来年夏に迫ったパリオリンピックの男女マラソン日本代表を選考するマラソングランドチャンピオンシップのコースが、いよいよ発表されました!
日本陸連は2月9日、東京都内で会見を開き、10月15日に、第107回日本選手権男女マラソンを兼ねて行われるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)のコースを公表。会見には、尾縣貢日本陸連会長のほか、同ロードランニングコミッションの瀬古利彦リーダーと強化委員会の高岡寿成中長距離マラソン担当シニアディレクターが出席。ゲストとして、前回のMGCに出場した福士加代子さん(ワコール女子陸上競技部アドバイザー)と、すでに出場が決まっているMGCファイナリストの鎧坂哲哉選手(旭化成)も参加しました。
冒頭で主催者代表として尾縣会長が登壇。MGCについて「前回、2020東京オリンピックのマラソンでメダルを取ることを目指して、強化と選手選考をリンクさせた新たな選考方法として創設した」と、開催までの経緯に触れたうえで、「基準を設け、客観性を担保し、一発選考に近い形のレースは、選手、コーチから一定の評価をいただいた。また、沿道からは52万5000人というファンの声援をいただき、注目度の高いイベントとなった」と前回大会を振り返るとともに、「10月15日は、前回以上の素晴らしい、熱いレースになると思う。(当日は)多くの方々が沿道で声援を送り、その前をランナーたちが駆け抜ける…そんな夢を見ている。その夢を素晴らしいレースという現実に変えていくために、これから準備に当たっていく」と挨拶しました。
続いて、新たなコースが映像を用いて発表されました。前回のMGCは、当時建設中であった国立競技場に代わって明治神宮外苑いちょう並木がスタート・ゴールとなったものの、コース自体は、本大会と同様のルート(その後、会場が札幌へ変更)を辿る形となっていましたが、今回設定されたコースは、国立競技場を発着点として、四谷~市谷見附、水道橋~神保町、さらには銀座の中央通りや日本橋といった従来と同じルートが用いられる一方で、小川町交差点を通過し、須田町交差点を左折して上野広小路を折り返し、須田町・日本橋・銀座・日比谷を経由して内幸町を折り返し、小川町交差点へと戻るという、今までにはなかった約10kmの周回ルートが新たに設定されました。この周回を2周したのちに、神保町から皇居を南下し、大手門で折り返して神保町へ戻り、水道橋・飯田橋を経て、従来通り激しいアップダウンが待ち構える最後の5kmを通過して、国立競技場へと帰っていくコースとなっています( https://www.mgc42195.jp/mgc/course.html )。
新コースがお披露目されたあと、会場では、瀬古リーダーと、ゲストとして招かれた福士さんと鎧坂選手が登壇。2月18日に開催される世界クロスカントリー世界選手権を控えて、現在、オーストラリアに滞在している高岡シニアディレクターはオンラインで参加し、司会者から4人に質問を投げかけていくなかで、コースの特徴や注目したいポイントなどを紹介していくトークセッションが行われました。
発表されたコースについての感想を求められた高岡シニアディレクターは、「平面的に見ると、折り返しが6箇所もあるほか、約10kmの周回を2周するなど、あまり日本では馴染みのないコース設定。また、断面的に見ると、最初の5kmまでが下り、5~35kmはほぼ平坦、最後の5kmが上りとなっている。パリオリンピックに強い選手を派遣するために、ペースメーカーのいないなか、タフなコースで勝負を重視したレースを見られるコース設定ではないかと思う」とコメント。前回のコースとの違いを問われた瀬古リーダーは、「すごくコンパクトにできているので、(移動して)応援する人にとってありがたいコース。走る人たちも、多くの人に応援してもられるので元気が出るのではないか。選手が6回通過することになる須田町の交差点はビューポイントになるはず。朝一番で待っていないと、前のほうで応援するのは無理」と応じて、笑いを誘いました。
前回の2019年大会を走った福士さんは、まず「今年、大変だねえ」と口火を切ると、「私は折り返しがあまり好きじゃないので、これはタフだなと思った。ただ、見るほうからしたら楽しいと思う。また、走っている側から見ると、折り返しが多いのは大変だが、(折り返しによって)互いの表情が見えることで、ほかの選手の状態がよくわかるので勝負のかけ所がいろいろありそう」とコメント。パリ五輪代表切符が獲得できる2枠を目指して、当日、レースに挑むMGCファイナリストの鎧坂選手は、折り返しの多さに加えて、スピードの減速・加速が生じるカーブの回数が多いことを指摘したうえで、「銀座のあたりなどは、曲がり角もあるし、折り返しもあるので、脚を使ってしまいそうだなと思った。そこを注意しながら走りたい」と述べました。
さらに、瀬古リーダーが、福士さんに意見を求めつつ、鎧坂選手に、当日、どうレースを攻略していこうと考えているかを突っ込んで聞いていく場面も。予想する男子の優勝タイムについて問われると、「2時間10分台…12分とかになるのでは。でも、自己ベスト(自己記録:2時間07分55秒)を出せる準備をしつつ、遅いペースでも我慢できるような練習も必要かなと思っている」と答えました。また、女子の予想優勝記録を聞かれた福士選手は、「記録はなかなか出ないかもしれない。2時間25分前後くらい? でも、最後に競り合いがあったりすると、タイムはまた変わってくる。タイムよりは勝負のレースになると思う」と回答しました。
MGCへの出場権を懸けてレースに挑む「MGCチャレンジ」は、現在、ジャパンマラソンチャンピオンシップシリーズ(JMC)シリーズ第2期の指定大会が行われている最中ですが、直近となる大会(男子:別府大分毎日マラソン/女子:大阪国際女子マラソン)を終えた現段階で、男子が48名、女子は26名がMGC出場権を獲得。すでに前回の出場者(男子30名、女子10名)を大幅に上回っています。この増加に、「男女ともに4年前(2019年)より確実にレベルが上がっているのが嬉しい。これを確実にパリ(オリンピック)に繋げていかなければならない」と瀬古リーダー。高岡シニアディレクターは、「女子は、前回と同じ条件で実施しての2.6倍増、男子については設定記録を1分上げたなかで1.5倍以上増えている。これは、現場の選手やコーチ、スタッフの頑張りが見える数字ではないかと思う。選手は48人いれば48人タイプが違う。そういった点で、戦略含めて、多くのパターン(での戦い方)があると思う」とコメント。本番に向けて、「まだMGCチャレンジ期間の途中で、このあと、大阪マラソン(男女)、東京マラソン(男女)、名古屋ウィメンズマラソン(女子)と多くのレースを控えているので、さらに大人数の選手で、MGC当日を迎えられたらと思う。パリオリンピックに日本を熱くするレースを期待したい」と締めくくりました。
MGCに向けての今後のスケジュールは、3月中旬以降にMGCファイナルチャレンジ指定大会が公表され、4月上旬にはMGC大会要項が発表されます。そして、5月31日のMGCチャレンジ期間終了を経て、6月中旬以降にMGC出場選手を発表するとともに、MGCファイナルチャレンジ設定記録も発表の予定。これらを経て、10月15日にMGCが開催されます。レースの模様は、男子はTBS テレビ系列全国ネットで、女子はNHKで、ともに放映の予定。また、スタート時刻等は、併催される東京レガシーハーフマラソンの日程等と調整を図りながら、今後決定していくことになっています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト
<大会概要>
■大会名:マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)兼 パリ2024オリンピック競技大会 日本代表選手選考競技会
兼 第107回日本陸上競技選手権大会・マラソン
■主 催:公益財団法人 日本陸上競技連盟
■共 催:一般財団法人 東京マラソン財団
■主 管:公益財団法人 東京陸上競技協会
■開催日:2023年10月15日(日)
■開催地:東京
■コース:国立競技場発着マラソンコース 国立競技場スタート~富久町~水道橋~神保町~須田町~上野広小路(第一折り返し)~日本橋~銀座~日比谷~内幸町(第二折り返し)~須田町~小川町(第三折り返し)~上野広小路(第四折り返し)~内幸町(第五折り返し)~須田町~神保町~大手町・内堀通り(第六折り返し)~水道橋~富久町~国立競技場フィニッシュ
■テレビ放映:男子 TBS テレビ系列全国ネット/女子 NHK
パリオリンピックマラソン日本代表選考レース【マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)】コース紹介
▼MGC特設サイト
https://www.mgc42195.jp/
▼コースについて
https://www.mgc42195.jp/mgc/course.html
▼JMCシリーズ特設サイト
https://www.jaaf.or.jp/jmc-series/