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2025.08.20(水)

【ANG福井】レポート&コメント:村竹が日本人初の12秒台!瀬古・栁田・福部の3名が新たに参加標準記録を突破!



「選手も観客も楽しめる欧米の競技会のようなナイター陸上」の実現を目指して、福井陸上競技協会が2019年に誕生させたAthlete Night Games in FUKUI(アスリートナイトゲームズイン福井。以下、ANG)。2023年度からは日本グランプリシリーズにも参画し、今年は第14戦福井大会に位置づけられています。「好記録が誕生する大会」として、選手たちからもファンからも強い支持を得ていますが、今年は、お盆休み最中となる8月15・16日に、福井市の県営陸上競技場(9.98スタジアム)で開催されました。これは、9月に開幕を控える東京世界選手権の参加標準記録有効期間が8月24日で終わることを考慮してのスケジュールで、世界選手権に向けて意欲を燃やす選手たちが、気迫に満ちたパフォーマンスを連発しました。
男子110mハードルでは、村竹ラシッド選手(JAL)が、日本人で初めて13秒台を突破する12秒92の“歴史的”日本新記録を打ち立てたほか、新たに3選手が東京世界選手権参加標準記録を突破。各種目でさまざまな好記録や新記録が続出し、来場した観客を魅了しました。

村竹、今季世界2位の12秒92!
史上14人目、アジア2人目の12秒台ハードラーに



近年、著しいレベルアップが続き、世界でもトップ水準に位置するようになった日本の男子110mハードルですが、大会2日目の8月16日、その歴史をさらに大きく前進させる偉業が成し遂げられました。すでに東京世界選手権代表に決まっている村竹ラシッド選手(JAL)が、日本人で初めて13秒を切る12秒92(+0.6)の日本新記録をマークしたのです。この記録は世界歴代11位タイとなるもので、アジア人としては、樹立当時世界記録であった12秒88(2006年)のアジア記録を持つ劉翔選手(中国、2004年アテネオリンピック金メダリスト)に次ぐ2人目の12秒台で、まさに歴史的快挙といえるパフォーマンス。2023年に同じ順天堂大の泉谷駿介選手(現住友電工)に並ぶ記録としてマークした13秒04の日本記録を、一気に0秒12更新しました。この結果、村竹選手は、今季世界リストで2位に浮上。堂々のメダル候補として、8月27~28日に行われるダイヤモンドリーグファイナル(チューリヒ・スイス)を経て、9月の東京世界選手権に臨むこととなりました(村竹選手のコメントは、別記ご参照ください)。
なお、男子110mハードルでは、2位でフィニッシュした阿部竜希選手(順天堂大)も13秒12の好記録をマーク。これは、7月にドイツで行われたワールドユニバーシティゲームズで金メダルを獲得した4日後に転戦先でマークした13秒23(+0.6)の自己記録を更新するもの。日本選手権の結果(3位)、次点の位置で世界選手権代表の座を逃した阿部選手ですが、今季は、昨年の自己記録13秒29から、タイも含めて6回の自己記録更新で日本歴代4位まで浮上する躍進を見せています。

また、この種目には、すでに世界選手権代表に決まっている野本周成選手(愛媛競技力本部)もエントリー。世界選手権に向けたトレーニングの進捗を確認する位置づけで予選のみの出場でしたが、13秒29(+1.4)と予選全体のトップタイムをマーク。順調な足どりを印象づけました。


男子走高跳で瀬古が、2m33!
6cmの自己新で世界選手権参加標準記録を突破!



世界レベルの好記録は、大会初日の8月15日にも誕生しています。夕刻から行われた男子走高跳で、瀬古優斗選手(FAAS)が、今季世界リスト4位タイとなる2m33にバーを上げ、これを見事に成功させたのです。2m33は日本歴代2位タイで、屋外では2006年に記録された当時の日本記録(醍醐直幸、富士通)に並ぶ最高記録です。
この日、2m14から試技を開始して2m20で優勝を決めた瀬古選手は、2m26を2回目に成功させたのちに、2m30を3回目に跳んで2021年にマークした2m27の自己記録を更新すると、世界選手権参加標準記録に並ぶ2m33を2回目にクリア。バーに全く身体が触れないノータッチでの鮮やかな跳躍に、会場からは大きなどよめきが上がりました。戸邉直人選手(JAL)が2019年に樹立した2m35の日本記録を1cm上回る2m36の攻略は果たせなかったものの、この種目における参加標準記録突破者第1号に。男子走高跳は、WAワールドランキング(Road to TOKYO)において、2023年ブダペスト世界選手権、2024年パリオリンピックで2年連続入賞を果たしている赤松諒一選手(SEIBU PRINCE)を筆頭に、6選手がターゲットナンバー(36)内に位置する「超激戦区」ですが、今大会の結果で、日本選手権5位の成績を収めている瀬古選手が、代表入りに向けて、大きなアドバンテージを手にする形となりました(瀬古選手のコメントは、別記ご参照ください)。


栁田、予選で追い風参考ながら9秒92
決勝は10秒00で参加標準記録をクリア!



世界選手権出場権獲得に向けて、日本選手権以降も激しい戦いが繰り広げられている男子100mにも、代表切符を狙う選手たちが多数出場し、予選から高水準のレースが繰り広げられました。激戦を制したのは栁田大輝選手(東洋大、ダイヤモンドアスリート修了生)。予選で、追い風参考記録も含めた国内最速となる9秒92(+3.3)を叩きだして会場を騒然とさせると、決勝でも圧巻の強さを見せて先着し、東京世界選手権参加標準記録にピタリと並ぶ10秒00(+0.3)での優勝となりました。日本歴代5位タイとなるこの記録は、2023年と2024年に2度マークしている10秒02の自己記録を0.02秒更新する素晴らしいもの。しかし、栁田選手にとっては、「複雑な心境」としか言いようのない結果でした。

今季は、アジア選手権男子100mの2連覇を筆頭に、春先から好調に推移してエントリーリストトップの立場で日本選手権を迎えていた栁田選手ですが、その日本選手権を、不正スタート(フライング)により予選で失格。世界選手権代表の座を得るためには、サニブラウンアブデルハキーム選手(東レ、ダイヤモンドアスリート修了生)が出している資格記録(9秒96)以上のタイムを出すことが必須となっていたからです。予選は、これを上回る9秒92をマークしたものの無情にも追い風参考記録。気を取り直して再度挑んだ決勝は、本来は大いに喜ぶべき参加標準記録に達しての自己新記録ながら、求めていた9秒95には届かず、「もうちょっと追い風が吹いてくれていたら…」とつい思ってしまうコンディションでした。レース後には、「こんなに喜べない自己新があるなんて」と心のうちを明かしていた栁田選手ですが、資格記録有効期間が終了する8月24日までに、あともう1試合に出場を予定。可能性に懸けて最後までチャレンジする意向です(栁田選手のコメントは、別記ご参照ください)。

栁田選手に続いて、2位でフィニッシュしたのは、9秒台スプリンター(9秒98)の小池祐貴選手(住友電工)。予選で10秒11(+1.1)、決勝では自己3番目の10秒08(+0.3)と、2レース続けてシーズンベストを更新しました。日本選手権5位の小池選手は、参加標準記録(10秒00)を突破すれば、すでに選考条件を満たしている桐生祥秀選手(日本生命)に次ぐ位置へと浮上できる状況です。残るチャンスで、2019年以来の自己記録更新を目指します。
このほか、予選では、日本記録保持者(9秒95、2021年)の山縣亮太選手(セイコー)が、10秒08(+0.9)のシーズンベストをマークしました。東京オリンピック出場を果たした2021年以降、ケガによる戦線離脱を含めて、長く苦しい時期を過ごしてきた山縣選手が10秒0台で走るのは、実に日本記録を樹立した2021年6月の布勢スプリント以来。世界選手権代表の座をつかむためには、自己記録以上のタイムが必要になりますが、やはり有効期間ぎりぎりまで挑戦していく計画です。


福部が、12秒73で待望の参加標準記録突破
本田&島野は、学生初の12秒台!



大会2日目、会場全体のボルテージを一気に高めたのは、女子100mハードル決勝だったと言ってもよいでしょう。日本記録保持者(12秒69)の福部真子選手(日本建設工業)が、世界選手権参加標準記録ピタリの12秒73(+1.4)で優勝。2位の清山ちさと選手(いちご)が日本歴代4位に浮上する12秒84の自己新記録で続いたほか、3位の本田怜選手(順天堂大)が13秒91で学生記録を奪還、12秒97 で5位となった前学生記録保持者(13秒02)の島野真生選手(日本女子体育大)とともに、学生ハードラーとしては初の12秒台突入を果たしたのです。4位でフィニッシュした大松由季選手(CDL)も、昨年出した自己記録に0.01秒と迫る12秒95のセカンドベストで今季自己最高を更新。実に上位5選手が12秒台でフィニッシュラインを駆け抜けたハイレベルなレースでした。

優勝した福部選手にとっては、苦労の末にようやく到達した参加標準記録でした。昨年は、日本人で初めて12秒6台に突入したあと、パリオリンピックで準決勝進出を果たす活躍を残しましたが、シーズンオフに菊池病と呼ばれる高熱やリンパ節の腫れが生じる原因不明の良性リンパ節炎を発症。今季は、春先の日本グランプリシリーズを欠場し、アジア選手権代表も辞退と、発熱や体調を考慮しながらの戦いに。ワールドランキングでの資格獲得が難しい状況となったため、参加標準記録を突破しての出場を目指してきました。

日本選手権は、きっちり3位の結果を残し、準決勝では12秒75(±0)の好記録をマークしたものの標準記録には届かなかったため、8月からは記録を狙っての連戦を敢行。予選1本に絞って記録を狙った富士北麓ワールドトライアルは12秒80(+0.9)でフィニッシュした際に転倒して全身に擦過傷を負い、8月9日の実業団・学生対抗では、膝やアキレス腱にも不安が出た状態で走って12秒74(+1.1)。わずか0.01秒及ばず、涙する場面もありました。しかし、満身創痍の状態ながら、心を奮い立たせて本大会に出場し、高い集中力でレースに挑んで見事にクリア。2大会ぶり2回目となる世界選手権出場に向けて王手をかけました。記録が確定すると、一緒に走った選手たちが、まるで自分のことのように喜び、福部選手を祝福していた様子が印象的でした(福部選手のコメントは、別記ご参照ください)。



200m代表の鵜澤は20秒11の自己新で圧勝
やり投代表の﨑山は77m27で現状をチェック



この大会には、上記の村竹選手や野本選手のほかにも、日本選手権終了の段階で、世界選手権代表に内定している選手が出場。世界選手権本番に向けて、最後の仕上げに入っていくこのタイミングで、これまでのトレーニングの成果や課題を確認しました。
男子200mでは、鵜澤飛羽選手(JAL)が出場。初日に行われた予選を20秒46(+0.3)のトップタイムで通過すると、決勝は後続に0秒55の差をつけ、日本歴代3位タイとなる20秒11(+0.9)で圧勝。コーナーを抜ける直前付近で、腰が入りすぎる状態となって「無理やり直して直線に入った」そうですが、「そこで体力を奪われてしまい、残り30mでやりたいと思っていた動きができなかった」と振り返りました。
しかし、そんななかでもアジア選手権と日本選手権の両決勝でマークした自己記録(20秒12)を0.01秒更新。「自分の感覚や走りは、いい形がつかめてきているので、今回の結果を鑑みつつ、(世界選手権までに)あともう一回、しっかり練習する期間をつくりたい」と、順調に準備が進んでいる様子を伺わせました。

大会1日目に行われた男子やり投には、日本選手権で日本歴代2位の87m16をマークして参加標準記録(85m50)を突破し、やはり激戦区であったこの種目で、代表第1号となった﨑山雄太選手(愛媛競技力本部)が出場。1回目に投げた77m27が最高で、3位の成績で競技を終えました。
この大会には、指導を仰ぐ濱元一馬コーチから「1本だけでもいいし、6本投げてもいい。記録は気にせず、やってきたことを確認しよう」と言われて臨んでいたそうで、競技後には「結局、6本全部投げてしまった」と苦笑いしながらミックスゾーンに姿を現しました。「強度の高い練習をしてこなかったため、上半身と脚のタイミングをうまく合わせることができず記録にはつながらなかったが、この夏、やってきたことを半分以上はできたように思う」と、確認したかった事柄については、上々の手応えをつかめた様子。この好感触の精度を高めるべく今後は強度を上げたトレーニングに取り組み、世界選手権本番を迎える予定です。


走幅跳では津波が8m13、やり投は相原が81m54の好投
女子100mは御家瀬が日本歴代4位の11秒33で制す



このほかにも各種目で好記録がマークされています。女子100mは、御家瀬緑選手(住友電工)が日本歴代4位に浮上する11秒33(+1.0)の自己新記録で優勝。男子やり投では、相原大聖選手(OniGO)が自己記録を大きく更新する81m54で制するとともに、80mスローワーの仲間入りを果たしました。男子走幅跳に勝ったのは、ワールドランキングでターゲットナンバー(36)内に入っている津波響樹選手(大塚製薬)。参加標準記録(8m27)の突破は叶わなかったものの、サードベストとなる8m13(+1.8)をマークしたことで、ランキングポイントの上乗せに成功しています。
また、男子砲丸投では、日本選手権チャンピオンの森下大地選手(KAGOTANI)が、5月にマークした自己記録を3cm更新する18m33をプットして優勝。女子200mは青野朱里選手(NDソフト)が23秒42(+0.5)で、女子800mは西田有里選手(立命館大)が2分06秒94で、それぞれ制しました。また、女子ハンマー投は、前回この大会でマークした66m82の学生記録を、今季、日本選手権で66m88へと更新して初優勝を遂げた村上来花選手(九州共立大)が64m65で2連覇。8月21~22日に日本代表として臨むアジア投てき選手権(韓国)に向けて弾みをつけています。


【日本新記録樹立者コメント】

男子110mハードル
村竹ラシッド(JAL)
優勝 12秒92(+0.6)=日本新記録



もし出るとしたら、(12秒)99とか98とかの記録だと考えていたので、思ったより「いい12秒台」が出せた(笑)。これまでずっと「12秒台を出す、出す」と言い続けていたので、やっと有限実行できて、ひと安心している。
決勝は走っていて、すごく感覚がよかった。予選は5台目あたりで風に煽られ、もたつくところがあったのだが、決勝ではそれもなく、むしろいい形で(スピードに)乗ることができたので、「これは(12秒台が)出る」と思って最後まで走った。ただ、ここまで出るとは思っていなかった。
この大会は、12秒台を狙っていたというわけではない。(13秒)0台は出したいなと考えていて、今年のレースタイムのアベレージが13秒15くらいだったので、そのアベレージよりは上のタイムで走れたら…と思っていた。そういう意味でも、120点、140点くらいをつけていいのではないかと思っている。
(12秒台は)中盤からのスピード感が全く違う感じ。まさに新感覚だった。なんか際限なく、どんどんスピードが上がっていくような感じがあり、10台目が終わっていっぱいいっぱいみたいなところもなく、あともう2~3台あっても行けそうな、そんな感覚だった。
(前戦となった)モナコのダイヤモンドリーグ(7月11日、4位:13秒17、-0.9)以降は、抜き脚の動きを改善してきた。もっとコンパクトに、かつ上から下ろせるように可動域を広げたり、支持脚の大殿筋や中殿筋を使えるようにしっかり刺激を入れてからトレーニングに入るようにしたりしたほか、山崎(一彦)先生から教えていただいた抜き脚の補強にもいろいろ取り組んだ。2週間という短い期間ではあったが、そこで身になったものは多かったので、今後も継続してやっていこうと思う。

<今季世界2位ということへの感想は? と問われて>
まあ、2位なので…(笑)。ちょっとなんともいえないところである(笑)。もちろん、今日初めて12秒台を出したことは、すごく大きな自信になるし、1回で終わらせてしまっては絶対にダメだと思っているので、このタイムと同じくらい、それ以上を狙って、残るダイヤモンドリーグファイナルと世界選手権の2戦をしっかり走っていきたい。
「12秒台を出せるな」と思ったのは、去年の日本選手権。準決勝(13秒14、-1.0)がすごくいい感覚で走れたので、それを踏まえて「出るだろうな」とは思っていた。ここからダイヤモンドリーグファイナルと世界選手権まで短い期間となるが、今日のレースをちゃんと分析して、「12秒台を安定させるにはどうすればいいのか」ということを、しっかり(自分の)モノにしたい。

<世界選手権での目標を、の問いに>
これもずーっと言い続けていることだが(笑)、「12秒台を出して、メダルを取る」こと。それを一番の目標にして、今年ずっとやってきたので、今日の記録以上のものを求めて、残り2戦を最後まで駆け抜けたいと思う。
 
 

【世界選手権参加標準記録新規突破者コメント】

男子100m
栁田大輝(東洋大学) ※ダイヤモンドアスリート修了生
優勝 10秒00(+0.3)=世界選手権参加標準記録突破



予選は追い風参考とはいえ9秒92で、決勝は10秒00の自己新記録。「こんなにも喜べない9秒92と10秒00ってあるのだな」という心境。予選で9秒92のタイムを見てテンションが一気に上がって、すぐに風(+3.3)を見て一気に下がって、(気持ちを切り替えて)決勝ではしっかり10秒00の自己新が出せて、でも、出さなければいけない記録(代表入りに必要な9秒95)には届かなくて…。どう感情を受け入れたらいいのかが難しい1日だったなと思う。
決勝は、予選の感じで最後まで走れたら、「もしかしたら(9秒95が出せるかもしれない)」という思いはあったが、日本記録(9秒95)と考えて走ると、(力んで)いいことはないと思ったので、「ベストを出そう」というくらいの気持ちでスタートラインに立った。実際、ベストを出すことはできたわけだが、「そうじゃないんだよ」という感じ。前半は良い走りができたと思うが、やはり頭の中に記録がちらついてしまったところもあって、必要以上に力が入っていたかもしれない。ただ、両親からはいつも、「とりあえず毎回ベストを目指して頑張れ」と言われていて、自分自身もそれを心がけてきた。初心に返って考えるのなら、久しぶりにそれが達成できてよかったなと思う。
予選の9秒92は、関東インカレのとき(9秒95、+4.5)のように「風に押された」という感じはなく、自分でしっかりと走りきることができたので、いつかは出せるタイムという感覚があるし、決勝も、ほぼ無風の状態で出た記録なので、「風、やむなよ」(笑)という思いもある。でも、それはコントロールできないことだし、そもそも、(日本選手権を失格して)こんなデッドラインぎりぎりまで、こういう状況にしてしまった自分が一番悪い。最初は、ここ(福井で)の良い条件でも走れなかったら、潔く諦めようと思っていたが、ここまで走れたので、今は「やれることはすべてやろう」という気持ち。(資格獲得有効期間)8月24日まで、最後の悪あがきをしたい。
 

男子走高跳
瀬古優斗(FAAS)
優勝 2m33=東京世界選手権参加標準記録突破



競技が終わってから、(2m)33にバーをかけてもらったのだが、バーに手を伸ばしてみて、「俺、これ、跳んだん?」と思った。今もそういう気持ちで、信じられないところと嬉しい部分が大きくある。(2m)33はノータッチ(でのクリア)だったと言われたが、実は、踏み切ってからの記憶がないので、信じられない気持ちがある。今日は、自分でも(踏み切り前の)最後の2歩だけで跳んでいるような感じになっているなと思っていたなか、一緒に試合に出ていた選手が「間延びしているよ」と指摘してくれたので、そこを少し修正した。そうしたら、うまくパーンとハマって(自己新記録の)2m30を跳ぶことができた。そのあとの跳躍については、よく覚えていない。
この大会が、自分にとっては、東京世界陸上に出るための、(有効期間が終了する8月24日前の)最後の試合であったため、「運が良ければ(2m33を)跳んでやろう」という気持ちで臨んでいた。仕上がり的にも、ウォーミングアップの時点で「(調子が)いいんじゃないかな」と思っていたので、着々と跳んでいく形となった。2m20で1回目を失敗したところは反省点。しかし、本当に「これ(参加標準記録の突破)が現実になるとは…」という気持ちである。

<記録を更新した背景として、何か変化したところはあるのか? の問いに>
具体的に変わったところを挙げるとしたら、助走の最後の部分。シーズン序盤は、踏み切り前の6歩でスピードを上げて強めに踏んでいくイメージでやっていたのだが、全般にメリハリのないリズムになっていることを自分でも感じていた。日本選手権が終わるまでは変えることができなったけれど、そのあとベルギーへ武者修行のような形で(転戦に)行かせてもらったときに、最後の4歩だけをしっかり踏んでスピードを上げ、リズムアップ、テンポアップして踏み切るやり方に変えてみた。この大会は、その踏み切りに変えて2戦目。ベルギーの大会で試したときよりも、ラストの4歩がうまく行き、跳ぶことができたように思う。
日本選手権が2m15に終わっていたので、直後に2週間行くことになったベルギーの武者修行は、(参加標準記録の2m)33という記録はもちろん目指すけれども、正直、現実的なラインとして、本当に自分が跳べるのかなという思いがあった。しかし、「もがいて、苦しんで、やっていくなかで得られるものがあるはず」と(福間博樹)コーチからも言われて実際に出向き、自分なりにもがいてやってきたことが、今日につながっている。

<2022年・2023年と出場に届かなかった世界選手権への思いは? の問いに>
「やっと(出ることができるの)か」と感慨深い気持ち。でも、ここがゴールではないし、(世界選手権に)出て終わりでもない。真野さん(友博、九電工。2022年オレゴン大会8位)や赤松さん(諒一、SEIBU PRINCE、2023年ブダペスト大会8位、パリオリンピック5位)に続いて、しっかりと結果を出して、また、取材をしてもらえるように(笑)頑張りたい。
具体的にはまだ何も考えていなくて、ここから世界選手権に出られる前提で、「今日以上のものを(本番で)出すために何ができるか」をコーチと一緒に考えていくことになる。僕は、試合後半になるとエネルギーがなくなり“ガス欠”になることが多いのだが、今日は、観客の皆さんがたくさんいらしてくださって、パワーをくださったおかげで、後半もちゃんと跳ぶことができた。東京世界陸上でも、今日のように、ずっと「アドレナリン出しっぱ」の状態にできたら…(笑)。観客の皆さんの力をお借りて、しっかり臨みたい。


 

女子100mハードル
福部真子(日本建設工業)
優勝 12秒73(+1.4)=世界選手権参加標準記録突破



予選のときに、清山さん(ちさと、いちご)が速報タイムよりも(正式結果が)下がっていたので、(速報記録として12秒)72が出たのを見たときは、「あー、また(12秒)74かあ」とまず思った。(世界選手権参加標準記録である12秒)73になってくれて、本当によかった。
(前週の実業団学生対抗で参加標準記録に0.01秒届かなかったあと)たくさんの方々から、「あとひとつかみ。頑張ってほしい」ということを言っていただいたし、先週一緒に出たハードルの選手のみんなもすごく応援してくださったし、親も応援していると言ってくれる1週間を過ごした。脚の状態(膝とアキレス腱)が悪化していなかったのと、コーチともいろいろ話して、練習ができていないなかでもやるべきことはできていて、世界の猛者の入り口に立ったのではないかということで、一人のアスリートとして、今日のレースは、高みを目指すつもりで臨んでいた。
先週のレースで、(ハードル間インターバルの)区間最高タイムが出ていたので、そこをしっかり出していくという課題がはっきりしていた。「そこをクリアすれば必然的にタイムは出せる」と思い、レースは、そこを意識して走った。また、今日は、日本選手権ぶりにすごく声援を浴びての試合となった。それも(標準記録に届いた)一つの要因だと思う。本当に感謝している。
このあとは、「できることをやっていく」ことを考えた取り組みになっていく。もちろん、記録を伸ばすうえでは、「ああしたいな、こうしたいな」のはあるのだが、「できるか、できないか」で言ったら、(病気や脚の痛みなどのことを考えると)今はできないことのほうが多いので、できることをやるしかないかなと思っている。
もっとうまく、波のない競技生活を送りたいとは思うのだが、でも、沈まないといいこともない。こういうふうに這い上がってきて走れたことは、自分の競技人生としては大きな一歩だと思っているので、まだまだ頑張りたい。
(世界選手権出場が決まったら)世界には、3回目のチャレンジになる。一つでも多くラウンドを踏みたいという思いはずっと持っているが、まずは自分のタイム…、日本記録の(12秒)69を更新していかなければ話にならないレベルになっている。そこをしっかりと越えていけるよう、確実にやっていきたい。

 
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ

【東京2025世界陸上】9月13日~21日 国立競技場開催


◆期日:2025年9月13日(土)~21日(日)
◆会場:国立競技場(東京)
◆チケット情報:https://tokyo25-lp.pia.jp/  

▼東京2025世界陸上競技選手権大会 日本代表選手選考要項
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202403/27_103941.pdf
▼東京2025世界陸上 参加資格有資格者一覧
https://www.jaaf.or.jp/news/article/20947/
▼東京2025世界陸上 日本代表選手紹介
https://www.jaaf.or.jp/tag/?tag=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E4%B8%96%E7%95%8C%E9%99%B8%E4%B8%8A+%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E7%B4%B9%E4%BB%8B



【日本陸連100周年】11月29日 国立でセレモニー実施!



>>https://www.jaaf.or.jp/100th/
2025年、日本陸連創立100周年の節目の集大成となる記念セレモニーイベントを、陸上界の“聖地”である国立競技場にて開催いたします。
本イベントは、「アスレティックス・アワード」とも連動し、まさに陸上の魅力と可能性を凝縮した一大記念行事となります。
この一年、国立競技場は、ゴールデングランプリ、日本選手権、そして世界選手権と、数々の熱戦が繰り広げられる舞台となります。そしてその締めくくりを飾るのが、「陸上界が一つになり、過去・現在・未来をつなぐ“祝祭の一日」となる100周年セレモニーです。
これまでの100年の歴史・偉大な先人に敬意を表しながら、新しい時代の扉を開く―その第一歩となるようなイベントを創り上げていきます。
日本陸連100年の歴史が、未来へのバトンをつなぐその瞬間を、ぜひ皆さん自身の手で、一緒に創りあげましょう。

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