2024.04.02(火)その他

【レポート】ダイバーシティ&インクルージョン推進へ向け「コンプライアンス研修」を実施!



日本陸連では、「人の多様性を認め、受け入れて活かすこと」を意味するダイバーシティ&インクルージョンを重視し、競技団体としてのダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けて、関係者の認識や理解を深める研修活動を行っています。3月4日には、連盟理事・監事および事務局職員を対象とした2023年度3回目となる研修を開催しました。

>>「多様な性のあり方」という視点で、ダイバーシティ&インクルージョンの推進の研修実施
https://www.jaaf.or.jp/news/article/19368/
>>『組織における多様性の意義と「システム思考」アプローチ』をテーマに、D&I推進の研修実施
https://www.jaaf.or.jp/news/article/19517/


役職員向けコンプライアンス研修

今年度の最終回として実施されたのは、『コンプライアンス研修』です。
コンプライアンス(compliance)とは、もともとは「法令遵守」を指差す言葉ですが、今日では、法律を守るだけでなく、組織内の規定や倫理、さらには社会的な規範も遵守の対象に含む概念に広がり、健全な組織運営を行うために適切な管理体制を確立する「ガバナンス(Governance;管理する、統治するなどの意味)」とともに、組織運営における重要な命題として位置づけられるようになっています。
コンプライアンスを重視し、機能的なガバナンスのもとで公正かつ透明性の高い運営が求められるのは、スポーツの世界でも同じです。日本のスポーツ界においても、暴力や暴言問題などをはじめとする不祥事の多発や、懸念要素として指摘されることの多かったスポーツ団体の体制面や財務面における脆弱性を解消すべく、2019年6月にスポーツ庁が「スポーツ団体ガバナンスコード」を制定。これは、スポーツ団体が適切な組織運営を行ううえでの原則・規範を示したもので、2020年度から日本陸連を含む各競技団体に対して、その適用が開始されました。
「コンプライアンス研修」の受講は、スポーツ団体ガバナンスコードにも定められている事項(詳細は後述します)でもあり、このため日本陸連においても、すでに2020年度から継続して研修を行ってきています。今回は、コンプライアンスへの理解がダイバーシティ&インクルージョンの実現と切り離せない関係性にあることから、より内部研修の充実を図るべく、昨年末から実施してきたダイバーシティ&インクルージョン推進の研修と組み合わせて展開する形をとりました。
講師を務めたのは、のぞみ総合法律事務所の劉セビョク(ゆ・せびょく)弁護士。日本スポーツ仲裁機構のスポーツ仲裁人・調停人候補者や、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会プロボノサービス(※アスリート等に無償で法的アドバイスを行うサービス)の手続代理人候補者を務めるなど、スポーツ法務分野でも広く活躍しています。また、これまで日本陸連で実施してきたコンプライアンス研修の講師も担当してきた人物でもあります。
オンラインで行われたこの日の研修で、紹介を受けて画面に登場した劉弁護士は、「今年からスポーツ団体ガバナンスコードが一部改訂されて2巡目に入る」ことや、「日本陸連の場合は、まさに2巡目のトップバッターとして、改訂後のガバナンスコードによる適合性審査を受けることになる」ことを述べたうえで、「昨年までは、個別のコンプライアンス問題について、論点を深掘りし、解説やディスカッションを行ってきたが、今回は、このタイミングを機に、改訂点の説明も含めつつ、ガバナンスコードが制定に至った背景や概要、各原則の主旨などを改めて解説していく」と、研修をスタートさせました。


「スポーツ団体ガバナンスコード」を

改めて学び直す

劉弁護士は、まず、「ガバナンスコードはなぜ制定されたのか?」について、過去に大きく取り沙汰された不祥事の例や、課題となっていた中央競技団体における体制面の不備や財政面の脆弱性が引き起こす問題などに触れながら、スポーツ庁が「スポーツ団体ガバナンスコード」を制定するに至った背景を説明。スポーツ団体ガバナンスコード(以下、ガバナンスコード)は、社会的影響と求められる公共性の高さに応じて中央競技団体向けと一般競技団体向けの二層構造となっており日本陸連は中央競技団体向けが適用されていること、2020年から適用が始まったガバナンスコードは4年を1サイクルとしていること、昨年9月に、説明部分の記述を充実化する改定が公表されたこと、2024年度からは改訂されたガバナンスコードによる2巡目の適用が開始されることなどが紹介されました。
さらに、日本陸連が適用している(中央競技団体向け)ガバナンスコードが「全13の原則、全43の審査項目から成っていること、4年に1回の頻度で統轄団体(日本スポーツ協会、日本オリンピック委員会および日本パラスポーツ協会)による適合性審査が行われ、日本陸連は2024年がその該当年となること、また審査が行われない年でも定められた13の原則が適用できているかを自ら点検し、ウェブサイト等で自己説明を公表することが義務づけられていることが示されたうえで、以下の13の原則について、それぞれについての解説が行われました。
・原則1:組織運営等に関する基本計画の策定・公表
・原則2:適切な組織運営を確保するための役員等の体制整備
・原則3:組織運営等に必要な規程の整備
・原則4:コンプライアンス委員会の設置
・原則5:コンプライアンス強化のための教育の実施
・原則6:法務・会計等の体制構築
・原則7:適切な情報開示
・原則8:利益相反の適切な管理
・原則9:通報制度の構築
・原則10:懲罰制度の構築
・原則11:選手・指導者等との紛争における迅速かつ適正な解決
・原則12:危機管理および不祥事対応体制の構築
・原則13:地方組織等のガバナンス確保、コンプライアンス強化等に係る指導・助言・支援の実施

原則1~2の説明を終えたところで、劉弁護士は受講者たちに、「どのような中長期基本計画が望ましいと思われるか?」「理事会や評議員会において多様性が求められるのはなぜか?」「役員候補者選考委員会に求められる“独立性”とは、具体的にはどのような内容を意味するか?」の問いを投げかけ、受講者との間でこれらについて議論を展開。原則3~5の説明後は、「公正な代表選手選考基準の運用のためには、どのような点に留意する必要があるか?」「スポンサーシップや選手の肖像権管理に関する規程は、なぜ必要か?」「“不正のトライアングル”とは何か?」という質疑応答を行ったうえで、昨年9月に説明文に追記される形で改訂された「不正のトライアングル:動機・プレッシャー、機会、正当化の3要素が揃ったときに不正が行われるリスクが高いとする考え方」について、「スポーツ団体における不正行為を誘発する要因のイメージ」が丁寧に紹介されました。
また、原則6~8の説明においては、特に「利益相反管理の重要性」が詳しく解説。通報や懲罰制度の構築を示した原則9~10の説明では、受講者と「通報制度において関与者に守秘義務が課されるのはなぜか?」「スポーツにおける不祥事は、企業の不祥事と比べて、どのような特徴があるか?」の質疑応答を行ったうえで、不祥事処分の大まかな流れ、不祥事がどのような形で発覚するか、事実調査開始に当たっての留意点、スポーツ業界における不祥事の特徴などを深掘りしていきました。
さらに、原則11に際しては「スポーツ仲裁を利用することの意義」が、また、原則13においては、競技を振興させるためには、地方組織(中央競技団体傘下にある地方の競技団体)のガバナンスやコンプライアンス強化が重要であるため、これに関わる指導・助言、支援が求められることが示されました。
最後に行われた質疑応答では、職員から「選考要項をつくるとき、記録で競う陸上競技の場合は、具体的な要項を比較的つくりやすい競技に該当すると思うが、例えば、陸上でもリレーのようなチームとして選考する場合は難しさが伴う。例えば、球技などのチームスポーツにおいて、実際はどうなのか。何が良い方法を採っている例はあるか?」など、現場に身を置く者ならではの質問も。ガバナンスコードの原則として上がっている、いわば組織を運営していくうえで“必須”となる事柄を学び直すことによって、スポーツ団体に求められているコンプライアンスやガバナンス遵守の重要性を、関係者内で共有する貴重な時間となりました。

<劉弁護士のコメント>
質疑のやりとりにおいては、受講者の皆様がご自身の考えをご自身の言葉でしっかりお話しされていたのが非常に印象的でした。一人ひとりが継続的に考え、情報や意識をアップデートしていくことで、日本陸連のコンプライアンスやガバナンスはさらに向上していくのではないかと思います。

 

※2020年度の適用開始以降、日本陸連が開示しているスポーツ団体ガバナンスコードの自己説明・公表内容については、連盟公式サイト( https://www.jaaf.or.jp/about/cg-code/ )において閲覧することができます。


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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