2024.02.07(水)その他

【ライフスキルトレーニング】第2回プログラムレポート&コメント:プログラム初の合宿研修!オリンピックメダリストに共通する5つの特徴について



競技面でも、人生においても、自身の可能性を最大限に活かせる人材を育てるべく、日本陸連が大学生アスリートを対象に、2020年度から実施している「ライフスキルトレーニングプログラム」は、昨年12月から第4期生( https://www.jaaf.or.jp/lst/#student )に向けたプログラムがスタートしています。1月20日・21日には、初めて1泊2日の合宿研修形式が実現。味の素ナショナルトレーニングセンターにおいて、第2回・第3回の全体講義が対面で行われました。初日は13時から21時まで、2日目は8時半から12時半までと、ともにみっちりと詰まったタイムテーブルが組まれたなか、受講生たちは“自分の最高を引き出す技術”習得のための濃密な時間を過ごすとともに、仲間同士の絆を深めました。

第2回全体講義は、合宿初日の1月20日に、2部構成で行われました。まず、日本陸連強化委員会の山崎一彦強化委員長が挨拶に立ち、「ずっとやりたかった合宿形式での開催が実現した。みんなが一緒になって話をすることで、さらに力をつけていってくれるのを私たちも楽しみにしている。皆さんは、私たちの陸上競技を、これから背負っていくことになる存在。そういう意味でも、ここで有意義な時間を過ごしてもらいたい」と受講生たちを激励。スポーツ心理学博士の布施努特別講師による講義が始まりました。


第1部

第1部は、今回出席した4期生5名(阿部竜希=順天堂大、巖優作=筑波大、金本昌樹=早稲田大、内藤未唯=神奈川大、柳井綾音=立命館大)を対象に行われました。布施特別講師は、導入として、ライフスキルトレーニングによって成果を挙げたチームの実例を示しつつ、1回目の全体講義で解説した内容を振り返っていくところからスタート。受講生たちは、ここで前回学んだ事柄を再確認したうえで、出されていた宿題(自分のありたい将来像を描き、大きな目標と小さな目標を書き出す。さらに小さな目標を最高目標と最低目標に分け、それらを達成するために必要な役割性格を設定して実際に演じ、そのプロセスと変化を記録する)で実践したこと、そのなかで感じたことなどを報告し合うセッションに取り組みました。



受講生同士が対面で話をするのは、これが初めて。プログラム担当者や運営スタッフといった多くのギャラリーが見守る状況であったことも影響して、どの受講生にも緊張や遠慮がうかがえ、最初はぎごちないムードが漂います。布施特別講師は、「パブリックな場になってしまっているので、なかなか話しづらいかもしれないけれど、こんなときに使えるのが役割性格。僕は、素の自分は話すのが苦手。だけど、“スポーツ心理学の布施努”として話しているので、みんなと議論ができる」とアドバイス。発言した受講生に質問を重ねたり、感想を伝えたり、ほかの受講生に問いを投げかけたりするなどしてナビゲートし、各受講生から、自身の思いをさらに引き出していきました。そして、「こうやって“ありたい”将来像を考えていくと、自分なりのキーワードがどんどん出てくる。そこから、いろいろと“実験”をしていくことが大事」と述べ、そのポイントとして、「自分を知ること」「“自分で立てた目標を達成できた”成功体験を自信にすること」「目標設定ではCSバランスを常に考えること」などを示しました。

次に紹介されたのは、『オリンピックメダリストに共通する5つの特徴』です。布施特別講師は、オリンピアンを対象とした研究を挙げ、メダルを獲得したアスリートには、①楽観主義、②完璧主義、③内発的モチベーション、④オートマチズム、⑤ピーキングという5つの観点に共通する特徴があることがわかったとして、ここでは「楽観主義」と「完璧主義」について、レクチャーを進めていきました。ワークやディスカッションに取り組んだり、布施特別講師から紹介されたさまざまな事例に触れたりするなかで、受講者たちは、メダリストの楽観主義が、現実をしっかり捉え、徹底したリスクマネジメントの上に成り立っているものであることを理解。また、メダリストの完璧主義は、どんな状況に置かれてもゴールから逆算して仮説思考のサイクルを回し続け、最善を尽くしてやり遂げる点に発揮されていることを学びました。




第2部

その後、行われた第2部には、第4期から運営スタッフの一員として受講生たちのサポート役を務めている伊藤陸選手(スズキ、1期生)をはじめするOBたちが参加しました。顔ぶれは、3期生として昨年受講したばかりの豊田兼選手(慶應大)と池田海選手(早稲田大)のほか、伊藤選手と同じ1期生で社会人になってからも競技を続けている津藤広夢選手(東京海上日動CS)、卒業を機に競技生活に区切りをつけ、現在は会社員として新たなステップを踏んでいる三浦励央奈さん(早稲田大卒)という面々。伊藤・津藤・三浦・金本・内藤、豊田・池田・阿部・巌・柳井の2グループに分かれて、テーブルにつきました。



「受講経験者」「ベースは陸上競技」という共通項を持ちながらも、取り組む種目や性別、現在の環境や立場が異なる顔ぶれが揃ったなかで、布施特別講師が取り上げたのは、「キャリアについて考える」というテーマです。最初に受講者たちは、世界中のさまざまな人々の講演を開催・配信するTED(Technology Entertainment Design)トークにおいて、自身のキャリアを振り返りながら、未知への挑戦や物事を諦めずにやり通すことの大切さを語り、多くの共感を集めた植松努さんの講演「思うは招く」の映像を視聴。各グループで感想や自身の意見をディスカッションするなかで、布施特別講師が示唆した「チャレンジを続けていくために必要となるのは、取り組みへの納得性」「ストーリーをつくることの大切さ」「思いは、“自分の言葉”で話すことが大切」といったことを認識しました。



続いて布施特別講師は「陸上の価値を考える」をテーマとしたグループディスカッションを実施しました。「陸上は、みんなにとってルーツともいえるもの。では、その陸上の価値とはいったいなんなのかを、みんなで考えてみよう」(布施特別講師)として、受講者たちは、①グループごとに30分の制限時間内で、「陸上の価値」について、「現状」「理想」「選手としてできること/やりたいこと」の3つのポイントに分けて意見を出し合う、②出し合った内容を、相手グループにアウトプットする準備を10分間で行う。自分たちの考えが、より明瞭に伝わるようストーリーを考える、③各グループの代表者が発表。聞いたグループは、1人ずつ感想や意見、質問を行う、という3つのステップに取り組みました。
両グループのディスカッションを見守った布施特別講師は、「同じ陸上をベースにしていても、それぞれに異なる背景を持つ皆さんが、“自分ごと”として意見を出し合っている様子は、まさにダイバーシティ(多様性)の状況。自分と違う文化や視点を持っている人が集まったほうが、内容は面白くなる」とコメント。さらに①~③の各過程において、「決められた時間のなかで考えをとりまとめていく際の優先順位やポイント」「リーダーシップをとれる人とは、どういう人を差すのか」「ストーリーに納得感はあるか」「発表するときのコツ」など、さまざまな形でヒントとなりうる情報を出しながら、ディスカッションにエッセンスを落としていきました。
最終的に、両グループとも発表は、4期生が担当することになり、先に発表した金本・内藤選手も、あとから発表した阿部・巌・柳井選手も、経験に基づくエピソードなどを交えつつ、グループ内で話し合った事柄を、自分自身の言葉で紹介することに成功。第1部で行われた最初の意見交換のときとは全く異なる盛り上がりのなかで、2回目の全体講義が終了しました。


【第2回全体講義受講後:受講生コメント】

阿部竜希(順天堂大学2年、110mハードル)


今回の講義では、課題の振り返りから始まりました。自分でいろいろと考えたつもりだったし、大学のコーチや先生に相談もして取り組んできたのですが、いざ、ほかの人の考えや布施先生のアドバイスを聞いてみると、「本当にいろいろな考え方ができるんだな。自分の考え方はまだまだ浅いし、狭いところで物事を見ていたな」と実感しました。
大学に入って記録は順調に伸びてはいますが、昨年は、「大切な舞台で力を出せる選手にならないと、(日本)代表とかにはなれない。“自分はまだまだ甘い”と感じる場面が多い1年でした。そんなときに、先輩の出口晴翔さん(順大、第2期生)から、「そこに課題を感じているなら、絶対に受けたほうがいいよ」と助言をいただいたので、このプログラムを受けてみようと思ったんです。
実際に、1回目の講義を受けてから、ずいぶん変わったと思います。練習のときだけでなく、すべての場面において、何かをするときには「役割性格を使ったほうがいいかな」と考えるようになりましたし、目標に向かう際も、「あ、最低目標は達成できているな、じゃあ最高目標をクリアするぞ!」とか、常にそういうふうに考えて、行動するようになりました。
「世界の舞台に挑戦できる選手になりたい」ということは、1年生のとき、U20世界選手権に出場して強く思うようになりました。ありがたいことに、その後も合宿で海外に行かせてもらっていますし、今年も単独で海外のレースに出たり、武者修行したりすることになっています。ライフスキルトレーニングで学んだことを生かして、いただいた機会をしっかりと結果につなげていきたいですね。また、将来は教員になって、世界に出ていこうと思う選手を育てたいという目標があるので、そのときに、説得力をもって指導できるような経験を積んでいきたいです。
教員を目指す自分にとっては、講義内容だけでなく、講義のすべてが学びの場となっています。例えば、僕たちから話を聞いたとき、布施先生は絶対に否定から入らないし、相手の話をさりげなくリピートして、反応をさらに引きだしてくださるんですね。大学では、模擬授業を行うこともあるのですが、「ああ、この声のかけ方だと、かけられる側のやる気が高まるな。今後、自分もやってみよう」というふうに、講義以外の面でもすごく勉強になっています。いろいろなことを吸収して、自分の将来に生かしていけるようにしたいですね。(談)


柳井綾音(立命館大学2年、競歩)


昨年は、ブダペスト世界陸上やワールドユニバーシティゲームズといった世界大会を経験することができたのですが、その過程で、目標設定の部分で悩むところがありました。特に、世界陸上は急きょ出場が決まったこともあって、自分がどこを目指したらいいのが曖昧になり、中途半端になっていたところが、そのまま結果に表れてしまい、とても悔しく感じていました。そういう点も踏まえて、世界を目指していくために、「自分に足りないものは何か」と考えていたなかで、このプログラムの募集を知り、少しでも何かを身につけることができたらと思い、応募しました。
目標設定の面に関しては、昨年、3月の能美競歩で良い結果(アジア選手権2位、全日本優勝、日本学生選手権優勝、大幅な自己新記録)を出せたことで、大会が終わったあとに、心の中に穴が空いてしまったような感じに見舞われ、そこで目標を見失ってしまうという状態を経験しました。そうした自分の経験を、今回の講義のなかでみんなに話したり、布施先生からの助言を聞いたり、目標設定の仕方をきちんと学んだりしていくなかで、「ああ、自分は考えすぎていたのだな」ということがわかりました。
今まで、目標は高いものを掲げるのが当たり前のことで、練習でも計画していたことがきちんとやれないと気が済まず、できなかったら翌々日にやり直すというような面もあったのですが、それは、ダブルゴールの考え方のなかで、「最低目標」の設定がうまくできていなかったということ。掲げた最低目標が高すぎたために、気持ちの面で追い込まれて、きつくなってしまっていたのだと気づくことができました。もっと「できる目標」をたくさんつくっていくなかで小さな目標をクリアし、大きな目標へとつなげていけるようにしていこうと思っています。
2月には、パリオリンピックの選考レースとなる日本選手権(20km競歩)が行われますが、今年は、元旦からすごくいいスタート(元旦競歩10kmで学生新記録を樹立)を切ることができています。私は、競歩と長距離の両方に取り組んでいて、それが自分の強みになっていると考えているのですが、元旦競歩の結果は、駅伝の練習を頑張ってきたなかでのことだったので、今は自信にあふれている状態。日本選手権で派遣設定記録(1時間28 分 30 秒)が突破できるように、大会に向けてうまく目標を設定していきたいです。(談)


【第2回全体講義参加OBコメント】

豊田 兼(慶應大学)第3期生


1年ぶりに布施先生の講義とディスカッションを、それも対面での実施に参加することができました。シーズン中には頭から抜けていたことを思い出す部分もありましたし、4期生の皆さんが実際に学ばれている話を聞くなかで、はっとしたところも多くありました。また、第2部でみんなと一緒に取り組んだ「陸上競技の価値について考える」というワークは、今までにはなかった内容でした。ここでいろいろな考え方を持つみんなとともに考えたりディスカッションできたりしたことは、とても貴重な時間になったと感じています。
今回は、受講生ではなく、OBとしての参加だったわけですが、ただ、OBといっても学ぶ姿勢が大切なのは今の4期生と同じこと。立場的な違いはあったけれど、そういう大きな部分というところでは、受講生も僕たちも何も変わるところはなかったなと感じています。それでも、3期生として受講した去年は大学2年生で、今は3年生。この1年で、部活内での自分の立場が少し変わったこともあり、同じことを聞いても、見えてくることや感じることの幅は、少し広がったかもしれません。
自分がこれまでライフスキルトレーニングを受けてきたなかで、強く印象に残っているのは、「縦型思考と横型思考」の話や「役割性格」の話。最近は、主将になったことで、組織つくりが忙しく、競技だけに向き合うことができない状況になるときもあるのですが、そういったときに、自分を本来あるべき現在地に戻してくれるのが、このプログラムで学んだ思考法なのだなと思います。
このプログラムを受けることで、競技力向上につながる面も得られますし、「ライフスキル」という意味では、陸上という枠を越えて、まさに人生の指針となるような考え方を知ることができます。4期生の皆さんに、頑張ってもらいたいですね。(談)

文・構成/写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)


■【ライフスキルトレーニング特設サイト】

>>特設サイトはこちら 



■【ライフスキルトレーニングプログラム】第4期受講生が決定!
https://www.jaaf.or.jp/news/article/19256/

■【ライフスキルトレーニングプログラム】第4期募集要項
https://www.jaaf.or.jp/news/article/19151/

■受講生インタビュー
<Vol.1>福島聖:社会人として生かせているスキル、就職活動や競技面に繋がった経験を語る
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17053/

<Vol.2>中島佑気ジョセフ:活躍の糸口となった経験、更なる飛躍に向けた想いを語る
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17064/

<Vol.3>樫原沙紀:「なりたい自分」を見つめ直し、新たな一歩を踏み出す
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17070/

<Vol.4>梅野倖子:アジア選手権・世界選手権・アジア大会で日の丸を背負った1年を振り返り、自身に生じた変化を語る
https://www.jaaf.or.jp/news/article/19163/

関連選手

JAAF Official Partner

  • アシックス

JAAF Official Sponsors

  • 大塚製薬
  • 日本航空株式会社
  • 株式会社ニシ・スポーツ
  • 積水化学工業株式会社

JAAF Official Supporting companies

  • 株式会社シミズオクト
  • 株式会社セレスポ
  • 近畿日本ツーリスト株式会社
  • JTB
  • 東武トップツアーズ株式会社
  • 日東電工株式会社
  • 伊藤超短波株式会社

PR Partner

  • 株式会社 PR TIMES
  • ハイパフォーマンススポーツセンター
  • JAPAN SPORT COUNCIL 日本スポーツ振興センター
  • スポーツ応援サイトGROWING by スポーツくじ(toto・BIG)
  • 公益財団法人 日本体育協会
  • フェアプレイで日本を元気に|日本体育協会
  • 日本アンチ・ドーピング機構
  • JSCとの個人情報の共同利用について