2022.05.31(火)大会

【第106回日本選手権展望】女子投てき編 〜やり投・北口は世界選手権参加標準を突破し2年連続3回目のタイトル獲得を目指す!〜



第106回日本陸上競技選手権大会」が6月9~12日、大阪市のヤンマースタジアム長居で開催される。今回は、7月15~24日にアメリカで行われるオレゴン世界陸上競技選手権大会の日本代表選手選考競技会を兼ねており、5月7日に実施された男女10000mと、6月4~5日に実施される男女混成競技(十種競技、七種競技)を除くトラック&フィールド34種目(男女各17種目)の決勝が組まれるタイムテーブル。2022年度日本チャンピオンの座が競われるとともに、2024年パリオリンピックに向けた最初のビッグステージとなる世界選手権の出場権を懸けた戦いが繰り広げられる。

オレゴン世界選手権の出場資格は、昨年の東京オリンピックと同様に、ワールドアスレティックス(WA)が設定した参加標準記録を突破した者と、各種目におけるターゲットナンバーを満たすまでのWAワールドランキング上位者に与えられる。日本における選考は、日本陸連が定めた代表選考要項(https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202112/16_191504.pdf )に則って進められるため、日本選手権で即時内定を決めるためには、3位以内の成績を上げたうえで、日本選手権での競技を終えた段階で参加標準記録を突破していることが条件。まず、これを満たした競技者が、第1次日本代表選手として大会翌日の6月13日に発表され、以降、条件を満たした段階で随時追加がなされ、参加標準記録有効期間が終了する6月26日以降に、全代表が出揃うことになる。

即時内定とならなかった場合でも、日本選手権における成績(順位)が大きな鍵となるだけに、どの種目でも大激戦となることは必至。ここでは、オレゴン世界選手権代表の座を巡る戦いに焦点を当てて、各種目の注目選手をご紹介していく。
※エントリー状況、記録・競技結果、ワールドランキング等の情報は5月30日判明分により構成。ワールドランキング情報は、同日以降に変動が生じている場合もある。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト/アフロスポーツ

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【女子砲丸投】

郡菜々佳が2年連続、5回目の優勝を目指す!

今季は、16m台のパフォーマンスがまだ出ておらず、5月15日の新潟実業団で、郡菜々佳(新潟アルビレックスRC)のマークした15m56が日本リスト1位の記録となっている。郡は円盤投で59m03(2019年)の日本記録を持っている選手だが、砲丸投でも日本歴代4位の16m57(2017年)の自己記録を持ち、日本選手権では2017~2019年に3連覇、昨年、2年ぶりに出場して4回目の優勝を果たしている実力者。今年は、2月12日の初戦以降、円盤投に絞って競技会に出場してきたが、この新潟実業団で円盤投(54m81)と初戦となった砲丸投との2種目に臨み、状況を確認したかっこうだ。日本選手権では、今季パフォーマンス日本歴代4位の57m87をマークして復調してきた円盤投で初優勝を狙うとともに、2年連続5回目となる砲丸投Vとの2冠に挑む。前回も、戦前は15m台だったシーズンベストを、本番で16m台(16m01)に乗せて優勝を果たした。今季は、これまで以上に著しいパワーアップがみられることを考えても、16mを上回る記録は確実に出せる状態に仕上げてくるだろう。



持ち記録で対抗できるとしたら、昨年16m台に突入し、9月の日本インカレで日本歴代6位の16m37まで記録を伸ばしてきた大野史佳(埼玉大)が一番手に挙がるところだが、今季は兵庫リレーカーニバル(2位)の15m06がシーズンベスト。ここからどこまで調子を上げていけるか。

大野を押さえて15m40で兵庫リレーカーニバルを制した小山田芙由子(日本大)は、昨年15m75まで記録を伸ばしてきた選手。この記録は、昨年の日本インカレで記録をマークしていて、このときは大野に続いて2位となり、日本選手権者の郡(3位)に勝利している。兵庫リレー以降の試合に出てきていない点が気にかかるが、万全で臨むことができれば、上位候補の一角に上げてもよい存在だ。
5月5日の水戸国際を15m35で勝っている尾山和華(今村病院)は、5月にその後、2大会に出場して15m34、15m39と、安定した記録を残している。「ここ一発」という投てきが飛び出せば、自己記録(15m78、2018年)に迫っていける状況に仕上がっているとみてよいだろう。



高校生でただ一人、U20でなく日本選手権にエントリーしてきた奥山琴未(岡山商大附高)にも注目したい。中学1年生のころから飛び抜けた成績を残してきた選手で、2019年には中学生規格(2.721kg)では17m45の日本中学記録を、一般規格(4kg)でも14m44の中学日本最高記録を残している。高校1年時はやや伸び悩んだが、昨シーズンに14m54へと記録を伸ばしてインターハイとU18陸上競技大会で優勝。今季は水戸招待で自己記録を14m75へと更新して3位に食い込んでいる。日本選手権は昨年に続いて2回目の挑戦。17cm差でトップ8進出を逃して9位となった前回の結果は確実に上回ってきそうだ。


【女子円盤投】

日本記録保持者の郡は初のタイトル獲得を、齋藤は3連覇を狙う!

女子円盤投のオレゴン世界選手権参加標準記録は63m50。世界との距離が大きいと言わざるを得ない状況だ。しかし、WAワールドランキングのポイント獲得という点で、走幅跳や三段跳などと同様に、コロナ禍の影響で、高いポイントが得られる競技会カテゴリーに属するアジアレベルの大会(アジア室内、アジア選手権、アジア大会)の中止や延期が続いていることも、日本の選手たちには不利となっている。この種目のターゲットナンバーは32。WAワールドランキングのその付近にいる選手の5試合の内訳をみると、59~60m台の記録で安定させることができれば、ターゲットナンバー内へ食い込んでいく可能性も見えてくる。そういう点で、まずは日本記録(59m03)に近づき、その水準を安定させていくことを目指していきたい。

ポストオリンピックイヤーとなる今季、その状況に向けて、明るい兆しが見えている。まず、2019年に前述の日本記録をマークしながらも、60mに迫るその記録が重圧となって不振に陥り、苦しい日々を過ごしてきた郡菜々佳(新潟アルビレックスRC)が、社会人1年目となった今季、復調傾向に転じたのだ。静岡国際で、パフォーマンス日本歴代4位となる57m87のセカンドベストをマークして優勝。2回目に57m00(その時点でパフォーマンス日本歴代5位)を投げ、5回目でさらに記録を伸ばしたという点でも高く評価できる試技内容だった。
ずっと課題としていた「ここ一番での精神面の波」のコントロールの仕方がわかるようになってきたという。ウエイトトレーニングの成果で、フィジカル面でのパワーアップは、体格や動きを見ても明らか。無冠だった円盤投でタイトルを手にすることができれば、階段を1つ上がって、新しい世界が見えてくるだろう。



その郡に負けじと記録を伸ばしてきているのが、現在2連覇中の齋藤真希(東京女子体育大)だ。日本選手権は鶴岡工業高3年の2018年に初優勝しており、今回勝てば3年連続4回目の戴冠となる。高校時代にU18日本記録(52m38)、高校記録(54m00)を樹立。大学でも着実に成長して2年時にU20日本記録を55m53まで更新、昨年は学生歴代2位の56m58をマークした。今季は56m24で滑りだすと、日本学生個人選手権を優勝(53m96)、兵庫リレーカーニバルと静岡国際は郡に敗れたが、関東インカレで57m43をマークして自身の日本歴代3位記録を引き上げ、4連覇を果たしている。齋藤も十分なパワーアップができている状況で、近い記録をマークしているこの2人がぶつかることで、過去最高レベルの戦いを期待することができそうだ。



今季は、52m74にとどまっているが、54m46(2019年)の自己記録を持つ辻川美乃利(内田洋行AC)は、2017年・2019年に優勝している選手。53~54m台には確実に仕上げてくる力を持っている。また、3月に54m05の自己新記録をマークしている川口紅音(第一学院高教)は、その後、50m台には届いていないが、東日本実業団優勝をはじめ、確実に上位に食い込む結果を残している。日本選手権は、2年連続4位。自己記録に近い投てきができれば、初の表彰台がぐんと近づくことになる。


【女子ハンマー投】

アジア大会銅メダリストの勝山が4年ぶりのタイトル獲得を目指す!

女子ハンマー投では、日本歴代3位の66m79(2016年)の自己記録を持ち、前回3年連続4回目の優勝を果たした渡邊茜(丸和運輸機関)が昨シーズンで引退。一方、今年、日本国籍を取得したジョイ・マッカーサー(南カリフォルニア大)が4月に日本歴代4位となる66m61をマークするなど、新たな展開を見せている。マッカーサーは、今回はエントリーしていないため、日本でのパフォーマンスが見られるのは、もう少し先のことになりそう。これにより、日本チャンピオンを巡る戦いの行方は予測がしづらい状況となっている。
マッカーサーに次いで、今季の日本リスト2位に収まっているのは勝山眸美(オリコ)。日本選手権では2017年・2018年に連覇しており、社会人2年目の2018年にマークしたパーソナルベスト65m32は、日本歴代5位の記録。2018年ジャカルタアジア大会で銅メダルを獲得した実績もある。2019年に腰を痛めて、記録が伸び悩んだ期間もあったが、昨年は日本選手権で63m03をマークして、2年連続となる2位の成績を残した。今年は、3月に63m05をマーク。織田記念は、チャイニーズタイペイの余雅倩(64m34)に続いて60m83で日本人トップの座を占めている。4年ぶり3回目となる優勝で、再び存在感を大きく示したい。



今季、勢いを見せているのは藤本咲良(コンドーテック)。昨年の全日本実業団でマークしていた61m25(2位)の自己記録を、シーズ初戦の記録会で61m41へと更新。織田記念では59m76をマークして勝山に続いた。日本選手権は2020年に初出場して6位、昨年は4位と、表彰台にあと一歩のところまで来ている。また、奥村梨里佳(九州共立大)も4月に自身初の60m台となる60m82を投げて、学生歴代5位に浮上してきた。その奥村を押さえて、日本学生個人選手権で優勝を果たしているのがチームメイトで同級生の勝冶玲海(九州共立大)。このときに59m96の自己新をマークしており、60m台まで4cmまで迫っている。昨年、62m08まで自己記録を伸ばして2021年日本リスト4位に収まった小舘充華(染めQ)は、3月に60m83を投げてシーズンイン。4月の2試合で59m台、5月の2試合は60m台という結果で推移している。上位争いを確実にするためには、自己記録が狙える状態に仕上げたいところだ。



前回大会は4位までが60m台だったが、2017年には6位までが60mオーバーを果たしている。気象条件にもよるだろうが、少しでも多くの選手が60mラインを越える位置に、ハンマーによる大きな穴をつくってくれることを期待したい。


【女子やり投】

東京五輪決勝進出の北口、世界選手権標準記録突破を狙う!

女子やり投のレベルが非常に高まっている。オレゴン世界選手権参加標準記録は64m00。現段階で、これを突破している選手はいないが、WAワールドランキングではターゲットナンバー32の圏内に3選手が入っているうえに、続く2選手も32番目、34番目で続いている。これは、陸上大国アメリカや投てき王国チェコを超えてトップ。ターゲットナンバーでみるトップ50まで広げると、9人もの選手が名を連ねる高水準となっているのだ。日本選手権では、1カ国3枚の“オレゴン行きチケット”を巡って、複数によるレベルの高い“投げ合い”が期待できる。

この活況を牽引するのが、66m00の日本記録(2019年)を持つ北口榛花(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)だ。昨年の東京オリンピックでは、2019年ドーハ世界選手権に続いて決勝に進出した(12位)日本の大エース。オリンピックの予選で生じた左脇腹(斜腹筋)肉離れの完治に3カ月を要したが、回復後、じっくりと強化ができたことで今季は木南記念で61m20の好スタート。セイコーGGPでは、今季世界リスト2位に浮上する63m93のアーチを描き、参加標準記録まで7cmに迫るとともに、東京オリンピック銅メダリストで2019年ドーハ世界選手権チャンピオンのケルシー・リー・バーバー(オーストラリア)を制して優勝を果たした。5月28日には記録会に出場して62m80と、高レベルでの安定を維持している。WAワールドランキングは16位と、現状で出場が確実といえる圏内にいるが、本番の決勝で戦うことを見据える北口としては、参加標準記録を上回るシーズンベストで、オレゴン入りを期しているだろう。「最初の3回までに63~64m、後半でさらに記録を伸ばしていく」というシリーズで、2年連続3回目のタイトル獲得を実現させたい。



北口を追う層も充実している。62m88(2019年)の自己記録を持つ佐藤友佳(ニコニコのり)はドーハ世界選手権に、2017年に62m37をマークしている斉藤真理菜(スズキ)はロンドン世界選手権に出場している選手。佐藤は2020年に、斉藤は2018年に日本選手権を制している。さらに、昨年に記録を伸ばしてきた武本紗栄(佐賀スポ協、62m39)・上田百寧(ゼンリン、61m75)を含めて、5人の60mスローワーが顔を揃えることになるのだ。
現段階で、WAワールドランキングのターゲットナンバー圏内で北口に続くのは、今春から社会人となった上田百寧(27位)と武本紗栄(30位)。上田はセイコーGGPで60m49をマーク、武本は5月22日の九州実業団でその上田に勝ち、シーズンベストを59m46へと引き上げている。昨年の日本選手権はともに57m台の記録で、武本が3位、上田が4位にとどまった。この結果が響く形で、ターゲットナンバーに僅差で届かず東京オリンピック出場を逃しているだけに、日本選手権では記録と結果にこだわりたい。



昨年のシーズンインの段階で、オリンピック出場に近い位置にいた佐藤は、肘を痛めて日本選手権は8位に終わる無念。今季も腰に不安を抱えて苦しい戦いが続いている。ここをどう凌ぐか。逆に、故障の影響で停滞が続いていた斉藤は「痛いところがない状態」でシーズンイン。59m42を筆頭に3試合を59m台でまとめ、日本人4番手ながらワールドランキングでは32番目の位置につける。



斉藤と同じ国士舘大の出身で、今季59m37まで記録を伸ばし、ワールドランキングで34番目に浮上してきた長麻尋(国士舘クラブ、ダイヤモンドアスリート修了生)を含めて、日本選手権の結果で、代表メンバーの顔ぶれは変わってくる状況だ。過去の日本選手権における最高水準は、上位2選手(北口・佐藤)が62mを超えて争った2019年大会。これを確実に上回る激戦となることは確実だろう。風を含めたコンディションに恵まれることを祈りたい。



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