2025.04.10(木)選手

【記録と数字で楽しむ第109回日本選手権10000m】女子:五輪&世界選手権入賞経験者・廣中を中心に代表切符に挑む



4月12日(土)、熊本市の「えがお健康スタジアム」で「第109回日本選手権・10000m」が行われる。9月13日(土)~21日(日)に東京・国立競技場で開催される世界選手権と5月27(火)~31日(日)に韓国・クミで行われるアジア選手権の代表選考会を兼ねたレースである。同日の「第33回金栗記念選抜陸上中長距離大会2025」が16時30分頃に競技が終了したあと、男子が19時35分、女子が20時15分のスタート予定。熊本での日本選手権の開催は1998年以来27年ぶりとなる。
レースの模様は、19時30分~21時00分にNHK・BSで、生中継される。

ここでは、現地観戦やTV観戦のお供に、「記録と数字で楽しむ第109回日本選手権・10000m」をお届けする。
なお、2024年以前の日本選手権・10000mの前に本コーナーで紹介した記事と重複している部分もたくさんあるが、データは最新のものに更新した。

・記録や情報は、4月5日判明分。
・年齢は、2025年4月12日のもの。
・文中、敬称略。


【女子スタート時間】

2025年4月12日(土)20時15分

 

五輪&世界選手権入賞経験者・廣中を中心に代表切符に挑む

日本選手権の出場資格は、「2024年日本選手権優勝者」「日本選手権クロカン・シニア8km優勝者」「日本グランプリシリーズ2024の10000mのポイントランキング6位以内」あるいは「申込資格記録32分25秒00以内(または5000m15分40秒00以内)」というもの。
この条件をクリアした17名がエントリーしていたが4月4日に4名がキャンセル。13名が9月の国立競技場での世界選手権代表を目指してしのぎを削る。13名とは別にオープン参加のマーガレット アキドル(コモディイイダ)がペースメーカー役を務める。

>>エントリーリストはこちら

4月4日に出場をキャンセルした4名の中には、2024年のチャンピオンでパリ五輪にも出場した五島莉乃(資生堂)、同じくパリ五輪代表だった高島由香(資生堂)が含まれる。また、24年日本選手権2位でパリ五輪を走った小海遥(第一生命グループ)は当初からエントリーしていなかった。

となると、21年東京五輪7位入賞、22年オレゴン世界選手権12位、23年ブダペスト世界選手権7位入賞と実績十分な廣中璃梨佳(JP日本郵政G)を中心としたレースになる可能性が高そうだ。


◆東京世界選手権の内定条件と選考条件◆

世界選手権参加標準記録は、日本記録の30分20秒44(新谷仁美/積水化学/20年12月4日)を上回る「30分20秒00(10kmロードの記録も有効)」。有効期間は、2024年2月25日~25年8月24日、出場枠(ターゲットナンバー)は「27名」だ。

日本陸連が定めた今回の日本選手権での世界選手権代表の「内定条件」は、以下のとおりだ。
ただし、
1)ワイルドカードにより参加資格を得た競技者。→該当者なし
2)2024パリ五輪3位以内で日本人最上位の競技者で2024年2月25日から日本選手権終了時点(25年4月12日)までに参加標準記録を満たした競技者。→該当者なし
3)2)に該当者がいない場合は、パリ五輪8位以内の日本人最上位で24年11月1日から25年4月12日までに参加標準記録を満たした競技者。→該当者なし
4)日本選手権3位以内で、2024年2月25日から25年4月12日までに参加標準記録を満たした競技者。その優先順位は、
①日本選手権の順位
②24年2月25日から25年4月12日までの記録上位者
つまり、4月12日の熊本で「3位以内で30分20秒00を突破すること」が内定条件だ。
今回の熊本で「内定者」が出なかった場合の「選考条件」は以下のような優先順位になる。

5)日本選手権8位以内で、24年2月25日から25年8月24日までに参加標準記録を満たした競技者。優先順位は、
①日本選手権の成績
②参加標準記録有効期間内の記録
③上記①と②で優劣がつかない場合は、25年度開催の国内外主要競技会(日本グランプリシリーズなど)の成績
6)日本選手権8位以内で、世界陸連の「Road to Tokyo」によって参加資格を得た競技者。優先順位は、
①日本選手権の成績
②「Road to Tokyo」の順位
③参加標準記録有効期間内の記録
④上記①~③で優劣がつかない場合は、25年度開催の国内外主要競技会(日本グランプリシリーズなど)の成績
7)24年2月25日~25年8月24日に参加標準記録を満たした競技者。優先順位は、
①「Road to Tokyo」の順位
②参加標準記録有効期間内の記録
③上記①と②で優劣がつかない場合は、25年度開催の国内外主要競技会(日本グランプリシリーズなど)の成績
8)「Road to Tokyo」によって参加資格を得た競技者。優先順位は、上記の7)の①~③と同様。
9)世界陸連によって、未使用枠の再配分によって参加資格が認められた競技者。ただし、「Road to Tokyo」の順位がターゲットナンバー(10000mは27名)に10を加えた順位(37位)以内に適用。
10)1)~9)で1名も出場者がいない場合は、「開催国枠」を利用してエントリーを行う。その優先順位は、
①「Road to Tokyo」の順位が37位以内の日本人最上位の競技者。
②日本選手権優勝者で日本陸連の設定した開催国枠エントリー設定記録(31分01秒32)を25年1月1日から8月24日までに満たした競技者。

▼東京2025世界陸上 参加標準記録一覧
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202411/14_111153.pdf


◆「Road to Tokyo」での出場切符は、4月1日時点で残り17枚◆

25年8月24日までに「30分20秒00」をクリアできなかった場合は、その時点での東京世界選手権に向けての1国3名以内の「ワールドランキング(WAランキング/Road to Tokyo)」で、出場枠の「27番目以内」に入ることが条件となる。

前回優勝者のワイルドカード1名を含め4月1日現在の「Road to Tokyo」では、ロード10kmを含めて参加標準記録突破者が7名(トラック7名、ロードはなし。各国4番目以下の選手を含めると計22名)、「クロスカントリー枠(3レースの平均)」による有資格者が3名で計10名。ターゲットナンバー「27」の「Road to Tokyo」による残り切符は「17枚」だ。

上述のとおり、参加標準記録(30分20秒00)突破あるいはクロカン枠で出場資格をゲットしている日本人選手はいない。4月1日現在の「Road to Tokyo(24年2月25日からの有効期間内の上位2レースの平均ポイント)」の順位は、以下のとおり。

・カッコ内は、自身の1番目と2番目のレースでのポイントを示す。
・氏名の前の「×」は、今回の日本選手権不出場者。
19)1212pt(1259・1166)×五島莉乃(資生堂/自己ベスト30.53.31=2024年)
22)1193pt(1233・1153)×小海遥(第一生命グループ/30.57.67=2023年)
25)1178pt(1185・1172)菅田雅香(JP日本郵政G/31.42.28=2024年)
・以上が4月1日現時点でのターゲットナンバーの圏内。以下は、1国3名以内でカウントしていった時の「相当順位」。
30)1165pt(1185・1145)兼友良夏(三井住友海上/31.53.76=2024年)
33)1160pt(1179・1142)矢田みくに(エディオン/31.34.39=2020年)
47)1139pt(1146・1132)田浦英理歌(積水化学/31.52.19=2024年)
48)1137pt(1150・1125)×川村楓(岩谷産業/31.54.73=2023年)
56)1113pt(1146・1080)×高島由香(資生堂/30.57.26=2023年)
63)1106pt(1127・1086)川口桃佳(ユニクロ/31.57.81=2022年)
64)1106pt(1111・1101)×堀尾和帆(ルートインホテルズ/32.31.72=2024年)
67)1104pt(1131・1078)立迫志穂(資生堂/32.16.31=2024年)
71)1102pt(1115・1090)×大西夏帆(ルートインホテルズ/32.27.71=2024年)
73)1101pt(1119・1084)小林香菜(大塚製薬/32.22.98=2024年)
76)1095pt(1097・1094)×原田紋里(第一生命グループ/32.39.71=2021年)
80)1088pt(1100・1077)×八木美羽(岩谷産業/32.44.62=2024年)
81)1088pt(1096・1081)×野田真理耶(大東大3年/33.05.34=2024年)
82)1087pt(1119・1056)×豊田由希(愛媛銀行/32.35.78=2024年)
83)1087pt(1099・1076)×松田杏奈(三井住友海上/32.07.11=2017年)
84)1085pt(1093・1078)×大森菜月(ダイハツ/32.24.27=2018年)
85)1084pt(1094・1074)×村松灯(ダイハツ/31.51.78=2023年)
87)1083pt(1091・1075)×原田紗希(名城大4年/32.55.50=2024年)
91)1082pt(1085・1080)尾崎光(シスメックス/32.58.13=2023年)
・以上、「1080pt以上」。

30位台以降に日本人がずらりと並んでいるようにみえるが、実際には他国の4番目以下の選手をカウントしていない「相当順位」で記載したのでこのようになる。

9月13日21時30分に国立競技場のスタートラインに立つことを確実にするには「30分20秒00」を破ることだが、そのハードルは非常に高く新谷仁美(積水化学)の日本記録(30分20秒44/2020年12月4日)を更新しなければならない。ただ、上述のとおり世界全体でもこれをクリアしているのは1国3名でカウントして前回優勝者がいるエチオピア(4名)とケニアの3名で計7名しかいない。参加標準記録の有効期限である8月24日までに10名を大幅に上回る突破者が生まれる可能性は低いと考えられる。よって、残りの十数枠は「Road to Tokyo」のポイントランキングによって争うことになりそうだ。

21年東京五輪、22年オレゴン、23年ブダペストの世界選手権での「WAランキング」によるボーダーラインの2レース平均ポイントは、1200ptあたりだったが、24年パリ五輪では27番目の五島莉乃(資生堂)が「1215pt」だった。4月1日現在でのボーダーは「1177pt」だが、8月24日までにはパリ五輪の時と同程度のポイントくらいまでアップするのではないかと考えられる。

▼「Road to Tokyo」の見方
https://www.jaaf.or.jp/news/article/21284/


◆廣中を軸としたレースで各選手が代表をつかみ取るために必要なタイムは?◆

今回の日本選手権には「Road to Tokyo」のランクで1・2位の五島と小海は不出場なので、これに続く菅田、兼友、矢田らはここでポイントを上乗せして、五島と小海の上にいきたいところだ。

なお、レースの中心となりそうな廣中は、「Road to Tokyo」のランクには入っていない。24年シーズンは、春先に故障してランキングポイントの有効期間内に10000mを1レースしか走っていないためである。その1レースは、24年12月7日の大阪・長居でのディスタンスチャレンジで32分29秒74(6着)。トップはチームの後輩・菅田で31分42秒28だった。

廣中の現在のポイントは、「記録1113pt+順位12pt=1125pt」だ。故障から復帰した第一戦は11月24日の全日本実業団女子駅伝の3区(10.6km)。区間賞の五島と16秒差の区間2位だったが、途中で追いついてきた五島に食らいつき3秒遅れでタスキをつないでチームの優勝に貢献した。第二戦が12月1日の日体大5000mで15分33秒25(12着)、第三戦が上述12月7日の10000m、25年シーズンは1月12日の全国女子駅伝で長崎県の9区(10km)を走って区間4位(32分11秒)で13位から9位に順位を上げた。区間賞(川村楓=31分48秒)とは23秒差で、区間3位のチームメイト・菅田とは1秒差だった。
3月下旬からアメリカ・アルバカーキーでの高地合宿を経て4月4日に帰国。同行した高橋昌彦監督によると現地では順調に予定通りの練習ができたそうである。帰国後の1週間で時差調整をして熊本に乗り込む。

廣中と同じく24年2月25日以降に1レースしか走っていないため上記のランクには入っていないが、24年春に3年間のブランクを経て競技に復帰してきた伊澤菜々花(スターツ)は廣中にとって不気味な存在だろう。1991年4月13日生まれ。日本の法律では誕生日の前日にひとつ年齢が上がるので、レースが行われる4月12日で34歳だ。

愛知・豊川高校時代にインターハイ3000mを制覇し、高校駅伝でも同校の全国2連覇に貢献した。順天堂大学1年の世界ジュニアでは5000mで8位入賞。卒業後はユニバーサルエンターテイメントで競技を継続していたが思うような結果を残せず21年にスパイクを脱ぎ22年春に順大大学院に進学した。が、「マラソンで日本代表になりたい」という幼い頃からの夢を諦めきれず24年4月にスターツに入社して3年ぶりに競技に復帰。それから半年後に花が開きはじめる。

24年11月9日に5000m15分25秒90をマークし順大3年生だった2012年以来12年ぶりに約15秒の自己ベスト。11月24日の全日本実業団女子駅伝では1区7.0kmを21分55秒で走ってトップと9秒差の区間4位。
12月7日には10000m31分44秒85(2着)で5000mに続き12年ぶりに約45秒の自己ベスト(その時のトップが31分42秒28の菅田で廣中は6着)。
12月15日には山陽女子ロードのハーフマラソンで1時間8分25秒の日本歴代10位、自己ベストを7年ぶりに一気に3分29秒も破った。
25年は1月12日の全国女子駅伝で千葉の9区10.0kmを担当し区間2位(32分08秒)で6人抜き、チームを10位から4位に押し上げた。
「2時間19分で優勝」を目標に臨んだ1月26日の大阪国際女子マラソンは25kmまで先頭集団でレースを進めたが、その後は徐々にペースダウンして口惜しさの残る8位(2時間29分28秒)。フィニッシュ後は低体温症で病院に搬送された。

マラソンでの東京世界選手権出場は叶わなかったが、10000mでの代表入りに向けて、3月29日の日体大長距離競技会では3000mと5000mの2レースを続けざまに走った。14時45分にスタートした3000mが9分16秒32(2着)。そのフィニッシュから5分ほどの15時00分に5000mをスタートし16分09秒84(5着)だった。なお、この日は朝から雨でレース中の気温は5.5℃、北東の風が3~4m吹いており体感気温は1℃台くらいだった。前日までの1週間は25℃前後もあったのに一夜で急落した。

伊澤の1レースでのポイントは、「記録ポイント1152pt+順位ポイント22pt=1174pt」だ。

小林香菜(大塚製薬)の「超高速ピッチ走法」にも注目だ。すでにマラソンの代表に決定しているため10000mの代表を狙う訳ではないが、トラックを25周する30分ちょっとの間、その高速ピッチはスタンドの人の眼を引くことだろう。マラソン代表内定の決め手となった25年1月26日の大阪国際女子マラソン(2位・2時間21分19秒=日本人トップ)の時の1分間の平均ピッチは前半と終盤の2箇所しか計測していないが「218.7歩」と「221.6歩」で、平均は「220.2歩」。24年11月24日の全日本実業団女子駅伝の3区10.6kmを34分45秒(区間11位)で走った時の4km手前のピッチは「224.0歩」だった。

日本人の女子マラソン選手で「1分間220歩」というピッチは、筆者はこれまでに見たことがない。
手許に残る最速ピッチは高橋尚子さんが人類初の2時間20分突破(2時間19分46秒)を2001年のベルリンで果たした時の「平均209歩」。
92年バルセロナと96年アトランタで五輪2大会連続メダルを獲得した有森裕子さんが「平均205.6歩」。
2時間19分12秒の日本記録を2005年から24年まで保持していた野口みずきさんが「平均196.9歩=2時間21分37秒の時」。
現役選手では、前田穂南が現日本記録の2時間18分59秒を24年にマークした時が「平均191.5歩(186.2~196.8歩)」。
鈴木亜由子の2時間21分52秒(23年)の時が「平均207.4歩(203.5~209.9歩)」。
上記の通りで、高橋さん、有森さん、鈴木も「高速ピッチ」とされるが小林が群を抜いている。

男子では、91年東京世界選手権で金メダルを獲得した時(2時間14分57秒)の谷口浩美さんの「223.7歩(204~232歩)」というのが、筆者の手許で確認できるデータの最速ピッチだ。

記録ポイントのみでの「1200pt」は「30分52秒48」、「1220pt」が「30分30秒51」、参加標準記録の「30分20秒00」は「1229pt」だ。31分00秒前後のレベルでの記録ポイントの差は、概ね「1秒1で1pt差」「約11秒で10pt差」というところ。

「WAランキング(Road to Tokyo)」のポイントは、「記録ポイント+順位ポイント」で算出される。
「順位ポイント」は、大会のグレードによっていくつかに区分されているが、日本選手権のカテゴリーは「B」で、各順位のポイントは以下のとおりだ。
1位 60pt
2位 50pt
3位 45pt
4位 40pt
5位 35pt
6位 30pt
7位 25pt
8位 20pt
よって、日本選手権では、ひとつでも上の順位でフィニッシュすることが「Road to Tokyo」のポイントを稼ぐためには重要だ。1位と2位の順位ポイントの「10pt差」をタイムに換算すると約11秒差、1位と3位の「15pt差」は、16秒5くらいの差になる。ほとんど差がない胸差のほぼ同タイムでフィニッシュしても、WAランキングの順位ポイントでは、上記のようなタイム差がついたのと同じ扱いになるのだ。

また、記録ポイントが「1160pt」の「31分36秒98」であっても、日本選手権でトップフィニッシュすれば順位ポイントの「60pt」が加算されるのでトータルは「1220pt」となり、2レース平均でのボーダーラインあたりになりそうなポイントを稼げることになる。

このところの「WAランキング」のシステムでは、「27番目と28番目」のポイント差が、1点差とか同点での勝負になることもあり「0秒01差」が晴れの舞台に出場できるかどうかの明暗を分ける可能性もある。「WAランキング」のポイント(整数値)が同じ場合は、小数点以下での比較はせず、2レースのうちで最も高いポイントを獲得した選手を上位とする。2レースとも同得点の場合は、同順位となる。これらは、5試合の平均ポイントでランク付けする短距離種目なども同様である。10000mを走っての「0秒01差」が1ポイント差となるケースもあり、それが天国と地獄の分水嶺となるかもしれないのだ。

このところの状況からすると参加標準記録未突破の海外選手を含めて8月24日までに新たに「30分20秒00」をクリアする選手が世界で続出する可能性は低く、「Road to Tokyo」でのポイント争いとなりそうである。

菅田が現在の五島の2レース平均「1212pt」に並ぶには、今回の日本選手権で「1240pt」が必要だ。優勝して「60pt」が加わったとすると記録で「1180pt」が要求される。これに相当するタイムは「31分14秒63」で自己ベストを28秒あまり更新する必要がある。
兼友が優勝して五島に並ぶには菅田と同じ「31分14秒63」、矢田なら「31分07秒97」だ。廣中の場合は「30分08秒71」が必要であるがこれならば参加標準記録突破の日本新記録でポイントではなく文句なしの代表内定である。伊澤の場合は「31分02秒42」だ。

日本選手権で「内定」とならなかった場合、5月27日~31日に韓国・クミで開催されるアジア選手権に出場する2選手はそこでポイントを稼ぐチャンスがある。
アジア選手権のカテゴリーは、「GL」というもので順位ポイントがカテゴリー「B」の日本選手権よりもはるかに高い。
1位 110pt
2位 90pt
3位 75pt
4位 65pt
5位 55pt
6位 50pt
7位 45pt
8位 40pt
9位 30pt
10位 25pt
11位 22pt
12位 20pt

また、同じアジアに「参加標準記録突破者」や「WAランキング(Road to Tokyo)」での出場権獲得者がいない場合に限り「アジア選手権優勝者」には世界選手権出場資格が与えられる。ただし、4月1日現在では、ターゲットナンバーの27位以内に日本の五島・小海・菅田の3人のほか、カザフスタンに「クロカン枠」でランク8位の選手がいるので「アジアチャンピオン枠」での出場権獲得の可能性はない。
上述のとおり高い順位ポイントを獲得できるチャンスなのでここでポイントを上乗せしたいところだ。

廣中を含めて、日本選手権のみでのポイントでは、「27位以内」に入るのは厳しくとも順位ポイントの高いアジア選手権との2レースで大幅にポイントを稼げる可能性がある。

なお、アジア選手権の代表選手(2名)の選考の優先順位は、
1)日本選手権優勝者
2)日本選手権8位以内で2024年1月1日から25年4月12日の日本選手権終了時点までのベスト記録での順位をポイント化したものと、日本選手権での順位ポイントを合算した上位の競技者(同ポイントの場合は、日本選手権の順位を優先)。

というものだ。2)についての具体的な方法は、下記を参照いただきたい。
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202408/21_161233.pdf


◆至近6年間の日本選手権での入賞歴◆

・今回の出場者に限る。掲載順序は、直近年の順位順
 192021222324
兼友良夏3
矢田みくに5684
菅田雅香75
川口桃佳747
廣中璃梨佳111
・以下、今回不出場の2024年の入賞者
 192021222324
五島莉乃×341
小海遥×32
川村楓×6
村松灯×8
上述のとおり、今回の出場者で日本選手権入賞経験者は5人。
21年から3連勝の廣中の実績が群を抜く。
至近5年間で4回入賞の矢田、4年間で3回入賞の川口、2大会連続入賞継続中の菅田。廣中以外ではただひとり表彰台に立った兼友は前回は最後に矢田と菅田に競り勝った。

廣中は21年から3連勝したが、この種目での連覇はこれまでに5人。
古い順に、
鈴木博美(リクルート) 1995・96年
福士加代子(ワコール) 2002~07年(6連勝)
西原加純(ヤマダ電機) 2014・15年
松田瑞生(ダイハツ) 2017・18年
廣中璃梨佳(JP日本郵政G) 2021~23年(3連勝)
今回、4度目の優勝を目指す廣中の10000mでの全成績は以下のとおり。

<廣中璃梨佳の10000m全成績>
・記録の後ろの「◎」は、その時点での自己新
2021.04.101)31.30.03熊本金栗記念
2021.05.031)31.11.75◎袋井日本選手権
2021.08.077)31.00.71◎国立オリンピック
2022.05.071)31.30.34国立日本選手権
2022.07.1612)30.39.71◎ユージン世界選手権
2023.05.044)32.11.15延岡GGN延岡
2023.08.197)31.35.12ブダペスト世界選手権
2023.09.292)31.50.74杭州アジア競技大会
2023.12.101)30.55.29国立日本選手権
2024.12.076)32.29.74長居ディスタンスチャレンジ


◆新谷仁美の日本記録(30分20秒44)の時のペース◆

20年12月4日の日本選手権(長居)で新谷仁美(積水化学)が30分20秒44の日本記録をマークした時の400m毎は下記のとおり。2000m手前まではチームメイトの佐藤早也伽が先導したが、下記はすべて新谷の通過タイムである。

・以下、筆者による非公式計時
400m1.11.671.6   
800m2.25.273.6   
1000m3.01.9 3.01.9  
1200m3.39.173.9   
1600m4.53.674.5   
2000m6.07.473.83.05.56.07.4 
2400m7.18.370.9   
2800m8.29.270.9   
3000m9.04.4 2.57.0  
3200m9.40.371.1   
3600m10.52.372.0   
4000m12.04.972.63.00.55.57.5 
4400m13.18.073.1   
4800m14.30.872.8   
5000m15.06.8 3.01.9 15.06.8
5200m15.43.572.7   
5600m16.56.172.6   
6000m18.09.473.33.02.66.04.5 
6400m19.22.673.2   
6800m20.36.073.4   
7000m21.11.9 3.02.5  
7200m21.48.973.9   
7600m23.02.773.8   
8000m24.15.973.23.04.06.06.5 
8400m25.28.472.5   
8800m26.42.574.1   
9000m27.19.2 3.03.3  
9200m27.55.673.1   
9600m29.09.073.4   
10000m30.20.4471.43.01.26.04.515.13.6(前後半差▽6.8)

残り3000m9.08.5
残り2000m6.04.5
残り1500m4.33.7
残り800m2.24.8
残り600m1.48.1
残り500m1.29.7
残り400m1.11.4
残り300m53.4
残り200m35.8
残り100m17.7
スタートからチームメイトの佐藤が引っ張たが1000mからややペースダウン。それを感じ取って、1950m付近から新谷がトップに立って3000mまでを2分57秒0にペースを上げた。以後も1周を72~73秒台で刻み最終的には3位以下の選手を周回遅れにし、従来の日本記録(30分48秒89/渋井陽子/三井住友海上/2002年5月3日)を一気に28秒45更新した。2020年の世界2位、この時点での世界歴代21位だった(25年4月5日現在は、歴代45位)。


◆廣中璃梨佳の自己ベスト(30分39秒71)の時の1000m毎◆

22年7月16日のオレゴン世界選手権で廣中が30分39秒71(12着)の自己ベストを出した時の1000m毎は、以下のとおり。通過記録の前のカッコ付き数字はその地点での通過順位を示す。

1000m1)3.04.803.04.80  
2000m1)6.08.843.04.046.08.84 
3000m1)9.11.873.03.03  
4000m1)12.15.073.03.206.06.23 
5000m1)15.19.283.04.21 15.19.28
6000m3)18.26.303.07.026.11.23 
7000m7)21.30.353.04.05  
8000m18)24.30.773.00.426.04.47 
9000m11)27.37.293.06.52  
10000m12)30.39.713.02.426.08.9415.20.43(前後半差▽1.15)
この時の廣中は世界の大舞台で5000mまでを3分03~04秒の安定したペースでトップを引いた。5000m過ぎに先頭を譲ったが、5000~6000mは集団のペースがダウン。7000mまでトップ集団に食らいついたが、そこからトップが1000m2分57~58秒にアップしたことで次第に離された。廣中は8000m~9000mに3分06秒52を要し、9000mでは11番目で先頭と12秒37差、8番目とも11秒37差となって入賞が厳しくなった。9600mでは19位の位置にいたが残り1周を踏ん張った。ラスト400m69秒29、最後の100mを16秒87でカバーして12着(30分39秒71)でフィニッシュ。翌23年ブダペスト世界選手権の参加標準記録30分40秒00をギリギリのところでクリアしたのだった。

この時の廣中は、「前半15分19秒28」に対し「後半15分20秒43」。その差は僅か1秒15しかなかった。
新谷の日本記録(30分20秒44)の時も「前半15分06秒8」に対し「後半15分13秒6」で落差は6秒8だった。
これまでの世界や日本での様々な競技会で好記録が出た時のペースを調べると、前後半の落差が数秒、あるいは後半の方が速かったということが多い。
「前半で貯金を作って……」とハイペースで突っ込むと、踏ん張りどころの6000mあたりから苦しくなって終盤に大きくペースダウンしてしまうというケースをよく見かける。そうなると、ラスト1000mや残り1周のスピードも上げられずに、結果的には、「前半の貯金」を大きく取り崩してしまい目標にほど遠い結果に終わってしまうことも多いようだ。

レース当日の気象条件にもよるが、「30分20秒00」がターゲットであれば、そのイーブンペースは、1000m「3分02秒0」、400mならば「72秒8」だ。5000mあたり「15分10秒0」だが、今回の出場者で5000mのベストがこれよりも早いのは廣中(14分52秒84/21年8月2日)しかいない。半年前に故障から復帰してきた廣中がどれくらい仕上げてきていて、どのあたりのタイムをターゲットにして走るのかによって、レース展開は大きく変わりそうだ。

他の選手で最も早い5000mの持ちタイムは矢田の15分19秒67(20年7月18日)。それを2倍してちょうど廣中の10000mのベストと同じくらいだ。廣中以外で10000mのベストが最も早いのも矢田の31分34秒39(20年12月4日)なので、兼友・菅田・矢田あたりにとっての現実的な目標タイムは、先に述べた「Road to Tokyo」で五島のポイントに並ぶために必要な「優勝して31分10秒前後」といったあたりになるだろうか?
ではあるけれども、「このところ急成長してきていて、一気に30分台」という選手が出てくれば万々歳である。

いずれにしても、それぞれが目標としているターゲットタイムから大きく外れることなくスタートから安定したペースを刻み、苦しくなってくる6000mから8000m過ぎでペースダウンせずに踏ん張れるかどうかがポイントだろう。目標タイムから5~10秒くらいの「遅れ」は、残り1000mや400mの「最後の底力」のキックで、十分に取り戻せる可能性がある。

ペースメーカーを努める22歳のアキドルのベストは、32分20秒71(21年)。10000mを完走したのはこの初レースでの1度だけだ。しかし、1500m4分05秒29(23年)、3000m8分29秒88(23年)、5000m14分39秒49(24年)、ハーフも67分45秒(24年)で走る。5000mはモナコでのダイヤモンドリーグで優勝した時のタイムだ。5000mやハーフの走力からすれば10000mも30分台の力は十分にありそうだ。

「ペースメーカー」といえば、23年から導入された「電子ペーサー(ウェーブライト)」も強い味方である。トラック内側の縁石のところに1m毎にLEDライトを設置し、設定したペースで発光していく機器だ。
ライトは何色か(3~4色)に色分けができ、いくつかの目標記録別に点灯させることができる。
今回の日本選手権での設定ペースは、この原稿を書いている時点(4月5日)では明らかにされていないが、「Road to Tokyo」のポイントを少しでもアップさせるために出場選手の状況と当日の気象状況を考慮して2~3種類くらいのペースが設定されることになるだろう。

4月12日20時15分にレースはスタートするが、2020~24年の「20時20分」の熊本市の気象状況を調べた。なお、郊外にある「えがお健康スタジアム」での数字ではなく約9km離れた熊本城に近い市内中心部の観測点のデータである。

<2020~24年の20時20分の熊本市の気象状況>
天候気温湿度風向風速
2020年9.9℃90%北北西2.9m/s
2021年16.8℃95%北東0.9m/s
2022年21.9℃74%南西2.1m/s
2023年15.8℃39%1.1m/s
2024年18.4℃65%南西3.2m/s
参考までに、過去2年間の日本選手権のレースの頃の競技場(23年=東京の国立競技場、24年=袋井のエコパ競技場)のコンディションは、
2023年12月10日 16時00分 晴 15.0℃ 58%  南  0.1m/s
2024年5月3日 19時30分 晴 18.0℃ 70% 南南西 0.1m/s

23年も24年も風がほとんどなかったのが幸いだった。
今回の熊本も競技場に強い風が吹かないことを祈りたい。


◆日本選手権での着順別最高記録◆

1)30.20.442020年
2)30.57.262023年
3)30.57.672023年
4)30.58.832023年
5)31.34.992020年
6)31.36.042020年
7)31.36.192020年
8)31.37.712020年
9)31.39.862020年
10)31.46.842020年
トップと5着以下は20年。2~4着は23年のレベルが高かった。23年はトップ(30分55秒29)からの4人が3秒54の間にフィニッシュラインになだれ込む大接戦だった。


◆2015年以降の世界大会の日本代表とその成績◆

2015年以降の世界選手権と五輪の代表と本番での成績は以下のとおり。

<至近8世界大会の代表と成績>
「★」は、今回の日本選手権出場者。
2015北京世界選手権13)32.12.95 西原加純(ヤマダ電機)
 20)32.27.79 高島由香(デンソー)
 22)32.47.74 小原怜(天満屋)
   
2016リオデジャネイロ五輪18)31.36.44 高島由香(資生堂)
 20)31.44.44 関根花観(日本郵政グループ)
 欠場鈴木亜由子(日本郵政グループ)
   
2017ロンドン世界選手権10)31.27.30 鈴木亜由子(日本郵政グループ)
 19)31.59.64 松田瑞生(ダイハツ)
 24)32.31.58 上原美幸(第一生命グループ)
   
2019ドーハ世界選手権11)31.12.99 新谷仁美(NIKE TOKYO TC)
 13)32.53.46 山ノ内みなみ(京セラ)
   
2021東京五輪7)31.00.71 ★廣中璃梨佳(日本郵政グループ)
 21)32.23.87 新谷仁美(積水化学)
 22)32.40.77 安藤友香(ワコール)
   
2022オレゴン世界選手権12)30.39.71 ★廣中璃梨佳(JP日本郵政G)
 19)32.08.68 五島莉乃(資生堂)
 欠場小林成美(名城大)
   
2023ブダペスト世界選手権7)31.35.12 ★廣中璃梨佳(JP日本郵政G)
 20)33.20.38 五島莉乃(資生堂)
   
2024パリ五輪18)31.29.48 五島莉乃(資生堂)
 19)31.44.03 小海遥(第一生命グループ)
 22)31.52.07 高島由香(資生堂)
上記のとおり、今回の出場者で世界大会代表の経験があるのは廣中のみ。3回のうち2回が7位入賞で東京五輪は自己新、12位だったオレゴンも自己新記録というのは素晴らしい。
9月の東京世界選手権には、誰が出場してどんな結果を残すことになるのか……。


◆日本の層の厚さは?◆

以下は、今回の日本選手権のレースとは直接関係のない話題である。
今回の日本選手権申込資格記録は「32分25秒00」だったが、ここではキリのいい「32分30秒00」をクリアした2022・23・24年の人数を他国のそれと比較し、日本の層の厚さなどについて調べた。
日本の「32分30秒00以内」は、22年が23人、23年が24人、24年が18人。
同じ条件で人数が多いのは以下の国々だ。

<32分30秒00以内の国別人数上位国>
国名22年23年24年
JPN23人24人18人
USA31人18人30人
KEN19人20人23人
ETH19人14人14人
GBR9人6人9人
GER4人4人4人
世界全体135人109人131人
国の数24国21国22国
各年の「世界100位」の記録は、2022年が「32分13秒03」、23年「32分25秒49」、24年「32分16秒98」だった。

32分30秒00以内の人数では、日本は22年がアメリカについで2位、23年は世界トップ、24年はアメリカとケニアについで3位。
世界の長距離界を席巻するエチオピアとケニアの人数をアメリカと日本が上回っているのは少々「意外」と感じるかもしれない。

地域(大陸)別の人数は、

<32分30秒00以内の地域別人数>
地域名22年23年24年
アフリカ46人38人42人
北アメリカ32人19人31人
ヨーロッパ29人20人31人
アジア25人28人23人
オセアニア3人3人3人
南アメリカ0人1人1人
世界全体135人109人131人
やはりアフリカの人数が多い。アジアは、22年は25人中23人、23年は28人中24人、24年も23人中18人が日本人選手で「孤軍奮闘」といったところだ。
ヨーロッパには54の国があり、7億5千あまりの人口を有するが、「32分30秒以内」の人数は、日本といい勝負か少し多いくらい。6分の1程度の人口の日本の「32分30秒以内」の人数は「すごい」ともいえる。

「32分30秒00以内の人数」では、アメリカや日本に対して分が悪いエチオピアとケニアではあるが、29分台からのハイレベルなのタイムの人数では、やはりこの2国が「はるかに上」の力を持っている。
それを示したのが下表である。

<2022&23&24年の女子10000mの30秒毎のタイム別の国別累計人数>
・「<30.00」は「30分00秒00以内」、「<32.30」は「32分30秒00以内」を示し、「○/△/□」は「2022年/23年/24年の累計人数」を示す。
国名<30.00<30.30<31.00<31.30<32.00<32.30
 22/23/24年22/23/24年22/23/24年22/23/24年22/23/24年22/23/24年
JPN・/・/・・/・/・1/4/12/4/29/17/923/24/18
USA・/・/・2/1/・3/4/36/6/1024/10/1431/18/30
KEN・/1/33/3/74/3/99/5/1613/14/2019/22/23
ETH・/4/43/6/56/9/810/11/1011/11/1219/14/14
GBR・/・/・1/1/・2/1/14/4/24/4/69/6/9
GER・/・/・・/・/・・/・/・1/1/・2/1/24/4/4
表の見方を日本を例に説明すると、「30分00秒00以内」も「30分30秒00以内」も22年・23年・24年ともに1人もいなくて、「・/・/・」。「31分00秒00以内」は、22年に30分39秒71の廣中1人で23年は日本選手権の上位4人、24年は30分53秒31の五島1人で「1/4/1」。「31分30秒以内」は22年に31分22秒38の五島が加わり廣中と合わせて累計2人、23年の31分台前半は0、24年は31分10秒53の小海が入って累計2人で「2/4/2」。「32分00秒以内」は、廣中と五島を含めて22年が累計9人、23年は累計17人、24年は累計9人で「9/17/9」という表記になる。

日本は、上記のとおりだが、レベルの高い「30分00秒以内」「30分30秒以内」になるとエチオピアとケニアの強さが目立つ。
23年のデータでは、「32分30秒以内」の人数ではともに日本の24人に劣る。ただし、日本のトップが廣中の「30分55秒21」なのに対し、エチオピアは29分台4人、30分00~30秒2人、30分30~31分00秒3人。廣中の記録は、エチオピアでは9位相当、ケニアでは4位相当だ。記録順に世界大会代表の3人が選ばれるならば、廣中は代表には届かないことになる。
24年も同様で、日本人トップの五島の30分53秒31は、エチオピアでは7位相当、ケニアでは10位相当だ。

上の表と似たようなものだが、2022年・23年・24年の「1分毎の人数」を国別に示したのが下表である。
先の表は、速い方から順に「32分30秒」までを「30秒毎」で区切った「累計人数」で示したが、下の表は「1分毎の人数」を示している。日本の22年のデータでみると、「30分台が1人」「31分台が8人」「32分台39人」「33分台44人」「34分台54人」だ。

<2022・23・24年の1分毎の国別人数>
・「28分台」は「29分台」に含めた。
  29分台30分台31分台32分台33分台34分台合計
JPN22年18394454146
23年413265256151
24年18276541142
         
USA22年3221659115215
23年46347190205
24年312478183224
         
KEN22年4914131151
23年121118211063
24年36118252578
         
ETH22年6597128
23年4534117
24年44421116
上表のとおり、日本やアメリカはタイムが下がるに従って人数が増えている。
しかし、エチオピアは34分台の選手は22年も23年も24年1人しかいない。ケニアも34分台になると22・23年は人数が減っている。
この両国、とりわけエチオピアでは34分台の選手が陸上を続ける環境がないということなのであろう。

5000mで調べてみても、24年のエチオピアは14分台が27人、15分台前半9人、15分台後半2人、16分台前半3人、16分台後半7人。16分台後半は16分台前半よりも多いが15分台後半以降は14分台や15分台前半よりも人数が少ない。
日本では、16分30秒以内の選手が毎年300人を超えるがエチオピアでは22年35人、23年29人、24年41人と日本の十分の一くらいに過ぎない。世界陸連に記録の報告がなされている5000m17分台前半までの選手は、エチオピアが40~50人前後、ケニアが百数十人といったところ。世界陸連への未報告分を含めると日本には17分30秒以内の選手は、毎年750~800人近くもいる。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)



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