「セイコーゴールデングランプリ陸上2022東京」(セイコーGGP)が5月8日、ワールドアスレティックスが主催するワンデイ大会のグローバルツアーの「ワールドアスレティックスコンチネンタルツアーゴールド」として、東京・国立競技場で開催されました。
国立競技場における国際陸上競技大会は、昨年8月に開催された東京オリンピック以来となります。今回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響により、東京オリンピックでは叶わなかった有観客での開催も実現。会場には、8983人のファンが訪れ、絶え間ない温かな拍手が、選手たちの活躍を後押ししました。東京オリンピックのメダリストや世界記録保持者も参戦して行われたトラック9、フィールド5の全14種目のうち、日本選手は7種目で優勝を果たしています。
なお、各種目の優勝者および注目選手のコメントは、本稿とは、別に大会特設サイトのニュース欄( https://goldengrandprix-japan.com/2022/news/ )において掲載しています。あわせてご覧ください。
この日の国立競技場は、午後になって雲が広がる天候に。日差しがあったことで、午前10時の段階で24℃まで上がっていた気温が、午後に入って徐々に下がっていくなかでの開催となりました。
グランプリ種目は、気温21.5℃、湿度31%、ほぼ無風というコンディション下で13時10分に競技を開始した女子やり投からスタート。この種目で、初っぱなから好記録が飛び出したことによって、会場のボルテージが一気に高まりました。5月1日の木南記念を61m20で優勝していた日本記録保持者(66m00)の北口榛花選手(JAL)が、1回目の試技で60mラインを大きく越えていく投てきを披露し、今季世界リスト2位へとジャンプアップする63m93の好記録をマークしたのです。この記録は、北口選手自身にとっても、2019年10月にマークした日本記録に続くセカンドベスト。オレゴン世界選手権参加標準記録(64m00)まで7cmと迫りました。
結果的に、これが優勝記録となりましたが、北口選手は5回目に62m96、3回目と6回目には60m82・60m91と全6回の試技のうち4回で60mラインをオーバー。東京オリンピック銅メダリストで2019年ドーハ世界選手権チャンピオンのケルシー・リー・バーバー選手(オーストラリア、61m00で3位)、そして5回目に61m68を投げて2位となったリナ・ムゼ選手(ラトビア)らの実力者を圧倒する、価値ある勝利を収めました。日本勢で北口選手に続いたのは、5回目に60m49をマークした上田百寧選手(ゼンリン)。4月にマークした60m32に続く2回目の60m越えで4位となり、安定感を印象づけました。
海外選手1名、日本選手7名で行われた男子やり投では、日本歴代4位の84m28の自己記録を持ち、2012年ロンドンオリンピックで10位の成績を残しているディーン元気選手(ミズノ)が3回目に81m52を投げてトップで折り返すと、4回目に、木南記念で出したシーズンベスト81m91を更新する82m52をマークして、木南記念に続き2連勝を果たしました。2位は、愛媛陸協所属の崎山雄太選手で、自身2回目の80m台となる80m51を投げて、3年ぶりの自己記録更新となりました。
2019年ドーハ世界選手権金メダリストのクリスチャン・コールマン選手(アメリカ)の来日が実現したことで、日本勢の挑戦に注目が集まった男子100mは、15時過ぎに予選が行われ、決勝は大会最終種目として組まれるタイムテーブルで実施されました。前日の記者会見にも出席していた多田修平選手(住友電工)がレース直前に左大腿後部の違和感により棄権(のちに軽度の肉離れを起こしていたことが明らかになりました)したなか行われた予選では、10秒13(-0.3)で1組1着となったコールマン選手が全体でもトップで決勝へ。1組で10秒21をマークした坂井隆一郎選手(大阪ガス)が全体でも2位で、1組3着の小池祐貴選手(住友電工)と2組(-0.4)1着のローハン・ブラウニング選手(オーストラリア)が同タイムの10秒29で決勝に進む形となりました。
夕方になって風が冷たくなり、肌寒さを覚えるなかでのレースとなった決勝は、コールマン選手が得意とするスタートからリードを奪うと、そのまま逃げきって10秒09(+0.1)で快勝。終盤で順位を上げてきた小池選手が10秒22で続き、ブラウニング選手を0.01秒差で下しました。日本人2位・全体4位でフィニッシュしたのは、ダイヤモンドアスリートの栁田大輝選手(東洋大)。ブラウニング選手に0.04秒に迫る10秒27でレースを終えています。
男子400mには、100m9秒86、200m19秒70、400m43秒45の自己記録を持つマルチスプリンターで、東京オリンピック400m5位、4×400mRでは金メダルを獲得しているマイケル・ノーマン選手(アメリカ)が出場。力の差を見せつける走りを見せて44秒62でフィニッシュ。レース後、記録に対しては「悪すぎて落ち込んでいる」と不満を見せたものの、400mの今季初戦を勝利で飾りました。ノーマン選手についたことで序盤からハイペースのレースを展開する形となった日本勢は、終盤で失速しながらも最後まで粘った佐藤風雅選手(那須環境)が45秒40の自己新記録で2位に、3位には東京オリンピック4×400mR代表で、昨年の日本チャンピオンの川端魁人選手(中京大クラブ)が続き、初めて46秒台を切る45秒73をマークしました。
向かい風0.1mの条件で行われた女子200mは、22秒25の自己記録を持つリンナ・アービー選手(アメリカ)が23秒09で快勝。日本勢では、東京オリンピック4×100mR代表の鶴田玲美選手(南九州ファミリーマート)が、23秒84をマークして日本人トップの4位でフィニッシュしています。
東京オリンピックで大躍進を見せた日本の若手エースの走りに注目が集まったのは、男子3000m障害物と女子1500mです。男子3000m障害物には東京オリンピックで7位入賞を果たした三浦龍司選手(順天堂大)、女子1500mでは東京オリンピック8位の田中希実選手(豊田自動織機)の、両日本記録保持者が出場。それぞれに、今季を戦っていくための課題を持って、レースに挑みました。ラスト1000mで(走りを)切り替えることに課題をおいて臨んだ三浦選手は、序盤を押さえて入り、終盤できっちりと勝ちきる“横綱レース”を見せ、8分22秒25で快勝。今季、400mから10000mまで幅広く連戦を重ねるなかで強化を図ってきた田中選手は、今回は序盤から上位に位置すると、残り200mの手前でいったんトップに立ちましたが、ホームストレートで海外3選手に逆転され、4分07秒53・4位でフィニッシュしました。田中選手はレース後、「ラストで脚が止まった」ことを課題に挙げつつも、このあと予定している「ダイヤモンドリーグなどの海外転戦に生かせるレースになったと思う」とコメント。今後は、「“勝ちきる”レースを、国内レースから国際レースへと拡大していく」ことを目指しています。
女子1500mの日本人2位は、昨年の東京オリンピック代表の卜部蘭選手(積水化学)。残り150mで上位4選手には突き放されましたが、4分10秒53・5位でフィニッシュしました。
また、今季連戦となるなかで、さまざまな顔ぶれが好走を見せている男子800mは、ブラッド・マサス選手(ニュージーランド)が1分46秒58で優勝。注目された日本勢のトップ争いは、タイムレース決勝で行われた静岡国際で、2組目を走りながら日本人1位の成績を収めていた薄田健太郎選手(筑波大)が果敢なレース展開でマサス選手に食らいつき、1分46秒80でフィニッシュ。静岡国際に続き2位となりました。日本記録保持者の川元奨選手(スズキ)が1分47秒27で3位、4位には根本大輝選手(順天堂大)が1分47秒34で続き、マサス選手以外の海外選手を押さえました。
ハードル種目では、男子400mHに、昨年の東京オリンピック銀メダリストで、世界歴代2位の46秒17の自己記録を持つライ・ベンジャミン選手(アメリカ)が出場。静岡国際で世界選手権参加標準記録に並ぶ48秒90をマークしている東京オリンピック代表の黒川和樹選手(法政大)が7レーンに入り、6レーンに入ったベンジャミン選手から序盤は大逃げを図り、5台目で逆転されてからは、食らいつくレースを展開しました。初戦ということも影響して終盤で伸びを欠いたベンジャミン選手は48秒60での優勝。黒川選手は49秒08・2位でのフィニッシュとなりました。
男子110mHは、今季好調の村竹ラシッド選手(順天堂大)が、このレースでも強さを見せつけました。0.1mの追い風のなか、2台目を越えたあたりでトップに立つと、終盤で追いすがる陳奎儒選手(チャイニーズタイペイ)以下を寄せつけずに先着しました。13秒35で止まったフィニッシュタイマーは、その後、13秒34の正式計時に変わりましたが、世界選手権参加標準記録(13秒32)突破には、わずか0.02秒届かず。肌寒さを感じさせる気温が恨めしい結果となりました。
12秒20の世界記録保持者で東京オリンピック2位のケンドラ・ハリソン選手(アメリカ)、同3位のメーガン・タッパー選手(ジャマイカ)、同7位のガブリエル・カニンガム選手(アメリカ)と、錚々たる顔ぶれが揃った女子100mHは、ハリソン選手が12秒76(-0.1)で貫禄勝ち。2位で続いたのは、日本の福部真子選手(日本建設工業)で、日本歴代8位となる13秒05をマークしました。東京オリンピックで準決勝進出を果たした寺田明日香選手(ジャパンクリエイト、前日本記録保持者12秒87)は、カニンガム選手と同タイムの13秒07ながら着差ありの4位で2022年シーズンをスタート。同じく東京オリンピックに出場し、4月に自身と寺田選手が持っていた日本記録を0.01秒更新する12秒86をマークしている青木益未選手(七十七銀行)は中盤でバランスを崩して13秒91でのフィニッシュとなりました。
男子走高跳、男女走幅跳の3種目が行われた跳躍は、3種目とも日本選手が優勝を果たしています。まず、バックストレートを盛り上げたのが、女子走幅跳。ともに6m60台の自己記録を持つ秦澄美鈴選手(シバタ工業、6m65)とジャヒーシャ・トーマス選手(イギリス、6m69)が、1回目から抜きつ抜かれつのシーソーゲームを展開しました。前半は、秦選手が3回目に6m47(+0.2)を跳んでトップに立って終了。後半に入って、5回目の跳躍でトーマス選手が6m56(+0.8)で逆転すると、続いてピットに立った秦選手はセカンドベストの6m63(+0.5)の跳躍で再逆転。秦選手が優勝を果たしました。
男子走幅跳は、山川夏輝選手(佐賀スポ協)が2回目に7m87(+0.9)を跳んでトップに立つと、3回目に7m99(+0.8)、そして5回目には日本歴代8位タイとなる8m14(+0.4)まで記録を伸ばして優勝。日本大4年の2017年にマークした自己記録(8m06)を8cm更新、世界選手権参加標準記録(8m22)まで8cm近づきました。
男子走高跳は、日本記録保持者(2m35)の戸邉直人選手(JAL)をはじめ、真野友博選手(九電工)、瀬古優斗選手(滋賀レイクスターズ)、赤松諒一選手(アワーズ)の4名が2m24をクリアしましたが、最終的に自己記録に1cmに迫る2m27を3回目に成功した赤松選手が、2020年日本選手権室内を制して以来のビッグタイトル獲得を果たしました。
この日、セイコーGGPのすべての競技が終了した国立競技場で、女子100m(11秒21)・200m(22秒88)日本記録保持者で、今年1月に現役を退いた福島千里さんの引退セレモニーが行われました。
セレモニーには、歌手の平原綾香さんがスペシャルゲストとして参加。セイコー所属の山縣亮太選手(男子100m日本記録保持者)、デーデー ブルーノ選手のほか、競泳の坂井聖人選手、トランポリンの棟朝銀河選手ら他競技のトップアスリートも駆けつける華やかなものに。福島さんは、「ラストレース」として、未来を担う子どもたちとセイコーアスリートメンバー5人との100mシャトルリレーに臨みました。100mを走ってきた子どもたちと交代する形で、山縣選手らに続いてスタートを切った福島さんは、満面の笑顔を見せながら全選手をかわし、両手を上げてトップでフィニッシュ。万感の表情でスタンドに向かった頭を下げ、各選手に握手を求めました。
その後、マイクの前に立った福島さんは、「このような機会をいただき、とても幸せ。本当にありがとうございました」とまず挨拶。「最後に引退レース(という形で)で、チームメイトの山縣さんや皆さんと走れて、本当に幸せだった」と、チームメイトに感謝の思いを伝えました。
そして、自身の今後について、「今までお世話になった陸上に恩返しする気持ちをもって、さまざまなことにチャレンジしていきたい」と抱負をコメント。「これからも1人でも多くのアスリートが、国内にとどまらず、世界の舞台で活躍することを楽しみにしている。また、私の持つ日本記録が更新されることも心待ちにしている」と、女子短距離をはじめとする後輩たちにエールを送りました。
その後、シャトルリレーを走ってくれた子どもたちと一緒に、最後の「ウイニングラン」。場内をゆっくりと1周し、セレモニーの模様を見守っていた観客から送られる温かな拍手に笑顔で応え、トラックに別れを告げました。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ、Photo by Aflo Sport
〇セイコーゴールデングランプリ陸上2022東京 特設サイト
https://goldengrandprix-japan.com/
〇優勝者コメント
https://goldengrandprix-japan.com/2022/news/
>>第106回日本選手権6月9日~12日開催!~チケット好評発売中!~
https://www.jaaf.or.jp/jch/106/ticket/
国立競技場における国際陸上競技大会は、昨年8月に開催された東京オリンピック以来となります。今回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響により、東京オリンピックでは叶わなかった有観客での開催も実現。会場には、8983人のファンが訪れ、絶え間ない温かな拍手が、選手たちの活躍を後押ししました。東京オリンピックのメダリストや世界記録保持者も参戦して行われたトラック9、フィールド5の全14種目のうち、日本選手は7種目で優勝を果たしています。
なお、各種目の優勝者および注目選手のコメントは、本稿とは、別に大会特設サイトのニュース欄( https://goldengrandprix-japan.com/2022/news/ )において掲載しています。あわせてご覧ください。
北口が63m93! 今季世界2位の好投でV
男子も、ディーンが82m52で優勝
この日の国立競技場は、午後になって雲が広がる天候に。日差しがあったことで、午前10時の段階で24℃まで上がっていた気温が、午後に入って徐々に下がっていくなかでの開催となりました。
グランプリ種目は、気温21.5℃、湿度31%、ほぼ無風というコンディション下で13時10分に競技を開始した女子やり投からスタート。この種目で、初っぱなから好記録が飛び出したことによって、会場のボルテージが一気に高まりました。5月1日の木南記念を61m20で優勝していた日本記録保持者(66m00)の北口榛花選手(JAL)が、1回目の試技で60mラインを大きく越えていく投てきを披露し、今季世界リスト2位へとジャンプアップする63m93の好記録をマークしたのです。この記録は、北口選手自身にとっても、2019年10月にマークした日本記録に続くセカンドベスト。オレゴン世界選手権参加標準記録(64m00)まで7cmと迫りました。
結果的に、これが優勝記録となりましたが、北口選手は5回目に62m96、3回目と6回目には60m82・60m91と全6回の試技のうち4回で60mラインをオーバー。東京オリンピック銅メダリストで2019年ドーハ世界選手権チャンピオンのケルシー・リー・バーバー選手(オーストラリア、61m00で3位)、そして5回目に61m68を投げて2位となったリナ・ムゼ選手(ラトビア)らの実力者を圧倒する、価値ある勝利を収めました。日本勢で北口選手に続いたのは、5回目に60m49をマークした上田百寧選手(ゼンリン)。4月にマークした60m32に続く2回目の60m越えで4位となり、安定感を印象づけました。
海外選手1名、日本選手7名で行われた男子やり投では、日本歴代4位の84m28の自己記録を持ち、2012年ロンドンオリンピックで10位の成績を残しているディーン元気選手(ミズノ)が3回目に81m52を投げてトップで折り返すと、4回目に、木南記念で出したシーズンベスト81m91を更新する82m52をマークして、木南記念に続き2連勝を果たしました。2位は、愛媛陸協所属の崎山雄太選手で、自身2回目の80m台となる80m51を投げて、3年ぶりの自己記録更新となりました。
男子100mはコールマンが10秒09で快勝
小池がラストの猛追で2位に
2019年ドーハ世界選手権金メダリストのクリスチャン・コールマン選手(アメリカ)の来日が実現したことで、日本勢の挑戦に注目が集まった男子100mは、15時過ぎに予選が行われ、決勝は大会最終種目として組まれるタイムテーブルで実施されました。前日の記者会見にも出席していた多田修平選手(住友電工)がレース直前に左大腿後部の違和感により棄権(のちに軽度の肉離れを起こしていたことが明らかになりました)したなか行われた予選では、10秒13(-0.3)で1組1着となったコールマン選手が全体でもトップで決勝へ。1組で10秒21をマークした坂井隆一郎選手(大阪ガス)が全体でも2位で、1組3着の小池祐貴選手(住友電工)と2組(-0.4)1着のローハン・ブラウニング選手(オーストラリア)が同タイムの10秒29で決勝に進む形となりました。
夕方になって風が冷たくなり、肌寒さを覚えるなかでのレースとなった決勝は、コールマン選手が得意とするスタートからリードを奪うと、そのまま逃げきって10秒09(+0.1)で快勝。終盤で順位を上げてきた小池選手が10秒22で続き、ブラウニング選手を0.01秒差で下しました。日本人2位・全体4位でフィニッシュしたのは、ダイヤモンドアスリートの栁田大輝選手(東洋大)。ブラウニング選手に0.04秒に迫る10秒27でレースを終えています。
男子400mには、100m9秒86、200m19秒70、400m43秒45の自己記録を持つマルチスプリンターで、東京オリンピック400m5位、4×400mRでは金メダルを獲得しているマイケル・ノーマン選手(アメリカ)が出場。力の差を見せつける走りを見せて44秒62でフィニッシュ。レース後、記録に対しては「悪すぎて落ち込んでいる」と不満を見せたものの、400mの今季初戦を勝利で飾りました。ノーマン選手についたことで序盤からハイペースのレースを展開する形となった日本勢は、終盤で失速しながらも最後まで粘った佐藤風雅選手(那須環境)が45秒40の自己新記録で2位に、3位には東京オリンピック4×400mR代表で、昨年の日本チャンピオンの川端魁人選手(中京大クラブ)が続き、初めて46秒台を切る45秒73をマークしました。
向かい風0.1mの条件で行われた女子200mは、22秒25の自己記録を持つリンナ・アービー選手(アメリカ)が23秒09で快勝。日本勢では、東京オリンピック4×100mR代表の鶴田玲美選手(南九州ファミリーマート)が、23秒84をマークして日本人トップの4位でフィニッシュしています。
3000m障害物は、三浦が圧巻のラストで優勝
女子1500mの田中は海外勢と競り合い4位
東京オリンピックで大躍進を見せた日本の若手エースの走りに注目が集まったのは、男子3000m障害物と女子1500mです。男子3000m障害物には東京オリンピックで7位入賞を果たした三浦龍司選手(順天堂大)、女子1500mでは東京オリンピック8位の田中希実選手(豊田自動織機)の、両日本記録保持者が出場。それぞれに、今季を戦っていくための課題を持って、レースに挑みました。ラスト1000mで(走りを)切り替えることに課題をおいて臨んだ三浦選手は、序盤を押さえて入り、終盤できっちりと勝ちきる“横綱レース”を見せ、8分22秒25で快勝。今季、400mから10000mまで幅広く連戦を重ねるなかで強化を図ってきた田中選手は、今回は序盤から上位に位置すると、残り200mの手前でいったんトップに立ちましたが、ホームストレートで海外3選手に逆転され、4分07秒53・4位でフィニッシュしました。田中選手はレース後、「ラストで脚が止まった」ことを課題に挙げつつも、このあと予定している「ダイヤモンドリーグなどの海外転戦に生かせるレースになったと思う」とコメント。今後は、「“勝ちきる”レースを、国内レースから国際レースへと拡大していく」ことを目指しています。
女子1500mの日本人2位は、昨年の東京オリンピック代表の卜部蘭選手(積水化学)。残り150mで上位4選手には突き放されましたが、4分10秒53・5位でフィニッシュしました。
また、今季連戦となるなかで、さまざまな顔ぶれが好走を見せている男子800mは、ブラッド・マサス選手(ニュージーランド)が1分46秒58で優勝。注目された日本勢のトップ争いは、タイムレース決勝で行われた静岡国際で、2組目を走りながら日本人1位の成績を収めていた薄田健太郎選手(筑波大)が果敢なレース展開でマサス選手に食らいつき、1分46秒80でフィニッシュ。静岡国際に続き2位となりました。日本記録保持者の川元奨選手(スズキ)が1分47秒27で3位、4位には根本大輝選手(順天堂大)が1分47秒34で続き、マサス選手以外の海外選手を押さえました。
村竹は快勝も、参加標準記録に0.02秒届かず
福部、13秒05で2位の健闘
ハードル種目では、男子400mHに、昨年の東京オリンピック銀メダリストで、世界歴代2位の46秒17の自己記録を持つライ・ベンジャミン選手(アメリカ)が出場。静岡国際で世界選手権参加標準記録に並ぶ48秒90をマークしている東京オリンピック代表の黒川和樹選手(法政大)が7レーンに入り、6レーンに入ったベンジャミン選手から序盤は大逃げを図り、5台目で逆転されてからは、食らいつくレースを展開しました。初戦ということも影響して終盤で伸びを欠いたベンジャミン選手は48秒60での優勝。黒川選手は49秒08・2位でのフィニッシュとなりました。
男子110mHは、今季好調の村竹ラシッド選手(順天堂大)が、このレースでも強さを見せつけました。0.1mの追い風のなか、2台目を越えたあたりでトップに立つと、終盤で追いすがる陳奎儒選手(チャイニーズタイペイ)以下を寄せつけずに先着しました。13秒35で止まったフィニッシュタイマーは、その後、13秒34の正式計時に変わりましたが、世界選手権参加標準記録(13秒32)突破には、わずか0.02秒届かず。肌寒さを感じさせる気温が恨めしい結果となりました。
12秒20の世界記録保持者で東京オリンピック2位のケンドラ・ハリソン選手(アメリカ)、同3位のメーガン・タッパー選手(ジャマイカ)、同7位のガブリエル・カニンガム選手(アメリカ)と、錚々たる顔ぶれが揃った女子100mHは、ハリソン選手が12秒76(-0.1)で貫禄勝ち。2位で続いたのは、日本の福部真子選手(日本建設工業)で、日本歴代8位となる13秒05をマークしました。東京オリンピックで準決勝進出を果たした寺田明日香選手(ジャパンクリエイト、前日本記録保持者12秒87)は、カニンガム選手と同タイムの13秒07ながら着差ありの4位で2022年シーズンをスタート。同じく東京オリンピックに出場し、4月に自身と寺田選手が持っていた日本記録を0.01秒更新する12秒86をマークしている青木益未選手(七十七銀行)は中盤でバランスを崩して13秒91でのフィニッシュとなりました。
赤松2m27、山川8m14、秦6m63
跳躍3種目は日本勢が優勝!
男子走高跳、男女走幅跳の3種目が行われた跳躍は、3種目とも日本選手が優勝を果たしています。まず、バックストレートを盛り上げたのが、女子走幅跳。ともに6m60台の自己記録を持つ秦澄美鈴選手(シバタ工業、6m65)とジャヒーシャ・トーマス選手(イギリス、6m69)が、1回目から抜きつ抜かれつのシーソーゲームを展開しました。前半は、秦選手が3回目に6m47(+0.2)を跳んでトップに立って終了。後半に入って、5回目の跳躍でトーマス選手が6m56(+0.8)で逆転すると、続いてピットに立った秦選手はセカンドベストの6m63(+0.5)の跳躍で再逆転。秦選手が優勝を果たしました。
男子走幅跳は、山川夏輝選手(佐賀スポ協)が2回目に7m87(+0.9)を跳んでトップに立つと、3回目に7m99(+0.8)、そして5回目には日本歴代8位タイとなる8m14(+0.4)まで記録を伸ばして優勝。日本大4年の2017年にマークした自己記録(8m06)を8cm更新、世界選手権参加標準記録(8m22)まで8cm近づきました。
男子走高跳は、日本記録保持者(2m35)の戸邉直人選手(JAL)をはじめ、真野友博選手(九電工)、瀬古優斗選手(滋賀レイクスターズ)、赤松諒一選手(アワーズ)の4名が2m24をクリアしましたが、最終的に自己記録に1cmに迫る2m27を3回目に成功した赤松選手が、2020年日本選手権室内を制して以来のビッグタイトル獲得を果たしました。
福島千里さん引退セレモニー
山縣らと「ラストラン」で最後を飾る
この日、セイコーGGPのすべての競技が終了した国立競技場で、女子100m(11秒21)・200m(22秒88)日本記録保持者で、今年1月に現役を退いた福島千里さんの引退セレモニーが行われました。
セレモニーには、歌手の平原綾香さんがスペシャルゲストとして参加。セイコー所属の山縣亮太選手(男子100m日本記録保持者)、デーデー ブルーノ選手のほか、競泳の坂井聖人選手、トランポリンの棟朝銀河選手ら他競技のトップアスリートも駆けつける華やかなものに。福島さんは、「ラストレース」として、未来を担う子どもたちとセイコーアスリートメンバー5人との100mシャトルリレーに臨みました。100mを走ってきた子どもたちと交代する形で、山縣選手らに続いてスタートを切った福島さんは、満面の笑顔を見せながら全選手をかわし、両手を上げてトップでフィニッシュ。万感の表情でスタンドに向かった頭を下げ、各選手に握手を求めました。
その後、マイクの前に立った福島さんは、「このような機会をいただき、とても幸せ。本当にありがとうございました」とまず挨拶。「最後に引退レース(という形で)で、チームメイトの山縣さんや皆さんと走れて、本当に幸せだった」と、チームメイトに感謝の思いを伝えました。
そして、自身の今後について、「今までお世話になった陸上に恩返しする気持ちをもって、さまざまなことにチャレンジしていきたい」と抱負をコメント。「これからも1人でも多くのアスリートが、国内にとどまらず、世界の舞台で活躍することを楽しみにしている。また、私の持つ日本記録が更新されることも心待ちにしている」と、女子短距離をはじめとする後輩たちにエールを送りました。
その後、シャトルリレーを走ってくれた子どもたちと一緒に、最後の「ウイニングラン」。場内をゆっくりと1周し、セレモニーの模様を見守っていた観客から送られる温かな拍手に笑顔で応え、トラックに別れを告げました。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ、Photo by Aflo Sport
〇セイコーゴールデングランプリ陸上2022東京 特設サイト
https://goldengrandprix-japan.com/
〇優勝者コメント
https://goldengrandprix-japan.com/2022/news/
>>第106回日本選手権6月9日~12日開催!~チケット好評発売中!~
https://www.jaaf.or.jp/jch/106/ticket/
- セイコーゴールデングランプリ陸上2022東京
- 山縣亮太
- 小池祐貴
- デーデーブルーノ
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- 福島千里
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