2021.12.03(金)大会

マラソンの日本代表・日本選手権チャンピオンが決まるJMCシリーズがいよいよ始動!~JMCシリーズ第1期スタート会見~



日本陸連は11月25日、12月5日に開催される福岡国際マラソンからスタートするジャパンマラソンチャンピオンシップシリーズ(JMCシリーズ)第1期のスタート会見を開催しました。会見は、万全の新型コロナウイルス感染予防策をとったうえで、久しぶりに対面で実施されましたが、同時に、オンラインでもライブで配信されました。

JMCシリーズについては、すでに6月21日の日本陸連理事会において、国内の公認マラソンを体系化して選手強化や日本のマラソン全体の活性化につなげる新たな仕組みとして設置・施行することが承認されています( https://www.jaaf.or.jp/jmc-series/news/article/15001/ )。日本陸連は、この段階で2024年パリオリンピック男女マラソン日本代表選考に、東京大会の選考で導入したマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)形式を導入する方針であることも明らかにしており、その後、JMCシリーズも含めた国内マラソン・ロードレース全体の活性化に必要な企画・提案を進めていくべく、新たに“日本陸連ロードランニングコミッション(JRRC)”を立ち上げたことも発表していました。

今回の会見では、パリオリンピックの代表選考がいよいよ始動するというタイミングで、JRRC、JMCシリーズ、そしてMGCについて、それぞれの関係性を含めた全容が示される形となりました。会見には、風間明専務理事、ロードランニングコミッションの瀬古利彦リーダーおよび河野匡ディレクター、強化委員会の高岡寿成中長距離・マラソンシニアディレクターの4名が登壇。JRRCやJMCシリーズに関して説明を行ったのちに、2023年に行うMGCへの進出条件を発表しました。




冒頭で挨拶に立った風間専務理事は、東京オリンピックの代表選考として実施したMGCシリーズについて、「大会への参加によって選手強化ができた」「代表権を勝ちとるための明確な選考ができた」「マラソンのコンテンツとしても盛り上げることができた」と振り返りました。さらに、JMCシリーズの立ち上げ、JRRCの設立、パリオリンピック代表選考として行うMGCの実施は、そのMGCのレガシーの継承と新たな取り組みとして進めていくもので、「マラソン界全体の価値を創造し、マラソン界全体を活性化すること」を目指すのみにとどまらず、日本陸連が2017年から推進している“JAAFビジョン2017”( https://www.jaaf.or.jp/gallery/article/12001/ )実現に向けての施策であることも示しました。


JRRC新設:日本のマラソン・ロードレース活性化を担って


JMCシリーズをはじめとして、日本のマラソン・ロードレースの舵を取り、活性化を図るために設立されたのがJRRCです。JRRCでは、JMCシリーズのシリーズ要項や加盟要件を設定していく役目を担うほか、マラソン・ロードレース全体の活性化に必要な企画や提案を行い、選手強化だけでなく、ランニング人口増加など、マラソン・ロード種目全体のさらなる発展を目指した幅広い取り組みを進めていくことになっています。
今回の会見では、すでに就任が発表されていた瀬古リーダー、河野ディレクターのほか、プロジェクトメンバーとして、山下佐知子氏(第一生命グループ女子陸上競技部監督)、川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損害保険)、早野忠昭氏(RunLinkチーフオフィサー、WAロードランニングコミッション委員)ら6名が就任したことが発表されました。

瀬古リーダーは、「東京オリンピックの選考会として開催したMGC(2019年)には、沿道に52万を超える観客が集まったことからもわかるように、マラソンは多くの人を惹きつける魅力がある。パリオリンピック・パラリンピックに向けて、JMCシリーズがスポーツ界全体を引っ張っていく存在になっていくことを願っている」と今後の取り組みに向けて、意欲を示しました。

また、国内外のレースに豊富な出場経験を持ち、市民ランナーとエリートランナー双方の視点から今後のマラソン・ロードレースに求められる知見の提供が可能であることが期待されて、現役アスリートとして唯一のプロジェクトメンバー入りとなった川内選手も動画メッセージの形で参加。「選手としてだけでなく、プロジェクトメンバーとしても、このJMCシリーズを通じて、日本のマラソンの強化・発展のために頑張ってきたい」とコメントしました。

■JAAF Road Running Commission(JRRC)の発足についてはこちら


JMCシリーズ:「日本一」や日本代表を決めると同時に、「強いランナー」を育てる




JMCシリーズの大枠に関しては、6月21日の理事会において承認された段階で、公式サイトでも紹介されています( https://www.jaaf.or.jp/jmc-series/news/article/15001/ )が、今回の会見では、12月から第1期のレースがスタートするJMCシリーズⅠを具体例に、河野ディレクターが、改めてその仕組みを解説しました。
河野ディレクターは、「枠組みだけみると複雑に思われるかもしれないが、イメージとしては、①MGCに参加するためのMGCシリーズがJMCシリーズに変わる、②JMCシリーズのなかで日本チャンピオン(日本選手権者)を決めていく、という2つの流れがあると理解すればわかりやすいのではないかと思う」と述べたのちに、JMCシリーズのしつらえや今後の展望について、具体的に以下の内容を説明しました。


・1つの年度を「期」、2期分を「シリーズ」として、2年間のシリーズ総合成績を競う(ただし、「シリーズⅠ」「シリーズⅡ」の対象となる「第0期」(シリーズⅠ)と「第1期」(シリーズⅠ・Ⅱ)は、変則的に第0期を2020年度12月~2021年度10月、第1期を2021年度11月~3月とする)。
※JMCシリーズの対象期間はこちら

・JMCシリーズⅠについては、第0期と第1期の2期間に各競技者が出場した対象大会のうち、一定の条件下でパフォーマンスポイント(記録ポイント:WAスコアリングテーブルを基に算出したポイント)+JMCポイント(大会のグレードに応じた日本人選手のみに付与する順位のポイント)の高い2大会の合計で競う(ただし、第0期についてはパフォーマンスポイントが高い1大会のみをカウント可とする)。JMCシリーズⅡ以降は、直前期から当該期の2期間に各競技者が出場した対象大会のうち、一定の条件下でパフォーマンスポイントが高い3大会の合計で競う。

・JMCシリーズに加盟する大会は、最終的に、大会の水準などによって、最上位のグレードS(GS)、グレード1(G1)、グレード2(G2)、グレード3(G3)に分けるが、第1期は、日本陸連の主催・後援大会やトップレベルの競技者が多く出場するマラソンを想定したG1とG2の2グレードでスタートする(男子は、G1が4大会、G2が1大会の計5大会、女子はG1が3大会、G2が1大会の計4大会)が、第2期からは全国各地の公認マラソンを広く対象に想定したG3を導入、さらに第3期からは最上位のGSを導入する予定。これらの加盟大会は、必要な条件、付与する権利を明示して公募していく。

・シリーズ総合成績を、日本選手権の順位決定や日本代表の選考などに直結させる。JMCシリーズⅠでは、チャンピオンが第105回(2021年度)日本選手権優勝者となり、同時にオレゴン世界選手権マラソン日本代表選手に内定する。なお、第1期G1の大会は、2022オレゴン世界選手権のほか、杭州2022アジア大会マラソン代表選手選考競技会も兼ねて実施する。

・シリーズチャンピオンを日本選手権者とすることは、マラソンの日本チャンピオンを明確にしようというところが起点となっている(注:男女マラソンの日本選手権は、日本陸連主催大会として行われていた各マラソン大会が、1年ごとに持ち回りする形で日本選手権を兼ねて開催しましたが、他種目のように日本選手権獲得者と日本代表選考争いとが直結していなかったこともあり、「マラソン日本選手権者」に対する競技者・スタッフの認知度や関心は低い傾向にありました。ただし、第103回日本選手権男女マラソンについては、例外的に2019年9月に行ったMGCが日本選手権を兼ねる形で行われています)。現段階で、JMCシリーズは、2023年4月1日から2025年3月31日を期間とするシリーズⅣまで展開すること、また、この間にパリオリンピックの代表選考レースとして、MGCを2023年秋に開催することまでが確定しているが、前述のシリーズⅠと同様に、シリーズⅡ、シリーズⅣのチャンピオンを当該年度の日本選手権者とし、シリーズⅢ、つまりMGCが行われる年度についてはMGC優勝者を該当年度の日本選手権者とするスキームで展開していく。これにより安定して高いレベルのパフォーマンスを残した競技者が、日本選手権者や日本代表となる仕組みを構築していく。

・今後、加盟大会を公募することで、国内すべての公認マラソンが、大会規模や運営状況に応じたグレードを選択して加盟でき、日本選手権や日本代表選考に参画可能とすることを進めていく。これによって、多くの競技者や市民ランナーが、JMCシリーズに加わっていけるようになることを目指す。





さらに、会見では、JMCシリーズの活性化と認知・関心を高めていくことを目指して、日本陸連公式ホームページに設けた特設サイトを充実させて、各競技者のJMCポイントの推移やランキングが把握できるようにするなど、情報提供にも力を入れていく方針であることが示されたほか、JMCシリーズのロゴが披露され、日本を表現する赤、強さを示す黒、頂点を想起させる金の3色を用いて日本列島を模した「J」を示していることが紹介されました。また、シリーズには賞金がつくことも発表。男女のシリーズチャンピオンにそれぞれ600万円が、2位には各300万円が、3位には各100万円が贈られることが明らかになりました。


MGC進出条件:パリオリンピック出場を目指して




JMCシリーズの説明に続いては、パリオリンピックの男女マラソン日本代表選考競技会として、東京大会に向けて新設・採用したMGCを取り入れることが改めて報告され、これに関連する説明が日本陸連強化委員会で中長距離・マラソンを束ねる高岡シニアディレクターから行われました。
MGCは、パリオリンピック1年前となる2023年の秋に開催することが決まりました。しかし、具体的な会期および会場は、これから決まっていくことになっています。また、パリオリンピックの出場資格等がまだ世界陸上競技連盟(WA)から発表されていないため、MGCにおいて代表内定に至る条件や人数については、パリオリンピックのエントリースタンダードが発表された段階で、それを踏まえて確定していくことになっています。
高岡シニアディレクターは、パリオリンピックに向けたMGCについて、以下の形で進めていくことを説明しました。


・MGCの開催期日は未定だが、MGCを経てオリンピック日本代表を決定する流れは、前回(東京オリンピック)を踏襲する。

・JMCシリーズ第1期加盟大会は、MGCに出場するための「MGCチャレンジ」指定大会となっていて、12月5日の福岡国際マラソンから、2024年パリオリンピック日本代表を懸けた戦いが始まる。

・順位と記録でMGC出場資格を獲得できるMGCチャレンジとして指定される大会は、JMCシリーズに加盟したG1、G2の大会となる。JMCシリーズⅠのG1は、男子は4大会(福岡国際、別府大分、大阪・びわ湖統合大会、東京)、女子は3大会(大阪国際女子、名古屋ウィメンズ、東京)で、G2は男女ともに1大会(男子:防府、女子:大阪・びわ湖統合)。今後のJMCへの加盟は、JRRCでの審査を経て追加されることとなる。

・前回から変更点は3つ。①新たな枠組みであるJMCシリーズとの連動、②男子設定タイムの1分引き上げ(ただし、1本の記録による進出条件の設定タイムのみ30秒の引き上げ)、③ワイルドカードの設定(対象となる国際大会、記録で出場権獲得できる対象大会、JMCランキング上位者)。

これらを含む進出条件の詳細は、特設サイト内の一覧( http://www.mgc42195.jp/news/article/15646/ )をご参照ください。

前回から変更された点について、男子の設定タイムが1分引き上げられ、女子は据え置きとなったことについて、高岡シニアディレクターは、「男女ともにこの4年間の記録の伸びを加味した。男子では日本記録が更新されるとともに2時間6~7分台の記録が多数出たことで、さらに上を目指すために引き上げた。女子については、設定タイムを上げたい気持ちもあったが、前回のMGC出場者が15名にとどまっている点から、もっと多くの競技者に進出してもらいたいという意図で、そのままとした」と説明。また、ワイルドカードとしてMGC出場権を獲得できる、国際大会成績については、男女ともにオレゴン世界選手権8位以内もしくは杭州アジア大会3位以内を進出条件に設定し、記録による進出条件(1本あるいは上位記録2本の平均)の対象大会を、従来のWA公認大会から、JMC加盟大会(G1~3)および対象国際大会内(WAラベルレース)としたこと、さらに新たなワイルドカードとして、JMCランキングの上位者も対象とすることを導入し、男女ともにシリーズⅠ・Ⅱのランキング上位者各8名に出場資格の付与を行う(ただし、重複による繰り上げは行わない)とし、各年度の日本選手権入賞者(8位)はMGC出場資格が得られるようにしたと述べました。

最後に行われたメディアとの質疑応答において、パリオリンピックに向けた意気込みを問われると、高岡シニアディレクターは「東京大会では、大迫くん(傑、Nike)と一山さん(麻緒、ワコール)が6位と8位ということで、男女それぞれ1名が入賞できた。それ以外の選手が力を出せなかったことは今後の課題と考えている」と東京オリンピックの結果を踏まえたうえで、「彼・彼女が入賞まで持っていってくれた日本のレベルをさらに引き上げるのが私たちの目標。オリンピックでメダルを取りたいという思いを常々持って挑戦していきたい」と意欲を見せていました。


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト


■JMCシリーズ特設サイト
https://www.jaaf.or.jp/jmc-series/

■JMCシリーズ第1期スタート会見ライブ配信
https://youtu.be/3VcK9tlbvR4 

■MGCチャレンジ指定大会・MGC進出条件について
https://www.jaaf.or.jp/jmc-series/news/article/15646/

■第1期初戦「第75回福岡国際マラソン」12月5日(日)12時10分スタート!
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1585/ 
▼オンエア情報
12月5日(日)12:00~
テレビ:朝日系列など全国29局ネット
ラジオ:九州朝日放送発全国6局ネット

■【難しすぎる陸上クイズ】-マラソン編- 目指せ!クイズ界のマラソンチャンピオン!
https://www.jaaf.or.jp/jmc-series/news/article/15652/

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