2023.05.24(水)選手

【第107回日本選手権展望】女子投てき編:女子やり投北口は世界を驚かせる放物線を描けるか!?



第107回日本陸上競技選手権大会」が6月1~4日、第39回U20日本選手権との併催で、大阪市のヤンマースタジアム長居で開催される。今回、実施されるのは、12月10日に予定されている男女10000m、6月10~11日に行われる男女混成競技(十種競技、七種競技)を除くトラック&フィールド全34(男女各17)の決勝種目。2023年度の「日本一」の座が競われるとともに、本年8月にハンガリーのブダペストで開催される世界選手権、そして来年のパリオリンピックに向けて大きな影響力を持つアジア選手権(7月、タイ・バンコク)、アジア大会(9月、中国・杭州)の日本代表選手選考競技会も兼ねている。

ブダペスト世界選手権の出場資格は、昨年行われたオレゴン世界選手権同様に、ワールドアスレティックス(WA)が設定した参加標準記録を突破した者と、各種目のターゲットナンバー(出場枠)を満たすまでのWAワールドランキング上位者に与えられる。日本代表選手の選考は、日本陸連が定めた選考要項( https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202209/27_175114.pdf )に則って進められるため、日本選手権で即時内定を得るためには、3位以内の成績を収めたうえで、決勝を終えた段階で参加標準記録を突破していることが条件(ただし、オレゴン世界選手権入賞者は、順位に関係なく参加標準記録を突破した段階で内定)となる。
ここでは、各種目の注目選手や見どころをご紹介していこう。

※エントリー状況、記録・競技結果、ワールドランキング等の情報は5月21日時点の情報により構成。同日以降に変動が生じている場合もある。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)


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【女子砲丸投】

郡が勝てば、3年連続6回目のV、初優勝期す尾山・大野・小山田



女子砲丸投は、昨年は誰も16m台に乗せることができず、また、今季の日本リストも、現時点で尾山和華(今村病院)の15m62が最高で、15mラインを越えてきているのが、わずか3名に留まっている。ブダペスト世界選手権の参加標準記録の18m80は非常にレベルの高い記録であることは承知しているが、なんとか日本選手権でのメダルラインが、16m台となるような水準を目指したい。

日本選手権では、円盤投日本記録保持者(59m03、2019年)の郡菜々佳(新潟アルビレックスRC)が2連勝中で、円盤投との2冠を果たした前回に続いて、今大会も両種目で挑戦することを表明している。郡は、砲丸投でも2017年に日本歴代4位の16m57をマークしており、日本選手権は2017~2019年に3連覇。2年ぶりに出場した2021年からも連勝を続けている。砲丸投は、4月の北陸実業団に出場したのみで、記録も14m72にとどまっているが、円盤投で世界を目指すトレーニングによって、昨年に続いて今年も大きくパワーアップが図られているだけに、繊細なコントロールが必要となる砲丸投の技術を本番でうまく発揮することができれば、2年連続でのダブルタイトル、3年連続6回目の優勝もみえてくる。
今季、安定した成績を残しているのは尾山か。兵庫リレーカーニバルでは、チャイニーズタイペイの呉慈恩に6cm差の2位で、これが前述の15m62。続く水戸招待は15m50で優勝を果たした。自己記録の15m78は、福岡大2年の2018年にマークした記録。この年には、岐阜で開催されたU20アジアジュニアで銀メダルを獲得、タンペレ(フィンランド)で行われたU20世界選手権にも出場している。日本選手権は2020年以降、3大会連続で3位。アジア選手権、アジア大会への代表入りを狙うのであれば、さらなる上位と自己記録の更新を実現させたい。

埼玉大3年時の2021年に日本歴代6位の16m37をマークしている大野史佳は、今年から筑波大大学院に進学。今季は、日本学生個人選手権、関東インカレ(2部)を制しているが、記録はともに14m台にとどまっている。日本選手権で自己記録を更新する1投が飛び出せば、初優勝の可能性をぐんと引き寄せるはずだ。それは、前回2位を占めた小山田芙由子(日大桜門陸友会)も同じ。自己記録は2019年にマークした15m75。今季まだ15m02にとどまっているシーズンベストを、どこまで上げていけるかで2大会連続の表彰台が見えてくる。



【女子円盤投】

郡と齋藤のバトルから60mラインに迫る投てきを期待



女子円盤投のブダペスト世界選手権参加標準記録は64m20。前回のオレゴン世界選手権(63m50)から大きく引き上げられた。ただし、この記録を本番でマークできれば入賞が可能なレベル。5月21日時点で、ワイルドカード(前回金メダリストおよびダイヤモンドリーグ優勝者)を除いて参加標準記録をクリアできているのはまだ8名の状況だ。ターゲットナンバーは、前回から4枠増えて「36」に。大会カテゴリーにもよるが、安定して58~59m前後の記録をマークすること、さらには7月に控えるアジア選手権で上位に食い込むことの“合わせ技”次第では、日本選手の複数出場も夢ではない。
日本勢は、現段階で、郡菜々佳(新潟アルビレックスRC)と齋藤真希(東海大学)の2人が、ターゲットナンバー「36」に続く最上位で続いている。日本選手権、アジア選手権では、「記録も、順位も」狙っていくことが必要だ。
2019年に59m03の日本記録をマークした郡は、同年のドーハ世界選手権にも出場。その後、60mに肉薄した記録への重圧で低迷したが、昨シーズン復調、前回大会でセカンドベストの58m70をマークし、初優勝を飾った。今季は、3月には57m台を2回マークしているが、新年度がスタートしたあたりから乱調気味で、シーズンベストも 55m07にとどまっている。一昨年前もメンタル面のコントロールに課題があっただけに、本番でいかに「いつも通り、普段と同じに」臨めるかが鍵を握ることになりそう。
昨年は、郡に及ばず悔しさを噛みしめることが多かった齋藤だが、日本選手権は鶴岡工業高3年の2018年に初優勝、2020年・2021年にも連覇している実力者。自己記録も毎年必ず更新し、昨年には自身の日本歴代3位記録を57m43まで引き上げた。東海大大学院に進学した今年は、日本学生個人選手権を制し、ワールドユニバーシティゲームズの日本代表にも内定済み。シーズンベストは55m79(静岡国際)にとどまっているものの、 静岡国際、木南記念ともに日本人1位の成績を残している。58m台は見えているというだけに、2年ぶり4回目の優勝を、好記録で実現させたい。
昨年、日本歴代9位の54m05をマークした川口紅音(第一学院高教)は、今季は51m05がシーズンベスト。3年連続の4位の日本選手権では、すべて49m台。表彰台に確実に乗るためには本番で50mラインを大きく越えていく1投が必要だ。54m46(2019年)の自己記録を持つ辻川美乃利(内田洋行AC)は、2017年・2019年覇者で上位争いの常連といえる存在。今季は東京スプリングチャレンジを制した際の51m41がシーズンベストだが、その後、記録を49m台に落としている点が気にかかる。このほかでは、静岡国際で2019年に出した51m30に続くセカンドベスト51m10をマークした半田水晶と、初めて50m台に突入する50m75を投げた大迫晴香の「染めQコンビ」に勢いが感じられる。日本選手権で、さらなる好投がみられるかもしれない。


【女子ハンマー投】

マッカーサーいよいよ日本選手権デビュー、村上・小舘にも好記録の可能性



66m61(当時日本歴代4位)を筆頭に、パフォーマンスで日本リスト上位7位までを占めたマッカーサー・ジョイ・アイリス(NMFA)が、いよいよ日本選手権に初出場する。父のエリックさんは、バスケットボールの日本リーグでトッププレーヤーとして活躍した人物。日本人であるマッカーサーの母と結婚したのちに、日本国籍を取得しており、2006年には日本代表としてドーハアジア大会にも出場している。マッカーサーも小学1年生までは日本で育ち、その後、渡米。ハンマー投は高校で始め、U20世界選手権にも出場した。陸上の名門校である南カリフォルニア大(USC)に進んで、同大学院を修了。USCでは、男子4×400mリレー強化の一環で、日本のナショナルメンバーが複数年にわたって長期合宿を行っているが、現地でそのサポートを務めるなど、日本国籍を取得する以前から日本陸上界との絆を深めていた。もともと日本とアメリカ両方の国籍を持っていたなか、競技における国籍を日本とすることを、昨年2月にWAが承認したという経緯だ。
今年4月には、69m89の日本新記録を樹立。日本記録保持者として臨むことになる日本選手権では、いきなり70mラインを越えていく鮮烈デビューが見られるかもしれない。この種目のブダペスト世界選手権参加標準記録は73m60。ここにどこまで迫るかに注目したい。
ただし、今回はマッカーサーだけでなく、国内にいる選手たちも著しい成長を見せており、マッカーサーとのレベルの高い投げ合いのなかで、さらに記録を伸ばしてくることが期待できる状況にある。その筆頭となるのが、村上来花(九州共立大)だ。青森実業高3年の2021年に62m88のU20日本記録、U18日本記録、高校記録を樹立。昨年はU20世界選手権で銅メダルを獲得しているライジングスター。今季は4月に65m33をマークしてU20日本記録を書き換え、学生記録保持者の肩書きも手に入れた。その後、日本学生個人選手権を制して、ワールドユニバーシティゲームズの日本代表にも内定している。このほか、前回3・2位の小舘充華(染めQ、今季64m52)・藤本咲良(コンドーテック、今季62m59)も自己記録を更新。また、昨年の日本選手権の1回目で初めて60m台をマークすると、最終投てきで61m94まで記録を伸ばして初優勝を果たした勝冶玲海(九州共立大)もセカンドベストの61m71を投げており、記録を更新していく可能性は十分にある。2017年・2018年覇者で65m32(2018年)の自己記録を持つ勝山眸美(オリコ)も含めて、60mラインを越えていく軌道の応酬となってほしい。WAワールドランキングのターゲットナンバーは「36」。決勝記録の水準が65mを上回ったあたりで安定し、アジア選手権やアジア大会でメダルを狙えるようになれば、世界選手権、オリンピック出場も夢ではないところまで来ている。


【女子やり投】

北口、世界水準のビックスローなるか、斉藤&長の国士舘大OGコンビにも注目



オレゴン世界選手権銅メダリスト、ダイヤモンドリーグファイナル3位といった肩書きを超えて、今や「近況著しいトップスロワー」として世界中のファンから注目を集める存在となった日本記録保持者(66m00)の北口榛花(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)が、どんなパフォーマンスを見せてくれるか。今大会随一のみどころといってもよいだろう。
ひと冬越えて、大躍進を遂げた昨シーズンから、さらに進化を遂げている。今季は初戦の織田記念から64m50のビッグスローを放ち、ブダペスト世界選手権参加標準記録(63m80)をさっくりとクリアし、世界選手権の代表に内定。木南記念でも64m43をマークして快勝している。6回のシリーズ内でも64m、63mという飛距離が当たり前のように出てくるようになり、昨年までの段階から、一つステップアップした印象を受ける。日本選手権前の最後の試合となったセイコーゴールデングランプリでは、さらに高いレベルの技術を狙ったなかで狂わせたリズムを修正しきれず、最終投てきで日本人1位は確保したものの61m34・4位にとどまり、ミックスゾーンでの取材終了後は、「あー、納得いかない」と悔しげに(言葉の通り)地団駄を踏む場面も見せた。ただ、それも、日本選手権後に始まるダイヤモンドリーグ転戦や世界選手権で戦っていくことを前提としての取り組み。日本選手権までに、きっちりと定着させて、国内中心で進めてきたシーズン序盤の成果を示したいところだろう。
普段通りの力を発揮できれば、3年連続4回目の優勝は確実。できることなら国内で2019年以来となる日本新記録更新のアナウンスを聞きたい。前半の試技を64~65m台で入り、集中力を維持したまま後半の3回でビッグスローという展開が見られるようだと、試技のすべてで会場のファンを魅了することになるだろう。68~69m付近までやりを飛ばせる力は、すでに十分についているとみる。
ただし、注目すべきが北口だけでないことも、女子やり投のみどころ。
2017年に62m37をマークし、ロンドン世界選手権にも出場している斉藤真理菜(スズキ)が、腰をはじめ連発した故障を乗り越え、今季は絶好調。織田記念でセカンドベストの62m07をマークしているほか、各大会ともに水準の高いシリーズを見せるなど安定感も深めている。ターゲットはすばり参加標準記録を突破してのブダペスト行きの実現だ。高校生のころから大器として期待を集めながら、故障に苦しむ期間が長かった長麻尋(国士舘クラブ、ダイヤモンドアスリート修了生)も、木南記念で61m10をマーク。昨年出した自己記録(59m37)を大きく塗り替え、待望の60mスロワーとなった。この国士舘大出身の先輩後輩コンビが、参加標準記録に迫るアーチを描く可能性もある。
昨年オレゴン世界選手権の代表に選出されながらも、膝の故障により本番では力を発揮できず、その後、手術・リハビリを経て今季を迎えていた上田百寧(ゼンリン、61m75)が、セイコーゴールデングランプリで復活を告げる60m54をマーク。ほかにも、オレゴン世界選手権代表の武本紗栄(Team SSP、62m39)、ドーハ世界選手権代表の佐藤友佳(ニコニコのり、62m88)と、錚々たる顔ぶれがずらりと並ぶ。
ブダペスト世界選手権代表の座はもちろんのこと、来年のパリオリンピック代表入りにつながっていくアジア選手権やアジア大会の代表権獲得を巡っても、その戦いが熾烈なものとなることは必至。激しい競り合いのなかで、60mラインを大きくクリアしていくやりの数が増えることを期待したい。



【日本選手権】楽しむポイント

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記録と数字で楽しむ 第107回日本選手権

第107回日本選手権展望:みどころをチェック!


【チケット情報】

今年はスペシャルチケットとして、テーブル・コンセント付きの最上位グレード席となる「SS席」のほか、1日50席限定の「B席アスリート交流チケット」、1日15席限定の「カメラ女子席」、そして日本選手権では初めてサブトラックの観戦ができる「サブトラック観戦チケット」の販売をいたします。既に完売の席種もございますので、是非お早めにお買い求めください!



■S席のポイント


S席はメインスタンド1階層の中央からフィニッシュ付近の座席です!
トラック種目のフィニッシュシーンを間近で観戦できます。
王者誕生の瞬間を近くで見届けたい方におすすめの座席です!


■A席のポイント


A席は南サイドスタンド側、フィニッシュ付近の自由席です!
トラック種目のフィニッシュを正面から観戦できるため、フィニッシュ直後の選手たちの表情も間近で見ることもできます。
また、投てき種目(やり投・ハンマー投・円盤投・砲丸投)のピットも近いので選手たちの投てき前の集中した表情も観戦できます。


■B席のポイント


B席はメインスタンドのスタート側から中央にかけての自由席です!
100m、100mハードル、110mハードルのスタートシーンが間近で観戦できます。
スタート前は選手の鼓動が聞こえるほどに静まり返ります。


■C席のポイント


C席はサイドバックの自由席となります
C席のチケットをお持ちの方の他、サブトラック観戦チケットを除く全てのチケットの方も移動しての観戦が可能です!!
バックスタンド側で実施される走幅跳・三段跳では是非、バックスタンド側のC席から大きな拍手で応援をお願いいたします。
また、北サイドスタンド側では3000m障害物の水郷付近での観戦が可能です。水しぶきをあげて駆け抜ける迫力のある走りを是非ご覧ください。

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