2022.06.05(日)大会

【第106回日本選手権展望】男子短距離編:ナンバーワンは誰の手に!?多田・桐生・小池・サニブラウンが日本最速の称号をかけて挑む!



第106回日本陸上競技選手権大会」が6月9~12日、大阪市のヤンマースタジアム長居で開催される。今回は、7月15~24日にアメリカで行われるオレゴン世界陸上競技選手権大会の日本代表選手選考競技会を兼ねており、5月7日に実施された男女10000mと、6月4~5日に実施される男女混成競技(十種競技、七種競技)を除くトラック&フィールド34種目(男女各17種目)の決勝が組まれるタイムテーブル。2022年度日本チャンピオンの座が競われるとともに、2024年パリオリンピックに向けた最初のビッグステージとなる世界選手権の出場権を懸けた戦いが繰り広げられる。

オレゴン世界選手権の出場資格は、昨年の東京オリンピックと同様に、ワールドアスレティックス(WA)が設定した参加標準記録を突破した者と、各種目におけるターゲットナンバーを満たすまでのWAワールドランキング上位者に与えられる。日本における選考は、日本陸連が定めた代表選考要項(https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202112/16_191504.pdf )に則って進められるため、日本選手権で即時内定を決めるためには、3位以内の成績を上げたうえで、日本選手権での競技を終えた段階で参加標準記録を突破していることが条件。まず、これを満たした競技者が、第1次日本代表選手として大会翌日の6月13日に発表され、以降、条件を満たした段階で随時追加がなされ、参加標準記録有効期間が終了する6月26日以降に、全代表が出揃うことになる。

即時内定とならなかった場合でも、日本選手権における成績(順位)が大きな鍵となるだけに、どの種目でも大激戦となることは必至。ここでは、オレゴン世界選手権代表の座を巡る戦いに焦点を当てて、各種目の注目選手をご紹介していく。
※エントリー状況、記録・競技結果、ワールドランキング等の情報は6月4日判明分により構成。ワールドランキング情報は、同日以降に変動が生じている場合もある。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ

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【男子100m】

日本最速に輝くのは誰だ!?王者誕生の瞬間を見逃すな!!

男子100mのオレゴン世界選手権参加標準記録は10秒05。これをクリアしている選手はまだいない。ターゲットナンバーが48のこの種目で、現在、WAワールドランキングは、桐生祥秀(日本生命)の36位が日本勢トップとなっている。日本選手権で、予選、準決勝の段階から、複数が標準記録を突破するようだと、オレゴンでの活躍もいっそう楽しみになってくる。



明るい話題は、9秒97の自己記録を持つサニブラウンアブデルハキーム(TumbleweedTC)が、復調の兆しを見せている点だ。現在、アメリカを拠点にしているが、3月に10秒15(+0.4)でシーズンインすると、4月末には追い風参考(+2.1)ながら10秒08をマークした。このときの状態を維持できているようなら、本番ではさらに記録を上げてくるだろう。サニブラウンは過去に2回、スプリント2冠を果たしているが、それを達成したのは2017年・2019年の“世界選手権イヤー”だった。「二度あることは三度ある」となるか。



東京オリンピック男子4×100mリレーメンバーで、着実に歩を進めているのは小池祐貴(住友電工)といえるだろう。織田記念(10秒49、-3.3)を制したあと、静岡国際の200m(20秒46、-0.4・4位)を挟んで、セイコーGGPは10秒22(+0.1)で、クリスチャン・コールマン(アメリカ)に続き、2位の成績を残している。今回も100mと200mの2種目に出場の予定。記録をもう少し上げてくる必要はあるが、条件にかかわらず安定したパフォーマンスを発揮できるという面で、2連覇を狙う200mとともに、100mでも確実に上位争いの中心になってきそうだ。



このほかのリレーメンバーは、予測をしづらい状況にある。昨年、自己記録を10秒01へと更新して、日本選手権で初優勝し、山縣亮太(セイコー)・小池とともに100mと4×100mリレーの2種目で東京オリンピックに出場した多田修平(住友電工)は、冬に取り組んできたパワーアップを走りにつなげていくところで苦慮、加えてセイコーGGPで当日に左大腿部に違和感が出て、その後は、治療と回復に専念している。
昨年、アキレス痛に悩まされ、個人種目でのオリンピック出場を果たせなかった桐生祥秀(日本生命)は、今季は出雲陸上100mで、予選を10秒12(+2.1)で通過すると、決勝を10秒18(+1.5)で制して、まずまずの滑りだしを見せたが、ここで右ハムストリングスに痛みが出て、織田記念、セイコーGGPを回避した。



昨年の日本選手権で100m・200mともに2位となり、リレーの補欠としてオリンピック代表に選出されたデーデーブルーノ(セイコー)は、今季は10秒45と精彩を欠く。昨年、100mで9秒95の日本新記録を樹立した山縣が、昨年秋に手術を行った右膝の完治を目指すとともに、故障等に影響を及ぼす左右差の改善を長期的な視野で取り組んでいくためにエントリーを見送ったことは惜しまれるが、多田・桐生・デーデーが上向きになった状態で臨めているようだと、3枚しかない世界選手権代表切符、そしてリレーメンバー入りを巡る争いは、より激化する。



桐生(10秒12)サニブラウン(10秒15)に続いて2022年度日本リスト3位に収まっているのは、富山大を卒業して今季から富山銀行の所属となった福島聖だ。富山県選手権で、10秒17(+1.7)をマーク。昨年までの自己記録10秒31を大きく塗り替えた。トップ陣を相手に、日本選手権という場で、同じようなパフォーマンスを出していけるかが試されそうだ。
また、ダイヤモンドアスリートで、今春から東洋大の所属となった柳田大輝(東洋大)は、日本学生個人選手権優勝でスタート。セイコーGGPでは、小池に次ぐ日本人2位(4位)の座を占め、存在感を示した。関東インカレでは10秒19(-0.2)の自己新をマークして優勝を果たしている。伸び盛りの波に乗って、ぐんと記録を更新してくる可能性もある。




【男子200m】

リオ五輪銅メダリストの飯塚が世界選手権参加標準記録・5回目のタイトル獲得を狙う!

銀メダルを獲得した2016年リオデジャネイロオリンピックで2走を務めた飯塚翔太(ミズノ)の調子が上がってきている。2010年世界ジュニア選手権(現U20世界選手権)200mで金メダルを獲得。シニアの年代となってからは、2012年ロンドンオリンピック以降、オリンピックや世界選手権で常にエース格として活躍してきたトップスプリンター。200mの自己記録20秒11(2016年)は日本歴代3位に収まるもので、日本選手権でも初優勝した2013年以降、2016年、2018年、2020年と、4回の優勝を果たしている。昨年は、膝を痛めた影響で、東京オリンピックは200m予選敗退、リレーもメンバーから外れる結果にとどまった。しかし、今季は、出身地で開催される静岡国際200mで20秒34(-0.4)をマークして優勝。記録以上に、飯塚らしい終盤の強さが光る走りに注目が集まった。現状で、WAワールドランキングの順位は、日本人4番手に位置し、ターゲットナンバー(56)は圏外にいる状態。日本選手権は、20秒24の世界選手権参加標準記録突破を狙いながら、5回目の勝利に挑むことになる。



そのワールドランキングで日本勢トップの33位と、“出場圏内”にいるのは前回初優勝を果たした小池祐貴(住友電工)だ。今季は20秒46にとどまっているが、2018年アジア大会で20秒23の自己記録で金メダルを獲得。日本一よりも先にアジア一となっている選手で、2019年に9秒98をマークして大注目を集めた100mより先に、実績を残してきている。日本選手権は、毎年出場するようになった2018年以降は、すべて100mと200mに出場。上位争いの“顔”といえる存在だ。今大会では、前半の100mに続く2つめの勝利を狙っての連覇挑戦となるかもしれない。



飯塚・小池を押さえて、初のタイトル獲得を実現させるかもしれない、というような勢いを感じられるのが犬塚渉(スズキ・ダイヤモンドアスリート修了生)。静岡国際の予選を20秒40(-0.6)、決勝を20秒41(-0.4)と、大学3年の2018年にマークした20秒65の自己記録を連続して更新。決勝ではラストで飯塚に逆転されたものの、序盤から大きくリードを奪うアグレッシブな走りで会場をどよめかせた。そのポテンシャルの高さは高校時代から知られていたが、いつも「これから」という場面でケガに泣くことが多かった選手。この冬に、ケガなく充実したトレーニングを積めたことに加えて、躍進の背景には、昨年から師事する末續慎吾(EAGLERUN)から受けた刺激も大きいようだ。



飯塚の中央大の後輩にあたり、現在、一緒にトレーニングすることが多いという染谷佳大(大和ハウス)も、今季、20秒48(-0.4)まで記録を縮めてきた。近畿大を卒業して、住友電工でルーキーイヤーを迎えた上山紘輝は、静岡国際で20秒46(-0.4)の自己新をマーク。同タイム着差ありで先輩の小池を制して3位の成績を残している。学生で躍進を見せている三浦励央奈(早稲田大、20秒64)、鵜澤飛羽(筑波大、20秒77)らも上位を狙ってのレースとなるだろう。




【男子400m】

今季好調の佐藤風雅が東京五輪4×400mリレーメンバ-に挑む!

男子400mでは、佐藤風雅(那須環境)の快進撃が目を引く。木南記念の予選で、昨年の全日本実業団を制した際に出した自己記録(45秒84)を更新する45秒68をマークすると、決勝は45秒84で優勝。その1週間後のセイコーGGPでは、日本歴代8位に浮上する45秒40でフィニッシュし、43秒45(世界歴代5位)の自己記録を持つアメリカのエース、マイケル・ノーマンに続き2位となり、日本人トップの座に収まった。今季は、個人種目で世界選手権に出場することを目標に掲げていると言い、「ランキングポイントで出場しても世界では戦えない」という思いから、参加標準記録44秒90をクリアすることを目指している。これを実現できれば、日本選手権での最高成績(3位、2020年)も確実に上回る成果を得られるはずだ。



2016年リオデジャネイロオリンピックに続き、昨年の東京オリンピックでも400mに出場したウォルシュ・ジュリアン(富士通)は、冬場に渡米して、前述のノーマンとともにトレーニングに積むなど、充実した強化ができていたが、初戦の木南記念を47秒03で予選落ち、セイコーGGPは右ハムストリングスに痛みが出たとして棄権し、関係者を心配させた。しかし、東日本実業団では、予選46秒29、決勝46秒54(優勝)と46秒台で2本揃えるところまで復調してきている。万全の状況に戻すことができれば、4回目の優勝が見えてくる。自己記録は2019年にマークした45秒13(2019年)。今季はこの記録も、確実に更新していきたいはずだ。



東京オリンピック男子4×400mリレー予選で、3分00秒76の日本タイ記録をマークしたメンバーのうち、アンカーを務めた鈴木碧斗(東洋大)、オリンピックは控えに回ったが5月の世界リレー男女混合4×400mリレー1走の池田弘佑(あすなろ会)の2人は、残念ながら故障により欠場している。
オリンピックで1・3走を務めた伊東利来也(住友電工)佐藤拳太郎(富士通)は、今季は46秒49と46秒32。もう一段階、水準を引き上げたい。



リレーメンバー中、安定した力を発揮し続けているのは、前回覇者でもある川端魁人(中京大クラブ)で、勝負という点ではすべて佐藤風雅に先着されているが、静岡国際で46秒01をマーク。セイコーGGPでは45秒73でフィニッシュし、昨年出した自己記録を0.02秒更新した。WAワールドランキングでは現状で32位と、ターゲットナンバー(48)内に位置している。個人での世界選手権出場を確実にしていくためにも、日本選手権では記録と順位が欲しい。



安定感というところでは、中島佑気ジョセフ(東洋大)も気になる存在。4月30日の木南記念以降は、すべてを46秒台でカバー。46秒1台を2回マークしている。自己記録は昨年出した46秒09。これを大きく更新していく力はすでについているとみる。同じく46秒09の自己記録を持ち、今季、46秒20をマークしている岩崎立来(大阪体育大)とともに、日本選手権の走りで、男子4×400mリレー、男女混合4×400mリレーの代表入りを引き寄せたい。




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■オレゴン2022世界陸上競技選手権大会 日本代表選手選考要項
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