来年行われるパリオリンピック男女マラソンの日本代表選考会として、10月15日に行われるマラソングランドチャンピオンシップ（MGC）に出場する公式記者会見が、10月13日に東京都内のホテルにおいて開催されました。
会見には、レースに出場する男子61名、女子24名、計85名全員が出席。女子、男子に分けて行われました。登壇者数が多いため、全員に向けての質問応答は、各選手があらかじめ用意された2問（①MGC出場の抱負、②レースで「自分のここを見てほしい」というところ）に対する回答をフリップボードに記入し、壇上で提示する形式が採られました。そのうえで、女子、男子ともに司会者から指名を受けた数名の選手が、回答に至った思いをコメントしました。
その後、メディアとの質疑応答として、大会当日にテレビ中継を行う各局（男子はTBS、女子はNHK）において、レース解説を担当する有森裕子さん（女子）、高橋尚子さん（男子）が、それぞれ代表で質問に立ちました。
有森さんは、東京オリンピック女子マラソンに日本代表として出場した一山麻緒（資生堂）、前田穂南（天満屋）、鈴木亜由子（JP日本郵政G）の3選手を指名。9月24日に行われたベルリンマラソンでティギスト・アセファ選手（エチオピア）が2時間11分53秒という驚異的な世界新記録を樹立したことを挙げたうえで、「パリオリンピックでは、そうした選手と戦うことになるわけだが、準備に際して、どこをどう強化してきたか、そして、当日にどのように発揮することをイメージしているかを聞かせていただきたい」と問いました。また、高橋さんは、8月のブダペスト世界選手権に続く出場となる山下一貴選手（三菱重工）と其田健也（JR東日本）選手に加えて、男子マラソン日本記録保持者（2時間04分56秒、2021年）の鈴木健吾選手（富士通）、東京オリンピック6位の大迫傑選手（Nike）の4名を指名し、「MGCに向けた準備段階で、大切にしてきたことや強化してきたこと。それを踏まえて、今の仕上がり具合や手応えをパーセンテージや言葉で示すとどのくらいかを教えてほしい」と質問。指名を受けた選手は、それぞれに自身の状況をコメントしました。
公式会見中の質疑応答に指名を受けて発言した選手、メディアの代表質問に指名を受けて回答した各選手のコメントは、別記をご覧ください。
MGCは10月15日、東京・国立競技場を発着点とする42.195kmのコースで行われます。男子は午前8時00分、女子は午前8時10分にスタート。男女とも上位2位までが、パリオリンピックの日本代表に即時内定します。また、この大会は、男女マラソンの第107回日本選手権を兼ねて実施されるため、男女優勝者については、2023年度マラソン日本チャンピオンの座も手に入れることになります。
レースの模様は、男子がTBSテレビ系列全国ネットで、女子はNHK総合で、それぞれ生中継。ラジオでも、男子はTBSラジオで、女子はNHKラジオで放送されます。また、インターネットでは、男子はTVer、U-NEXTで、女子はNHKプラスで配信されることになっています。
日本陸連のMGC特設サイト（https://www.mgc42195.jp/）では、出場選手のプロフィルや大会展望、コース紹介や1kmごとの予想通過時刻、当日予定されている交通規制など、さまざまな情報を紹介しています。どうぞ、ご参照ください。
【公式記者会見：各選手コメント】
※女子、男子ともに、指名されて答えた選手の発言内容のみ、会見においてコメントした順に掲載。Qは質問項目、Aはフリップボードに記載した言葉、「 」にコメントの内容を記載した。＜女子＞
■加世田梨花（ダイハツ）
Q：MGC出場の抱負
A：パリ五輪の代表権獲得
「ずっとマラソンでパリオリンピック（に出場すること）を目標にやってきた。“絶対に”という強い思いを持って2位以内に入れるように、当日は粘り強い走りをして、絶対パリオリンピックの代表を勝ち取りたい」
■鈴木優花（第一生命グループ）
Q：MGC出場の抱負
A：冷静に、でも大胆に。最後は気持ちで走る
「大学（大東文化大学）のころから、“冷静かつ大胆に”というところをモットーにして走ってきた。大学の延長もあるが、新しい自分で自分らしく勝負して、パリオリンピックの切符をつかみ取りにいきたい」
■安藤友香（ワコール）
Q：MGC出場の抱負
A：最後まで諦めない
「前回大会（8位）でとても悔しい思いをしたので、今回は本当に最後まで諦めずに、自分との戦いにもなると思うが、しっかり自分に勝って、代表権をとれるように頑張りたい」
■太田琴菜（JP日本郵政G）
Q：MGC出場の抱負
A：自分の力を出しきる!!
「ここまでMGCに向けて、3カ月間しっかり練習してきた。悔いなく、初めてのMGCで自分の力を出しきって、いいレースができるように頑張りたい」
■細田あい（エディオン）
Q：レースで「自分のここを見てほしい」というところ
A：粘り
「自分の強みは、きつくなってからの粘りだと思っている。全員がどこかしらの面できつくなってくるところがあると思うが、自分もそういったところでしっかり粘れる走りをしたい」
■上杉真穂（スターツ）
Q：レースで「自分のここを見てほしい」というところ
A：上半身の力み具合
「自分は、ずっと“上半身が硬い”と言われていて、（上半身の）脱力というところに焦点を置いて練習してきているのだが、まだまだ硬いところがある。ここが完全に脱力できたときには、本当に自分の強みになると思っている」
■前田彩里（ダイハツ）
Q：レースで「自分のここを見てほしい」というところ
A：粘り
「レースの後半になって、粘れるか粘れないかが大事になってくると思うので、そこで粘れる練習を、このMGCに向けてやってきた。そこをしっかりレースで出せればいいと思う」
■吉川侑美（ユニクロ）
Q：レースで「自分のここを見てほしい」というところ
A：気持ちのこもった走りをします
「練習のときから、いつも集中力が自分の強みとなっている。今回もしっかり最後まで気持ちを込めて走るところを見てほしい」
＜男子＞
■其田健也（JR東日本）Q：MGC出場の抱負
A：2位以内
「パリオリンピックの切符を取るのは2番以内（が条件）なので、確実にそれを取りたいということで、この目標にした」
■西山雄介（トヨタ自動車）
Q：MGC出場の抱負
A：オリンピック内定
「オリンピック内定をずっと目標にやってきたので、今回は、“オリンピック内定”を目標に書かせていただいた」
■横田俊吾（JR東日本）
Q：MGC出場の抱負
A：強い先輩方にくらいつく!!
「最年少（2000年生まれの23歳）として、柏くん（優吾、コニカミノルタ）と一緒の年代で走らせていただく。周りは強い先輩方しかいないということで、目標としては、この先輩方に食らいついて、最後にはトップでゴールしたいなと思っている」
■細谷恭平（黒崎播磨）
Q：MGC出場の抱負
A：2番以内
「今回はオリンピック出場権獲得という意味合いを込めて、“2番以内”に目標を設定した」
■井上大仁（三菱重工）
Q：レースで「自分のここを見てほしい」というところ
A：攻めの走り
「“攻めの走り”が自分の持ち味だと思っている。当日は、しっかり積極的に勝ちを狙いにいきたい」
■川内優輝（AD損保）
Q：レースで「自分のここを見てほしい」というところ
A：過去129回のフルマラソンの経験（130回目のフルマラソンの走り）
「このMGCが、130回目のフルマラソンを走ることになる。今まで、ペースメーカーのいるレース、いないレース、雨のレース、風のレース、また、ワールドマラソンメジャーズから世界選手権、アジア大会まで、いろいろなレースを走ってきた。そういう過去の経験を生かしたレースをしたいなと思うし、そういう走りを見てほしいと思っている」
■今井正人（トヨタ自動車九州）
Q：レースで「自分のここを見てほしい」というところ
A：粘り
「自分は、井上（大仁）くんが言っていた“攻め”という部分もあるが、何よりも、粘って踏ん張って、これまできた。そこをしっかり出して、勝負となる最後のところで、一歩でも、胸の差でも（他選手の）前にいられるよう頑張りたい」
■赤﨑 暁（九電工）
Q：レースで「自分のここを見てほしい」というところ
A：冷静さ
「今回、（自分が書いたのは）“冷静さ”ということで、仕掛ける位置やレースの流れを、しっかり自分の正しい判断を持って、レースに臨んでいきたい」
【メディア代表質問：各選手コメント】
＜女子＞
Q：「準備をしてきた段階で、世界はびっくりするような進化（ベルリンマラソンで2時間11分53秒の世界新記録が誕生）を遂げている。皆さんは、パリオリンピックで、そうした選手と戦うことになるわけだが、こうした状況を踏まえつつ準備をしてきたなかで、どこをどう強化してきたか、そして、本番当日、それをどう発揮することをイメージしているか？」（女子中継解説：有森裕子）■一山麻緒（資生堂）
このMGCに向けては、もう勝つことだけを考えて、どんなレース展開になっても、最後はパリ（オリンピック）の切符を必ず手にするということだけを頭に入れて、ずっと練習をやってきた。（練習では）今回のMGCのレースのコースに似たようなコースを実際に使って、大事なポイントはやってきた。明後日は本当に、“勝つ”だけを思って走りたい。
■鈴木亜由子（JP日本郵政G）
有森さんが仰ったように、世界では途轍もないタイムが出ている。ただ、タイムだけに注目のではなく、やはり“一歩一歩”（が大事）だと思っている。タイムだけじゃない力強さというのが、MGCでも、オリンピックでも求められると思うので、まずそういったレースで勝ちきる脚力をつけるべく、今回はしっかりとアップダウンも走り込んで脚をつくってきた。また、やはり速さというところも必要なので、そこは自分に壁をつくらず、積極的にペースを上げて練習を行ってきた。そういった取り組みが、結果につながるようにベストを尽くしたい。
■前田穂南（天満屋）
今大会に向けては、スピードも重視しながら、しっかり距離を走り込むことで、力をつけるようにしてきた。勝負ということでは、タイムよりも、自分のペースで速いペースをしっかり押していって、周りに左右されずに自分のリズムで走っていくことが、最も自分の力を発揮できると思っている。（MGCに向けた準備の段階では）そのイメージをつくりながら、また、前回の大会よりも自分のなかでしっかりイメージしながら取り組むことができたかなという思いがある。
＜男子＞
Q：「MGCに向けた準備段階で、大切にしてきたことや強化してきたことは？ また、それを踏まえて、現在の仕上がり具合や手応えを、パーセンテージや言葉で示すとどのくらいか？」（男子中継解説：高橋尚子）■其田健也（JR東日本）
MGCに向けては、（8月にブダペスト）世界選手権もあったので、まず土台つくりをしっかり積んできた。距離走やジョグの距離を意識するなど、しっかり距離（を踏むこと）をベースに準備してきた。MGCまでの仕上がり具合は、パーセンテージというのはわからないが、世界選手権の疲労を抜いて、しっかり調整することはできた。あとはスタートラインに立ってどうなるか。身体はきついなかだが、しっかり狙っていきたい。
■鈴木健吾（富士通）
私は、“何かを強化”というより、生活、練習、すべてにおいてMGCのためにやってきた。当日は、強い思いを持ってしっかり走っていきたいと思っている。
■山下一貴（三菱重工）
MGCに向けては、（ブダペスト世界選手権以降）とにかく疲労を抜くことと、段階的に少しでも状態を上げていくことだけを考えてやってきた。パーセンテージとしては特に（挙げる数字は）ないが、自分が思った以上には、普段通りに練習ができたかなと思っている。
■大迫 傑（Nike）
MGCに向けてというよりは、毎回のマラソンでそうなのだが、いつも通りしっかりと練習を積むことを考えてやってきた。毎回のマラソンの違ったことは、今回、一人で（アメリカの）フラッグスタッフでトレーニングをしたのだが、「なんでこのMGCを僕自身が走りたいのか」とか、「マラソンを走りたいのか」といったところを、一人の時間で、しっかりと（自分と）対話をしながらやってこられたかなと思う。身体の状態は非常にいいので、心身ともにベストな状態でレースに臨みたい」
文：児玉育美（JAAFメディアチーム）
写真：アフロスポーツ
【明日開幕！マラソングランドチャンピオンシップ（MGC）】
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日本陸連が主催するオリンピックマラソン日本代表選考会で、初開催は2019年9月15日に東京2020オリンピック競技大会日本代表選考会として行われた大会です。2023年秋（10月15日）は、パリ2024オリンピック競技大会の日本代表選考会として開催します。
MGCで1位および2位となった選手が、パリオリンピック日本代表に内定します。
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