2023.07.15(土)大会

【アジア選手権】3日目ハイライト&メダリストコメント~秦が6m97の特大日本新で金メダル!男子100mは、19歳・栁田がアジア王者に!~


ⒸTakashi OKUI photography

Day3:7月 14日(金)

タイのナショナルスタジアムであるバンコク・スパチャラサイ国立競技場で開催中の第25回アジア陸上競技選手権大会は、中日となる7月14日を迎えました。第3日となるこの日は、前半の4種目が行われる七種競技のほか、9種目で決勝が行われるタイムテーブル。日本チームの勢いはこの日も止まらず、4種目で金メダル、2種目で銅メダルを獲得しました。

この日のハイライトとして、一番にご紹介すべきは、やはりこの種目でしょう。新しい歴史の扉を開くビッグジャンプが、日没を待つスパチャラサイ国立競技場で誕生したのです。強い西日が肌を焼くなか競技が行われていた女子走幅跳の最終6回目で、秦澄美鈴選手(シバタ工業)が6m97(+0.5)の日本新記録をマークしたのです。

前日に予定されていた予選がなくなり、一発決勝で行われた女子走幅跳は、16時15分から競技が開始されました。秦選手は1回目を6m36(+0.6)で滑りだしましたが、その直後に6m76の自己記録を持つインドのSINGH Shaili選手が6m54をマーク。秦選手は2回目をファウルしたのちに、3回目で6m52(+1.0)へと記録を伸ばし、2cm差の2番手でトップ8に臨みました。4回目の跳躍で、自己記録に1cmと迫る6m74(+1.7)を跳んで首位に立つと、5回目の6m59(+0.0)を挟んで迎えた6回目に、大会新記録となる6m97をマークして、2月のアジア室内に続いて金メダルを獲得。17年ぶりに日本記録(6m86、池田久美子、2006年)を塗り替えると同時に、ブダペスト世界選手権(6m85)とパリオリンピック(6m86)の参加標準記録をどちらも大きくクリアしました。「7m」に3cmと迫るこの記録は、今季世界リストで4位に浮上するもの。ブダペストでの入賞戦線に、名乗りを上げる形となりました(秦選手のコメントは、こちらをご参照ください)。秦選手とともに走幅跳に出場した髙良彩花選手(JAL)は、6m32(-0.1)で5位という結果でした。

3日目の日本勢最初の金メダル獲得となったのは、男子3000m障害物。カタール勢との先頭争いを制した青木涼真選手(Honda)が8分34秒91で優勝、砂田晟弥選手(プレス工業)が8分39秒17・3位でフィニッシュしました。また、続いて行われた女子3000m障害物では、果敢なレースを展開した吉村玲美選手(Cramer Japan TC)が、インドのPRITI選手とホームストレートでの激しい競り合いを制して0.02秒差で先着し、9分48秒48で銅メダルを獲得。森智香子選手(積水化学)は9分56秒67・5位でフィニッシュしました。

高山峻野選手(ゼンリン)と横地大雅選手(Team SSP)がともに決勝に駒を進めた男子110mハードルでは、高山選手が13秒29(+0.6)で快勝。すでに内定済みのブダペスト世界選手権には、「アジアチャンピオン」の肩書きを背負って挑むことになります。今回が初の日本代表である横地選手は13秒59で5位の成績を残しました。

男子100mは、夕刻に準決勝を行ったのちに、約2時間強のインターバルで決勝を行う日程が組まれました。日本勢は栁田大輝選手(東洋大学、ダイヤモンドアスリート)が10秒14(±0)、坂井隆一郎選手(大阪ガス)は10秒33(-0.6)と全体1・3番手で決勝に進出。日が沈んで、空が淡い紫色に染まったなか行われた決勝では、加速局面で早くもリードを奪った栁田選手が、終盤で圧巻の強さを披露。後続を全く寄せつけず、自己記録(10秒10)を大幅に更新する10秒02(±0)でフィニッシュラインを駆け抜けました。10秒02は、日本歴代7位タイで、学生歴代2位となる好記録。前回の2019年ドーハ大会を制した東洋大の先輩となる桐生祥秀選手(日本生命)に続く日本勢の連覇を達成するとともに、日本チャンピオンの称号を手にするより先に、10代でアジアチャンピオンの座に収まる結果となりました。日本選手権に続く勝利を狙って臨んでいた坂井選手は、日本選手権の際に不安を抱えたアキレス腱痛からの回復途上にあったことが尾を引くことに。激しい3~6位争いとなったなか6位(10秒26)でフィニッシュしています。男子と同じ日程で行われた女子100mは、君嶋愛梨沙選手(土木管理総合)が11秒56(±0)で5位。予選で脚を痛めてしまった御家瀬緑選手(住友電工)選手は、準決勝以降を棄権しました。

このほか、フィールド種目では、男子砲丸投の奥村仁志選手(東京陸協)は9位(17m69)、女子棒高跳では諸田実咲選手(アットホーム)と台信愛選手(日本体育大学)が、4m00と3m80で4位・7位。齋藤真希選手(東海大学大学院)と郡菜々佳選手(新潟アルビレックスRC)が出場した女子円盤投は、齋藤選手が54m91で4位、郡選手は53m72で5位という結果で、それぞれ競技を終えています。また、予選・決勝で実施されることになったため、午前に予定されていた予選がなくなり、準決勝が入っていた午後の時間帯に予選が行われた男子400mハードルは、児玉悠作選手(ノジマT&FC)が全体でのトップタイムとなる49秒45をマークして、翌日の決勝に進出。1組目の4着(50秒09)でフィニッシュした筒江海斗選手(STW)のタイムは9番目。惜しくも予選敗退となりました。女子七種競技は、山﨑有紀選手(スズキ)が3359点を獲得して3位で、大玉華鈴選手(日体大SMG)は3308点の5位で折り返し、明日行われる後半3種目に挑みます。

メダルを獲得した日本選手のコメントは、以下の通りです。

【日本人メダリストコメント】

◎男子100m 栁田大輝(東洋大学) ※ダイヤモンドアスリート

優勝 10秒02(±0)

ⒸTakashi OKUI photography

久しぶりに会心のレースができた。やるべきことは今年に入ってからずっと変わっていないし、それはできているので、今回は何も考えずに、音が鳴ったら飛びだして、そのまま一番でゴールするつもりで突っ走った。出た瞬間に「いいスタートが切れた」と思ったので、あとはもう最後まで走り貫くだけだと、何も考えずに走った。

9秒台まで0.03秒ということで、切りたい気持ちはあったが、まあベストだし、やっと(10秒)0台を出せたので、まだまだここからかなと思っている。無風のなかでのタイムなので、1(m)でも1.5(m)でも追い風が吹けば、(9秒台)は絶対に出る。そこは日ごろの行いかなと思う。

(最後に競り負ける形となった)日本選手権は本当に悔しい思いをしたが、今日の結果は、タイムは100点満点ではないけれど、これまで失敗したレースの経験が全部生きたのかなと思う。(コントロールが課題となっていた)後半も、今日は無心だったので、最後までそんなに崩れずに行くことができた。こっち(バンコク)に入ってからは、予選から何も考えずにやってきた。無心で走るくらいのほうがちょうどいいのかもしれない。

今まで、(10秒)0台が出る、出ると言われてきたし、自分でも出るとわかっているからこそ、早く出さなきゃという気持ちばかりが先行していた。しかし、今回はそんなに気にせずに、ただでさえ好きな海外でのレースなのだから本当に楽しむのが一番だと思って走った。もちろん決勝は緊張したけれど、それ以上に、「どれくらいのタイムが出るんだろう」とか、そういう(ワクワクする)気持ちがあったので、変に呑み込まれずにやるべきことができたのかなと思う。

世界陸上に向けては、今日(参加標準記録の10秒00を)切って決めたかったなというのが正直な気持ち。まあでも、ランキング的には楽になったかなと思う。ただ、このタイムじゃ戦えないと思うので満足はできない。今日はとりあえず少しだけ喜んで、また、気を引き締め直してやっていきたい。

◎男子110mハードル 高山峻野(ゼンリン)

優勝 13秒29(+0.6)

ⒸTakashi OKUI photography

率直に安心したという気持ち。タイムと順位は狙っていなかったのだが、「アジアで一番を取ろう」みたいな感じで…、(一番を)取ってほしいみたいな感じで先生も言っていたので、一番になれてよかった。

昨日の予選が13秒70で、「今回はちょっとダメかなあ」とも思ったが、決勝前にしっかり気持ちを入れ替えて、レースに向けて集中することができた。この競技場のトラックは走りづらく、予選のときにも下に踏むと(反発が)上に返ってくることに苦労した。けっこう頑張って走ったのだが、踏んでも踏んでも力が(前に行かずに)上に抜けてしまって(コントロールが)難しいなと思ったので、決勝前は、アジャストさせるというか、しっかり前に前に(重心を)うまく乗せ込むという意識をもって練習した。そこでいい具合に修正できて、レースではハマったかなと思う。

次のレースは世界陸上となる。あと5週間でしっかり調整していきたい。海外のタータンは特殊なものが多いので、そこにどう対応するか。基本的に、(地面を)踏んだあとの(反発が返ってくる)角度とかを、早めに現地へ入って、アジャストできるようにしていきたい。今日の決勝は、前半はけっこういい感じで行けたが、来ると思っていた隣の中国の選手をちょっと意識した瞬間に、身体が開いてしまったことが反省点。それで後半もかなりバランスを崩してしまった。身体が開かないようにして、そこでしっかり刻んでいくようにすれば、あと0.0001秒(笑)くらいは速くなるんじゃないかと思う。今年はレベルが高いので頑張りたい。

◎男子3000m障害物 青木涼真(Honda)

優勝 8分34秒91

ⒸTakashi OKUI photography

ホッとしている。エントリーの段階で、カタールの選手が、1500mをメインとしていて、それも相当なレベルの選手がエントリーしていたので、少し怖さはあったが、2番以上は死守したいなと思っていた。暑いのもあって、前に出てくる選手も行ききれない感じがあったので、それもうまく使いながら、タイムもある程度出せれば十分にポイントが取れる算段がついていたので、焦らず勝ちを拾おうと思っていた。周りの力をうまく利用しながら、自分も前に出たりしながら走った。暑いコンディションのなかで勝ちきれたことは、世界選手権で決勝を狙うとか、そういったときにかなりプラスとなるレースになったのではないかと思う。

最初の1000mに出ていくことは砂田くんとも話していた。彼はスピードのある選手で、スタートしたらすぐに、すっと前に出たので、「あ、今日は(調子が)いいな」と感じ、中盤(彼が)きついところで自分が(前を)引いていこうと思った。(途中で、カタール勢が前に出たので)結局、自分が引ききることはない展開となったが、カタール勢が出たときは自分にも余裕はあったので、スパート勝負になるなら望むところだと思っていたし、それで勝てるくらいでないと世界選手権の予選は通らないと思っていた。日本選手権の失敗(障害の手前で転倒して7位に終わる)もあったので、いろいろとプレッシャーも感じるレースではあったが、ここで失敗しないことを考えるよりも、ここでどう戦ったら世界選手権の決勝が見えるのかということを意識した。出場権がとれるかどうかは、今後のほかの国の選手のポイント次第だが、自分がやれることはやったのかなと思うので、(世界選手権に出場する前提で)万全の準備をしていきたい。

◎男子3000m障害物 砂田晟弥(プレス工業)

3位 8分39秒17

ⒸTakashi OKUI photography

海外レースは初めてで怖かったというのがあるが、自信を持ってスタートラインに立てたのでよかったのかなと思う。海外勢が速いと聞いていたので、前半は(青木選手か自分かの)どちらかが行こうと話をしていた。自分が行くことができたので、そこはチームジャパンとして、結果につながったのかなと思う。

今回はチャレンジャー(という立場)で走らせてもらったので、その点、気負うことなく走ることができた。ほかの国の選手は、青木さんのデータを調べたりしていたが、自分はまだそんなに知られていないので、マークされていなかった。その点は、この順位が取れたことの要点なのかなと思う。

このレースは、今後の競技人生においても、いい経験になったと思う。次は杭州アジア大会。この経験を生かして、もっといいタイムで走れるように練習していきたい。

◎女子3000m障害物 吉村玲美(Cramer Japan TC)

3位 9分48秒48

ⒸTakashi OKUI photography

強い選手が2~4人いるとわかっていたなかで、最低限狙える順位は3位しかないと最初から思っていた。スタート直後に、思ったよりほかの国の選手が出てこなかったところもあったが、ごちゃごちゃしたなかで走ることになるくらいなら、自分で攻めてみようと考えていたので、ある程度想定内の展開となった。(自分の課題として)中盤で落ちてしまうところがあるのだが、今日は、そこで気持ちも切れることはなく、逆にちょうどいい感じで休むことができた。

最後は3番に入れるか本当に紙一重(笑)。ラスト1周の鐘が鳴ったときに、後ろに1人いることはわかっていて、スプリントでは勝てる自信があまりなかったので、最後の水濠を越えてからは、「これは全力で行かないと、本当にギリギリになるな」と思った。実際にラストは、本当に短距離選手みたいな感じ(笑)で、あんなゴールをしたのも初めてだったが、それでも3番に入るのと4番とでは差があるし、ブダペスト世界選手権につなげるためにも、最低限表彰台に乗るんだという思いでゴールに飛び込んだ。

(フィニッシュした直後は)3位に入れたかどうかは五分五分でわからないくらいの状態。「ああ、(3位に)入っていたらいいな」という気持ちで、脚にも力が入らなくて。でも、スタンドで応援してくれていた皆さんが、「入っていたよ!」と言ってくださって…。(3位という)結果の表示が出た瞬間には、もう鳥肌が立った。

タイムも少しずつ上がってきているし、今日の記録はセカンドベスト。世界選手権出場という点では微妙な状況だが、今回は、タイムをここまで出せると思っていなかったので、そこはプラスの材料。今シーズンは始まりからあまりいい流れができていなかったが、日本選手権と今回の2レースでいい走りができ、自分のなかではいいレースの上げ方ができてきていると感じている。3本目となる次のレースでは、ベストが狙えるじゃないかという自信も見えてきた。国際大会でメダルを取って、国旗を掲げて写真を撮ってもらうのは、ずっと夢だった。まずここでそれが実現できて、本当に嬉しい。

◎女子走幅跳 秦 澄美鈴(シバタ工業)

優勝 6m97(+0.5)

=日本新記録、大会新記録、ブダペスト世界選手権参加標準記録・パリオリンピック参加標準記録突破

ⒸTakashi OKUI photography

※コメントは下記に掲載。
【アジア選手権】女子走幅跳金メダル・秦澄美鈴コメント:17年振りの日本新記録&ブダペスト世界選手権/パリ五輪参加標準記録突破!
https://www.jaaf.or.jp/news/article/18586/


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)


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https://www.jaaf.or.jp/news/article/18469

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