
日本陸連は、3月25日に、愛知・名古屋2026アジア競技大会(アジア大会)の男女マラソン日本代表内定選手を決定。3月27日には、男女内定4選手の記者会見を行いました。ここでは、会見の模様をご報告します。
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アジア大会マラソン日本代表選手内定会見は、3月27日午後に開催された「MGCシリーズ2025-26アワード」の第2部として実施されました。アジア大会の男女マラソンは、すでに3月25日に、男女代表内定選手として男女各2名、および男女各1名の補欠登録競技者が、以下のように発表されています。
【アジア大会マラソン日本代表内定選手】
<男子>
・吉田祐也(GMOインターネットGrp)・山下一貴(三菱重工)
<女子>
・佐藤早也伽(積水化学)・矢田みくに(エディオン)
<補欠登録競技者>
・男子:竹井祐貴(JR東日本)・女子:上杉真穂(東京メトロ)
この日は、代表に内定した吉田選手、山下選手、佐藤選手、矢田選手の4名が、会見に臨みました。会見に先立ち、まず、日本陸連強化委員会の高岡寿成シニアディレクターが登壇。強化説明を行うともに、アジア大会本番に向けての期待を次のように述べました。
【強化説明】
高岡寿成(日本陸連強化委員会シニアディレクター)
今回選出された選手は、いずれも厳しい選考を突破し、選考方針にある「国際競技会に通用する勝負強さとスピードを有するとともに、本大会において最大限持てる力を発揮できる競技者を選出し、メダル獲得を目指す日本代表を編成する」という考え方にふさわしい選手であると評価している。また、今回、対象者はいなかったものの、海外レースの記録についても、期間を設けて選考対象とする取り組みを実施した。これは、より明確に世界と勝負することに目を向けた仕組みであり、今後も重要な視点になると考えている。再現性が高く、勝負強い佐藤選手や吉田選手には、東京世界選手権の経験も力に変え、アジア大会で結果を出してほしいと思っている。また、今年度最速タイムを持つ矢田選手や山下選手には、そのスピードを武器に活躍をしたい。それぞれが持つタイプの異なる強みを、アジア大会で最大限に発揮してほしい。
2018年ジャカルタ大会(ジャカルタ)では、井上大仁選手(MHPS、現三菱重工)が金メダルを獲得した。しかし、中国・杭州で開催された前回のアジア大会(注:コロナ禍の影響により1年延期となり、2023年に開催)では、メダルを獲得することができなかった。今回の名古屋大会では、ホスト国でもある地元の利を生かして、改めて金メダル獲得を目指して戦っていきたい。
続いて行われた代表内定選手の記者会見は、男子・女子の順番で実施。最初に、男子代表の吉田選手と山下選手が、続いて女子代表の佐藤選手と矢田選手が、それぞれ並ぶ形で登壇し、メディアからの質問に応じました。各選手のコメント(要旨)は以下の通りです。
【アジア大会マラソン日本代表内定選手コメント(要旨)】
<男子>
・吉田祐也(GMOインターネットGrp)昨年の東京世界陸上(男子マラソン)に引き続き、2度目の日本代表ということで感無量の思い。非常に嬉しく思っている。昨年の東京世界陸上は、自分のなかでは万全の準備ができていたものの、その努力が及ばない部分がたくさんあった。今回のアジア大会に向けては、世界陸上が終わった後から「日本代表でメダルを取る」という覚悟で練習をしてきた。金メダル獲得を目指して、練習に励んでいきたい。
(暑熱環境下のレースとなった)東京世界陸上を経験し、また、(指導を仰ぐ青山学院大学の原晋)監督ともいろいろ話して、「冬場のマラソン練習やレースとは、もう全く別物だと考えなければいけない」というところに重点を置いている。(目指すレースに向かうときには)不安を消したくて、どうしてもたくさん練習してしまいがちだが、マラソンのレースを積み重ねてきたことで気持ちに余裕度も出てきた。また、一度、(日本代表として)国際大会を経験したことも大きなアドバンテージになると考えている。

アジア大会を選んだのは、(2027年に開催される)MGCが名古屋で行われるから。自分には「ロサンゼルスオリンピックで勝負をしたい」という思いがあるが、日本人選手のタイムが非常に上がってきていて、強い選手もたくさんいるという今の状況で、「もし、今年、MGCがあったらどうか?」と考えたとき、「あと一歩、二歩足りないな」という思いが個人的な感覚してあった。(2027年MGCで想定される)高い気温のなかで勝つ、駆け引きの多いレースで勝つというところを重視したとき、暑い時期の準備(を経験しておく)とともに、(同じ名古屋が舞台となる)レースで勝ちきるイメージをつけたいという理由から、今回のアジア大会に出場したいと考えた。(同時期に行われる海外レースで)記録を狙うことも検討はしてみたが、自分のなかの価値観として、どの大会でも順番を争って勝負する(ことに重きを置く)ところを、大迫(傑)さんと一緒に練習して学んだので、「順番争いで勝つ、そしてそのあとのMGCでも勝負できるように」という点で、アジア大会を選ばせていただいた。
アジア大会に向けては、まずトラックレースを中心にやっていきたいと考えている。5000m・10000mに関しては、大学を卒業して入社して以降、毎年どちらかは自己記録を更新している状態。今年も、いずれかで自己ベストを狙うことを考えている。マラソン練習に関しては、今まで積み重ねてきた部分もあるし、今年の別大(別府大分毎日マラソン)はあまり走行距離を踏まずに、スピードでいい結果を出すことができている。自分にとって、どのパターンが適切なのかはまだわかっていないが、まずは監督から出されるメニューをうまくすり合わせながら、一喜一憂せずに淡々と済み上げることが大事。前半はトラック、後半はマラソン練習というイメージで取り組んでいきたい。

・山下一貴(三菱重工)
アジア大会日本代表になることができ、とても嬉しく思う。当日は厳しい環境下での大会になることが予想される。自分も金メダルを目指して走れるように、スタートラインに立てるように、まずは練習に励んでいきたい。
(初の日本代表となった2023年)ブダペスト世界陸上を走ってみて、他国の選手のペースの上がり下がりなどは、(自身は)あまり気にならないことを感じたので、そのあたりは自分のアバンテージとして生かしていけると思っている。ただ、(世界陸上出場の)経験がメンタルの部分で糧になっているのかどうかは、自分ではわからない。(2回目の日本代表となる)アジア大会に向けては、新鮮な気持ちで臨みたいと思っている。
(ここまでの経緯として)自分のなかでは、ブダペスト(世界選手権)が終わって、そのあとのMGC(2023年10月にパリオリンピック選考レースとして実施)くらいから、少し歯車が狂い始めたように思う。ハムストリングスの張りなどを引きずって、思うように走れない時期が1年くらい続いた。(復調の理由としては)その張りがなくなってきて、少しずつ走れるようになってきていたことに加えて、前回の大阪マラソン(2026年2月)に向けて、どうすると良くなるのかを考えて取り組むなかで、自分には日々のセルフケアや基礎的な体幹トレーニングが足りていないのではないかと気づき、そうした土台の部分を見直したことで(状態が)良くなってきた実感がある。

アジア大会については、自分は昨年の段階から「2026年度はアジア大会を目指す」ということを総監督である黒木(純)さんと話し、出場を目指してきてトレーニングを積んできた。なぜ総監督がアジア大会を目指すのかは特に話をしていないが、自分なりの言葉で理由を挙げるなら、「日本のレースで日本人トップ争いをやっていては、(国際大会でレース全体の)先頭争いができる状況にはならないのではないか」という思いがあるから。実際に、自分の実力が足りなくて先頭争いあるいは優勝争いができていないので、(総監督も)アジア大会でしっかり優勝争いをし、そして勝ちきるというところを経験してほしいのかなと考えている。(選考レースの結果から)アジア大会代表は、自分まで回ってこないと考えていたので、打診があった時は「あ、回ってきたんだ」というのが正直な感想だった。しかし、自分は出る予定でこの1年やってきていたので、話が来たときにはすぐに「出たいです」とお伝えした。
アジア大会は、ペースが遅くなって、ラスト勝負になることが多いので、その対策が必要。また、ここ数年で、(アフリカから)帰化した選手以外に、中国の選手が力をつけてきているので、そのあたりも意識していかなければならないと思っている。(痙攣の影響でペースダウンしたブダペスト世界選手権の経験から)暑さ対策も必要になると思うが、直近に出場した大阪マラソンでも、脚の痙攣は起きていたので、(暑さ以前に)自分の身体の使い方が原因になっているのではないかと感じている。まずは、その部分から見直していく。もちろん暑さ対策もやっていきたい。

<女子>
・佐藤早也伽(積水化学)アジア大会の代表になるのは初めてなので、とても嬉しい気持ち。(マラソンで出場した2023年ブダペスト、2025年東京)世界陸上で経験したことを生かして、アジア大会ではメダル獲得を目標に頑張りたい。
アジア大会出場の理由としては、来年開催されるMGCが名古屋で開催されるので、そこに向けて準備していくうえで、いい経験になると考えたこと。また、「世界大会での経験を生かしてメダルを取りたいな」という思いがあったことから、出場を選択した。アジア大会は9月末の熱い時期に開催されるマラソンなので、世界陸上で経験した暑熱対策は、なかでも一番生かせるのではないかと思っている。これからのプランは、まだ具体的に決まっていない状態。目標を達成できるように、これから考えていきたい。

<名古屋ウィメンズのレース直後は、「アジア大会、MGCについては、じっくり考えたい」とのコメントだったが、出場の意思を固めるに至った経緯を、の問いに>
出場については、(コーチやチームなど)周りと相談して決めたというよりは、自分のなかで「アジア大会に挑戦してみたいな」という気持ちになったことが一番大きい。私は、マラソンを走って、まだ一度も大きな大会で優勝したり、メダルを取ったりした経験がない。そこを目指したいという気持ちになったので、アジア大会に出場(して実現)したいと思った。(2027年秋の)MGCについても、今は挑戦しようかなと思っている。
<名古屋ウィメンズで最後の2.195kmを6分台(6分58秒)でカバーできた要因は? また、それは自信になったか? の問いに>
名古屋ウィメンズのラストは、「(激しい優勝争いとなったなか)やはり勝ちたい、優勝したい」という気持ちが強かったので、最後に力を出しきれたのかなと思っている。また、風の強いなかのレースだったので、(ラスト勝負になる)それまでを集団の後ろで力を溜めて、冷静に走ることができたのもよかったのではないかと考えている。しかし、ラストは優勝した選手に競り負けてしまい、「世界との差はまだ大きいな」ということをすごく感じた。自信になったというよりも、「もっと頑張らないといけない部分がたくさんあるな」という思いを持っている。

・矢田みくに(エディオン)
自分が実業団に入ったのは、「日本代表になる」という目標を掲げていたから。また代表になれたことを、ものすごく嬉しく思う。まずは、ケガがないことを第一に、(アジア大会の)スタートラインに立ち、自分の力を最大限発揮できるような場にしたい。
アジア大会代表に選んでいただく前の段階では、「海外で記録を狙おうかな」という考えもあったが、正式に打診をいただいたとき、これまで自分自身が“日本代表”にこだわってやってきた部分があったのと、自国開催というなかなかない機会に、「自分の走りで(見てくれる方々に)何かを感じてもらえるチャンスがあるのではないか」という思いから、アジア大会出場を決めた。
(初マラソン日本最高となる2時間19分57秒をマークした1月末の)大阪国際女子マラソンを走ったことで、自分の(レース)後半のフォームに課題があることや、スパートの仕方など、新たな課題を見つけることができた。「それを克服したマラソンは、どうなるのかな」という思いがあり、今、すごくアジア大会が自分のモチベーションになっている。

大阪国際女子マラソンの時は、(2025年)11月くらいまでスピードも磨きながら取り組んだので、(アジア大会に向かう)今回も6月くらいまではトラック(レース)に集中してスピードを磨き、そこから持久力も磨いて、(9月末の)本番を迎えたいと考えている。
<トラック種目とマラソンの両立について、どう考えているか? の問いに>
トラックとマラソンのどちらに軸を置くかについては、大阪国際女子マラソンに出て決めようと考えていたのだが、マラソンで海外の選手に勝つためには、スピードも磨かいていかなければならない。そういう点で、自分はトラックとマラソンの“二刀流”で行きたいなと思っている。また、自分はトラック(種目)の練習がすごく好きだし、率直にトラック(種目)が好きということもあり(笑)、今後は“二刀流”で進めていきたい。

※代表選手のコメントは、記者会見において各選手が発言したコメントと質疑応答時の回答を抜粋してまとめました。意図が明瞭に伝わることを目的として、編集を加えています。
【アーカイブ:MGCシリーズ2025-26アワード表彰式/愛知・名古屋2026アジア競技大会 マラソン日本代表会見】
取材・構成:児玉育美(日本陸連メディアチーム)
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