2023.02.22(水)選手

【ダイヤモンドアスリート】メンタル研修レポート:最高のパフォーマンスを発揮するために必要な考え方



第9期ダイヤモンドアスリートを対象とする5回目のリーダーシッププログラムが2月7日、オンラインで行われました。今回、行われたのは、スポーツ心理学者の荒木香織先生(株式会社CORAZONチーフコンサルタント)を講師に迎えての「メンタル研修」。研修には、日程の都合でライブでの参加ができなかったアツオビン・ジェイソン選手(福岡大学)と北田琉偉選手(大塚高校)を除く、藤原孝輝選手(東洋大学)、栁田大輝選手(東洋大学)、西徹朗選手(早稲田大学)、澤田結弥選手(浜松市立高校)の4名が出席。また、「アスタナ2023アジア室内陸上」出場に向けて開催地のアスタナ(カザフスタン)に到着したばかりだった佐藤圭汰選手(駒澤大学)は、日本チームに割り当てられた現地での会場利用時間と重なってしまったなか、時間の許す限り聴講する形で参加しました。

荒木先生は、現在、順天堂大学スポーツ健康科学部で客員教授を務めるとともに、株式会社CORAZONのチーフコンサルタントとして活躍している人物。専門であるスポーツ心理学の教育・研究活動に取り組むほか、スポーツ心理学の科学的な知見を基盤とするメンタルパフォーマンストレーニングのプログラムをアスリートやアーティスト、企業など様々な個人や組織へ提供しています。なかでもスポーツ分野での実績として、2012年からラグビー男子日本代表チームのメンタルコーチを務め、2015年ラグビーワールドカップで日本が優勝候補の南アフリカを下した際の、立役者として、大きな注目を集めたことは記憶に新しいところでしょう。

「ダイヤモンドアスリートのためのパフォーマンスサイコロジーⓇ」と題して行われた研修は、室伏由佳プロジェクトマネジャーからの、「皆さんが、今持っている常識やこだわりが本当に正しいのかを考えたり、“はっ”と視野が広がったりするような時間になると思う。しっかりと吸収してもらいたい」という呼びかけでスタートしました。

実は、荒木先生は元スプリンター。小学5年生から社会人1年目まで陸上競技に取り組んできました。日本大学でも陸上競技部に所属し、1学年上に、現在は指導者としても活躍している井上悟さん(100m・200m元日本記録保持者)、森長正樹さん(走幅跳前日本記録保持者)らが在籍するなか、ともに活動してきた経歴の持ち主です。まず、陸上中心の生活から、アメリカに渡ってスポーツ心理学を学び、この分野で高名なノースカロライナ大学大学院グリーンズボロ校で博士号を取得するに至った経緯を紹介した荒木先生は、ダイヤモンドアスリートたちに質問を投げかけて反応を引き出しながら、「スポーツ心理学とは」「心・メンタルとは」「メンタルをトレーニングすること」について解説。「“こうすればうまくいく”ことが研究でわかっているのがスポーツ科学の良さで、スポーツ心理学でもそれが言える」と述べ、「私であればメンタルのツール(道具)をたくさん紹介したり、相談しながらすでに持ち合わせている物の確認をしたりすることができる。皆さんも、すでに“不安になったら、こうしよう”“うまく行かないときは、こう考えよう”といった“道具”は持っているはず。それらを用いれば必ず対処できるので、まずは、そのことに気づいて、用いることをやってほしい」と促しました。



自身が持つツールを認識して、使っていくためには、まず基礎的な知識を備えていることがベースとなってきます。荒木先生は、「ここから、いよいよ本題」として、自分が最高のパフォーマンスを発揮するための思考や感情、行動を構築していくうえで必要となってくる「メンタルヘルス」(心、身体、社会的つながり、環境のそれぞれが良い状態にあること(ウェルビーイング))、「マインドセット」(自身が目標に向かうときの基本的な姿勢や思考)に関して、基本となるそれぞれの概念を説明。その上で、望ましい状態や目指したい状態、どういう取り組みをすれば良い状態に向かっていけるのかなどを話していきました。
また、「成功へのマインドセット」として、「どういう考え方で挑戦を進めていけばよいのか」「健康的なモチベーションへのヒント」「緊張やプレッシャーをどう捉え、どう対処していけばよいか」を紹介。ダイヤモンドアスリートたちは、すぐに活用できる形で理解を深めました。

さらに、話題は「心理的レジリエンス」に関する解説へ。レジリエンスは「良くない影響を受ける可能性がある環境下でも、自分自身を守り、普段の心の機能を維持し、個々の強みを前面に押しだして向かっていく能力」として、近年、その認知度と重要性が深まっている概念です。荒木先生は、レジリエンスについて、「鍛えることができる」「適切な心の状態を保つ役割がある」「環境からの刺激に対する反応を(良く)変化させる」という特徴を示したうえで、具体例として、ケガや故障に見舞われた際に、マインドセットやレジリエンスのスキルがあれば、早期復帰に大いに役立つことを紹介。さらに、「レジリエンスの鍛え方」として10の項目を示し、そのなかから、ダイヤモンドアスリートが関心を示したいくつかを詳しく説明しました。

いくつかの質疑応答ののちに研修は終了。最後に室伏マネジャーが登場し、「今日聞いた内容には、“すぐに使える”ものも、“引き出しとして取っておけば、いつか活用できる日が来る”ものもあるはず。心というのは誰にもわからない、自分にしかわからないもの。自分で鍛えるしかないけれど、“鍛える”ということがフィットするのか、“良くする”ということがフィットするのかも、自分の成長過程によってマッチするかは変わってくる。学んだことを自分のなかの引き出しにしてほしい」とコメント。また、荒木先生が最後に触れた“ケガとスポーツ”について、「これは、一番悩ましい問題で、皆さんも悩む場面が出てくると思う」と自身の例も引き合いにしながら、「ダイヤモンドアスリートの皆さんには、ぜひ、悩んだときに自分を大事にした決断ができるようになってほしいと思う。スポーツは予定調和では絶対に行かないもの。自分のセオリーはいつでも崩れるし、予定が崩れてイライラすることにも必ず直面する。そういうときに、今日聞いた荒木先生の話を思い出し、役立ててほしい」と話し、この日の研修を締めくくりました。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)


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■【ダイヤモンドアスリート】第9期認定式・修了式レポート&コメント
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■【第9期リーダーシッププログラムVol1】修了生北口が活躍の糸口となった経験や自身の信念を語る
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