2021.08.04(水)選手

【記録と数字で楽しむ東京オリンピック】男子4×100mリレー

7月30日(金)から8月8日(日)の10日間、国立競技場と札幌(マラソンと競歩)を舞台に「第32回オリンピック」の陸上競技が開催される(ている)。

日本からは、65人(男子43・女22)の代表選手が出場し世界のライバル達と競い合う。

無観客開催となったためテレビやネットでのライブ中継で観戦するしかなくなったが、その「お供」に日本人選手が出場する26種目に関して、「記録と数字で楽しむ東京オリンピック」をお届けする。

なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ・・・」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある拙稿と同じ内容のデータも含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、五輪の間に隔年で行われる世界選手権もそのレベルは五輪とまったく変わらないので、記事の中では「世界大会」ということで同等に扱い、そのデータも紹介した。

記録は原則として7月28日判明分。
現役選手の敬称は略させていただいた。

日本人選手の記録や数字に関する内容が中心で、優勝やメダルを争いそうな外国人選手についての展望的な内容には一部を除いてあまりふれていない。日本人の出場しない各種目や展望記事などは、陸上専門二誌の8月号別冊付録の「東京五輪観戦ガイド」やネットにアップされるであろう各種メディアの「展望記事」などをご覧頂きたい。

大会が始まったら、日本陸連のTwitterで、記録や各種のデータを可能な範囲で随時発信する予定なので、そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。




・予選 8月5日 11:30 2組3着+2

・決勝 8月6日 22:50


多田修平(住友電工)
山縣亮太(セイコー)
小池祐貴(住友電工)
桐生祥秀(日本生命)
デーデーブルーノ(東海大学)


悲願の「金メダル」なるか?!

2014年5月に日本男子ナショナルリレーチームの愛称となった「韋駄天スプリンターズ」が悲願の「金メダル」に挑む。

リレーにエントリーしている5人、200m代表3人の2021年ベストと自己ベストは、自己ベスト順に、以下の通り。
山縣 亮太(セイコー/9秒95)
桐生 祥秀(日本生命/10秒12。9秒98=17年)
小池 祐貴(住友電工/10秒13。9秒98=19年)
多田 修平(住友電工/10秒01)
デーデー・ブルーノ(東海大4年/10秒19)
(200m代表)
サニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC/10秒29。9秒97=2019年)
飯塚 翔太(ミズノ/10秒42。10秒08=17年)
山下  潤(ANA/10秒37。10秒28=19年)

2016年のリオ五輪でアメリカに先着して「銀メダル」を獲得。17年のロンドン世界選手権と19年ドーハ世界選手権でも「銅メダル」をゲット。陸上関係者のみならず国民的なレベルで「金メダルなるか?」
が注目されている。


◆1983年以降の世界大会全成績◆
<戦前の五輪入賞>
1932年 五輪 5位○41.3  ・日本記録(41.6)を上回ったが「日本記録変遷史」には未収録

<1983年以降の世界大会での成績>
世界選手権が始まった1983年以降の「世界選手権」と「五輪」での日本の成績をまとめると以下の通りだ。
「◎」はメダル獲得、「〇」は入賞。

1983年    不出場
1984年 五輪 不出場
1987年    準落 39.71
1988年 五輪 準落 38.90 =アジア新
1991年    予落 39.19
1992年 五輪 6位〇38.77 =アジア新
1993年    準落 39.01
1995年    5位〇39.33(予選で38.67のアジア新)
1996年 五輪 予落 失格
1997年    準落 38.31 =アジア新
1999年    不出場
2000年 五輪 6位〇38.66(準決で38.31のアジアタイ)
2001年    4位〇38.96/注
2003年    6位〇39.05/注
2004年 五輪 4位〇38.49
2005年    8位〇38.77
2007年    5位〇38.03 =アジア新
2008年 五輪 2位◎38.15/注
2009年    4位〇38.30
2011年    予落 38.66
2012年 五輪 4位〇38.35
2013年    6位〇38.39
2015年    予落 38.60
2016年 五輪 2位◎37.60 =アジア新
2017年    3位◎38.04
2019年    3位◎37.36 =アジア新
・「注」=上位国のドーピング違反で順位が1つ繰り上がった。

世界選手権が始まった1983年以降で「不出場」だった3回(83・84・99年)を除き、87年の世界選手権からと88年以降の五輪には計23回出場し、メダルが4回、8位以内入賞は15回を数え「メダル獲得率17.4%」「入賞率65.2%」だ。2000年以降に限れば15回中の「メダル獲得率26.7%」。13回が入賞で「入賞率86.7%」にもなる。2000年から09年には、五輪と世界選手権で8大会連続入賞も果たしている。16年からの至近3大会は、「メダル獲得率100%」だ。

「五輪」に限ると88年以降に8回出場し、メダルが2回で「メダル獲得率25.0%」。6回入賞で「入賞率75.0%」。

「世界選手権」は、出場した15大会中メダルは2回で「メダル獲得率13.3%」。9回入賞で入賞率は「60.0%」だが、21世紀以降では10回中8回入賞で入賞率は「80.0%」である。


◆五輪&世界選手権での国別入賞回数トップ10◆
五輪での国別8位以内の回数は、以下の通り。なお、1980年までは6位までが入賞で、84年から8位まで入賞となったが、ここでは80年以前の7・8位もカウントした。

<五輪での国別8位以内回数トップ10>
1)17 アメリカ
2)16 イギリス
3)14 ドイツ
4)13 フランス
5)12 イタリア
6)9 ソ連、カナダ
8)8 ポーランド
9)7 ジャマイカ、日本、ブラジル

<世界選手権での国別入賞回数トップ10>
・世界選手権は83年から8位まで入賞
1)10 ジャマイカ、アメリカ
3)9 イギリス、日本
5)8 ドイツ、カナダ
7)7 フランス、ブラジル
9)6 イタリア
10)5 トリニダードトバゴ、ポーランド

なお、アメリカは、どの大会でもメンバー個々の走力からして、「普通に走れれば、メダル獲得率100%」であろうが、バトンパスに難があったり、後にメンバーのドーピング違反が発覚して失格となったりで、24回の五輪のうち8位以内は17回(70.8%)、世界選手権は17回のうち7回が「失格(3回)」や「途中棄権(4回)」に終わっている。


◆400mリレー出場国の2021年100mベストの上位4人の合計記録◆
「表1」は、400mRに出場する16カ国について、リレーにエントリーしている各国5人の今回の五輪の100m決勝終了時点(8月1日)での2021年のシーズンベストを調べ、「上位4人の合計タイム」の順に並べたものだ。参考までに、2021年の各国のそれ以下の層の厚さをうかがうため「10位」の記録も付記した。なお、リレーの4番目の選手のタイムよりも「10位」の記録の方が良かったり、4番目と「10位」の差が0秒01しかない国もある。これは、リレーの5人がそれぞれの国の今季リストの順番で選ばれたわけではないことによる。

本番では、リレーにエントリーしている5人以外の他種目(200m、400m、110mH、走幅跳など)の選手もリレーに起用できる。よって、特に選手層の厚い国では5人以外から強力な選手が加わってくる可能性もある。実際にはあり得ないが、マラソンや競歩にエントリーしている選手をリレーに起用してもルール上は問題はない。


【表1/2021年100mベストによるリレーエントリー上位4人の合計および国内10位記録】
国名 順)合計記録  1位 2位  3位  4位  / 10位記録
USA  1) 39.35  9.77  9.83  9.84  9.91 / 1) 9.96
JAM  2) 40.03  9.95 10.00 10.04 10.04 / 2) 10.15
RSA  3) 40.07  9.84  9.94 10.04 10.25 / 3) 10.26
JPN  4) 40.21  9.95 10.01 10.12 10.13 / 5) 10.28
ITA  5) 40.29  9.80 10.10 10.13 10.26 / 9) 10.35
CHN  6) 40.31  9.83 10.11 10.15 10.22 / 6) 10.30
CAN  7) 40.37  9.89 10.15 10.16 10.17 / 7) 10.32
GBR  8) 40.43  9.98 10.03 10.12 10.30 / 4) 10.25
BRA  9) 40.60  10.07 10.15 10.28 10.28 / 12) 10.41
FRA 10) 40.62  10.07 10.12 10.16 10.27 / 10) 10.40
DEN 11) 40.84  10.14 10.22 10.24 10.24 / 14) 10.60
GHA 12) 40.86  9.97 10.26 10.30 10.33 /   *****
TTO 13) 40.98  10.16 10.25 10.27 10.30 / 10) 10.40
GER 14) 40.99  10.19 10.20 10.28 10.32 / 7) 10.32
TUR 15) 41.21  10.25 10.31 10.31 10.34 / 14) 10.60
NED 16) 41.36  10.32 10.33 10.34 10.37 / 13) 10.56

上記の通り、「2021年上位4人の合計記録」では、4番目の選手が9秒91のアメリカが断トツ。合計タイム通りならば、ジャマイカと南アフリカに7~8mの差を、日本には10m弱の差をつける計算になる。

日本の「40秒21」は16カ国中の「4位」で、100mの合計タイムの比較では「金メダル」どころか「銅メダルにも届かない」というデータだ。が、そこは日本の「お家芸」ともいえるバトンのパスワークでカバーすることになる。

「表2」は、日本が銀メダルを獲得した2016年・リオ五輪と、アジア新の37秒43で銅メダルを獲得した19年ドーハ世界選手権の決勝を走った8チームの各走者のリレー直前までの100mのシーズンベストの合計と実際のリレーのタイムを比較したものだ。なお、「失格」となったチームのリレーのタイムも参考までに記載した。

【表2/2016年リオ五輪と19年ドーハ世界選手権の記録とリレー直前シーズンベストの合計タイムの比較】
<2016年リオ五輪>
順)記録  国名  100m合計(差) 1走  2走  3走  4走
1)37.27 JAM 2)39.60(2.33) 9.92  9.93  9.94  9.81
2)37.60 JPN 6)40.52(2.92)10.05 10.36 10.01 10.10
3)37.64 CAN 5)40.37(2.73)10.16  9.96 10.34  9.91
4)37.90 CHN 7)40.70(2.80)10.30 10.08 10.08 10.24
5)37.98 GBR 4)40.32(2.34)10.01 10.08 10.04 10.19
6)38.41 BRA 8)40.86(2.45)10.21 10.11 10.28 10.26
DQ (37.62) USA 1)39.58(1.96) 9.97  9.80  9.97  9.84
DQ (38.09) TTO 3)40.22(2.13)10.07  9.99 10.19  9.97


<2019年ドーハ世界選手権>
順)記録  国名  100m合計(差) 1走  2走  3走  4走
1)37.10 USA 1)39.46(2.36) 9.76  9.87  9.97  9.86
2)37.36 GBR 3)40.33(2.97)10.04  9.95 10.23 10.11
3)37.43 JPN 2)40.29(2.86)10.12 10.19 10.01  9.97
4)37.72 BRA 5)40.37(2.65)10.10 10.07 10.18 10.02
5)37.73 RSA 4)40.36(2.63)10.08 10.05 10.31  9.92
6)38.07 CHN 8)40.91(2.84)10.05 10.12 10.12 10.62
DNF(**.**)FRA 7)40.90(*.**)10.21 10.02 10.40 10.27
DQ(**.**)NED 6)40.71(*.**)10.16 10.12 10.24 10.19

上記の通り、100mのシーズンベストの合計で16年のリオでは日本は6番目。しかし、見事なパスワークで100mの走力の劣勢をカバーして「銀メダル」を手にしたのだった。また、19年ドーハでは2番目の合計タイムで「銅メダル」だからひとつ下がったことになるが、ほぼ実力通りの力を出したといえよう。

ここで注目したいのは、100mの合計タイムと実際のリレーのタイムの差だ。日本は、リオでは「2秒92」で8チームのトップ。ドーハの「2秒86」もイギリスの2秒97に次いで2番目だ。これこそ、見事なパスワークで勝負する日本の面目躍如である。9秒台4人を揃えて優勝したジャマイカとアメリカの短縮タイムは2秒3台。個々の能力の差をバトンパスで0秒5~6カバーしてのメダル獲得なのだ。

上記2大会のデータからすると、中国もまたしかりのようだ。ドーハのイギリスもパスワークがはまったといえよう。

2007年大阪世界選手権で38秒03のアジア新記録をマークして5位だった時のリレー直前までの4人の100mシーズンベストの合計は「41秒15」でその差「3秒12」。2008年北京五輪で銀メダル(38秒15)の時は、「合計41秒17」でその差「3秒02」。このように、日本は10年以上前から素晴らしいパスワークで3秒0前後タイムを短縮し、メダルや入賞につなげてきているのだ。

これらと同じく3秒0か3秒1くらいを稼ぐことができれば、今回も「37秒1~2台」で走れても不思議ではない計算になる。

21世紀になってからの五輪と世界選手権の1~4番目でフィニッシュしたチームのタイム(カッコ内は失格になったチームのタイム)は下記の通り。

 年   1位  2位  3位  4位
2001   (37.96) 38.47 38.58 38.96
2003   38.06 (38.08) 38.26 38.87
2004五輪 38.07 38.08 38.23 38.49
2005   38.08 38.10 38.27 38.28
2007   37.78 37.89 37.90 37.99
2008五輪 37.10 38.06 38.15 38.24
2009   37.31 37.62 38.02 38.30
2011   37.04 38.20 38.49 38.50
2012五輪 36.84 37.04(38.07)38.12
2013   37.36 37.66(37.80)37.92
2015   37.36(37.77)38.01 38.13
2016五輪 37.27 37.60(37.62)37.64
2017   37.47 37.52 38.43 38.34
2019   37.10 37.36 37.43 37.72
-------------------
最高記録 36.84 37.04 37.43 37.64
五輪最高 36.84 37.04 (37.62) 37.64
世選最高 37.10 37.36 37.43 37.72

このデータからすると、アメリカに「36秒台」や「37秒0台」で走られると厳しいが、日本チームがパスワークで07年・大阪世界選手権や08年・北京五輪並みの「3秒0~1」を稼げれば「37秒1~2台」の可能性があり、上記のデータからしても「金メダル」も十分に「射程圏内」といえる。

日本チームが予選を普通に走れればまったく問題ないが、参考までに「21世紀以降の決勝進出の最低ライン(通過最低記録)」と「決勝に進めなかった最高タイム(落選最高記録)」を示したのが下記だ。

 年  通過最低   落選最高
2001   38.97    38.71
2003   38.63    38.66
2004五輪 38.64    38.64
2005   38.65    38.67
2007   38.70    38.73
2008五輪 39.13    39.40
2009   38.72    38.93
2011   38.47    38.66
2012五輪 38.29    38.31
2013   38.41    38.46
2015   38.57    38.41
2016五輪 38.19    38.26
2017   38.48    38.61
2019   38.03    37.91
--------------
最高記録 38.03    37.91
五輪最高 38.19(2016) 38.26(2016)
世選最高 38.03(2019) 37.91(2019)

ということで、最もハイレベルだった19年ドーハ世界選手権では、カナダが37秒91で走ったが落選ということもあった。

そして決勝での五輪と世界選手権での「着順別最高記録」は、以下の通りだ。
順)五輪          世界選手権
1)36.84 2012=JAM  37.04 2011=JAM
2)37.60 2016=JPN  37.36 2019=GBR
3)37.64 2016=CAN  37.43 2019=JPN
4)37.90 2016=CHN  37.72 2019=BRA
5)37.98 2016=GBR  37.73 2019=RSA
6)38.41 2016=BRA  38.07 2019=CHN
7)38.60 2004=TRI  38.48 2005=GER
8)38.67 2004=BRA  38.77 2005=JPN

個人の100mと200mでは本来の力を発揮できなかった選手が多かったが、最大目標としてきたリレーで「韋駄天スプリンターズ」にしっかりと決めてもらいたい。



野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト

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