2024.04.25(木)大会

【世界リレー】パリ五輪へ向け男女4×100mリレー日本代表、始動! 公開練習レポート&コメント(Vol.2)


後列:左から 木梨嘉紀、 上山紘輝、 栁田大輝、 三輪颯太、 山本匠真
前列:左から 君嶋愛梨沙、青野朱李、山形愛羽、三浦愛華、鶴田玲美


日本陸連は4月20日、ナッソー(バハマ)で5月4~5日に開催される「ナッソー2024世界リレー」に出場する男女4×100mリレー日本代表選手の練習を公開しました。

>>公開練習レポートと土江ディレクターと信岡コーチのコメントはVol.1をチェック!

トレーニング終了後に選手を代表して取材に応じた、栁田、上山、鶴田、君嶋の4選手のコメント(要旨)をご紹介します。

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【代表選手コメント】

栁田大輝(東洋大学、ダイヤモンドアスリート)



男子のなかでは相変わらず僕が最年少(笑)なので、今回、新たなメンバーも加わったが、そんな気がしないというのが正直なところ。ただ、日本代表での経験は少なからずあるので、新しいメンバーとも情報を共有して、少しでもいいバトンワークができればいいなと思う。
世界リレーには、(パリオリンピックリレー候補競技者として)出られる権利があったので、「せっかく権利があるのだから出よう」という思いで参加の意向を示した。今日のパス練習では、バトンが渡せない場面もあったが、これは、今季、僕だけまだレースを走っていないために、身体が動ききらなかったり、感覚のなかで噛み合わなかったりしていることが影響したのかなと考えている。今後、回数を重ねていけば身体は順応してくるはず。特に心配はしていない。

今年は、去年よりもゆっくりと準備して、シーズンインを遅らせている。(シーズンインを遅らせたのは)去年は7月のアジア選手権あたりに1回ピークが来たことで、ブダペスト世界選手権にはなんとかぎりぎり間に合わせたような感じとなったので、今年は、パリ(オリンピック)に合わせていく意図があったのと、あとはシーズンインを遅らせることで練習も長く積めると考えたから。「どうなるのかな」という思いもあったが、やることもたくさんあったので、逆に「まだ、もう少し準備する期間がある」と捉えてきた。
(世界リレー前に、4×100mリレーのレースに出場する)アメリカでは、個人の100mも走る予定で、今年も海外のレースでシーズンインすることになる。そこに向けてしっかり準備し、シーズン最初からベストに近い走りをしていきたい。(この冬季を経て)ウエイトトレーニングなどでは、重量も回数もできるようになった。そこは目に見えてわかる成長した部分といえる。筋力が高まればスピードも出ると思うので、あとはそれをいかに発揮して、自分でコントロールして走るかになってくると考えている。

<世界リレーに出ることで個人種目を犠牲にすることへの不安はないか? との問いに> 
不安はない。リレーではあるが世界大会だし、(スピード)レベルの高いレースで走れることはオリンピックまでに何回もあることではないので貴重な機会だと思っている。
日本(の4×100mリレー)は、世界大会の決勝に残って、メダルを取ろうというチーム。まずは確実に世界リレーの予選を通過して、パリ(オリンピック)の出場権を確実に獲得したい。世界リレーでは、2走を担当することになる。リレーを走るからには、2走でずっとやっていきたいと思ってきたし、また好きな2走を走れることを嬉しく思う。最後(アンカー)にハキームさんがいることを考えると、いい意味でも悪い意味でも(2走の)僕のところがキーになってくる。少しでも前の位置でバトンをつないで、いい位置でハキームさんにつなぎたい。


上山紘輝(住友電工)



シーズンが始まったばかりなので、なかなか(動きに)キレが出ているかどうかわからないのだが、そのなかで準備はしてきたし、大会までにはまだ2週間ほどあるので、ここからやれることをやっていきたいと考えている。
世界リレーの出場については、(個人種目を想定して)ほかの試合に出ていくことも考えていたが、もともとリレーは好きだし、(世界リレーに)出られるなら出たいなという気持ちがあった。選んでいただいて嬉しく思っている。

今回集まった代表メンバーでは、栁田以外は「初めまして」の顔ぶれだったので、どうしようかなというのもあったが、僕が(最初に日本代表に)入ったときは、逆の立場で迎え入れてもらった。僕も、去年、一昨年と(代表チーム)を経験してきたが、今日は、なんといきなり最年長になってしまった(笑)ので、僕のなかでできることを、いろいろと話しながら取り組んだ。初日にしては、楽しく、いい雰囲気でやれたのではないかと思う。
今季は、4月13日に地元(三重)で200mを1本走っている。スタートとコーナー出口を確認するという課題を持って臨んでいたので、そこまで出力は上がっていないなかでのレース(20秒78、+2.5)で、初戦にしてはいいんじゃないかなとは思うが、まだまだもっと精度を高めていかなければいけないと感じる内容だった。

昨年は、シーズン前半は悔しい結果ばかりだったが、後半はアジア大会200mを優勝して、いい感じで終わることができたので、気持ちよく冬季に入ることができた。冬場は、あまり形を変えることはなく、今までやってきたことをやるだけというイメージで過ごしてきた。ケガなく過ごせたし、やっていることは間違いないと思っているので、ここからそれを確認しながら、狙う大会で狙っていきながら取り組んでいく。
リレーに対しては、昨年はロンドンのダイヤモンドリーグに出て(アンカーを務めて)ブダペスト世界選手権の出場権を得たものの、ブダペスト(本番)では走れず、(優勝を狙った)アジア大会では銀メダルに終わって…という「悔しいリレー」になった。「勝ちたい」という思いがあるし、「オリンピックの舞台で走りたい、世界の大きい舞台で走りたい」というのが僕のなかにある。コツコツではあるが、こうした世界リレーとか、いろいろなところでアピールしながら、(固定メンバーとして)使ってもらえるようになっていきたい。
世界リレーは、オリンピックの出場権を取ることが絶対条件で、代表メンバーはそのために集まった。出場権は獲得できると思っている。予選を上位2着内で通ってしまえば、そこで出場権は確定するので、集中して、しっかり予選から全力で臨みたい。

鶴田玲美(南九州ファミリーマート)



(選考レースとなった)出雲陸上が終わって1週間が経ち、メンバーが発表されてからようやく今日、代表チームとして集まったわけだが、「日本代表に選ばれたんだな」と気が引き締まる思いがしている。今回の代表メンバーでは、君嶋さん、青野(朱李)とは昨年のアジア選手権でリレーを組んでいるが、フレッシュな選手も入った。そのなかで、今日はしっかりとバトンを合わせることができたので、よかったと思う。新しいメンバーとは、それぞれに大会で会うことはあっても、こうやってしっかり会話をするのは初めて。この合宿は1泊2日ではあるが、そのなかで(コミュニケーションを)深めていけたらなと考えている。

<今季は個人種目でも好調だが、その要因は? との問いに> 
この冬、しっかりと練習が積むことができた。冬場もあまりスピードを落とさず、スピードもダッシュ系も入れながら取り組んできたことが、シーズンはじめから速いタイムが出ていることにつながっているのではないかと思う。今季は、リレーのために、出雲陸上、世界リレーと、序盤からしっかり走れる状態をつくる必要があったし、個人種目を考えても(WAワールドランキングの)ポイントを取っていかなければならないというなかで、早めにシーズンインしてレースを重ねてきた。

このバハマでの世界リレーが、パリ(オリンピック)につながる。自分たちの手で、パリの出場権をつかめるように頑張りたい。女子の短距離が置かれている状況は厳しいが、こうやって世界リレーに出られるのも、与えられたせっかくの機会。みんなで「パリオリンピック」という目標を持って、しっかりそこにつなげられるようにしていきたい。

これまで、前回の世界リレー(2021年シレジア大会)、東京オリンピック、バンコクアジア選手権に出させてもらい、ありがたいことにいろいろな経験をさせてもらっている。特に(東京オリンピックの出場権獲得に成功した)前回の世界リレーは、出場できないという状況(※注:出場辞退国が出たことで世界リレー出場が叶い、本大会で決勝進出を果たしたことで東京オリンピックとオレゴン世界選手権の出場権を獲得した)からで、本当に崖っぷちというか後ろのない状態だった。そんななか自分たちの手で(出場権を)つかみ取った経験は、その後の自分の人生においてもすごい転機となった。そうした経験を新しい選手に伝えていくことは、自分にしかできない「できること」。新たに入った代表メンバーに伝えていくことができればと思っている。
世界リレーでは、まだどこを走るかはわからない状況だが、自分ができる最大限のパフォーマンスをして、チームに勢いがつけられる走りをしたい。


君嶋愛梨沙(土木管理総合)



フレッシュな若手の選手も入って、以前とは違った空気感ではあるが、パリに向けて、すごくいい雰囲気のチームができたと思う。日本の女子4×100mリレーは、東京オリンピックの前にポーランド(シレジア)で行われた世界リレー、そのあとの東京オリンピック、オレゴン世界選手権を経る形で、今回のバハマで行われる世界リレーに出場することができている。いろいろな選手のたくさんの努力がつながって、ここまできた。それを今度は、(代表に)選ばれた私たち5人で、パリに向けて新しい道をつくろうと、みんなで話している。
今日は、今回初めての組み合わせや、普段はリレーをやっていない選手もいるなかでの練習となった。少し(パス練習の)本数が多くなる箇所もあったが、みんながまとまった雰囲気で、いい流れでの練習ができたと思う。
今のところ、まだ走順は決まっていない。今後、どの走順が一番パリ(オリンピック)に近いか、(世界リレーで)タイムを出して(出場権を獲得できる)14カ国に入れるのかということを考えていくことになる。そこに向けて、個々の調子を上げていくことが大事だと思っている。

世界大会では、42秒台というところが、決勝に行くというところではターゲットになってくると考えている。(世界リレーでは)そこを目指していきたいし、まずは43秒33の日本記録を更新していかないと、上位14カ国に入るのは難しい。世界リレーでは、それを可能にするような走りをしたい。
私自身は、ここまで冬の競技(ボブスレー)も含めて平昌オリンピック(2018年)だったり、東京オリンピックだったりと、オリンピックというオリンピック(の出場)を逃してきた。そういった意味でも、オリンピックの出場権を獲得することの大変さ、難しさはすごく感じている。ここ数年ではあるものの、やっとトップとして走り続けてこられるようになってきた。パリでは、個人・リレーを含めてオリンピック出場を実現できたらいいなと思っている。

※コメントは、共同取材における各氏の発言をまとめました。より明確に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:アフロスポーツ


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