意欲を見せていました。
◆セイコーゴールデングランプリ陸上2018大阪の結果詳細はこちらから>>
http://goldengrandprix-japan.com/ja-jp/
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト
快晴となった当日は、気温21~23℃前後で40%を切る湿度と、やや風があったものの、さわやかな天候に。男子11種目、女子8種目のIAAFワールドチャレンジ種目に加えて、男子ハンマー投がIAAFハンマースロー・チャレンジ種目として実施されたほか、男女リレーを含む6種目とパラリンピック種目がオープンで行われ、国内外のトップ選手が集結しました。
来場した1万7000人を超えるファンを最も魅了したのは、オープン種目として行われた男子4×100mR。リオ五輪銀メダル獲得メンバーの山縣亮太選手(セイコー)、飯塚翔太選手(ミズノ)、桐生祥秀選手(日本生命)、ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)が再びチームを組んで出場し、今季世界最高記録となる37秒85の大会新記録で快勝しました。
このほか、女子やり投で劉詩穎選手(中国)が今季世界2位となる67m12(自身のアジア歴代2位を更新)をマークして昨年自身が樹立した大会記録(当時、アジア記録)を塗り替えたほか、女子800m、女子棒高跳でも大会新記録が誕生。男子砲丸投では、中村太地選手(チームミズノ)が18m85の日本新記録を樹立しました。
ここでは、日本選手の活躍を中心に、大会の模様をレポートします。
■“リオ4継”メンバー再び! 37秒85の今季世界最高で快勝!
日本の男子4×100mRは、2020年東京五輪での金メダル獲得を実現するために、ナショナルチームとしてリレーの実戦を重ねていくなかで精度を高めていくことを、強化施策の1つとして掲げています(http://www.jaaf.or.jp/news/article/11547/ 参照)。その最初の試みの場となったのが、今回のゴールデングランプリ(以下、GGP)。オープン種目として4×100mRを設定、AとBの2つのナショナルチームを組んで、出場することになりました。
Aチームは、2016年リオ五輪で銀メダルを獲得した山縣亮太選手(セイコー)、飯塚翔太選手(ミズノ)、桐生祥秀選手(日本生命)、ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)が、当時と同じ走順でメンバーを組むことに。
また、Bチームは、2017年ロンドン世界選手権で銅メダルを獲得した多田修平選手(関西学院大)と藤光謙司選手(ゼンリン)が世界選手権同様に1・4走を担当、2・3走には今季日本GPシリーズで好走している原翔太選手(スズキ浜松AC)と小池祐貴選手(ANA)が入るオーダーとなりました。
さらに、U20世代でもナショナルチームが編成され、ダイヤモンドアスリートの塚本ジャスティン惇平選手(城西大城西高)と宮本大輔選手(東洋大)を1・2走に配し、3走を高木悠圭選手(東海大翔洋高)、4走を水久保漱至選手(城西大)が務めるオーダーが組まれました。
外国勢は、当初予定されていた3チームのうち、ナショナルチームの来日が実現した中国と、GGPに出場した米国選手でオーダーを組んだUSAオールスターズが出場。中国は、準エース格の謝震業選手が200mに専念(20秒16の中国新記録で2位)したため、大エースの蘇炳添選手を1走に置き、以下、梁勁生選手、別舸選手、許周政選手と、記録的にやや劣る若手がつなぐオーダーに。
一方、急造ながら豪華メンバーが揃ったUSAオールスターズは、やはり1走に大エースのジャスティン・ガトリン選手(2017世界選手権100m優勝)が入り、アイザイア・ヤング選手(同200m8位、100m9秒97)、ブランドン・カーネズ選手(100m10秒06)、ジャリオン・ローソン選手(2017年世界選手権走幅跳2位、100m10秒03)の走順です。
日本Aは7レーン、中国が6レーン、USAオールスターズが5レーン、日本Bが4レーンに入り、日本U20が3レーンに、さらに関西学院大(2レーン)と中央大(9レーン)が参加し、全7チームでのレースが大会最終種目として行われました。
スタート直後から日本Aの山縣選手は、内側のレーンにいる蘇選手、ガトリン選手を寄せつけず、むしろ差を広げようかという勢いでコーナーを抜けて、2走の飯塚選手へバトンパス。
春先の故障の影響でこの大会の200mが今季初戦だった飯塚選手は、200mは終盤で失速し8位(20秒75)にとどまっていましたが、リレーでは本来の伸びやかな走りを披露して2番手の中国との差を広げました。
そのリードは3走の桐生選手で盤石のものとなり、アンカーのケンブリッジ選手もバトンパスこそやや詰まり気味だったものの、持ち前の後半の強さで後続との差を広げ、37秒85の好記録でフィニッシュラインを駆け抜けました。
38秒64をマークして2位に食い込んだのは日本B。1走の多田選手が、外側のレーンの走るガトリン選手との差を明らかに縮める好走でバトンをつなぐと、2走の原選手でUSAオールスターズを逆転、さらに3走の小池選手が2番手を行く中国を追い上げ、藤光選手にバトンが渡ったところで2位に浮上し、そのまま逃げ切りました。
3位の中国は38秒72で続き、4位はUSAオールスターズで38秒98、日本U20が5位・39秒44で、それぞれフィニッシュしました。
日本Aがマークした37秒85は今季世界最高記録。リオ五輪の決勝と予選でこのメンバーがマークした37秒60、37秒68に続き日本歴代3位となる好記録です。また、2007年にこの会場で行われた大阪世界選手権決勝で当時の日本チーム(塚原直貴、末續慎吾、高平慎士、朝原宣治)がマークした38秒03(2016年リオ五輪まで日本記録)をあっさりと上回って、国内日本最高記録を37秒台へと引き上げました。
ミックスゾーンでガトリン選手と蘇選手が1走を務めることを知ったときの心境を問われ、「なんで1走に来るんだよと思った」と苦笑いした山縣選手。しかし、レースに向けては、「もともと個人(種目)ではあまり意気込まない」タイプにもかかわらず、「リレーはちょっと気持ちに高まるものもあって、そこは自分の力を見せるところかなと意気込んでいった」と振り返りました。走り自体は日本人トップとなった100m同様に「前半からしっかり出していく」ことを意識。「それがいい形で飯塚さんにつながったかなと思う」と、笑顔を見せていました。
3月の海外合宿時に生じた故障の影響で静岡国際200mを欠場し、この大会が復帰レースでもあった飯塚選手は、「やっとここまで戻ってきた」とほっとした表情を見せながらも、「200mよりも、リレーのほうがよく走れた。1本ごとによくなってきている。ここからいい流れができる」と手応えをつかめた様子。
「練習をやっていないなかで37秒8台が出たということで、まだまだ日本記録を更新できるなということをケンブリッジさんとも話した」と言ったのは桐生選手。「接戦だったら、もっと走れるという感じはあった」と振り返り、「世界大会になれば、(メンバー)全員がもっとタイムを上げると思う」と自信を見せました。
ケンブリッジ選手は、「(100mよりも)リレーのほうが走り自体はよかった。それを次のレースにしっかり表していけば、もっといいタイムで走れるんじゃないかと思う」と振り返り、自身の調子を高めていく上でも、よいきっかけとなった様子を伺わせました。
さらに、ケンブリッジ選手は、レース前にメンバー間で「37秒台を出したい」と話していたことを明かし、「どこまでリオのタイムに近づけるかというのを話していたし、たくさんの人が見に来てくれていたので、それに応えたいという気持ちもあった。そのなかで、ああいういいレースができて本当によかったと思う」と話しました。
また、メディアから出た「このメンバーでリレーを組むと相乗効果があるのでは?」という問いに賛同し、「頼もしいし、リレーを組んで、一緒に走るのがすごく楽しい。今日は(リレーの前に)100mもあって、(準備する時間も)短かったが、いい雰囲気でレースに挑めるそのチームワークはすごく大きいと今日改めて感じた。それがこのチームのよさだと思う」と、笑顔で答えていたことが印象的でした。
■男子100m、日本人トップは山縣選手
この大会では、男子4×100mRが最終種目として行われたため、ワールドチャレンジ種目とリレーの両方に出場する選手たちの負担を考慮し、男子200mがリレーの1時間39分前に、また、“メインイベント”的な扱いで最終種目になることの多い男子100mもリレーの1時間30分前に実施するというタイムテーブルが組まれました。
ファンの関心が高かったのは男子100m。日本からは桐生祥秀選手(日本生命)、山縣亮太選手(セイコー)、多田修平選手(関西学院大)、ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)、宮本大輔選手(東洋大)の5名が出場。日本選手間の勝負だけでなく、2017年世界選手権金・2016年五輪銀のジャスティン・ガトリン選手(米国)に、どんなレースを挑むのか期待が集まりました。
3レーンにガトリン選手、4レーンに桐生選手、5レーンに山縣選手、6レーンに多田選手、7レーンにケンブリッジ選手が入って、レースは一発でスタート。立ち上がりの段階からガトリン選手がリードを奪い、日本勢は、桐生選手が山縣選手にやや先行し、これに多田選手が続く形でガトリン選手を追う展開となりました。
しかし、60m付近で山縣選手が桐生選手を逆転、そのあたりから8レーンに入っていたアイザイア・ヤング選手(米国)とケンブリッジ選手が多田選手をかわして上位争いに迫っていきます。
最終的にガトリン選手がそのまま先着して10秒06で優勝。山縣選手はヤング選手の追撃を振り切り、同タイムの10秒13ながら着差ありの2着でフィニッシュ。桐生選手が10秒17で4着、ケンブリッジ選手が10秒19で5着と、ここまでが10秒1台をマーク。多田選手は6着(10秒32)、宮本選手が7着(10秒34)という結果でした。
0.7mの向かい風であったことを考えると、上々の結果といえる記録で日本人トップとなった山縣選手ですが、大会前の段階から「日本人トップではなく、優勝を目指したい」と話していたことと、織田記念の反省からスタートに重点を置いて練習してきたにもかかわらず、そこでやや遅れてしまった点に不満が残った様子。
「今回は、しっかりスタートからレースを制していくというイメージだったので、正直反省が多いレースになった」と振り返りました。その一方で、中盤以降の走りについては、「競り合いのなかで、このメンバーに勝てたことは自信になる」とコメント。「100%ではないけれど、自分が見ているテーマが間違っていないという手応えもあったので、次のレースにつなげられる。反省材料を1つずつクリアしていき、日本選手権優勝を目指したい」と話しました。
日本人2位となった桐生選手は、1週前の上海ダイヤモンドリーグ100mに続いてのレースで、これが100mの国内初戦。「40mくらいまではよかった」という上海のレースを経て、帰国後の4日間は特に、加速局面となる60m付近までにトップスピードをスムーズに上げていくことを課題に練習してきたそうで、この日のレースでは、「そこをどう走れるか」をテーマにしていたと振り返りました。
「もちろん、一番じゃなかったのはすごく悔しいけれど、この1週間で、スピードに乗る感じがわかってきたことが収穫」と話し、「まだ、自分のなかでキレがない状態。これでキレが出てくれば、同じことをやってもタイムは上がってくる。これから日本選手権まで1カ月あるので、さらに加速の部分をよくしながら、(まだ手をつけていない)後半のイメージを高めていきたい」と意欲を見せました。
「10秒1台前半に行きたかったのが正直なところ」と言いつつも、「初戦や織田記念と比べてよくなってきているし、今回走って、まだまだ上がってきそうな手応えも感じた」と振り返ったのはケンブリッジ選手。このところずっとスタートに注力してきましたが、このレースに向けては「自身の持ち味である後半の部分を意識してきた」そうで、「それはある程度表わせたかな」と評価しつつ、「でも、そうすると今度は前半が出遅れてしまう」と自ら突っ込んで周囲を笑わせました。しかし、その点に焦りはない様子。
「(スタートは)もともと苦手で、そんなに簡単にはよくならないことはわかっている。少しずつでも自分のものにして、走りの完成度を高めていきたい。それを(日本選手権までの)この1カ月でどこまで上げていけるか。それ次第でもっともっといいタイムが出ると思うし、ベストも狙える状態なので、しっかり準備していきたい」と前を見据えていました。
なお、男子100mの前に行われた男子200mには、昨年、この種目の世界リスト1位(19秒77)で、43秒72の自己記録(2015年)を持つ400mではダイヤモンドリーグ年間優勝を果たしているアイザック・マクワラ選手(ボツワナ)が出場し、19秒96(+0.9)の好記録で優勝。2位には、2018年世界室内60mで4位に食い込んでいる謝震業選手(中国)が続き、20秒16をマークして自身の持つ中国記録を更新しました。日本勢では藤光謙司選手(ゼンリン)が20秒61で4着に食い込み、日本人トップとなっています。
■男子砲丸投:中村選手、回転投法で日本記録ホルダーに!
男子砲丸投では、中村太地選手(チームミズノ)が18m85の日本新記録をマーク。畑瀨聡選手(群馬綜合ガードシステム)が保持していた日本記録(18m78、2015年)を7cm更新しました。
この種目は、ワールドチャレンジ種目として実施されていたため、海外からは19m台後半から21m台の自己記録を持つ選手4名が来日。ダミアン・バーキンヘッド選手(オーストラリア)が20m42で優勝し、2位が20m16、3位が19m20と、日本ではなかなか見られないハイレベルな試合となりました。
中村選手も、上位選手と同様に、サークル内をターンすることで得たスピードを使って砲丸を投げ出す回転投法を用いています。体格や筋力の差から日本人が世界と水をあけられている種目の1つですが、今回はチャイニーズ・タイペイ記録保持者(20m58)でアジア大会やアジア選手権等で多くのメダル獲得を果たしているベテラン・張銘煌選手の逆転を許さず、4位に食い込みました。
中村選手は、この日、17m50で試技をスタート。2回目にシーズンベストとなる18m49を投げると、3回目には18m58と、昨年マークしていた自己記録(18m55)を3cm更新。4回目が18m33に、5回目は17m61にとどまったのち、最終投てきとなる6回目を迎えました。
砲丸投の競技自体は、比較的目の引きやすい第1コーナーの芝生付近で行われていたものの、トラックでは短距離やハードルの注目種目が立て続けに進行し、フィールド内でも男子走高跳・男子走幅跳が並行して行われ、砲丸投のピットのすぐ横では、砲丸投終了後にスタート予定の男子やり投が練習を始めていたこともあり、会場内は雑然とした状況に。
そんななか、中村選手が大きな雄叫びとともに放った砲丸は、19mラインに近い位置に落ちると、弾んで転がっていきました。残念ながら、ちょうどそのタイミングで、男子砲丸投の記録掲示に不具合が生じて、日本新記録となる18m85の表示は出ないままに。このため、新記録誕生がアナウンスされたのは競技が終わってからとなりましたが、場内で日本新記録樹立者へのセレモニーが行われたことで、会場は中村選手に贈られる賞賛と祝福の拍手に包まれました。
新記録樹立について、「やっと出たという感じ。時間がかかった」と感想を述べた中村選手。18m55をマークした昨年の段階で、身体的には日本記録を出せる力はあったといいますが、昨年は、その「投げよう、投げよう」という意気込みが、新記録樹立を阻みました。
記録と勝利を狙って挑んだ日本選手権では「1投目に緊張で脚が震えてしまって、そこでもうダメだと思った」と、力を全く発揮できず17m54で5位に沈みました。しかし、欲を持たずに緊張することなく投げることができた直後のアジア選手権では、思いがけず国外最高記録となる18m46(5位)をマーク。このことによって、意気込むと記録が出せないことに気づき、以来、「練習でも普通にやる。試合でも普通にやる」ことを心がけるようになったそうです。
「まずは、普通に18m台を投げるということを考えていた」という今シーズンは、東京コンバインドを18m22で、水戸招待を18m47で2連勝。「そろそろかな、と自分でも思っていた」という思いでGGPに臨んでいました。
1993年1月生まれの25歳。笠間高(茨城)時代は、砲丸投と円盤投に取り組み、円盤投でインターハイ優勝を果たしている選手。砲丸は、国士舘大に進んだ大学1年の春までグライドで投げていたそうですが、岡田雅次コーチの勧めで回転投法に転向。「大学4年間は1mも(記録が)伸びていない」という時期もありながら、地道な努力を積み重ね、時間をかけて技術と体力を磨き上げてきました。
今回の18m85の投てきは、会心の投げだったわけでなく、「技術よりも気持ちで投げた感じ。自分のなかで、“まだ行ける”という実感がある」と振り返った中村選手。「まだまだここから。まずは19m投げて、時間をかけてでもいいから、20mに挑みたい」と、その視線は、すでに次のステージへと向けられていました。
■男子400mH、走高跳、400m、三段跳の4種目を日本勢が制す
ワールドチャレンジ種目では、男子400mHと男子走高跳の2種目に日本勢が優勝を果たしています。男子400mHを制したのは安部孝駿選手(デサントTC)。今季は、静岡国際で48秒68の自己新記録をマークしている選手で、GGPでは、静岡でできなかった「7台目までのインターバルを13歩で走る」レースパターンに挑戦しました。
計画通り7台目までは13歩で押していけたものの、14歩に切り替えたあと9台目のハードリングで足を合わせてしまうミスが出てスピードダウン。ホームストレートでは終盤に順位を上げてきた岸本鷹幸選手(富士通)から猛追されたものの逃げ切り、自身3度目の48秒台となる48秒97でフィニッシュしました。
安部選手は、「14歩に切り替えてからがうまく行かなかったので、そこがちょっと悔しい」と反省しつつも、「満足いかないレースのなかでも48秒台が出ていることは、自信になる」と手応えをつかんだ様子。次の目標を問われ、「48秒前半。それを国内だけでなく、海外でも出し、自分のパフォーマンスを発揮できるようにしたい」と、きっぱり答えていました。
男子走高跳は、戸邉直人選手(つくばツインピークス)が2m30で優勝しました。静岡国際でも対戦したブランドン・スターク選手(オーストラリア、2m32)のほか、王宇選手(中国、2m33)、禹相赫選手(韓国、2m30)と、2m30台の自己記録を持つ海外勢3選手に加えて、昨年2m30を2回跳んでいる衛藤昂選手(味の素AGF)との対戦を制するために、この大会では「1本目に跳ぶこと」を重視したという戸邉選手。
勝負は、2m30に4選手が挑戦するレベルの高い内容となりましたが、想定通り2m15、2m20、2m25、2m28、2m30をすべて1回でクリアしたことが効き、戸邉選手は常に優位を保ったまま戦いを進めていきました。優勝争いは2m30を終えた段階で、戸邉選手と王宇選手の2人に。王宇選手が逆転をかけて挑んだ2m32を越えられず、この高さをパスしていた戸邉選手の優勝が確定しました。戸邉選手は、その後、2m34にバーを上げ、日本新記録に挑戦。残念ながら、その実現はなりませんでしたが、会場を大いに盛り上げました。
「この大会に向けては、あまり調整がうまく行っていなかった」そうですが、「そのなかで2m30が跳べたことは今後につながる」と評価。「今季はアジア大会で優勝に近づけるように、それまでに日本新記録を跳んで、2m40にどこまで近づけるかという挑戦をしたい」と、頼もしい言葉を聞かせてくれました。
オープン種目では、男子400mでウォルシュ・ジュリアン選手(東洋大)が序盤から果敢に飛ばしていくレースを展開して45秒63で快勝しました。レース後は、「静岡の記録が想像以上に悪かったことから、体調管理を徹底し、その結果、体重も4kgほど絞れた。そうした改善の成果が出たことが嬉しい」とコメント。「この先のビジョンは見えている。日本選手権で44秒台を狙いたい」と声を弾ませました。
また、男子三段跳でも山下航平選手(ANA)が16m42(-1.0)で優勝。筑波大4年の2016年に16m85を跳んでリオ五輪出場を果たしたものの、昨年は助走のスピードアップと跳躍とをうまく結びつけることができず苦しいシーズン送っていました。GGPでは風が回るコンディションとなった影響もあり、6回のうち4回がファウル。「このへんの安定性がまだまだ」と反省しましたが、復調に向けての手応えはつかめている様子。日本記録のなかで一番古い記録となった父・訓史さんが持つ三段跳の日本記録(17m15、1986年)について問われると、「さっさと更新してしまいたいですね」と意欲を見せていました。
◆セイコーゴールデングランプリ陸上2018大阪の結果詳細はこちらから>>
http://goldengrandprix-japan.com/ja-jp/
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト
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