男子走高跳の衛藤昂選手(神戸デジタル・ラボ)らによって運営されている一般社団法人Jump Festivalが、11月3日に、街中走高跳「JUMP FESTIVAL in KOBE 2024」を開催しました。このイベントは、「 ジャンプでみんなにワクワクを」をビジョンに、2021年に設立されたJump Festivalの原点というべきもの。新長田駅(兵庫県神戸市)そばの若松公園に設置されている「鉄人28号モニュメント」の足元、通称「鉄人広場」において、毎年開催されています。
陸上が持つ魅力や可能性を、多くの人々に知ってもらいたいと願う『RIKUJO JAPAN』では、すでにJump Festivalで代表理事を務める衛藤選手へのインタビューを通じて、このイベントについて、話を伺ったばかり。実際にどんな人が集まって、どんな「ワクワク」が見られるのか!? 「百聞は一見にしかず」ということで、当日、会場を訪ねてみました。
11月最初の週末は、季節外れのルートを辿った台風21号由来の前線が各地に大雨をもたらし、交通網にも影響が出るスタートとなりました。しかし、「JUMP FESTIVAL in KOBE 2024」(以下、ジャンプフェスティバル)当日の11月3日は、前日の荒天が嘘のように回復。4回目となったジャンプフェスティバルは、さわやかな青空のもと、日射しが降り注ぐなかで開催されました。
会場となるのは、兵庫県神戸市長田区の若松公園内にある鉄人広場。JRと地下鉄が乗り入れている新長田駅から徒歩で3分弱程度の距離で、駅から商店街へと向かう途中に位置しています。この広場で迫力満点の存在感を放っているのが「鉄人28号モニュメント」。神戸市出身の漫画家、横山光輝さんが1956年に発表し、のちにアニメ化もされて絶大な人気を誇った作品「鉄人28号」に登場するキャラクターです。数々の名作を残した横山さんの偉業を称えるとともに、その作品の魅力を生かして、横山さんゆかりの街である新長田の活性化に取り組んできたNPO法人「KOBE鉄人PROJECT」が製作を企画。高さ15.3m、直立すると「身長18m」となる巨大なモニュメントが2009年9月に完成しました。以来、甚大な被害を受けた1995年阪神・淡路大震災からの復興と、さらなる地域活性化のシンボルとして、新長田の街を見守るとともに、地元の人々がさまざまな形で集う憩いの場として親しまれてきています。
イベントは、10時30分にスタート。兵庫県市川町が全国の自治体初の移動式情報発信拠点として導入したというステージトラック「愛アン8-10号(アイアンハート号)」が、市川町よりステージとして提供されたことにより、会場には電光掲示板つきの立派な仮設ステージが出現。まずオープニングが行われました。MCは、ラジオ関西のパーソナリティとして活躍する「トークの達人」ケーちゃん。このイベントでは、初回からMCを担当しています。
ケーちゃんの闊達な口調で始まったオープニングでは、夫の衛藤選手とともにJump Festivalで代表理事を務める女子走幅跳・三段跳の中野瞳選手(KAGOTANI)が登壇し、Jump Festivalを“自己紹介”。そして、街中で競技を行うジャンプフェスティバルについて、「まだ、国内では数少ないイベント」と述べたうえで、「(陸上)競技場では距離があるので、その迫力がなかなか感じにくいのですが、これだけ間近だと足音や選手の息づかいまで聞こえます。身長以上の高さを跳び越えていくすごさを、より体感していただけるんじゃないかなと思っています」と説明。また、「楽しみ方のコツは?」との問いかけに、「選手が触れそうな距離で走高跳を見られるのは、そうないことなので、できるだけ近くで、いろいろな位置から見てほしいなと思います」とアピール。さらに、広場の後方に並んだグルメブースも紹介し、「応援して、お腹が空いたら、ぜひ、足を運んでみてください!」と呼びかけました。
オープニングでは、スペシャルゲストとして、今回のイベントに参加すべく“出張”してきた日本陸連のマスコットキャラクター「アスリオン」も大々的に紹介していただきました。アスリオンは場内のあちこちを元気に動き回って、エキシビションマッチの盛り上げに大貢献。来場していた子どもたちから抱きつかれたり握手をしたり一緒に写真を撮ったりと、モテモテの1日を過ごしました。
このイベントのメインといえば、なんといっても走高跳のエキシビションマッチ! 今回は、兵庫県高校女子の部、兵庫県高校男子の部、日本トップ男子の部の3試合が行われました。跳躍マットは「鉄人28号モニュメント」の足元に配置され、選手たちは、鉄人に向かって助走していくシチュエーションで跳躍に挑みます。観客席は、商店街へと続く通りに沿ったエリアと、マットを真正面から見ることができるグルメブース前のエリア、そして、鉄人の真下となるマット後方のエリアの3箇所に、ガーデンテーブルとともにスツールが全部で130席ほど用意。それぞれのエリアで異なる迫力を楽しむことができますが、どの位置からも跳躍する選手を目の前で、しかも選手と同じ目線で見られることが特徴です。
エキシビションマッチが進んでいくとスツールはほぼ満席に。スツール席の後方に立って見る人、通りがかりに立ち止まって見入ってしまう人、さらには鉄人広場の対面にある商業ビルの2階に設けられている「鉄人バルコニー」から眺める人と、多くの観客から見守られるなかで、それぞれの勝負が行われました。試技の模様は、ステージトラック上に設けられた解説席で、MCケーちゃん進行のもと、高校女子はボランティアの稲葉陽世さんが、高校男子はJump Festivalメンバーで三段跳選手として活躍する山下祐樹選手(富士防)が、日本トップ男子の部ではボランディアの福本貴司さんが、それぞれ勝負の模様を解説。これらのペアによる掛け合いのなかで、走高跳のルールや、勝負の状況や各選手の心理状態、応援の仕方や見どころが、わかりやすく紹介されていきます。テンポよく行われるこの解説が各選手たちの迫力あるパフォーマンスと相俟って、来場者たちは、「走高跳の世界」へと、ぐんぐん引き込まれていきました。
イベント最初の種目として行われた兵庫県高校女子の部には8選手が出場。1m40から始まった試技は、1m50、1m55と、5cmごとに高くなっていきます。勝負所となったのは、1m55を成功した4人によって挑むことになった1m60。今季1m67の自己記録を2回跳んでいる戸田向日葵選手(神戸山手女子高校)が1回目で成功させて優位に立つと、そこで勝利を確定したのです。戸田選手は、一人で挑むことになった1m65を3回目で見事にクリアし、自己記録を3cm上回る1m70にも挑戦。残念ながら、この高さを跳ぶことは叶いませんでしたが、美しいクリアランスで観客を魅了し、勝利に花を添えました。
「来る前は、めちゃくちゃ緊張していたのですが、雰囲気が明るくて楽しい感じだったので、リラックスして跳べました」と振り返ったのは、田中ゆら選手(神戸山手女子高校)です。高校女子の部の第1跳躍者だった彼女は、このイベント自体としても最初にピットへ立つことになった選手。多くの人に近くから見つめられるという経験したことのない条件下での跳躍でしたが、緊張より楽しさが勝ったことでよい跳躍ができた様子。10月にマークしたばかりの自己記録に並ぶ1m55を2回目に成功させて3位で競技を終えました。自己新記録となる1m60にも挑戦。「どのくらい跳べるかなと思っていたけれど、今日は、いつもより身体が浮く感じがあった。跳べる希望が見えました。これが今シーズン最後の試合。いい形で終われてよかったです」と笑顔を見せました。現在、高校2年生。「今まで、ずっと県大会止まりなので、来年は、近畿大会やインターハイに行けたら…。もし、出ることができるのなら、来年のこの大会もぜひ参加したい」と話してくれました。
午後から始まった兵庫県高校男子の部は、7選手が出場して行われました。試技は1m70からスタートし、やはり5cm刻みでバーが上がっていきます。勝負が決したのは、4選手によって行われた2m00の試技。1m70からすべての跳躍を1回で跳んできた中本飛羽選手(市立尼崎高校)が、1回で成功させて、ここで優勝を決めました。続いて挑んだ2m05は、中本選手にとって今季のシーズンベストに並ぶ記録でしたが、1・2回目と失敗して追い込まれる形で挑んだ3回目、集中した表情で助走を開始すると、鮮やかな跳躍で見事にクリア。大きな歓声と拍手が起こるなか、喜びを全身で示しながら満面の笑顔でピットから飛び降りて喝采を集めました。そののちバーは、昨年樹立された大会記録を1cm上回る2m11へ。成功すれば今季全国高校リスト6位タイに相当し、昨年マークしている自己記録2m07を大きく上回るこの高さは、さすがにクリアすることができませんでしたが、今年の兵庫県高校総体を制し、全国インターハイで決勝進出(11位)も果たした実力を存分に発揮するパフォーマンスで、会場を大いに盛り上げました。
エキシビションマッチを締めくくる日本トップ男子の部には、リオ・東京オリンピック代表で2m30の自己記録を持つ衛藤選手と、衛藤選手の弟で2m24の自己記録を持つ勝田将選手(三重教員AC)、そして、兵庫・社高校3年の2018年にインターハイを制し、社会人2年目の今年、2m16の自己新記録をマークした柴田涼太郎選手(ブルーウェーブAC)の3名がエントリー。2回の試技で勝負を決めていく特別ルールで行われました。試技は1m90から行われ、3人とも1回で軽々とクリア。バーの上を大きく越えていく身体の浮き方や滞空時間の長さに、客席からは感嘆のどよめきが上がります。その後、衛藤選手は、パスを挟んで10cmごとに跳躍し、勝田選手と柴田選手は5cm刻みでバーを上げていく形で勝負は進行。柴田選手が2m10をクリアできなったことで、そこからは、衛藤選手と勝田選手の兄弟対決となりました。2人は2m15をともに1回でクリアすると、迎えた2m20は、昨年大会記録となるこの高さを跳んでいる衛藤選手が、あっさりと1回で成功しましたが、勝田選手が2回失敗したところで勝負あり。続く2m25のクリアはならなかったものの、華麗な跳躍でオリンピアンの貫禄を見せつけた衛藤選手が連覇を果たしました。
この3選手の跳躍を、助走路の真横で食い入るような真剣な表情で見つめていたのは、自身のエキシビションマッチを終えた高校生たち。高校生たちは、ランチタイムの時間帯に行われていた走高跳クリニックにも参加しており、まさに「ハイジャンプを楽しむ1日」となりました。男子の部を制した中本選手に感想を求めると、「自分たちが必死で跳んでいる2m00とかを、軽々と跳ばれているのを見て、“レベルが違うな”と思いました」とコメント。今回、中本選手は、すでにシーズンオフに入っているなかでの出場だったそうですが、自身の試合については、「普段の試合だと周りに人はいないので、新鮮ですごく楽しかった」と振り返りました。3年生の中本選手は、卒業後も競技を続けることを決めています。「いつか衛藤選手たちのようなジャンプがしてみたい?」と聞くと、「はい!」と力強く答えてくれました。
エキシビションマッチの間に挟む形で、ランチタイムに重なる12時から13時の間に組まれた走高跳クリニックは、小・中学生の部と高校生の部の2つに分けて行われました。高校生の部には、前述の通り、エキシビションマッチに出場した選手たちが、トップ選手のアドバイスを仰ぎながら跳躍練習に取り組む形で展開。その前に行われた小・中学生の部は、ゴムバーに向かって跳躍していく練習と、助走路を利用してのジャンプ運動の2つを、各15分で交替して行う形式が取られました。
小学生は、マットとほぼ同じ高さに設置したゴムバーに向かってスピードを上げて走っていき、思いきりマットにダイブしていくことからスタート。次に行った助走路でのジャンプ運動では、手拍子のリズムに合わせて、その場でジャンプすることから始めて、慣れてきたら、そのリズムでジャンプしながら前進していくことに取り組みました。一方、中学生は、先に実施した助走路でのジャンプ運動で、地面からの反発を受けて身体を弾ませていく感覚を意識。その状態でリズミカルに身体を弾ませて前進していくことに取り組んだのちに、ゴムバーを使っての跳躍練習へ。このように、それぞれの年代に応じた指導が、効果的に行われていた点が印象的でした。
家族が見守るなかで一所懸命にジャンプ運動に取り組んでいた森奏介くんは、陸上スクールに通う小学1年生。「コーチが“やってみたら”と案内してくれて」(お父さん)、参加することになりました。走高跳に挑戦するのは初めてで、もちろんマットに向かって跳ぶことも初めての経験だったそう。スクールでは、まだいろいろな運動にチャレンジしている段階ということですが、「高跳びをしてみたいと言っていたので、今日は楽しそうでしたね」とお母さん。奏介くん自身も「マットに跳ぶのが一番楽しかった」と振り返りました。陸上スクールのほかにはプールにも通っていて、どちらが好きかを聞いてみると、即座に「プール!」という言葉が返ってきましたが、「走高跳、やってみたいと思った?」と尋ねると、「うん」と大きく頷いてくれました。
イベントを通じて実感したのが、「支える人」の多さです。主催する衛藤選手が所属する神戸デジタル・ラボや中野選手の所属するKAGOTANIが特別協賛に名を連ねているほか、衛藤選手の前所属先であるAGF鈴鹿株式会社をはじめとする数多くの企業や団体が協賛や協力に参加。飲食ブースの出店や選手への商品、観客に向けた抽選会の商品提供、運営スタッフとしての活動など、さまざまな形でジャンプフェスティバルをサポートしていました。特に、活躍が目を引いたのは、KAGOTANI陸上部の選手たち。グルメブースでの屋台販売や同社が取り扱う卵の賞品提供だけでなく、女子棒高跳の那須眞由選手、男子円盤投の蓬田和正選手、男子110mハードルの徳岡凌選手など、部員たちが大会スタッフとして会場設営から審判、プレゼンター、販売スタッフ、会場の盛り上げに至るまで、それぞれが何役も務めてイベントをがっちりバックアップしていました。
提供:Jump Festival
また、イベント開催に合わせて、毎回募集をしているボランティアも、神戸市近隣だけでなく、全国各地から集まってきて、イベントをサポートしました。高校女子の解説を務めた稲葉さんも、その一人。愛知県出身の稲葉さんは、現在、順天堂大学の大学院生で、「陸上が好きで、陸上に関わることがやりたいと考えていたので、“じゃあ、関われるところへ自分が行けばいいじゃん”と思って」、第1回からボランティアとして参加しているそう。「最初は、“面白そうなイベントだな”くらいのイメージだったのですが、実際に毎年参加して、いろいろなことを一緒にやっていくなかで、トップ選手である衛藤さんと瞳さんが、競技と並行しながら、こうしたイベントを作り上げていることが本当にすごいなと、今は強く感じています。毎回スポンサーが増えていることでもわかりますが、ボランティアスタッフもそう。“あの2人だから一緒に頑張ろう、協力しよう”という気持ちで、関わっていく人たちが増えているのではないかなと思います」と打ち明けてくれました。
提供:Jump Festival
鉄人広場のすぐ目の前に広がる新長田1番街商店街で働く人々が集まって、地域活性化に繋げていく取り組みに尽力している「SHIN-NAGATA井戸端会議」は、鉄人広場で開催されているさまざまなイベントへの参加実績を持つグループ。ジャンプフェスティバルには、縁あって今回初めてグルメブースを出店することになったそうです。ブースには、祭りやイベントに欠かせないアイテムといえる綿菓子機が置かれ、子どもたちの視線を集めていました。メンバーの佐原健司さんは、「イベント自体は、何回かやっていることは知っていて、盛り上がっているなと見ていました。私は、もう8~9年くらいこの1番街で店をやっていますが、鉄人広場で開催するイベントによって、いらっしゃるお客さんが全然違うんですよ。そうやっていろいろなイベントがあって、いろいろな人が集まってくるのがいいと思いますね。ジャンプフェスティバルに来ている人たちは、若い学生さんたちや家族連れが多いかな。そういう爽やか系のイベントとして、徐々に定着してきているように感じます」と話しました。
盛会のうちに終了した4回目のジャンプフェスティバルを、主催者代表の衛藤選手とともに全方向から見守っていたのが、ジャンプフェスティバルの共催に名を連ねる「KOBE鉄人PROJECT」ディレクターの岡田誠司さんです。長田区の地域活性化プロジェクトや街づくりに取り組み、さまざまなイベントを定期的に開催しているスペシャリストで、競技に精通し、国内外の多くのイベントへの豊富な出場経験を有しながらも、主催・運営する立場として必要な知識や情報を持っていなかった衛藤選手が、イベント開催を実現させることができたのは、岡田さんの存在あってのことといえるでしょう。今回のイベント中も、衛藤選手とは異なる目線で会場全体の動きや進行状況を把握していて、この2人の異なる目線が、イベントとしての質を高めることにつながっているように感じられました。
ジャンプフェスティバルと出合ったいきさつを聞いてみると、「たまたま偶然、この街のイベントとして、まず神戸出身の中野さんを紹介いただいて、“こんなことを考えている”と聞いたのが最初でした。初めは商店街のなかでやりたいということだったのですが、“それは物理的に無理や”というのが互いにわかって…(笑)。“鉄人(28号のモニュメント)の前ならできるよ”ということで、話が進むことになったんです」と岡田さん。
鉄人広場では、1年を通して、本当に多岐にわたるイベントが頻繁に開催されているそうですが、「スポーツ系でいうと、3on3のバスケットボールをやったことはあるけれど、走高跳どころか陸上のイベントは初めてだった」そう。ただ、街中走高跳のアイデアを聞いた瞬間に、「面白そうやな」と感じた岡田さんは、「僕の仲間の映像制作やら音響やら、テントとかの設営やらに声をかけて、1回目は全員ボランティアで出てもらったんです」と全面的にサポート。2021年11月に実現なった第1回を成功に導き、現在に至っています。
初めてイベントが実現したときの感想を尋ねると、「ぶっちゃけ、走高跳が、こんなにエンターテインメントだとは思いませんでした」と岡田さん。「走高跳って、バーが落ちたら終わりで、結果が歴然としているんですよ。そういう意味でエンターテインメント性が高くて、全くの素人でも見ていてワクワクするんですね。それに、“3回でアカン”というのは、日本人はものすごく好き(笑)。追い込まれた状態で臨む3回目とか、その応援の仕方とか、そういうものがすべてトータルでエンターテインメントとして成り立つんですね。陸上競技場だとずいぶん離れたスタンドから見ることになりますが、鉄人広場であれば、それこそ10mくらいの距離から見ることができる。しかも、バーの高さを、同じグラウンドレベルで、座った目線から見上げられるというのがまた、このイベントの非常に面白いところだなと思います」とジャンプフェスティバルならではの魅力を話しました。
主催団体の代表理事として、運営スタッフのリーダーとして、クリニックの講師として、トップ選手の部に出場するアスリートとして…。この日、会場へのオールウェザーマットの搬入および助走路の設置という重労働に始まって、早朝から常に会場を動き回り、一人で何役もこなしていた衛藤選手は、イベントのクロージングセレモニーのあと、再び助走路の解体とオールウェザーマットの搬出を行ったあとで、少しホッとした表情を見せながら取材に応じてくれました。
「台風が来ると聞いたときは、延期も覚悟していたので、まずは朝から晴れてくれて、本当によかったです。今年は、エキシビションマッチを行っていたときは、用意していた席がずっと埋まっていましたし、立ち見でご覧になっている方もたくさんいらっしゃいました。初めて開催した第1回のときは、まず実現できたことが嬉しかったけれど、空席とかも見えていたので、それが気になっていたのですが、今年はほとんどの時間が満席。あの景色を見ることができて、ようやくここまで来たなと、すごく嬉しかったです」と来場者の多さと、その盛り上がりを喜びました。
また、エキシビションマッチについては、高校生たちの“役者ぶり”を絶賛。「男女ともに正念場の3回目でクリア。“ここで跳んだら、カッコいいな”というところで、どちらもバチッと決めてくれました。ああいうジャンパーの“魂”みたいなものを見せてくれたことは、観戦した人の心に強く響いたと思うし、選手たち自身にもいい経験になったと思います。ああいうシチュエーションは、なかなかつくれるものではないんですよね。今回の経験は、絶対にどこかで生きるはず。本当に嬉しかったです」と笑顔で振り返りました。そして、「まだ、全部の振り返りができる状況にはないけれど、会場がすごくいい空気感に包まれていたことが心に残っていて、今日は個人的には100点かな、と…。来年は、さらにパワーアップした形で、開催できればと思います」と締めくくりました。
文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)
©光プロ/KOBE鉄人PROJECT2024