日本陸連は9月19日午後、9月23日から中国・杭州で開幕し、陸上競技は9月29日から10月5日の日程で行われる第19回アジア競技大会に出場する日本選手団の結団式を開催しました。
杭州アジア大会は、本来であれば2022年9月に行われるはずでしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で1年延期されることに。これにより、ジャカルタ(インドネシア)で行われた2018年大会以来5年ぶりの開催となります。
【結団式レポート】
結団式は、過日行われたブダペスト世界選手権に続いて、今回もオンラインでの開催に。代表選手および選手団のコーチ、スタッフが参加し、その模様は、関係者に向けて限定公開の形でライブ配信されました。まず、今大会の日本選手団団長を務める尾縣貢日本陸連会長が挨拶。「37億人もの人が住むアジアは、多様性に富み、常に発展している地域。皆さんが挑戦するアジア大会は、チャレンジにふさわしい高いレベルにある」と口火を切った尾縣会長は、「それとともに、来年に迫ったパリオリンピックへの試金石でもある大会」と述べ、パリオリンピック、そして2028年に行われるロサンゼルスオリンピックを挙げながら、「目先の勝利だけでなく、勝利の先を考えてほしい」と選手たちに呼びかけました。そして、今大会の日本選手団全体が史上最多となる総勢1137名で臨むことを示したうえで、「“チーム陸上”は山崎一彦監督のもと、心を一つにして、チームジャパンを引っ張る存在になってほしい」と激励しました。代表に選出された男子36名、女子23名の競技者と、帯同する役員・スタッフ22名が紹介されたのちには、監督を務める山崎一彦強化委員長が登壇しました。山崎委員長は、今季、チームジャパンとして臨んできたアジア選手権、世界選手権における好成績から、「皆さんの世界に対する意識づけが高まっている」と評価したうえで、これから挑むアジア大会に向けて、「オリンピックと同じ総合競技大会で、陸上競技もさまざまな競技のなかの一つとなるが、そのなかで我々は一目置かれる存在。他の競技をリスペクトしながら、我々陸上競技がリーダーとして、(日本チーム全体を)引っ張っていくことを目指していければ」と期待を寄せました。
また、戦い方に関しては、「最大の目標が、このアジア大会を経て臨むことになる2024年パリオリンピックと2025年東京世界選手権であることは、これまで戦ってきた各大会と変わることなく一貫している」と述べました。ブダペスト世界選手権においてもメダル獲得または入賞を達成するラインは、世界リストで10位相当の記録を持っていること、また、本番において自己記録達成率が99%近く、あるいはシーズンベストを出していることが共通点であったと具体的に掲げたうえで、「パリ、東京(での活躍)を目指す人たちは、このあたりを意識しながら臨んでほしい」とコメント。さらに意識するポイントとして、「WAワールドランキングの順位」「パリオリンピックの参加標準記録」の2つを示しました。
そして、もう一つ、「皆さんに送るテーマ」として山崎一彦強化委員長が訴えかけたのが、「経験不足という言葉を使わない」ということ。「例えば、世界選手権で金メダルを獲得した北口榛花さん(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)だって、金メダルを取るには経験不足だったはず」として、経験のないことを“経験不足”と捉えるのではなく、それをどう補うかをコーチングスタッフと選手が一致団結し、想像しながら取り組んでいくなかで良い経験にしていくことこそが目指すべき在り方であると示唆しました。そのうえで、「皆さんとともにまた戦って、いい秋の締めくくりとしたい。頑張っていきましょう!」と選手たちを鼓舞、挨拶を締めくくりました。
続いて、陸上選手団の男女キャプテンとして、男子は400mに出場する佐藤拳太郎選手(富士通)が、女子は5000mと10000mに出場する廣中璃梨佳選手(JP日本郵政G)が、山崎強化委員長から発表されました。佐藤選手は400mで32年ぶりに日本記録を塗り替える快走をみせたブダペスト世界選手権に続いての、また、今回が初めてのキャプテンとなる廣中選手は同じく2種目で出場したブダペスト世界選手権の10000mで7位入賞を果たしたことが評価されての任命です。選手を代表して挨拶した佐藤選手は、「来年のパリオリンピックに向けて、高いレベルの試合で、これまでの取り組みの実践ができる機会は多くない。今大会で結果を残すのはもちろんだが、先を見据えた試合にしたい」と個人の抱負を述べたうえで、「チーム全体がいいパフォーマンスを発揮できるよう、皆さんがそれぞれいい準備をして、(大会に)臨まれることを祈っている」と呼びかけました。
結団式の終了後には、選手を代表して、男子100mと4×100mリレーに出場する桐生祥秀選手(日本生命)がオンライン取材に応じました。日本代表としてのレースは、個人種目(100m)ではドーハ世界選手権(2019年)以来、4×100mリレーでは東京オリンピック(2021年)以来となる桐生選手。大会本番での目標や現在の状況について、次のように述べています。
【会見後取材対応選手コメント】
◎桐生祥秀(日本生命) 男子100m、4×100mリレー代表
今回のアジア大会は、100mと4×100mリレーに出場する。100mに関しては、しっかりメダル争いに食い込みたい。100mでは、今回、ラウンドを重ねることが1番大事かなと思っている。4×100mリレーに関しては、前回のアジア大会(2018年ジャカルタ大会、3走)では金メダルだったので、今回も金メダルを目指していきたい。
今季は、セイコーゴールデングランプリ(5月21日)のレース中(予選)に左脚を肉離れ。途中で同じところを再び痛めたため、完全に回復するまでにはトータルで1カ月半くらいかかった。そこから1カ月間練習して、現在に至っているという状況。なので、このあとの1週間で、スピード練習をどれだけスピード練習をしていくかというのがアジア大会に向けての課題となってくる。
ただ、日に日に練習を積み重ねうちに、スピードも上がってきている状況。実際にどうであるかは試合になってみないとわからない。練習であまり速くなくても、試合で速いということは普通にあることなので、試合は自信を持っていきたいなと思っている。
9月12日には、レース(東海大種目別競技会:平塚)にも出場した(10秒45、+0.2)が、これは練習の一環として出場したもの。「いい練習ができたな」という感じだった。このあと土曜日(9月23日)に行われる全日本実業団(100m)に出場する。そこでどれだけ走れるか。その3日後には(杭州に向けて)出発なので、先週(の競技会)よりもスピードが速くなることを目標にしている。今回に関しては、全日本実業団は優勝することが目標ではない。1週間後(の9月30日)には(アジア大会)100mの準決勝があるので、予選を走ってみて、どんな感じかによってどうするかを当日決めていくつもりでいる。
<今回、同い年の小池祐貴選手(住友電工)とともに100m、4×100mリレーに出場するが…との問いに>
リレーは、どの走順での練習もこれまでに数年やってきているので、走順がどうなろうとバトン(パス)に関しての安定感はあると思う。まずは、小池選手と100mで互いにいい結果を残して、リレーは100mが終わってから練習する時間があると思うので、そこで最終調整して臨むようにしたい。
※コメントは、オンライン取材における発言をまとめました。より明確に伝えることを目的として、一部、補足を加えています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
陸上日本代表オフィシャルサイト
https://www.jaaf.or.jp/teamjapan/杭州2022アジア競技大会 TEAM JAPAN (陸上競技)
https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1773-6.pdf関連ニュース
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