2024.08.27(火)大会

【リマ2024 U20世界選手権】展望:次世代を担う日本代表39名が世界の舞台へ挑む!



20歳未満の「世界一」を決める「リマ2024 U20世界陸上競技選手権大会」が8月27日から31日までペルーの首都リマで行われる。日本代表選手は男子26名、女子13名の計39名。世界の頂点を目指し「まだ見ぬステージへ」挑む。

同じ南米のコロンビア・カリでの開催だった前回大会では、男子4×100mリレーの金メダルをはじめ、メダル4、入賞7(メダル除く)の成績を収めた。広大な太平洋に面した、南米屈指の大都市で、日本のホープたちがどんな戦いを見せるのか。今回で20回目の節目を迎え、五輪や世界選手権といったシニア世界大会への試金石となる舞台に挑む日本代表選手を紹介していく。(文中のU20世界リストは8月26日時点)

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「日本選手権覇者&日本記録保持者」2名が参戦

注目は何と言っても、男女800mの日本選手権覇者であり、「日本記録保持者」となった落合晃(滋賀学園高校)、久保凛(東大阪大学敬愛高校)だろう。

ともに、日本の800mの歴史を塗り替えた。落合は6月末の日本選手権で同種目5年ぶりの高校生優勝を達成。そして、7月末の福岡インターハイ決勝で日本人初の1分45秒切りとなる1分44秒80を樹立し、2連覇に花を添えた。このタイムは今季U20世界リストで2位につけており、同種目史上初のファイナル、さらにはメダル獲得も十分に視野に入る。
日本選手権ではシニア勢を相手に一度も先頭の座を譲らないレースを見せ、インターハイではハイペースの2番手から2周目にペースを上げてラスト勝負を制している。ペース変化の厳しい国際舞台のレースも、4月のU20アジア選手権で経験済み。日本王者、そしてU20アジア王者として、臆することなく挑む構えだ。



久保は今季、国内で圧倒的な走りを見せ続けている。4月の金栗記念、5月の静岡国際、木南記念と日本グランプリシリーズ3連勝を飾ると、日本選手権ではシーズン3度目のU18日本記録更新となる2分03秒13で快勝。落合と同様、トップを走り続けての栄冠だった。

圧巻は7月15日の第1回関西学連長距離記録会。1周目を58秒台のハイペースで入り、2周目も降りしきる雨、独走の中でそのスピードを落とさずにフィニッシュ。日本人初の2分の壁突破となる1分59秒93を叩き出した。2週間後の福岡インターハイでは自己2番目、パフォーマンス日本歴代4位の2分00秒81で2連覇を達成した。

持ち味はハイペースを最後まで維持する能力。インターハイ後は1500mでU18日本歴代3位の4分13秒75を出すなど、好調をキープしている。U20世界リストでは6位とファイナルは射程圏内。初の世界大会でどんな走りを見せるか。



男子800mにはU20日本選手権を高校歴代4位の1分47秒80で制した吉澤登吾(桐朋高校)も出場。U20世界リストでは31位につけ、落合とともに決勝進出を目指す。




ダイヤモンドアスリート・永原ら「日本高校記録保持者」がずらり

落合、久保のほかにも、昨年、今年に「日本高校記録」を樹立した逸材たちが代表に名を連ねた。
男子3000m障害物の高校記録保持者は、日本陸連ダイヤモンドアスリート・永原颯磨(順天堂大学・U20世界リスト7位)。同種目でパリ五輪8位と2大会連続入賞を果たした三浦龍司(SUBARU)が京都・洛南高校時代に出した高校記録(8分39秒37)を昨年、2度にわたって更新。北海道インターハイで8分32秒12をマークした。



今季は春に日本グランプリシリーズに参戦してシニア勢に挑戦。4月の兵庫リレーカーニバルでは4位に食い込んでいる。日本選手権は14位と力を発揮しきれなかったが、しっかりと走りこんで修正してきた。五輪や国際大会での活躍を期待して次世代の競技者を中長期的に強化・育成する「ダイヤモンドアスリート プログラム」での学びと、大学の先輩である三浦の五輪での活躍を刺激に、初の世界に挑む。

同種目には、永原の高校の1年後輩、佐々木哲(佐久長聖高校・U20世界リスト6位)も代表入り。U20日本選手権を制し、福岡インターハイは6月に出した高校歴代2位の記録を8分37秒23に更新して優勝を飾った。



その福岡インターハイで、高校新Vの快挙を成し遂げたのが男子走高跳の中谷魁聖(福岡第一高校・U20世界リスト2位)だ。インターハイ最古の大会記録を1cm上回る2m21をクリアすると、現・日本陸連アスリート委員長である戸邉直人(JAL)が千葉・専修大学松戸高3年時に作った高校記録を1cm塗り替える2m24をクリア。大会最終日、最後の競技者として地元インターハイを見事に締めくくった。U20アジア選手権では2m19で銀メダル。戸邉以来となる、同種目でのメダル獲得なるか。



男子十種競技の高橋諒(慶應義塾大学・U20世界リスト17位)も、八種競技で史上初のインターハイ1年生優勝を飾った逸材。昨年は3連覇が懸かったインターハイは、ケガの影響で南関東大会欠場を余儀なくされたが、11月に6264点の高校記録を打ち立てた。大学入学後も関東インカレ1部優勝、U20日本選手権ではU20日本歴代2位の7445点で制覇と、さらに力をつけた。世界の壁が分厚い種目ではあるが、それを打ち破る可能性を秘めている。




充実の男子スプリント陣、4継連覇も視野に

充実の陣容となったのが男子短距離陣だ。その筆頭は、男子100mU20日本選手権、インターハイ2冠の西岡尚輝(東海大学付属大阪仰星高校・U20世界リスト7位)。U20日本選手権準決勝の10秒20をはじめ10秒2台前半を連発すると、インターハイ準決勝では高校歴代2位の10秒11と快走。桐生祥秀(日本生命)が洛南高校3年時に作った大会記録10秒19を11年ぶりに塗り替え、決勝も向かい風の中で10秒26(-1.5)と快勝している。



U20日本選手権で10秒31を出して2位に入った小室歩久斗(つくば秀英高校・U20世界リスト30位)とともに、世界のスプリンターに挑む。前回大会ではダイヤモンドアスリート修了生の栁田大輝(東洋大学)が6位に入るなど、ファイナリストはコンスタントに出ているが、メダリストは2014年ユージン大会銅メダルの桐生ただ1人。今季U20世界リスト7位タイだが、史上2人目の快挙も夢ではない。



男子200mはU20日本選手権優勝の佐藤克樹(東京学館新潟高校・U20世界リスト29位)、インターハイを高校歴代4位の20秒61で制覇した若菜敬(佐野高校・U20世界リスト11位)の高校ツートップが臨む。



そして、この4人が軸となる4×100mリレーは連覇に挑戦する。前回大会、栁田を軸に悲願の初金メダルに輝いた。それに勝るとも劣らぬ陣容が整った今回、個人種目で好結果を出して弾みをつけられれば、スプリント大国の米国やジャマイカなどと対等以上に渡り合えるはずだ。

ロングスプリント陣の主軸となるのは、400mハードルで代表入りした菊田響生(法政大学第二高校)だ。U20日本選手権、インターハイではいずれも400mとの2冠に輝いているが、U20日本選手権で高校歴代2位・U20日本歴代7位タイの49秒77をマークした400mハードルで世界に挑戦する。今季U20世界リストでは2位タイ。メダル獲得となれば、2012年バルセロナ大会銀メダルの松本岳大以来だ。
400mハードルのもう1人の代表・権田浬(早稲田大学・U20世界リスト11位)も50秒20のベストを持つ選手。



さらに400mでも46秒台コンビの大石亮太(浜松開誠館高校・U20世界リスト41位)、白畑健太郎(東洋大学・U20世界リスト40位)と、いずれも個人でラウンド突破を重ねていけば、その力を結集させる4×400mリレーでは、銀メダルだった14年ユージン大会以来のメダル獲得が視野に入る。



シニアが世界大会のファイナルへと突入した110mハードルは、昨年のU20日本選手権、インターハイ2冠の山中恭介(法政大学・U20世界リスト23位)、今年のU20日本選手権3位の橋本悠(東京農業大学第二高校・U20世界リスト36位)のコンビで世界に挑む。U20規格で山中はU20日本歴代8位の13秒43、橋本は同15位タイの13秒53を持つ実力者だ。橋本は400mハードルでもインターハイ2位の実力を持っており、4×400mリレーの戦力にもなりそうだ。




国際舞台の経験を糧に世界に挑む

男女10000m競歩代表の4人は、4月の世界競歩チーム選手権で10kmロードながら世界を体感した。男子の逢坂草太朗(東洋大学・U20世界リスト1位)、吉迫大成(東京学芸大学・U20世界リスト2位)は4位、6位に入賞し、団体の銀メダル獲得に貢献。リマでは個人のメダルを目指した戦いとなる。
女子の奥野紗(浪速高校・女子10km競歩 U20世界リスト26位)、久家すずか(金沢学院大学・女子10km競歩 U20世界リスト29位)は世界競歩チーム選手権では13位、15位。その後、奥野はインターハイ優勝、久家は日本学生個人選手権で奮闘とそれぞれにさらに力をつけ、再び世界の舞台に立つ。



女子1500mのドルーリー朱瑛里(津山高校・U20世界リスト35位)は、4月のU20アジア選手権で金メダルと国際大会で成果を残した。日本選手権では果敢に挑戦し、7位に入賞。これらの経験が、同世代との争いに生きるはずだ。




ハイレベルの男子長距離、女子100mハードルなど多士済々の日本代表たち

男子長距離陣は3000m障害物コンビに負けじと強力な布陣。佐々木のチームメイト・濵口大和(佐久長聖高校)は、U20日本選手権でいずれも優勝した3000m(U20世界リスト36位)、5000m(U20世界リスト47位)で代表入り。インターハイ1500mでは高校歴代5位の3分43秒58で日本人トップの2位と、持ち前のスピードに磨きがかかる。



5000mは今季学生長距離界で躍進を続ける松井海斗(東洋大学・U20世界リスト49位)が入り、3000mは佐々木が3000m障害との2種目出場。1500mは7月末に3分41秒41の自己ベストを叩き出した寺田向希(中央大学・U20世界リスト31位)が世界のスピードに挑戦する。



女子長距離では、3000mはU20日本選手権で優勝を果たした山田未唯(名城大学・U20世界リスト43位)、同大会2位の鈴木美海(筑波大学・U20世界リスト55位)、5000mは山本釉未(立命館大学・U20世界リスト28位)が出場する。



男子と同様に活況の女子100mハードルは、インターハイ2連覇の実績を持つ林美希(早稲田大学)と、U20日本選手権覇者の髙橋亜珠(筑波大学)の学生コンビが代表入り。U20日本歴代2位の13秒28、200mでも同歴代8位タイの23秒67を出すなど今季急成長の髙橋は、今季世界リストで18位タイにつけ、林は30位タイ。準決勝でいかに力を発揮するかが焦点となりそうだ。



女子400mハードルにはU20日本選手権で2連覇を飾った平木陽(大阪成蹊大学・U20世界リスト14位)、58秒58で2位に入った矢島杏紀(所沢西高校・U20世界リスト33位)と、3大会ぶりのフルエントリーとなった。



跳躍では走幅跳に注目。男子は土屋拓人(聖和学園高校・U20世界リスト17位)、大森恵偉音(福岡第一高校・U20世界リスト46位)、女子は橋本詩音(静岡雙葉高校・U20世界リスト27位)が代表入り。土屋は6月のインターハイ東北地区大会で今季U20世界リスト17位タイの7m73をジャンプ。インターハイはケガがあって欠場したが、その悔しさを世界の舞台にぶつける。



大森はU20日本選手権チャンピオンで、インターハイでは三段跳で2年生優勝と、マルチジャンパーとしての能力が光る。
橋本は、土砂降りとなったU20日本選手権でU20日本歴代9位タイ・高校歴代6位タイの6m29をマークした。インターハイは6位とその力を発揮しきれなかったが、土屋と同じくその悔しさが糧となるはずだ。

男子跳躍には、棒高跳に吉田陸哉(関西大学・U20世界リスト23位)、村社亮太(日本大学・U20世界リスト29位)、三段跳に金井晃希(順天堂大学・U20世界リスト18位)がエントリー。ともに選考会のU20日本選手権上位でつかんだ実力を、世界の舞台で発揮する。



投てきは、女子やり投の櫻井希美(中京大学・U20世界リスト8位)がただ1人登録された。岐阜・済美高校では2年時にインターハイ2位、国体とU18大会2冠を獲得し、昨年はU20アジア選手権で金メダルに輝いている。高2で学年別歴代最高の57m17を出している逸材が、パリ五輪金の北口榛花(JAL)に続いて世界に羽ばたくか。




文:月刊陸上競技編集部
写真:フォート・キシモト/JAAF


【日本代表特設サイト】

>>https://www.jaaf.or.jp/teamjapan/

◆リマ2024 U20世界選手権 大会ページ
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1845/

◆リマ2024 U20世界選手権 日本代表選手
https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1845-6.pdf

◆リマ2024 U20世界選手権 WA特設サイト
https://worldathletics.org/competitions/world-athletics-u20-championships/lima24

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