日本陸連強化委員会は4月6日、メディアに向けた2018年度の強化体制および目標方針等の説明会を、味の素ナショナルトレーニングセンターにおいて行いました。
説明会には、麻場一徳強化委員長、山崎一彦T&Fディレクター、河野匡長距離・マラソンディレクターのほか、各種目のオリンピック強化コーチ10名が登壇。まず、麻場委員長から全体に関する説明が行われたあと、山崎ディレクターがトラック&フィールド種目について、また、河野ディレクターが長距離・マラソン種目について、それぞれ方針を述べ、その後、各種目のオリンピック強化コーチが、昨年度の経過および現状の報告、2018年度の目標等を発表しました。以下、説明内容の要旨をご紹介します。
■男子100m・200m・4×100mR:ゴールドターゲット
土江寛裕オリンピック強化コーチ
男子100m、200mについては、個人的なレベルが非常に上がっている。リオ五輪で銀メダルを取り、昨年の世界選手権で銅メダルを獲得し、目指すところは金メダルしかないわけだが、それを支えてきているのはバトンパスワークもあるけれど、個人のレベルアップが非常に大きい。現状で、それぞれの選手が、指導者やトレーニングパートナーなどチームを持ってやっているので、集まってナショナルチームとして強化していくよりは、個々人が最もやりやすい方法で強化できるようにバックアップしていく形で強化をしていくスタイルにしていきたい。
リレーに関しては、これまで合宿でリレー練習をして本番に臨むというスタイルでやってきたが、今後は、積極的に実戦を積むことでトレーニングをしていくという意味で、競技会にリレーを組んで出ていき、そこで失敗も含めいろいろな経験を重ねることで精度を上げていきたい。また、これまでうまく次の世代につなぐという作業ができていたわけだが、リレーを組んで競技会に出ていくことで、それらも行っていけるようにしたいと考えている。
アジア大会については、100m、200mは、それぞれ一番いい色のメダルを取りにいくことを目標とする。また、4×100mRも久しく金メダルが取れていないので、中国チームは強いが、しっかりと勝っていきたいと思っている。
■男子200m・400m・4×400mR:トップ8ターゲット
土江寛裕オリンピック強化コーチ
400m、4×400mRについては、400mに関しては日本記録(44秒78、1991年)が長く破られていないので、そこを目指してやっていきたい。また、4×400mRについても、2020年東京オリンピックで戦える種目だと信じている。これまでうまくいっていないが、しっかりと出場権を得て、決勝進出できるところを目指して強化していきたい。
4×400mRに関しては、データの分析により、世界のスピードアップ化が顕著に出ている。日本チームは、そのスピードアップのところで取り残されている面があるため、400m選手のスピード強化を行うのと並行して、200mの選手を積極的に4×400mRに投入していく形で結果を求めていきたい。
アジア大会では、4×400mRは、ディフェンディングチャンピオンなので、今回も金メダルをしっかり取りにいく。また、400mでもできるだけいい色のメダルを取りたい。それが最終的に2020年につながっていくように思う。
2020年から逆算するような形で今年を位置づけて取り組んでいきたいと考えている。
■男女競歩:ゴールドターゲット
今村文男オリンピック強化コーチ
男女競歩の担当を仰せつかって、東京オリンピックに向かうサイクルの2年目。競歩技術の向上、国際審判対策、さらには暑熱対策という3つの柱をポイントとして、各強化事業を展開していく。
今年に関しては、重要国際大会はアジア大会。前回は50kmで金メダル、20kmで銀メダルを獲得しているが、競歩の種目に関してはアジアで戦うことが世界でのメダルや上位につながる。アジア大会をしっかり戦うという認識で選手と一緒に取り組んでいる。
そのなかにおいて、5月に行われる世界チーム競歩選手権においては、男女20km、さらには今年に関してはアジア大会の選考会と位置づけて男子50kmも派遣できたので、ここを前哨戦としてしっかりと戦うことを目指している。
特に、男子50km競歩に関しては、ベテラン、若手と非常にいいメンバーが揃ってきている。昨年のロンドン世界選手権(2位・3位・5位)の再現を目標にしながらしっかり準備したい。また、男子20kmは、今年の日本選手権(2月、神戸)では上位3選手が1時間17分台をマークし、世界リストも、また世界歴代リストにおいても上位に入ってきた。ただ、これに関しては、国際大会での結果には直接結びついていないという状況があるため、20kmの選手に対しては、「脱国内最強」「世界最強」への思いがある。今年からは、もう少し戦略・戦術をしっかり立てて、個別の練習ではなく、短期ではあるけれどNTCを利用した強化トレーニングを行ったり、どういうレース展開やパターンによってメダルを獲得しているのかなどを分析したりと、年間を通した強化を図っていきたい。
女子に関しても、今まで年に2回ほど1週間程度の合宿をしていたが、限られた期間ではなく通年の強化を掲げていこうということで、これもNTCを拠点に2泊3日程度の合同練習会を行い、担当コーチをつけて、フィジカル面の強化を図りながら、故障しない身体づくり、継続的な練習のできる身体づくりをやりながら競技力の向上を図っていきたい
特に、アジア大会までは、50km競歩は強化競技者が高いレベルにあるので、個人の合宿を優先的に進めていく。男子20kmに関しては、少数ではあるがNTCでしっかり強化を図り、レースの戦略・戦術も含めてしっかり準備し、アジア大会での金メダル獲得を目標にしながら準備を進めていきたい。
2020年東京オリンピックに向けては、U23世代もそうだが、U20世代も含めて縦断的な強化と横断的な強化をうまく進めながらシニアに移行させ、トップアスリートを目標にしながら、記録の向上、国際的競技力の向上を図っていけるような流れにしていけたらと思っている。
■男子棒高跳:メダルターゲット
小林史明オリンピック強化コーチ
これまで合宿を数回組むなかで、私が中心となって強化選手の面倒を見てきたが、昨年の冬から少しやり方を変えて、パーソナルコーチと選手が連携を密にとって、それぞれが動きやすいタイミングで合宿を組んでいく方法を採用し、そのなかで、海外にどんどん出ていき、いろいろなことを吸収していくということを進めている。
特に、棒高跳では、冬場は、棒高跳だけの室内大会が多数あり、これらを十分に活用して、技術の向上を図っている。現状で各強化選手は1~3試合の室内大会に出場している。
2018年度の目標は、アジア大会の金メダルを目指しているが、その先には当然ながら2020年東京オリンピックがある。IAAFワールドランキング制度も関係してくるので、4月以降も積極的に海外の試合に出て、ポイントを稼いでいきたい。また、ポイントを獲得していくにあたって、どういう形で試合を組んでいけばより良い体調で臨めるか、あるいは良い試合に出ていけるかなどについても、まずは今年度でいろいろ探りながら取り組んでいきたい。
棒高跳は以前から海外の大会には比較的よく行っていて、室内大会にも行かせてもらっている。現状で海外のコーチ陣や大会のディレクターと顔見知りになっており、大きな試合にも出やすくなってきているので、今後もそれを継続して、ドーハ(世界選手権)、東京(オリンピック)と続くように、強化を図っていきたい。
■男女やり投:メダルターゲット
田内健二オリンピック強化コーチ
男女やり投は、リオオリンピック後から4年計画で強化を進めている。私としては男女ともに国内の競技レベルを引き上げ、そのなかから2020年に世界で活躍する選手を輩出することを計画して始めた。
今年度で2期目となるが、男子は77m00、女子は57m00という強化指定選手の記録を設定してやっている。その結果、男女とも国内のトップ10の平均値は過去最高値となった。男子は世界のレベルがかなり上がっていて、それには少し遅れている感じだが、国内だけのことを考えればかなり層は厚くなってレベルも上がってきているといえる。しかも若い23~24歳あたりの年代が上位でひしめき合っているので、そのなかから80mを大きく超えるような選手が出てくると信じている。女子については、昨年は60mを超える選手が4人となった。男子に比べて世界のレベルが停滞しているなかで、国内では女子のレベルが上がっており、トップ10の平均は59m台に乗っている。国のレベルとしても、層としても日本のレベルは高いといえるが、60m台後半を投げる選手がまだいないことが課題。トップの4~5人に関しては、今シーズン中に日本記録を上回るような投てきが期待できるので、しっかり強化していきたい。
今年の冬は、ドイツに派遣したりグアムで合宿したりしたが、ほかの種目と同様に、個人と専任コーチがメインとした個人合宿を中心に行い、それをサポートするということが強化の主な役割になっている。その進捗については、それぞれに最初の試合となる織田記念に向けてやっているところで、大きな故障もなく順調に来ていると聞いている。
今年の目標としてはアジア大会できっちりメダルを取ること。また、男女ともに日本記録を更新して、世界とわたり合える選手を1人でも多く輩出していきたい。
■男子マラソン:メダルターゲット
坂口泰オリンピック強化コーチ
昨年始まったMGCの効果だと評価するが、やっと時代が動き始めた。今年は、まずは、この動きを止めないことが大切。さすがに一足飛びにはいかないだろうが、(各選手が)顕在化した能力を確実に自分のものにしていく年になると考えている。また、今、聞いているところでは、けっこう海外でのレースに挑戦する選手も多いと聞いている。
今年一番大切になってくるのはアジア大会の対応だと考えている。先ほど河野ディレクターも報告したように、バーレーンに国籍変更した選手が集まってきているというなか、どういうふうに戦うかということが試金石となる。
そのために何をするかということで計画しているのが、7月1~28日に予定しているボルダーでの合宿。また、これはアジア大会には直接関係しないが、東京オリンピックのための暑熱合宿を8月9日前後で実施する予定である。そして、8月の終わりから9月にかけては、イタリアで合宿を行いたいと考えている。
考え方としては、マラソンは各チームでの強化が基本となる。しかしながら、ある強化資源はすべて使い切るくらいの覚悟でやっていきたい。
■女子マラソン:メダルターゲット
山下佐知子オリンピック強化コーチ
男子に比べると、MGC有資格者の数が少ないとか、男子は出たけれど女子は日本記録が出ていないとかはあるが、東京オリンピックまでの通過点としては女子も順調にきていると思っている。その理由として、2017年度はスピードのあるランナー、すなわち10000m31分台、5000m15分30秒前後の基礎的なスピードを持っている選手のマラソンへの移行や、若い選手が東京オリンピックを目指してマラソンにチャレンジするというなかで、松田瑞生が2時間22分台を、関根花観が2時間23分台をマークした。また、今週末には高島由香がパリマラソンで初マラソンに挑戦する。さらに、鈴木亜由子、上原美幸などオリンピックでトラック出場の経験がある選手もデビューの予定。こういったところを楽しみにしている。
今年度の強化の計画としては、昨年も東京オリンピックが開催される時期に暑熱対策の測定も含めて、30km、40kmを実体験するプロジェクト合宿を試みたが、今年も8月5~9日に引き続き行う。また、すでにMGC有資格者となった6名に対して、秋のベルリン、シカゴ、ニューヨークについては強化費を出す形で出場させ、各マラソンを強化に使う方向性を固めている。6名中1名はアジア大会に出場するが、あとの5名については3つの大会のどれかに出場する見込みである。
また、11月には、冬場のマラソンに向かう選手の強化合宿を、オーストラリアのホールズクリーク(標高1600m)で対象者5名くらいの規模で実施する予定でいる。
前述したように2017~2018年は若手やスピードランナーがマラソンにチャレンジしたものが多かったが、2018~2019年には、リオ五輪の経験者だったり、世界選手権ロンドン大会の復活だったりと、ベテランの選手が、その持ち味を発揮してくると期待している。そういう流れで2020年を迎えたいと思っている。
>>2018年度日本陸連強化委員会目標方針説明Vol.1
>>2018年度日本陸連強化委員会目標方針説明Vol.3
(取材・構成:児玉育美/JAAFメディアチーム)
※本稿は、4月6日に行われたメディアに向けた2018年度強化目標方針説明で、強化委員長はじめ、各担当者が話した内容をまとめたものです。より正確に伝わることを目的として、説明内容の順番を変える、補足説明を加える等の編集を行っています。
説明会には、麻場一徳強化委員長、山崎一彦T&Fディレクター、河野匡長距離・マラソンディレクターのほか、各種目のオリンピック強化コーチ10名が登壇。まず、麻場委員長から全体に関する説明が行われたあと、山崎ディレクターがトラック&フィールド種目について、また、河野ディレクターが長距離・マラソン種目について、それぞれ方針を述べ、その後、各種目のオリンピック強化コーチが、昨年度の経過および現状の報告、2018年度の目標等を発表しました。以下、説明内容の要旨をご紹介します。
【各種目強化方針】
■男子100m・200m・4×100mR:ゴールドターゲット
土江寛裕オリンピック強化コーチ
男子100m、200mについては、個人的なレベルが非常に上がっている。リオ五輪で銀メダルを取り、昨年の世界選手権で銅メダルを獲得し、目指すところは金メダルしかないわけだが、それを支えてきているのはバトンパスワークもあるけれど、個人のレベルアップが非常に大きい。現状で、それぞれの選手が、指導者やトレーニングパートナーなどチームを持ってやっているので、集まってナショナルチームとして強化していくよりは、個々人が最もやりやすい方法で強化できるようにバックアップしていく形で強化をしていくスタイルにしていきたい。
リレーに関しては、これまで合宿でリレー練習をして本番に臨むというスタイルでやってきたが、今後は、積極的に実戦を積むことでトレーニングをしていくという意味で、競技会にリレーを組んで出ていき、そこで失敗も含めいろいろな経験を重ねることで精度を上げていきたい。また、これまでうまく次の世代につなぐという作業ができていたわけだが、リレーを組んで競技会に出ていくことで、それらも行っていけるようにしたいと考えている。
アジア大会については、100m、200mは、それぞれ一番いい色のメダルを取りにいくことを目標とする。また、4×100mRも久しく金メダルが取れていないので、中国チームは強いが、しっかりと勝っていきたいと思っている。
■男子200m・400m・4×400mR:トップ8ターゲット
土江寛裕オリンピック強化コーチ
400m、4×400mRについては、400mに関しては日本記録(44秒78、1991年)が長く破られていないので、そこを目指してやっていきたい。また、4×400mRについても、2020年東京オリンピックで戦える種目だと信じている。これまでうまくいっていないが、しっかりと出場権を得て、決勝進出できるところを目指して強化していきたい。
4×400mRに関しては、データの分析により、世界のスピードアップ化が顕著に出ている。日本チームは、そのスピードアップのところで取り残されている面があるため、400m選手のスピード強化を行うのと並行して、200mの選手を積極的に4×400mRに投入していく形で結果を求めていきたい。
アジア大会では、4×400mRは、ディフェンディングチャンピオンなので、今回も金メダルをしっかり取りにいく。また、400mでもできるだけいい色のメダルを取りたい。それが最終的に2020年につながっていくように思う。
2020年から逆算するような形で今年を位置づけて取り組んでいきたいと考えている。
■男女競歩:ゴールドターゲット
今村文男オリンピック強化コーチ
男女競歩の担当を仰せつかって、東京オリンピックに向かうサイクルの2年目。競歩技術の向上、国際審判対策、さらには暑熱対策という3つの柱をポイントとして、各強化事業を展開していく。
今年に関しては、重要国際大会はアジア大会。前回は50kmで金メダル、20kmで銀メダルを獲得しているが、競歩の種目に関してはアジアで戦うことが世界でのメダルや上位につながる。アジア大会をしっかり戦うという認識で選手と一緒に取り組んでいる。
そのなかにおいて、5月に行われる世界チーム競歩選手権においては、男女20km、さらには今年に関してはアジア大会の選考会と位置づけて男子50kmも派遣できたので、ここを前哨戦としてしっかりと戦うことを目指している。
特に、男子50km競歩に関しては、ベテラン、若手と非常にいいメンバーが揃ってきている。昨年のロンドン世界選手権(2位・3位・5位)の再現を目標にしながらしっかり準備したい。また、男子20kmは、今年の日本選手権(2月、神戸)では上位3選手が1時間17分台をマークし、世界リストも、また世界歴代リストにおいても上位に入ってきた。ただ、これに関しては、国際大会での結果には直接結びついていないという状況があるため、20kmの選手に対しては、「脱国内最強」「世界最強」への思いがある。今年からは、もう少し戦略・戦術をしっかり立てて、個別の練習ではなく、短期ではあるけれどNTCを利用した強化トレーニングを行ったり、どういうレース展開やパターンによってメダルを獲得しているのかなどを分析したりと、年間を通した強化を図っていきたい。
女子に関しても、今まで年に2回ほど1週間程度の合宿をしていたが、限られた期間ではなく通年の強化を掲げていこうということで、これもNTCを拠点に2泊3日程度の合同練習会を行い、担当コーチをつけて、フィジカル面の強化を図りながら、故障しない身体づくり、継続的な練習のできる身体づくりをやりながら競技力の向上を図っていきたい
特に、アジア大会までは、50km競歩は強化競技者が高いレベルにあるので、個人の合宿を優先的に進めていく。男子20kmに関しては、少数ではあるがNTCでしっかり強化を図り、レースの戦略・戦術も含めてしっかり準備し、アジア大会での金メダル獲得を目標にしながら準備を進めていきたい。
2020年東京オリンピックに向けては、U23世代もそうだが、U20世代も含めて縦断的な強化と横断的な強化をうまく進めながらシニアに移行させ、トップアスリートを目標にしながら、記録の向上、国際的競技力の向上を図っていけるような流れにしていけたらと思っている。
■男子棒高跳:メダルターゲット
小林史明オリンピック強化コーチ
これまで合宿を数回組むなかで、私が中心となって強化選手の面倒を見てきたが、昨年の冬から少しやり方を変えて、パーソナルコーチと選手が連携を密にとって、それぞれが動きやすいタイミングで合宿を組んでいく方法を採用し、そのなかで、海外にどんどん出ていき、いろいろなことを吸収していくということを進めている。
特に、棒高跳では、冬場は、棒高跳だけの室内大会が多数あり、これらを十分に活用して、技術の向上を図っている。現状で各強化選手は1~3試合の室内大会に出場している。
2018年度の目標は、アジア大会の金メダルを目指しているが、その先には当然ながら2020年東京オリンピックがある。IAAFワールドランキング制度も関係してくるので、4月以降も積極的に海外の試合に出て、ポイントを稼いでいきたい。また、ポイントを獲得していくにあたって、どういう形で試合を組んでいけばより良い体調で臨めるか、あるいは良い試合に出ていけるかなどについても、まずは今年度でいろいろ探りながら取り組んでいきたい。
棒高跳は以前から海外の大会には比較的よく行っていて、室内大会にも行かせてもらっている。現状で海外のコーチ陣や大会のディレクターと顔見知りになっており、大きな試合にも出やすくなってきているので、今後もそれを継続して、ドーハ(世界選手権)、東京(オリンピック)と続くように、強化を図っていきたい。
■男女やり投:メダルターゲット
田内健二オリンピック強化コーチ
男女やり投は、リオオリンピック後から4年計画で強化を進めている。私としては男女ともに国内の競技レベルを引き上げ、そのなかから2020年に世界で活躍する選手を輩出することを計画して始めた。
今年度で2期目となるが、男子は77m00、女子は57m00という強化指定選手の記録を設定してやっている。その結果、男女とも国内のトップ10の平均値は過去最高値となった。男子は世界のレベルがかなり上がっていて、それには少し遅れている感じだが、国内だけのことを考えればかなり層は厚くなってレベルも上がってきているといえる。しかも若い23~24歳あたりの年代が上位でひしめき合っているので、そのなかから80mを大きく超えるような選手が出てくると信じている。女子については、昨年は60mを超える選手が4人となった。男子に比べて世界のレベルが停滞しているなかで、国内では女子のレベルが上がっており、トップ10の平均は59m台に乗っている。国のレベルとしても、層としても日本のレベルは高いといえるが、60m台後半を投げる選手がまだいないことが課題。トップの4~5人に関しては、今シーズン中に日本記録を上回るような投てきが期待できるので、しっかり強化していきたい。
今年の冬は、ドイツに派遣したりグアムで合宿したりしたが、ほかの種目と同様に、個人と専任コーチがメインとした個人合宿を中心に行い、それをサポートするということが強化の主な役割になっている。その進捗については、それぞれに最初の試合となる織田記念に向けてやっているところで、大きな故障もなく順調に来ていると聞いている。
今年の目標としてはアジア大会できっちりメダルを取ること。また、男女ともに日本記録を更新して、世界とわたり合える選手を1人でも多く輩出していきたい。
■男子マラソン:メダルターゲット
坂口泰オリンピック強化コーチ
昨年始まったMGCの効果だと評価するが、やっと時代が動き始めた。今年は、まずは、この動きを止めないことが大切。さすがに一足飛びにはいかないだろうが、(各選手が)顕在化した能力を確実に自分のものにしていく年になると考えている。また、今、聞いているところでは、けっこう海外でのレースに挑戦する選手も多いと聞いている。
今年一番大切になってくるのはアジア大会の対応だと考えている。先ほど河野ディレクターも報告したように、バーレーンに国籍変更した選手が集まってきているというなか、どういうふうに戦うかということが試金石となる。
そのために何をするかということで計画しているのが、7月1~28日に予定しているボルダーでの合宿。また、これはアジア大会には直接関係しないが、東京オリンピックのための暑熱合宿を8月9日前後で実施する予定である。そして、8月の終わりから9月にかけては、イタリアで合宿を行いたいと考えている。
考え方としては、マラソンは各チームでの強化が基本となる。しかしながら、ある強化資源はすべて使い切るくらいの覚悟でやっていきたい。
■女子マラソン:メダルターゲット
山下佐知子オリンピック強化コーチ
男子に比べると、MGC有資格者の数が少ないとか、男子は出たけれど女子は日本記録が出ていないとかはあるが、東京オリンピックまでの通過点としては女子も順調にきていると思っている。その理由として、2017年度はスピードのあるランナー、すなわち10000m31分台、5000m15分30秒前後の基礎的なスピードを持っている選手のマラソンへの移行や、若い選手が東京オリンピックを目指してマラソンにチャレンジするというなかで、松田瑞生が2時間22分台を、関根花観が2時間23分台をマークした。また、今週末には高島由香がパリマラソンで初マラソンに挑戦する。さらに、鈴木亜由子、上原美幸などオリンピックでトラック出場の経験がある選手もデビューの予定。こういったところを楽しみにしている。
今年度の強化の計画としては、昨年も東京オリンピックが開催される時期に暑熱対策の測定も含めて、30km、40kmを実体験するプロジェクト合宿を試みたが、今年も8月5~9日に引き続き行う。また、すでにMGC有資格者となった6名に対して、秋のベルリン、シカゴ、ニューヨークについては強化費を出す形で出場させ、各マラソンを強化に使う方向性を固めている。6名中1名はアジア大会に出場するが、あとの5名については3つの大会のどれかに出場する見込みである。
また、11月には、冬場のマラソンに向かう選手の強化合宿を、オーストラリアのホールズクリーク(標高1600m)で対象者5名くらいの規模で実施する予定でいる。
前述したように2017~2018年は若手やスピードランナーがマラソンにチャレンジしたものが多かったが、2018~2019年には、リオ五輪の経験者だったり、世界選手権ロンドン大会の復活だったりと、ベテランの選手が、その持ち味を発揮してくると期待している。そういう流れで2020年を迎えたいと思っている。
>>2018年度日本陸連強化委員会目標方針説明Vol.1
>>2018年度日本陸連強化委員会目標方針説明Vol.3
(取材・構成:児玉育美/JAAFメディアチーム)
※本稿は、4月6日に行われたメディアに向けた2018年度強化目標方針説明で、強化委員長はじめ、各担当者が話した内容をまとめたものです。より正確に伝わることを目的として、説明内容の順番を変える、補足説明を加える等の編集を行っています。
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