
写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)
第110回日本陸上競技選手権大会・マラソン競歩は3月15日、石川県能美市において、第50回全日本競歩能美大会とともに行われ、無事にレースを終えました。この結果、本年秋に名古屋市で開催される愛知・名古屋2026アジア競技大会(以下、アジア大会)の競歩種目の日本代表選考レースはすべて終了することとなりました。日本陸連は、競技終了後に強化委員会の谷井孝行強化委員会ディレクター(競歩)がメディアの取材に応じ、本大会のレースを含めた全選考レースを終えての総括を行いました。谷井ディレクターによるコメントの要旨は以下の通りです。
■谷井孝強化委員会ディレクター(競歩)
◎日本選手権マラソン競歩について
ここ能美は、天候が荒れることも多いので、そういった心配もしていたのだが、今日は比較的落ち着いていて、特に午前中は風も強くなく、非常に良いコンディションのなかでスタートを切ることができた。男子は、サブスリ―(3時間切り)を達成するためのペースとなる(1km)4分15秒を基準として、序盤は髙橋和生選手(ADワークスグループ)を中心にレースが進んだ。そして、髙橋選手が途中で身体が重くなり、ペースが鈍ったところで住所大翔選手(富士通)が飛び出した。その後、諏方元郁選手(愛知製鋼)も、髙橋選手のペースが鈍った30km過ぎたあたりから4分05秒と一気にペースを上げて住所選手を追いかける形となった。最初は、少し後半のことを心配していたのだが、諏方選手はトップに立ってからもペースを維持し、4分10秒を切るあたりをキープしながらフィニッシュできたことに、諏方選手の成長を改めて感じることができた。この結果、マラソン競歩でのアジア大会内定を諏方選手が獲得したわけだが、こういったレースは、9月末に暑いなかで勝負をすることを考えても、いい展開だったのではないかと考えている。また、このサブスリーというのが、今後、世界で戦うための基準になってくると思う。今大会で、諏方・住所の2選手が切れたことも、非常に評価できると考えている。
女子の梅野倖子選手(LOCOK)については、自分のペースをしっかりキープしながらのレースとなった。途中、矢来舞花選手(千葉興業銀行)と一緒に歩く場面はあったが、基本的には自分のペースを貫いて歩いている印象だった。そういったなか、中盤で(1km)5分を切って歩いていたことは高く評価できる。終盤にペースダウンしたところについては、まだマラソンの練習というところに対しては行き着いていない面もあったのではないかと思っている。彼女は2月に日本選手権ハーフマラソン競歩を自己新記録で優勝し、そこから体調面で少し不安があったと聞いている。そういった点が距離への対応に影響したのではないかと捉えている。ただ、これでアジア大会の代表に内定し、ここから期間は十分にあるので、そのあたりの課題をしっかり克服していけば、本番でも十分に戦えるとみている。梅野選手は2種目で内定を得たわけだが、アジア大会にどう向かっていくかは、今後、本人および所属コーチの意思を確認しながら最終的に判断していく。

◎全日本競歩能美大会(ハーフマラソン競歩)の結果について
全日本競歩の男子ハーフマラソンは、川野将虎選手(旭化成)が優勝した。イエローパドルが1回、レッドカードはゼロと、フォームが非常に安定したことに加えて、勝負所での強さが際立っていた印象である。耐えるところで耐え、勝負するところで勝負するレースをして、しっかり勝ちきれたことは、非常に高く評価できるものといえる。ハーフマラソン競歩のアジア大会代表については、2月の日本選手権ハーフマラソン競歩を制した山西利和選手(愛知製鋼)が内定して、もう1枠をどのようにしていくかという状況にある。これについては、今後、選考要項に則って強化委員会において検討し、最終的に判断したい。
女子ハーフマラソン競歩を制した杉林歩選手(大阪大学)は、神戸(日本選手権ハーフ競歩3位)・今回ともに前半を抑えて入り、後半で勝負することに徹したレースを展開した。これは、自分がどこまで行けるかがわかっているなかでの選択で、その結果、両大会ともに大崩れすることなくレースを終えることができている。記録的な面でまだまだ伸ばしていける要素が多いため、もう少し、全体的な土台が引き上げっていけば…という思いはあるものの、どんな展開でも崩れないという点は評価できる。
◎アジア大会全選考レースを終えて

これでアジア大会の日本代表選考レースがすべて終了したわけだが、今回、世界陸上から一番大きく変わったのは、距離の変更であり、高畠、神戸、今回の能美の各大会で、ハーフマラソン競歩への対応、マラソン競歩への対応を、それぞれの所属や選手たちが、どのようにとっているかを見極めることになった。まずハーフマラソン競歩については、神戸で上位4選手が世界記録を樹立したというところで、20kmの強化とさほど変わらないところで、選手たちが強化できたのではないかと捉えている。
一方、マラソン競歩については、35kmの前に長く実施されてきた50km競歩の要素が非常に多く含まれていたと思う。高畠に関しては、前半のペースが速すぎたことで、そのぶん後半で大きくペースダウンする選手が多く見られたが、今回の能美では、優勝した諏方選手などは、その反省を生かし、中盤までにつくった自分のペースを、どの段階で、どこまで引き上げれば、そのペースをキープしてフィニッシュできるかという点をしっかり考え、そこに対応することができていた。もともと50km競歩を得意としていた勝木選手(隼人、自衛隊体育学校、高畠大会優勝)をはじめとして、ロング種目に対するノウハウは、日本には十分にある。そういったところをしっかり生かしていくことができれば、アジア大会、さらに来年の北京世界選手権で十分に戦っていけると感じている。
昨年から今年の全体の流れとしては、今回、1月に実施した宮崎合宿に、多くの選手が参加して、合同でトレーニングを行った。これによって非常に質が高くなり、練習の量・質ともに今までにない高い水準の内容を実施することができている。そういったことも、今回、とても良い記録で、それぞれの大会を終えられたことにつながったと考えている。一方で、記録が速くなればなるほど、歩型に対する不安が出てきてしまう側面はどうしてもある。そうした歩型面での課題は、永遠のテーマともいえること。今までと同様に国際競歩審判員との連携を図るなどしながら、強化に取り組んでいきたい。
女子に関しては、歩型に関しては問題ない状況だが、全般としては、層の厚さに欠けていることが大きな課題といえる。このため、まだターゲットとなる選手の強化にならざるを得ない状態にあるが、まずはそのターゲットとなる選手たちのレベルがしっかり引き上げていくことで、いずれは選手層に厚みを持たせていけるようにしたい。
日本陸連の強化としては、昨年、そして今年に関しては、より多くの選手に、国際競技会の経験を積んでもらいたいという意図を持って、取り組みを進めている。そういったところで、各選手がしっかりと、自分自身がどこまで力を引き上げていく必要があるのかを認識しつつ、次のステップ…世界選手権の代表などを目指す一つのきっかけになっていってほしいと思う。
※本稿は、3月15日の日本選手権マラソン競歩終了後に行われた囲み取材での要旨をまとめたものです。発言内容が正確に伝わることを意図して、一部、実際のコメントに編集を加えています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
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