2018.04.18(水)委員会

2018年度日本陸連強化委員会目標方針説明Vol.3

日本陸連強化委員会は4月6日、メディアに向けた2018年度の強化体制および目標方針等の説明会を、味の素ナショナルトレーニングセンターにおいて行いました。

説明会には、麻場一徳強化委員長、山崎一彦T&Fディレクター、河野匡長距離・マラソンディレクターのほか、各種目のオリンピック強化コーチ10名が登壇。まず、麻場委員長から全体に関する説明が行われたあと、山崎ディレクターがトラック&フィールド種目について、また、河野ディレクターが長距離・マラソン種目について、それぞれ方針を述べ、その後、各種目のオリンピック強化コーチが、昨年度の経過および現状の報告、2018年度の目標等を発表しました。以下、説明内容の要旨をご紹介します。


■男子長距離:トップ8ターゲット



綾部健二オリンピック強化コーチ

男子長距離の2018年度の目標は、5000m、10000mにおけるアジア大会のメダル獲得。河野ディレクターからも話があったが、中東諸国にアフリカ選手が帰化しているので簡単なことではないと考えているが、東京オリンピックでの目標が、10000m入賞、5000m決勝進出であるので、アジア大会のメダルはマストと考えている。
 取り組みについては、2017年に引き続き、3000mのスピード強化、高所トレーニングの2つを継続してやっていきたい。3000mの強化については、先ほども上がったように7分台で走る者が9名出た。至近3年間がすべて1名であったことを考えると、スピード強化が図れたのではないかと考えている。今年度は、7分45秒を複数名出すことを目標に、スピード強化に取り組んでいく。

高所トレーニングについては、アメリカチームの実施例が情報として入っているので、それをモデルとした形で長期間の高所トレーニングに取り組みたいと考えている。5月から9月までの間に4~5回の合宿を計画している。そうした取り組みで力をつけていきたい。

昨年度、3000mランキングトップとなった鎧坂哲哉、3000mでU20日本記録を更新(7分54秒79)した遠藤日向、今年1月から長期間のアメリカ合宿に行っている松枝博輝あたりを、今年度期待できそうな選手として挙げておきたい。


■男子走高跳:トップ8ターゲット



吉田孝久オリンピック強化コーチ

走高跳では、衛藤昂と戸邉直人の2人を中心に強化を進めてきた。この冬は、あまり合宿を行わずに、JISSで比較的頻繁に練習を行い、技術力を上げることを行ってきた。

今年度の目標はアジア大会、それから、これから始まるIAAFポイントランキング制度に対応していくことである。アジア大会は、世界選手権優勝のバルシム(カタール)をはじめ、シリア、中国、韓国に強い選手がいるためメダルを取るのも非常に大変だが、そこに割り込んでいきたい。また、IAAFポイントランキング制度については、これまでも室内大会を含め海外の競技会には数多く参戦しているので、引き続き、海外遠征をしながらポイント獲得ができるようにしていきたい。


■男子110mH:トップ8ターゲット



櫻井健一オリンピック強化コーチ


昨年度は、目標としていた世界選手権3名出場と準決勝進出の目標を達成し、順調に強化できている。昨年度の記録の水準でみると、上位4選手が史上初めて13秒4台をマークした年でもあった。また、学生のレベルも13秒5台が1人と13秒6台が3人、高校生でも13秒台が2人という形で、全カテゴリーでの記録の向上が見られた1年となった。

今年度はアジア大会がメインとなるが、並行して海外の試合で結果を出すことを目指す。積極的に海外へ選手を派遣し、海外で自己記録や日本記録の更新を達成させ、それをアジア大会につなげることで、その先のドーハ(世界選手権)、東京(オリンピック)に結びつけていくようにしたいきたい。核となるのは、増野元太、高山峻野、大室秀樹、矢澤航の4人。また、今春から社会人になった金井大旺が非常に好調なので、金井も加えて競争を図り、日本記録を確実に更新していける状態にしたい。

東京オリンピックに向けては、まず、アジア大会で金メダルを取ることがステップとなる。中国に13秒2台が1人、クウェートに13秒3台と13秒4台が各1人、韓国に13秒3台が1人、インドにも13秒4台が1人と、アジアのレベルはかなり上がってきている。そのなかでしっかりと勝負して結果を出すことが、ドーハ、東京につながっていく。海外の経験を積みながらアジア大会で結果を出せるよう、引き続き強化していきたい。


■男子十種競技:トップ8ターゲット



松田克彦オリンピック強化コーチ

昨年は、右代啓祐、中村明彦ともに少し怪我に苦しんで、点数が伸びない状態だった。ただ、2人ともケガは完治していて、順調にこの冬を過ごしてきている。中村は、例年室内大会に出場していたが、今年はじっくりトレーニングを積み、グランプリプレミア(東京コンバインド)でスタートし、日本選手権で自己記録を出せるように強化を進めている。右代に関しては、2月にニュージーランド選手権に出場し、点数は伸びなかったが、内容的には初めて8000点を出したシーズン(8037点、2012年)と同じような流れで、練習を積むことができている。

この2人と中心にして、強化を進めているが、今年は若手の丸山優真を強化対象に加えた。若い選手からの刺激と、3人による国内での三つ巴の構造をつくることを考えた強化を始めている。丸山は、この冬に、短距離の多田修平とともに海外でトレーニングを積んできた。いい結果が出そうな状況にある。

そうした状態のなかでアジア大会2連覇は確実にとっていきたい。また、海外の試合における8000点オーバーを意識し、常にそれが実現できるような強化を進めていく。また、特に、夏場の大会での結果が出ていないので、暑熱対策等も考えながら取り組んでいく計画を立てている。


※以下の種目については、担当オリンピック強化コーチ欠席により、担当ディレクターより報告がなされた。


■男子400mH:メダルターゲット
(山崎ディレクター)

安部孝駿、野澤啓祐が復活してきたので、この2人が中心となってくる。アジアで戦うというところもあるが、昨年の世界選手権の反省を生かして、より洗練させて、よりインターナショナルのレベルでやっていけるように、レースペースからの見直しに取り組んでいる。


■男子800m:トップ8ターゲット
(山崎ディレクター)

川元奨については、トレーニング等は順調で、室内シーズンに出場して800mで1分47秒78の室内日本記録、1000mで2分22秒36の室内日本最高記録を樹立したが、その後、少し疲れが出ているとのこと。屋外シーズンは、当初、マウントサックリレー(アメリカ)で初戦を迎える予定だったが、これを回避して、国内大会からスタートさせる。室内大会で状況がよかったことが今後どう影響するか。室内シーズンにどう取り組むかの検討が必要であることは冒頭で少し触れたが、男子800mでは、すでにこれに試験的に取り組んでいる。それらの評価も、今回出るのではないかと考える。


■男女3000mSC:トップ8ターゲット
(山崎ディレクター)

3000mSCの選手たちは、冬季シーズンは室内大会やクロスカントリー等に出場し、阪口竜平が3000mで7分51秒95をマーク(※室内学生記録を上回ったが規格外トラックのため公認されず)。また、山口浩勢もクロスカントリー日本選手権(10km)で2位の成績を収めた。また、塩尻和也も昨年トラックの10000mで27分台(27分47秒87)を出しているということで、今年も日本記録(8分18秒93、2003年)近くまで行くのではないかと考えている。このほか、アメリカの大学へ進んだ打越雄允(ボイシ州立大)が屋外初戦(3月31日)で8分38秒32をマーク。アメリカを拠点としてのトレーニングということで日本とは違うアプローチのなかで記録を出している。彼のような若い選手が出てくることにも期待している。

女子については、学生から実業団に進む選手が多く、移行期といえる状況にある。そのあたりがどう影響してくるか。3000mSCのエキスパートである河野ディレクター(大塚製薬)や、オリンピック強化コーチでもある岩水嘉孝氏(資生堂)のところへ行く選手もいるので、その選手たちが専門的な技術やノウハウを学び、実業団で羽ばたくことを期待したい。


■女子リレー:トップ8ターゲット
(山崎ディレクター)

昨年は、女子リレー種目の活動がなかったが、今年は積極的に活動していく。すでに4月9日には、シンガポールオープンに向けて出発することになっており、この大会にはリレーとして出場するほか、個人も出場を予定している。また、5月のゴールデングランプリでも、4×100mR、4×400mRの両種目に出場を予定している。男子にならって、より実戦を積むなかでリレーを強化しながら、個人の力を刺激して高めていく方針である。女子はまだ過去に海外で納得のいく記録が出せていない。まずは4×100mRで、きちんと結果を出していくことを目指す。


■男子走幅跳:トップ8ターゲット
(山崎ディレクター)

森長正樹オリンピック強化コーチのもと、卒業生を含む日本大学勢の仕上がりがよいと聞いている。海外でのトレーニングのほか、すでに海外で競技会にも出場しており、よりアグレッシブな取り組みを進めているので若手の選手たちへの期待がある。特に、橋岡優輝あたりが記録を出しそうだという話も聞いている。


■男子三段跳:トップ8ターゲット
(山崎ディレクター)

山本凌雅、山下航平といった代表クラスの選手たちが順調に冬季トレーニングを終えている。山本は、中助走跳躍で自己記録を出しているので、それらがこれからシーズンインに向けてどう移行するかが大切になってくる。

この種目では、まずは、アジアエリアでどう戦えるかが、今後、非常に大事になってくる。中国勢との戦いを制することが重要になるので、アジア大会できっちり結果を出すこと、メダルを取ることが、東京オリンピックにもつながっていくと思われる。


■女子長距離:トップ8ターゲット
(河野ディレクター)

昨年12月末にJISSで1泊2日の合宿を行い、簡単なメディカルチェックと2017年度の反省と2018年度の強化方針を、対象選手より専任コーチに説明した。その後は、合宿は実施せずに各チームでの強化を優先してきたが、冬季の試合結果を見る限りは、春先に向けて順調にトレーニングが積めている。

2018年度の目標と強化方針については、アジア大会のメダル獲得を最大目標に掲げながら、2年後の東京オリンピックを見据えて、記録にチャレンジし、3000mと5000mの記録を大きく動かす年としたい。3000mでは日本記録更新(8分44秒40、2012年)を、5000mでは14分台を目指す。主な大会としては、ゴールデングランプリで3000mを実施するので、そこに1つのターゲットを絞って記録を狙っていく。日本選手権はもちろんだが、ホクレンディスタンスチャレンジ、ヨーロッパ遠征等、7月で2~3試合に出場して、アジア大会に臨む流れを計画している。

また、東京オリンピックまでにトラックを専門として戦う選手を確立していきたい。期待する選手としては、鈴木亜由子、鍋島莉奈、福田有衣、木村友香、森田香織、松崎璃子。このあたりが代表争いにはかかわってくるのではないかとみている。


■ワールドチャレンジ種目
(山崎ディレクター)

・女子800mでは昨年、北村夢が日本歴代2位の2分00秒92をマークしている。今年は、マウントサックリレー、ゴールデングランプリあたりで日本記録更新を狙っていきたいとしている。

・現在把握している限りでは、女子の一部種目では、IAAFワールドランキング制度による順位と、自己記録による世界リストの順位との間にかなり開きが生じる例がある。例えば、七種競技のヘンプヒル恵は、ワールドランキングだと27位(2017年世界リスト50位)になったり、三段跳の宮坂楓はワールドランキングだと47位(2017年世界リスト107位)になったりというように、記録による世界ランキングよりも順位がよくなっている。ともにワールドチャレンジというカテゴリーにある種目だが、このように女子の場合は、参戦する競技会の選び方やそこでの結果によって得られるポイント次第では、純粋な記録よりも順位を上げることが可能で、世界で戦える水準に届いていない種目でも、一概に「オリンピックに参加できない」ものではなくなるかもしれない。このあたりはもう少し分析を重ねて、どういう大会に出ていけばいいかを詰めていきたい。ただ、一方で、ワールドチャレンジのカテゴリーでは、昨年から「アジアの競技会に積極的に参加していく」という戦略で進めている。この方針については変わっていないので継続してやっていきたい。


>>2018年度日本陸連強化委員会目標方針説明Vol.1
>>2018年度日本陸連強化委員会目標方針説明Vol.2

(取材・構成:児玉育美/JAAFメディアチーム)

※本稿は、4月6日に行われたメディアに向けた2018年度強化目標方針説明で、強化委員長はじめ、各担当者が話した内容をまとめたものです。より正確に伝わることを目的として、説明内容の順番を変える、補足説明を加える等の編集を行っています。

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