EVENT REPORT

イベントレポート「陸上をもっと身近に」長野陸協の想いが結実し、
長野市の街中で走高跳を初開催
~2025 Jumping Festa in NAGANO-OCS~

長野陸上競技協会(以下、長野陸協)が10月11日、長野市街地のながの表参道セントラルスクゥエアで、走高跳を楽しむイベント「2025 Jumping Festa in NAGANO-OCS」を開きました。長野県では2028年に「信州やまなみ国スポ」の開催を控えています。3年後を見据え、より多くの人に陸上競技に関心を持ってもらおうと、長野陸協などが初めて企画しました。

県内でいわゆる“ストリート陸上”が開催されるのは初めて。長野陸協の内山了治会長代行に聞くと、1年ほど前から構想していたそう。そこで相談したのが、2016年リオデジャネイロ、21年東京の両五輪に出場した衛藤昂選手(34)=神戸デジタル・ラボ=でした。衛藤選手は神戸市で毎年「JUMP FESTIVAL」を企画、開催している一般社団法人Jump Festivalの代表理事でもあります。「2025 Jumping Festa in NAGANO-OCS」の5日前には、滋賀県彦根市で行われた「わたSHIGA輝く国スポ」に出場し、2m20を跳んで6位入賞したばかり。休む間もなく長野に来て、今回は午前中に行われた小学生向けのクリニックの講師を務めてくれました。
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いざ迎えた当日。朝は小雨が降っていましたが、午前中の小学生向けクリニックの前にはいったん曇りに。いつもは子どもから大人までがそれぞれ穏やかな時間を過ごす市民の公園、セントラルスクゥエア。国宝善光寺と長野駅とを結ぶ表参道沿いにあり、1998年の長野冬季五輪では表彰式会場となりました。この日は長野陸協のスタッフたちの手によってウレタンが敷かれ、普段とは様相が様変わりしました。

午前9時前から続々と子どもたちが集まり始めます。受け付けを済ませ、9時半からクリニックが始まりました。約20人の小学生に向け、衛藤選手は「初めてやる動きにできないこともあると思うけど、チャレンジしてほしい」と呼びかけました。衛藤選手の弟で、2m24の自己記録を持つ勝田将選手(31)=三重教員AC=も指導者として参加。長野陸協の跳躍コーチたちも加わり、まずは跳躍のための動きづくりです。再び雨が降り始めましたが、リズムに合わせて小刻みにジャンプをしたり、ジャンプに合わせて手や脚を動かしたり、子どもたちは難なくこなしていきます。2人一組になって肩を押し合って弾む感覚をつかんだ後、ミニハードルを跳ぶなどし、いよいよ跳躍練習に。踏み切り足にかかわらず左右両方から助走し、ゴムバーを跳び越えます。

その後には2グループに分かれて記録会にも挑戦しました。跳べた選手には「おお~」と拍手が送られ、失敗跳躍には「おしい!」と周りの指導者や大人たちも一緒に悔しがっていました。衛藤選手はクリニック終了後、「クリアした時のうれしさを積み重ねていってほしい」と子どもたちを激励。3回の試技を失敗し、悔し涙を流す子どもの姿も見られました。「走高跳は跳べない悔しさを伴う競技。それも含めて楽しんでもらえたんじゃないかな」と振り返りました。

長野市から100kmほど離れた諏訪市から参加した城南小6年の芳賀慶多君は走高跳を中心に陸上に取り組んでおり、「衛藤選手は動きが軽かった」と驚いた様子。「トップ選手に教われることはめったにない。教わった動きは自分でもできそう。もっとうまくなって自己記録を伸ばしていきたい」と意欲十分に話しました。

楽しそうに体を動かす様子が印象的だった青木瑚都さんは、長野市の隣にある飯綱町牟礼小の3年生。普段は中長距離をメインに取り組んでおり、走高跳には初挑戦でした。「なかなか高く跳べなかったけど、脚を上げて跳ぶことが楽しかった」と笑顔。見守ったお母さんは「楽しそうにやっていました。どこに可能性があるか分からないので、いろいろやる中で好きな種目を見つけてもらいたい」と話していました。

お昼休憩を挟み、午後1時からはいよいよ競技会が始まります。女子3人、男子8人と出場者数は少人数のため、男女同時進行。断続的に降っていた雨も昼になってやみました。県内の中高生や一般選手に加えて、今夏の東海選手権優勝で2m24の自己記録を持つ勝田選手もエントリー。公式練習の段階から、勝田選手がはさみ跳びで軽々とバーを超えると、会場に居合わせた人たちから「うお~」と感嘆の声が上がっていました。

選手だけでなく、居合わせたスタッフ、保護者たちが1回ごとの跳躍を食い入るように見つめます。はじめは少し恥ずかしそうに手拍子を求めていた高校生も、競技が進むにつれて堂々と競技を楽しんでいるように見えました。表参道を通りかかった人たちも自然と足を止め、競技の様子に興味津々。孫と夫と訪れた市内の70代女性は「テレビで見たことはあったけどこんな近くで見るのは初めて。身長を軽く超えてしまうジャンプ力がすごい」。陸上競技場には足を運んだことがないとのことですが、「推しの選手や知り合いがいれば観に行ってみたい」と陸上競技に興味を示した様子でした。競技が進むにつれて徐々に観客は増え、見守っていた衛藤選手自ら会場にあった椅子を移動させて観客席を増設していました。

女子の部は、地元の長野日大高出身で大阪国際大4年の小林弓珠選手が1m60を跳んで優勝。「盛り上がるのかな、と心配もあったけど、思っていたよりも観客が多くて手拍子もしてくれた。普段の競技では味わえることのない雰囲気でした」。大学院に進学して競技を続ける予定で、「3年後の国スポに出て長野に貢献したい」と目標を語りました。

男子の部では、今夏の全国中学大会四種競技で4位入賞した浅間中3年の長峰和真選手が3回目で1m80を成功させ、長野高専専攻科2年の吉澤涼選手はこれまでの自己タイ記録の1m85をクリアするなど、中高生もそれぞれに見せ場をつくります。松本国際高2年の小平楓選手も軽やかな跳躍で会場を魅了しました。衛藤選手もマイクを握り、各選手の跳躍を解説してくれました。

しかしやっぱり会場を一番沸かせたのは勝田選手。小平選手が惜しくも3回失敗した1m90を、勝田選手は1回目でクリアして優勝が決まりました。さすが、2023年の日本選手権では4位入賞している実力者の跳躍は一段階も二段階も違いました。しかもウサギのかぶり物をかぶり、楽しそうに跳んでいます。そうして迎えた2m00も余裕を持って成功し、競技は終了。踏み切り足の右足のけがを押して長野に駆けつけてくれ、迫力あるジャンプを見せてくれました。「力が出るような形で盛り上げてもらい、楽しく跳べた。跳んでいる姿を見て『走高跳は楽しい』と思ってもらえればうれしい」と話しました。

同級生が出場していて観に来たという市内の高校生は、これまで陸上競技を観戦したことはなかったといいます。けれども「生で見ると迫力があって面白かった」と満足そう。「友達が出ていたり、音楽など他のイベントと一緒に開催されたりするようなことがあればまた観に来たい」と教えてくれました。
表彰式の後には、お楽しみ抽選会。協賛企業から寄せられたタオルや靴袋などのほか、旬のリンゴも当たるとあって最後まで会場は盛り上がりを見せました。
「また機会があれば絶対にエントリーしたい」と言葉に力を込めたのは、長野高専の吉澤選手。1m90の3回目の跳躍前には衛藤選手から「跳んでやろうと思って動きが硬くなっている。リズムを大切にいつも通りの跳躍を」とアドバイスをもらい、「4回目も跳びたいくらい3回目は惜しかった」と振り返ります。勝田選手の2m00の跳躍も間近で目の当たりにし「2mの大台は一つ次元が違うと思っていたけど、跳びたいという気持ちが湧いた」と興奮冷めやらぬ様子でした。競技会とはいえども、選手たちは勝敗よりも自らの跳躍に集中し、観客の皆さんの後押しも受けて伸び伸びとジャンプにつなげていました。

大きなトラブルもなく、長野では初めての試みとなった「2025 Jumping Festa in NAGANO-OCS」が無事に終了。衛藤選手によると、神戸以外でこうした走高跳のイベントが開かれるのは初めてだそうです。「競技が進むにつれて会場に人が増えていたのが印象的だった。自然と足を止めてくれる人がいるのは全国共通」と再認識していました。
内山会長代行は、ウレタンの運搬や参加者集めなど「準備は大変だった」と振り返ります。けれども「初めてにしては、通りかかりの人に関心を持ってもらえたと思う。選手もすごく楽しそうに跳んでいた」とうなずきました。そして続けます。「国スポに向けて、観戦に訪れる『陸上ファミリー』を増やすこと、運営の担い手を確保することが今後の課題。できればこうした催しを続けて、広めていきたい」。選手たちの力強いジャンプで街中に広がった陸上競技の楽しさを、もっと多くの人々に知ってほしいと願っています。

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