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2024.07.26(金)

【記録と数字で楽しむパリオリンピック】男子20km競歩:東京とオレゴンで「銀」の池田が「一番いい色のメダル」に挑む




8月1日(木)から11日(日)の11日間、フランスの首都パリを舞台に「第33回オリンピック」が開催される。

日本からは、24種目に55名(男子35名・女20名)の代表選手が出場し、世界のライバル達と競い合う。

現地に赴く方は少ないだろうがテレビやネットでのライブ中継で観戦する方の「お供」に日本人選手が出場する全24種目に関して、「記録と数字で楽しむ2024パリオリンピック」をお届けする。

なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ・・・」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある同じ内容のデータや文章もかなり含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、記事の中では世界選手権についても「世界大会」ということで、そのデータも紹介している。

記録は原則として7月21日判明分。ただし、エントリー記録などは五輪参加標準記録の有効期限であった24年6月30日現在のものによった。
現役選手の敬称は略させていただいた。

200mから1500mにおいて、予選で落選した選手による「敗者復活戦」が導入され、これによって予選で敗退した何人かが復活して準決勝に進出できることになった。
ただ、各種目での敗者復活戦の組数や何人が準決勝に出場できるのかなどの条件がこの原稿執筆時点では明確にされていない。よって、トラック競技の予選・準決勝の競技開始時刻のところに示した通過条件(○組○着+○)は、「敗者復活戦」がなかったこれまでの世界大会でのものを参考に記載したため、パリではこれとは異なる条件になるはずだ。

日本人選手の記録や数字に関する内容が中心で、優勝やメダルを争いそうな外国人選手についての展望的な内容には一部を除いてほとんどふれていない。日本人の出場しない各種目の展望などは、陸上専門誌の8月号の「パリ五輪観戦ガイド」や今後ネットにアップされるであろう各種メディアの「展望記事」などをご覧頂きたい。

大会期間中は、日本陸連のSNS(=旧Twitter or Facebook)で、記録や各種のデータを可能な範囲で随時発信する予定なので、そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。

現地と日本の時差は、7時間で日本が進んでいる。競技場内で行われる決勝種目は、日本時間の深夜から早朝にかけての競技である。
猛暑の中での睡眠不足にどうぞご注意を!

男子20㎞競歩

(実施日時は、日本時間。カッコ内は現地時間)

・決勝 8月1日 14:30(1日 07:30)


東京とオレゴンで「銀」の池田が「一番いい色のメダル」に挑む

パリ五輪の陸上競技、最初の種目である。
2月の日本選手権で1~3位だった3人が出場する。
21年東京五輪と22年オレゴン世界選手権で銀メダルを獲得した池田向希(旭化成/エントリー記録&自己ベスト1時間16分51秒=24年)、濱西諒(サンベルクス/エントリー記録&自己ベスト1時間17分42秒=24年)、古賀友太(大塚製薬/エントリー記録&自己ベスト1時間17分47秒=24年)だ。池田は2回目、濱西と古賀は初出場。

池田は、19・22・23年の世界選手権を含め5大会連続での世界大会。古賀も23年の世界選手権を経験している。

チーム・ジャパンとしては、ここで大きな打ち上げ花火をあげて、それ以降の種目の選手たちにも勢いをつけたいところである。


◆世界選手権&五輪での入賞者と最高記録◆

世界選手権&五輪の日本人入賞者は下記の通り。
20017位1.22.11.柳澤哲(綜合警備保障)
20114位1.21.39.鈴木雄介(富士通)
20135位1.22.09.西塔拓己(東洋大)
2016五輪7位1.20.22.松永大介(東洋大)
20191位1.26.34.山西利和(愛知製鋼)
6位1.29.02.池田向希(旭化成)
2021五輪2位1.21.14.池田向希(旭化成)
3位1.21.28.山西利和(愛知製鋼)
20221位1.19.07.山西利和(愛知製鋼)
2位1.19.14.池田向希(旭化成)
8位1.20.39.住所大翔(順大)

「日本人最高記録」は、
五輪が、
1.20.22. 松永大介(東洋大)2016年 7位

世界選手権が、
1.19.07. 山西利和(愛知製鋼)2022年 1位

19年以降の3つの世界大会で山西と池田で3大会連続入賞。2人で金2・銀2・銅1のメダルを獲得してきた。
また、22年オレゴンでは住所が8位となってトリオ入賞も達成した。
ただ、23年ブダペストでは、よもやの入賞なし(最高順位が12位=古賀)にとどまったのは衝撃だった。

今回のトリオが普通に力を発揮できればトリオでの入賞や複数メダルの可能性も十分にありえる。エントリー記録では池田1位、濱西6位、古賀8位だ。

参加標準記録1時間20分10秒をクリアしている日本人は、代表の3名を含めて14名もいた。オリンピックに出られる資格を有しながら、日本のレベルが高いために代表になれない選手が11名もいるということだ。


◆2001年以降の世界大会の1・3・8位の記録◆

日本人選手が初入賞を果たした2001年からの世界選手権と五輪の「1位・3位・8位の記録」は以下の通り。

1位記録3位記録8位記録
20011.20.31.1.20.36.1.22.20.
20031.17.21.1.18.07.1.20.14.
2004五輪1.19.40.1.20.02.1.21.56.
20051.18.35.1.19.44.1.20.45.
20071.22.20.1.22.40.1.24.10.
2008五輪1.19.01.1.19.42.1.20.36.
20091.19.06.1.19.50.1.21.13.
20111.19.56.1.20.38.1.21.50.
2012五輪1.18.46.1.19.25.1.20.12.
20131.20.58.1.21.21.1.22.21.
20151.19.14.1.19.57.1.21.37.
2016五輪1.19.14.1.19.37.1.20.27.
20171.18.53.1.19.04.1.19.41.
20191.26.34.1.27.00.1.29.52.
2021五輪1.21.05.1.21.28.1.22.16.
20221.19.07.1.19.18.1.20.39.
20231.17.32.1.17.47.1.18.30.
    
最高記録1.17.21.1.17.47.1.18.30.
五輪最高1.18.46.1.19.25.1.20.12.
世選最高1.17.21.1.17.47.1.18.30.

次に2011年以降の各大会でのスタート時の「気温・湿度」「先頭の5㎞毎のスプリット」、「前半と後半」のデータを調べた。

なお、スプリットは各地点を先頭で通過した選手のタイムから算出したもので、優勝者のスプリットとは限らない。五輪の20㎞競歩については5㎞・15㎞のタイムが不明なため、5㎞は4㎞&6㎞、15㎞は14㎞&16㎞の通過タイムから推定した。「前後半差」の「△」は、後半の方が速かったことを示す。

スタート時優勝記録~5km~10㎞~15㎞~20㎞(前半+後半/前後半差)
201122℃・85%1.19.56.21.03.20.55.19.44.19.14.(41.58.+38.58./△3.00.)
2012五輪?℃・63%1.18.46.20.00.20.08.19.38.18.57.(40.00.+38.46./△1.14.)
201329℃・40%1.20.58.20.17.20.17.20.07.20.16.(40.34.+40.23./△0.11.)
201523℃・78%1.19.14.20.10.20.10.19.33.19.21.(40.20.+38.54./△1.26.)
2016五輪25℃・?%1.19.14.20.14.19.56.19.56.19.08.(40.10.+39.04./△1.06.)
201720℃・40%1.18.53.19.54.19.56.19.43.19.20.(39.50.+39.03./△0.47.)
201932℃・77%1.26.34.22.26.21.40.21.22.21.06.(44.06.+42.28./△1.38.)
2021五輪31℃・63%1.21.05.20.52.20.03.20.34.19.36.(40.55.+40.10./△0.45.)
202228℃・38%1.19.07.20.11.20.22.19.24.19.07.(40.33.+38.34./△1.59.)
202319℃・100%1.17.32.19.18.19.19.19.40.19.15.(38.37.+38.55./▼0.18.)
2023優勝選手→  19.26.19.32.19.19.19.15.(38.58.+38.34./△0.24.)

以上の通り、次第にペースが上がっていく「ビルドアップ」がほとんど。特にラスト5㎞のアップが顕著で、高温多湿となった19年ドーハとこれまた気温が高かった13年・21年を除くと、19分台前半以内でカバーしている。もっと細かくみると、18㎞からの残り2㎞は、7分30秒前後(5㎞換算18分45秒ペース)のことが多い。東京五輪は7分35秒、22年オレゴンは7分31秒だった。

前半は「様子見」で、10㎞過ぎから振るい落としのサバイバルが始まり、15㎞まで生き残った選手でメダルや入賞を目指しての「ヨーイ、ドン!」である。

なお、23年ブダペストは、前半の方が18秒速かったことになるが1km過ぎから14km過ぎまで池田向希がひとりで飛び出したことによる。10km通過の池田は38分37秒で2位に15秒差、優勝した選手の集団は38分58秒で21秒差をつけた。よって、優勝した選手の前後半は38分58秒と38分34秒で、後半の方が24秒速かった。優勝した選手の5km毎は、19分26秒-19分32秒-19分19秒-19分15秒だった。


◆8月1日のパリの過去3年間の気象状況◆

19年ドーハ、21年東京五輪(競歩は札幌で開催)はスタート時に30℃を超える気温だったが、今回パリはどうか?
レースがスタートする8月1日の朝7時30分からの過去3年間の気象状況は、以下の通りだ。

【過去3年間の8月1日のパリの気象状況】
時刻2023年2022年2021年
7時30分晴・16℃・82%曇・20℃・78%曇・14℃・88%
8時00分晴・16℃・82%曇・20℃・78%晴・15℃・82%
8時30分曇・16℃・82%曇・20℃・78%晴・16℃・77%
9時00分晴・17℃・77%曇・21℃・73%晴・17℃・72%

ここ10年あまりの世界大会と比較してかなり低温の良好なコンディションになりそうな感じだ。曇っていて直射日光が当たらなければ、より一層いい条件になる。

いずれにしても、日本人選手には3名が揃って「サバイバルレース」に最終盤まで生き残り、ドーハ・東京・オレゴンに続く「金メダル」「複数メダル」さらにはオレゴン同様の「3名全員入賞」を果たしてもらいたい。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)


【パリ2024オリンピック特設サイト】

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