2024.05.04(土)大会

【第108回日本選手権10000m】総括会見



第108回日本選手権10000mは5月3日、静岡・エコパスタジアムで開催され、無事に大会を終えました。日本陸連は、競技終了後、強化委員会の高岡寿成中長距離・マラソン担当シニアディレクターによる総括会見を行いました。
会見の要旨は下記の通りです。


■高岡寿成強化委員会シニアディレクター(中長距離・マラソン担当)

女子は、(ブダペスト世界選手権入賞者で、前回優勝の)廣中璃梨佳選手(JP日本郵政G)が欠場ということで、まず残念に思った。ただ、出場したほかの選手たちが、設定した30分50秒というペースでどこまで行けるのかといったところに興味を持ってレースを見ていた。

そのなかで、WAワールドランキングでいえば上位にいる五島莉乃選手(資生堂)や小海遙選手(第一生命グループ)が、レース終盤までオリンピックの夢を諦めずに、非常にいいレースをしてくれたと感じている。高島由香選手(資生堂)もランキング上位にいるので期待していたが、最初はついていくことができたものの、最後をうまくまとめることができなかった。

男子も同じように、田澤廉選手(トヨタ自動車)が欠場というところで、ワールドランキングの順位を見ると、太田智樹選手(トヨタ自動車)、相澤晃選手(旭化成)、そして塩尻和也選手(富士通)あたりが、どのようなレースをして、ポイントが上積みできるのかといったところを期待してレースを見た。

設定(タイム)も、この時期の一番速いタイムが27分30秒だったので、それを上回るタイムにして、多くのポイント稼ぎたいと考えて設定した。そのなかで、ペースメーカーの力を借りて、どの選手もうまく流れに乗ることができたのかなと思う。レースは、葛西潤選手(旭化成)が優勝したが、多くの選手が、(自身の)持っている力を十分に発揮できたレースだったのではないかと思っている。2位に入った太田選手も、大きなプレッシャーがあるなかだったと思うが、ポイントといううえでは、2位でゴールできたことは非常に彼にとっても良かったのではないかと思う。

あとは、(ワールドランキングの結果を)「待つこと」と(参加標準記録突破あるいはランキングポイントの上積みに)「挑戦する」という選択のなかで、各チームの戦略に則ってレースをしていけばいいと思うし、私たち(強化委員会)は、それを見守るだけかなと思う。ここまで、本当に多くの方々に、いい準備をしてもらい、最後は、観客の方々の声援を受けて、大会が盛り上がったことを嬉しく思っている。


【質疑応答】

Q:葛西選手や前田選手など、若い選手が活躍したことをどう評価しているか?

高岡:前田選手については、U20日本新記録、日本人学生最高記録。10000mのランキング上位者だけでなく、若い選手が非常にレベルの高いところでのレースができたことに、層が厚くなってきたことを感じている。これをうまく、将来はマラソンにつなげていくことができればと思っている。


Q:参加標準記録の突破は難しかったが、昨年の12月(前回大会)も含めて、参加標準記録の突破で五輪に出ることの難しさや、レベルが高くなっている現状をどう捉えていて、日本勢としてはどう向かっていきたいと考えているか?

高岡:オリンピックで入賞するには、当然、参加標準記録を突破して出場することが最短だと思っている。ただ、現段階で、電子ペーサーの設定を(男子参加標準記録の)27分00秒00にすることは、少しハードルが高いといったところで、選手の状態を見て、今回も、前回も、選手に見合った設定をさせてもらった。そのなかで、多くのポイントを積み上げて、ワールドランキングでの出場といったところに焦点を絞り、取り組んできた。


Q:ペースメーカーが設定より後れる場面もあったが、レース全体を見て、どう考えているか?

高岡:お願いしたペースで行ってもらえるのが理想ではあるが、ただ、ペースメーカーも選手。体調も含めて、相当にプレッシャーを感じていたと聞いている。そう考えると、前半だけでも行ってくれたことは、多くの選手にとって良かったと思っている。
特に女子の五島選手が前に出たシーンは、非常に良い判断だったのではないかと思う。それは、彼女自身が「このペースをもって、オリンピックに行きたい」という思いが伝わる内容にレースだった。男子に関しても、なかなかペースメーカーの経験のない選手にお願いしたこともあり、難しいところもあったが、多くの選手が、信頼して待ってくれたことが、最終的に記録を伸ばせた要因になったのではないかと考えている。



本稿は、5月3日の日本選手権10000m終了後に行われた総括コメントおよび質疑応答の一部をまとめたものです。発言内容が正確に伝わることを意図して、一部、実際のコメントに編集を加えています。


文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)


■第108回日本陸上競技選手権大会・10000m

開催日:2024年5月3日(金)
会場:静岡・小笠山総合運動公園静岡スタジアム
▼第108回日本陸上競技選手権大会・10000m特設サイトはこちら
https://www.jaaf.or.jp/jch/108/10000m/

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