2023.02.18(土)大会

【日本選手権20km競歩】前日会見/高橋英輝、池田向希、岡田久美子、藤井菜々子



第106回日本選手権20km競歩は、本年夏から秋にかけて開始されるブダペスト2023世界選手権、杭州2022アジア大会、パタヤ2023アジア選手権の日本代表選手会を兼ねて、2月19日に兵庫県神戸市の六甲アイランドで行われます。

2月18日の夕刻には、注目選手を招いての前日会見が実施されました。この会見は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、ここ2年はオンラインで行われていましたが、今年は神戸市内のホテルにおいて久々の対面式での開催が実現。さらに、会見の模様は、YouTube 日テレスポーツにおいてライブで配信されました(https://youtu.be/wPRuyJ5EaN8)。

大会アンバサダーを務める藤澤勇さん(ALSOK)の司会進行で行われた会見には、高橋英輝選手(富士通)、池田向希選手(旭化成)、岡田久美子選手(富士通)、藤井菜々子選手(エディオン)4名が出席。ここまでの経過や現在の体調、レースに向けての思いなどを述べたのちに、メディアからの質問に応えました。各選手のコメントは以下の通りです。


【前日会見コメント(要旨)】



◎高橋英輝(富士通)

昨年の世界陸上が終わってから右膝の故障が長引き、例年に比べると始動は少し遅れたのだが、10月くらいからポイント練習を再開して、12月、1月は、チーム(富士通)の合宿や、チームジャパンの皆さんと合宿をしながら、このレースに向けて準備を進めてきた。始動が遅れたことで例年に比べると、スピード面や持久的な面で、少し不安はある。しかし、これまでのキャリアの積み重ねなども生かしながら、準備はできたかなと思っている。
明日の目標は、ブダペスト世界陸上の出場権を獲得すること。この準備状況で、どのくらい歩けそうかなという思いもあるが、池田選手はじめ、ほかにもたくさん強い選手がいるので、駆け引きや試合の流れなど、自身の経験をうまく生かしながら、うまくレースを運んで、目標をつかみとれるように頑張りたい。
日本の競歩は20kmで速いスピードを出せる選手が多いのだが、そのなかでも自分は、ラストスパートとか、ちょっとしたスピードの切り替えとか、そういう“飛び道具”といった部分が長所かなと思っている。
競歩の魅力は、いろいろな駆け引きがあること。自分の長所を生かせることもあるが、それはラストスパートをかけられる最後まで集団にいないと発揮できないわけで、そこまで勝負がもつれないように早めにペースを上げるなど、競歩には、ほかにもいろいろな展開がある。また、判定競技なので失格もある種目。注意が(自分に)出ると、心が動揺するし、ペースを落とさなければならないこともある。逆に(他選手に)パドルが出たのを見てスピードを上げることもある。20km競歩のスピーディーな展開のなかで、判定を巡るそうした駆け引きや自分の得意技を生かしたり相手を阻止したりする駆け引きを見られることが、競歩の魅力だと思う。そういったところが伝わるようなレースができればいいなと思う。
昨年の世界陸上の結果は、まだ分析しきれていない部分、気持ちも面でも消化しきれていない部分がある。ただ、世界陸上を終えて、少し時間を空けて、「もう一回、チャレンジしたい」という思いは、とても強くなった。年齢もキャリアも重ねたことで、練習をしてダメージが出る部分もあるが、同時に、国際大会に出たり日本選手権を重ねてきたりしたなかで、身体の機能面とかレースの展開とか知ることができた部分の積み上げも、たくさんある。そういう部分をこの日本選手権では生かして、また、世界に挑戦する権利をつかみとりたい。





◎池田向希(旭化成)

ここまで大きなケガなく、秋・冬とトレーニングを継続することができている。順調に明日にピーキングを合わせられていると思うので、自信がある。明日は、まずはブダペスト世界陸上の内定を絶対条件に頑張りたい。
私の持ち味は、ピッチが速く、(足の)回転数が速いところ。明日は、どんなレース展開になるかはわからないが、落ち着いてレースに入り、そういう自分の武器を生かす時が来たら、そのチャンスを逃さずに発揮したい。
競歩で(皆さんに)見ていただきたいポイントは、選手それぞれが持っている武器を、どこで、どの選手が、それを出してくるかというところ。それを100%出せる選手が、いい結果につながると思うので、そこが面白さの一つかなと思う。また、最後の最後まで順位変動があり得ること…ペナルティーがあるし、失格もあり得る競技なので、何位になるか最後までわからず、見逃せないこともポイント。(コースが)500mの直線での往復ということで、応援してくださる方から「選手が何度も目の前を通るので楽しい」とよく言ってもらえるので、明日はぜひ、現地で多くの方に応援していただけたらなと思う。また、ライブ配信も行われるということなので、来られない方は、ライブ配信を楽しんでいただけたらなと思う。
今回、山西さん(利和、愛知製鋼)は、(オレゴン世界選手権の優勝で)ワイルドカードを獲得されていて、もうブダペスト世界陸上の出場権を得ているということもあり、今回は出場していない。私としては、ここで戦うよりは、ブダペスト世界陸上で戦ってリベンジしたいという思いがあるので、この日本選手権は、その挑戦権を獲得するということを目的に臨めたらなと思う。
山西さんがいると戦う上では厄介だが、タイムを狙う上では、いてくれたほうが狙いやすいという部分はあるが、明日も高橋選手やほかの選手たちと、タイムや順位を競い合いながら、よりレベルの高い、質の高いレースを展開していきたい。
オレゴン世界陸上の収穫は、銀メダル獲得というところに落ち着くが、ある程度の準備、ピーキングを持っていき、しっかり(本番に)合わせられたという、その準備段階の収穫が何よりも大きかったと思う。課題としては、ラストで山西さんに敗れてしまった部分。山西さんのやりたいレースをやらせてしまったこと、自分がそこに対応できなかったことが反省点。そこをこの秋、冬と、歩型の技術面の改善やスタミナ面やスピード面の強化に励み、故障なくトレーニングできている。そこに関しては評価していいのかなと思っている。明日は、ブダペストに向けて頑張りたい。





◎岡田久美子(富士通)

昨年はケガなどもあり悔しい思いをしたが、今日までは大きなケガや体調不良などなく、比較的順調に練習を積めてきたかなと思っている。しかし、まだ参加標準記録(1時間29分20秒)も突破できていない状況なので、まず明日は参加標準記録をしっかりと突破して、世界選手権に出場する権利を得られるように頑張りたい。また、レースの展開次第で、派遣設定記録(1時間28分30秒)も頭に入れていきながら、しっかりとレースを進めていきたい。
私は、競歩を始めて長い年月が経つが、これまで失格というのが一度もない。それが自分の強みなのかなと思う。世界大会や、明日のレースもそうなのだが、こうしたレースでは高いレベルの審判によるジャッジをもらうので、そうした場面で失格などの心配がないところや、最後に競り合って(1kmのペースで)4分20秒とか4分15秒といったスピードを出したときも、自信を持って歩けるところは私の武器になっていると思う。
オレゴン世界選手権は14位という結果に終わってしまったが、収穫としては、大会の1カ月前にケガをしてしまい、たくさんの練習ができたわけではなかったなか、そのときの自分の力を出しきれたことではないかと振り返っている。私も高橋くんと同じで、年齢が上がってきて、積み重ねた部分もある一方で、回復などの面で時間がかかるようになってきているかなというのを実感しているところである。そういった自分の感覚を大事にしながら、また、体調管理や血液検査などをしっかり行うようにして、練習を継続させていくというところを大事にしてきた。
明日のレースに関しては、残念ながら女子は男子に比べると、まだまだ世界で戦うレベルまでには足りない部分もあるので、藤井さんと私で少しでも世界に近づけるような歩きをしたいと考えている。そこを見ていただけたらと思う。





◎藤井菜々子(エディオン)

オレゴン世界陸上が終わって、いったん心身ともにゆっくりと休み、10月くらいから本格的に次のレースに向けた準備をしてきた。ここまではスピードを中心に強化してきて、1月の宮崎合宿でも、順調に、今までのなかでもかなりいい練習を積むことができている。今大会のターゲットとして、1時間28分30秒の派遣設定記録を目標に歩ける準備ができたのではないかと思っている。
ここまでは、まず、一昨年に出場した東京オリンピックで全く歯が立たなかったということで、オリンピックが終わったあと練習を一度見直して、違う取り組みでオレゴン世界選手権には臨んだ。その結果、6位に入賞することはできたが、レースの途中、5番で歩いているときに4番の選手が見えていて、そこに追いつく力がまだなかったことは、すごく自分のなかで心残りとなった。また、最後の最後で中国の選手に抜かれてしまい、本当に力を出しきるというところにも課題が残った。振り返ると、6位にはなったが、悔しいという気持ちと、今後の課題がまた出てきたという思いがあった。それを経て、今回、日本選手権に臨むわけだが、そのときよりも、もうひと段階上げた練習ができたところもあるので、明日は、そういう面を頭に置きつつ歩くことができれば…と考えている。
私の強みは、物怖じしない性格であること。大きな競技会…例えば、日本選手権や世界選手権でも緊張ということが一度もなく、本当にリラックスして、自信を持って、レースに臨むことができていて、そういう強いメンタル面が自分の武器になっていると思っている。
競歩の魅力は、何回も選手が周回で帰ってくるので、マラソンとかと違って、何回も応援できること。また、レースをしている近くまで寄って声をかけることができるし、選手も(走る場合よりも)スピードが遅いので、その応援を聞き取ることができる。そういうところも魅力だと思う。



大会は2月19日、兵庫県神戸市の六甲アイランドにある1周1kmを周回する甲南大学西側20kmコースを会場として、今回から男女ともに10kmで行われるU20選抜競歩大会との併催で行われます。レースは、午前8時50分に出発する日本選手権男子20km競歩から競技開始。日本選手権女子20km競歩が10時35分にスタートし、12時30分からはU20選抜男子10km競歩が、13時25分からはU20選抜女子10km競歩が、それぞれ行われます。

日本選手権男女の部は、ブダペスト世界選手権のほか、杭州アジア大会とパタヤアジア選手権男女20km競歩の代表選考会も兼ねています。ブダペスト世界選手権の代表争いは、この大会で男子は最大で2名、女子は最大1名が即時内定する可能性がある状況です。男子では、オレゴン世界選手権銀メダリストの池田選手は、この大会で参加標準記録(1時間20分10秒)を突破すれば順位を問わず内定。また、派遣設定記録(1時間19分30秒)突破済みの高橋選手は、この大会で池田選手を除く最上位でフィニッシュすれば、記録に関係なく内定。そのほかの選手は、派遣設定記録を突破したうえで、池田選手を除く最上位者となった場合に内定します。また、女子については、優勝者が派遣設定記録(1時間28分30秒)を突破した場合のみ、即時内定がなされます。

新型コロナウイルス感染症の影響で、無観客での開催が続いていましたが、今年は、会場での観戦が可能となり、3年ぶりに沿道から応援できることになりました。日本陸連では、公式サイトにおいて現地観戦ポイント( https://www.jaaf.or.jp/news/article/17494/)を紹介したり、明治大学「明大スポーツ新聞部」とのコラボレーションで当日に号外を配布したりと、ファンの方々に楽しんでいただく企画を用意。多くの方の来場をお待ちしています。同時に、レースの模様は、YouTube日テレスポーツにおいて、ライブ配信(https://youtu.be/wYRyseps9Zc)も行われる予定。「世界一熾烈な頂上決戦」として、海外からも高い関心が寄せられているこのハイレベルなレースを、会場で、画面越しで、ぜひ、お楽しみください。


▼ライブ配信/日テレスポーツ 公式Youtube


大会に関する情報は、日本陸連公式ホームページ内に設けられている競歩の特設サイト「Race walk Navi~競歩ナビ~」に掲載しています。エントリーリストやライブ配信先へ簡単にアクセスできるほか、競歩の歴史やルール、日本選手権歴代優勝者、大会展望、ブダペスト世界選手権の内定条件等、競歩をより楽しんで応援できる情報が満載です。観戦のお供に、ご活用ください。

◎競歩特設サイト「Race walk Navi~競歩ナビ~」
https://www.jaaf.or.jp/racewalking/


文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)



【第105回日本選手権20km競歩 アーカイブ】

~第105回日本陸上競技選手権大会20km競歩 ダイジェスト~

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