2023.08.16(水)選手

【記録と数字で楽しむブダペスト世界選手権】男子10000m:田澤が2大会連続で世界に挑戦(決勝8月20日)



8月19日(土)から27日(日)の9日間、ハンガリーの首都ブダペストを舞台に「第19回世界陸上競技選手権大会」が開催される。日本からは、76名(男子48名・女子28名)の代表選手が世界のライバル達と競い合う。

現地に赴く方は少ないだろうがテレビやネットでのライブ中継で観戦する方の「お供」に日本人選手が出場する33種目に関して、「記録と数字で楽しむブダペスト世界選手権」をお届けする。

なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ……」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある拙稿と同じ内容のデータや文章もかなり含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、記事の中では五輪についても「世界大会」ということで、そのデータも紹介している。

大会期間中は、日本陸連のSNS(Facebook or X)で、記録や各種のデータを随時発信予定。そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。
日本陸連Facebook:https://www.facebook.com/JapanAthletics
日本陸連X(Twitter):https://twitter.com/jaaf_official

現地と日本の時差は、7時間で日本が進んでいる。競技場内で行われる決勝種目は、日本時間の深夜から早朝にかけて競技が行われる。

睡眠不足にどうぞご注意を!



男子10000m

(実施日時は、日本時間。カッコ内は現地時間)
・決勝 8月21日 01:25(20日 18:25)


※記録は原則として7月31日判明分。現役選手の敬称は略させていただいた。トラック競技の予選・準決勝の通過条件(○組○着+○)は、ルールやこれまでの世界大会でのものを参考に記載したため、ブダペストではこれと異なる条件になる可能性もある。


田澤が2大会連続で世界に挑戦

田澤廉(トヨタ自動車)がオレゴンに続き2大会連続出場。
ターゲットナンバーは27。田澤のワールドランキングは30位だが、アジア選手権優勝者の資格で出場権を得られるはずだった。
27分10秒00の参加標準記録突破者が15名。クロスカントリー枠での有資格者9名の中に同じアジアのバーレーンの選手がいたため、田澤のアジア選手権優勝者枠は適用されないことになっていた。しかし、バーレーンの選手のワールドランキングが低かったため、世界陸連は田澤に「エリアチャンピオン」としての出場資格を与えることに決定したのだった。

オレゴンでは、自己ベストを1分以上下回るタイムで20位と本来の力を発揮できずに終わった。
そのレース後に「今後の陸上人生のプラスにしたい」と話していたが、それを生かすチャンスが1年後にやってきた。


◆世界選手権&五輪での日本人最高成績と最高記録◆

<世界選手権>    
最高成績10位28.13.71森下広一(旭化成)1991年
10位27.53.12早田俊幸(鐘紡)1995年
最高記録27.48.55予選2組6着渡辺康幸(早大)1995年=学生新

世界選手権で入賞した日本人はまだいない。

<五輪>    
最高成績4位30.25.0村社講平(中大)1936年=日本新
最高記録27.40.44決勝7位高岡寿成(鐘紡)2000年

五輪での入賞者は、
19364位30.25.0村社講平(中大)=日本新
19646位28.59.4円谷幸吉(自衛隊)
19847位28.27.06金井豊(エスビー食品)
20007位27.40.44高岡寿成(鐘紡)



◆世界選手権&五輪での1・3・8位の記録◆
・「前半」は、先頭で通過した選手のタイムで優勝者のものとは限らない。
・「前後半差」の「△」は、後半の方が速かったことを示す。
・「LAST」は優勝者のラスト400mまたはラスト200mのタイム。
1位(前半+後半/前後半差/LAST)3位8位1・8位の差
198328.01.04(14.07.11+13.53.93/△13.10/54.4 )28.01.2628.09.058.01
1984五輪27.47.54(14.19.9 +13.27.6 /△52.3 /27.1 )28.06.4628.28.0840.54
198727.38.63(14.13.07+13.25.56/△47.50/-----)27.50.3728.11.6811.74
1988五輪27.21.46(13.35.4 +13.45.1 /▼ 9.7 /-----)27.25.1627.47.2325.77
199127.38.74(13.30.27+14.08.47/▼38.20/-----)27.41.7428.12.7734.03
1992五輪27.46.70(13.53.7 +13.53.0 /△ 0.7 /59.3 )28.00.0728.27.1130.41
199327.46.02(13.59.38+13.46.64/△12.74/54.98)28.06.0228.36.8850.86
199527.12.95(13.46.20+13.26.75/△19.45/56.0 )27.14.7027.52.5539.60
1996五輪27.07.34(13.55.2 +13.12.1 /△43.1 /57.48)27.24.6727.50.7343.39
199727.24.68(13.58.79+13.25.79/△33.00/25.1 )27.28.6728.07.0642.38
199927.57.27(14.17.17+13.39.90/△37.27/54.37)27.59.1528.15.5818.31
2000五輪27.18.70(13.45.88+13.32.82/△13.06/25.4 )27.19.7527.44.0925.39
200127.53.25(14.15.11+13.48.14/△26.97/-----)27.54.4128.02.719.46
200326.49.57(13.52.23+12.57.34/△54.86/56.23)27.01.4427.45.5655.99
2004五輪27.05.10(13.51.5 +13.13.6 /△37.9 /52.9 )27.22.5727.59.0653.96
200527.08.33(13.51.10+13.17.23/△33.87/25.9 )27.08.9628.14.6466.31
200727.05.90(13.42.98+13.22.92/△30.06/55.51)27.12.1728.25.6779.77
2008五輪27.01.17(13.48.00+13.13.17/△34.83/53.42)27.04.1127.23.7522.58
200926.46.31(13.40.45+13.05.86/△34.57/-----)26.57.3927.37.9951.68
201127.13.81(13.52.51+13.21.30/△31.21/52.7 )27.19.1427.34.1120.30
2012五輪27.30.42(14.05.79+13.24.63/△41.16/53.48)27.31.4327.36.345.92
201327.21.71(13.49.95+13.31.76/△18.19/54.49)27.22.6127.29.217.50
201527.01.13(13.40.82+13.20.69/△20.13/54.14)27.02.8327.44.9043.77
2016五輪27.05.17(13.53.11+13.12.06/△41.05/55.37)27.06.2627.23.8618.69
201726.49.51(13.33.74+13.15.83/△17.91/-----)26.50.6027.02.3512.84
201926.48.36(13.33.20+13.14.86/△18.34/57.13)26.50.3227.10.4622.10
2021五輪27.43.22(14.08.6 +13.34.6 /△34.0 /53.9 )27.43.8827.52.038.81
202227.27.43(14.01.33+13.26.10/△35.23/26.48)27.27.9727.33.575.60

以上のように、前半を13分30秒以内ということは一度もない。後半の方が20秒から40秒くらいアップするパターンがほとんどだ。すべてのレース時の気温を調べたわけではないが、88年ソウル五輪は31℃、07年大阪世界選手権は30℃で湿度65%だった。そんな中、大阪での27分05秒90の優勝タイムは光る。が、7位は27分56秒62、8位は28分25秒67と95年以降の21回の世界大会では最も遅い入賞記録だった。

優勝者と8位のタイム差は、5秒台から79秒台と幅が広い。11年以降の至近9大会は、15年を除き10秒以内か20秒前後だ。

今回のエントリー記録では、田澤の27分28秒04はトップの26秒33秒84とは55秒あまりの差がある。ロード10kmを含め26分台が9名。8番目の選手(26.55.04)との差は33秒00。自己ベスト27分23秒44(21年)でも8位とは28秒40の差がある。

これからすると入賞にからむのはかなり厳しいと思うかもしれない。しかし、23年前の五輪ではこんなことがあった。
00年シドニー五輪で7位に入賞した高岡寿成さんは、前半を13分45秒88で通過した13名の集団についていた。が、7000mで1周63秒台にペースアップした時、8名がついていったが無理には追わず9位集団とどまった。やがて2名がこぼれてきて、9000mで7位集団が5名。このうち入賞できるのは2名。
残り300mで一気にギアを入れ替え、ラスト300mからの100mを14秒7・13秒0・13秒7の切れ味鋭いスパートで7位入賞を果たした。

シドニー五輪は予選・決勝の2レースだったが、大会前までの高岡さんの自己ベスト27分50秒08は決勝を走った20名のうち15位、エントリー記録の27分59秒95は19位。また、自己ベストがトップの選手(26分22秒75=当時の世界記録)との差は1分27秒33、8番目の選手(27分22秒20)との差は27秒88。エントリー記録のそれは、トップ(27分03秒87)とは56秒08、8番目(27分39秒70)とは20秒25の差があった。
今回のブダペストでもシドニー五輪の時のように無理して先頭集団についた選手が終盤にこぼれてくるかもしれない。23年前の高岡さんのようにエントリー記録で上位にいる選手をゴボウ抜きして入賞ラインに食い込んでもらいたい。

レースが行われる8月20日18時25分(日本時間21日深夜1時25分)の過去3年間のブダペストの気象状況は、

【過去3年間の8月20日のブダペストの気象状況】
時刻2022年2021年2020年
18時30分曇・22℃・78%晴・25℃・47%晴・27℃・51%
19時00分晴・22℃・78%晴・25℃・51%晴・26℃・51%

19年のドーハは24℃・64%、22年オレゴンは21℃・59%の条件下でのレースだったのでほぼ似たような条件になりそうだ。
よって、アフリカ勢を中心とするトップ集団が牽制しない限り、優勝やメダル争いは26分台になるかもしれない。

田澤には、日本記録を更新するような走りを見せてもらいたいところだ。



野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)



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