2021.06.22(火)選手

【記録と数字で楽しむ第105回日本選手権】男子200m、男子1500m

6月24日~27日に大阪(ヤンマースタジアム長居)で行われる「第105回日本選手権」の「見どころ」や「楽しみ方」を「記録と数字」という視点から紹介する。「上限5000人」とはいえ有観客での開催となったのは、喜ばしい限りだ。

なお「10000m」の日本選手権は5月3日に、「混成競技」は6月12・13日に終了。「リレー種目」は、10月22~24日に愛媛・松山市で実施される。

「日本一」と「五輪代表」を決める試合なので、全種目についてふれたいところだが、原稿の締め切りまでの時間的な制約があったため、「五輪代表争い」が熾烈であったり、「日本新」が期待されそうな種目を中心とした種目のみの紹介になったことをご容赦いただきたい。

また、過去に紹介したことがあるデータや文章もかなり含まれるが、可能な限り最新のものに更新した。
スタンドでの現地観戦やテレビ観戦の「お供」にして頂ければ幸いである。

「五輪代表選考要項」は、
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/201907/01_171958.pdf
を、

「代表内定選手」は、
https://www.jaaf.or.jp/athletes/tokyo2020/?event=8#searchbox
を、

選考に関わる世界陸連の「WAランキング」は、
https://www.jaaf.or.jp/news/article/14737/
をご覧頂きたい。

・記録は、6月20日判明分。
・記事中の「WAランキング」は6月15日時点のもの(毎週火曜日に発表されるので、日本選手権直前の6月22日時点のものを盛り込みたいところだが、原稿の締め切りの都合で6月15日時点のものとした)。
・記事は、6月20日時点での情報による。直前に「欠場」となった選手については、文中に 【★*月*日に欠場を発表★】 と付記した。
・現役選手については敬称略をご容赦いただきたい。

なお、日本選手権の期間中、以下の記事で取り上げることができなかった種目以外の情報(データ)も日本陸連のSNS(Facebook or Twitter)で「記録や数字に関する情報」として、その都度発信する予定なので、どうぞご覧くださいませ。




【男子200m】

100m9秒9台トリオvs飯塚翔太の対決は?

・予選/6月26日 17:25 2組3着+2
・決勝/6月27日 17:50


★5回目のV目指す飯塚と100m9秒台3人が激突か?★

100mで名前があがった100m9秒台4人のうちサニブラウン・アブデル・ハキーム(TnmbleweedTC)★6月26日に欠場を発表★、小池祐貴(住友電工)、桐生祥秀(日本生命)★6月25日に欠場を発表★の9秒台トリオが200mにもエントリーしている。このうち何人が、実際に200mにも出場するのかはわからないが、100mには出場せずに200m1本に絞ってきた飯塚翔太(ミズノ)との勝負に注目だ。

2012年からの9年間の優勝者は、

2012 20.42(±0)高瀬慧(富士通)
2013 20.31(+0.9)飯塚翔太(中大)
2014 20.62(+0.9)原翔太(上武大)
2015 20.32(+0.8)藤光謙司(ゼンリン)
2016 20.11(+1.8)飯塚翔太(ミズノ)
2017 20.32(+0.3)サニブラウンAハキーム(東京陸協)
2018 20.34(+0.8)飯塚翔太(ミズノ)
2019 20.35(-1.3)サニブラウンAハキーム(フロリダ大)
2020 20.75(-0.2)飯塚 翔太(ミズノ)

の順。

100mで13年以降、毎年チャンピオンが変わっているのと同じような状況にある。
今回は日本選手権史上で初めて各種目の出場人数を制限する「ターゲットナンバー(出場枠)」が導入された。200mのそれは「27人(当初の要項では「24人」だったが、長居が9レーンあるため「27人」に増やされた)」で、上記の優勝者のうち高瀬、原、藤光の3人は「申込資格記録(21秒00)」をクリアしていたが、28位以下で残念ながら出場できないことになった。


★「20秒24以内、3位以内」がターゲットの飯塚翔太★

上記の歴代優勝者を見てもわかる通り、連覇こそないものの、飯塚が13・16・18・20年と4回優勝しており、2021年の記録でも20秒48(+1.4)でトップ。2020年から日本人には負け知らずで、「一歩リード」といったところだ。また、6月15日時点の「WAランキング」も39位。五輪のターゲットナンバーは「56人」で「圏内」にいる。ただし、「五輪参加標準記録」の「20秒24」の有効期間中には届いていない(飯塚の自己ベストは20秒11だが、五輪参加標準記録の有効期間中の最高は、20秒29)。そんな中、五輪参加標準記録をクリア済みのサニブラウン(20秒08)、小池(20秒24。自己ベスト20秒23=2018年)、桐生(自己ベスト20秒39=2019年)の「100m9秒台」の3人もエントリーしてきた。サニブラウンと小池は「3位以内」で「代表内定」だ。

飯塚としては、「20秒24以内で3位以内」が「代表内定」の最短コースとなる。
この種目での最多優勝回数は、2017年に現役を退いた高平慎士さん(富士通)の5回(2004・05・08・09・11年)。
飯塚が連覇を果たせば、高平さんと並んでトップタイの優勝回数となる。


★100m9秒台よりも希少価値が高い200m19秒台★

話は変わるが(2019年のこのページでも書いたが)、世界陸連のデータによると2021年6月20日現在の世界歴代で200mを19秒台で走った選手は81人(365回)。

一方、100mの9秒台は152人(1027回)だから、200m19秒台の方が「希少価値」は遥かに高いといえる。全種目を網羅した世界陸連の採点表でも、100m9秒99は「1210点」、200m19秒99は「1222点」だ。100m9秒95の日本記録に相当する200mのタイムは19秒98である。国別記録(ナショナルレコード)の「100m9秒台」は32カ国(日本記録の9秒95は27位タイ)、「200m19秒台」が25カ国だ(日本記録の20秒03は国別の30位)。日本は「26カ国目」になれるか??

2003年の日本選手権で末續慎吾(ミズノ。現在、EAGLE RUN)が20秒03(+0.6)の日本新をマークしてから18年。100m10秒03の末續が出した記録をそろそろ更新してもらいたいところである。話は少々それるが、40歳になった末續が、現在も100m10秒78(+0.6)の走力を維持しているのは素晴らしい。


★200m19秒台のための100mのタイムの条件は、10秒08!!★

これまた2年前に書いたもので最新のデータでないことをお断りしておくが、以下は、200m19秒台の選手の100mの最高記録を調査し比較したものである。それぞれの種目の平均値と標準偏差、100mに対する200mの記録の倍率を算出すると以下のようになる。

 100m200m倍率
平均10.00319.8261.982391
標準偏差0.1720.1650.030725


200m19秒台の選手の中には、「200mが本職」であったり「100mが本職」であったり、中には「400mが本職」という人が混在する。標準偏差が200mよりも距離の短い100mの方が大きいのはそのためであろう。

上記のデータからすると、200m19秒台の選手は平均的には100mのベスト記録の「1.982391倍」で200mを走っている。逆算すると、100mを「10秒08」で走れる選手ならば、200mを「19秒台(19秒99)」で走れるということになる。

この倍率を、今回の200mにもエントリーしている100m9秒97のサニブラウン、9秒98の桐生・小池に当てはめると200mは、「19秒764」と「19秒784」。ルールに従って1000分の1秒単位を切り上げると「19秒77」と「19秒79」だ。標準偏差を考慮すると「19秒458~20秒071」と「19秒478~20秒091」である。
100mのベストが10秒08(2017年)の飯塚ならば「19秒99(標準偏差を考慮すると、19秒952~20秒014)」で走れる計算になる。

男子200mは、2016年の第100回大会から6年連続で日本選手権最終日の「トリ」を飾る種目として実施される。ここで「19秒台」となれば、最高の締めくくりとなる。


★日本選手権・決勝での「着順別最高記録」★

1)20.03 2003年
2)20.31 2016年
3)20.33 2016年
4)20.48 2013年=3着が2人いて実質的には4位(4番目)にあたる
5)20.52 2013年
6)20.62 2013年
7)20.76 2003年
8)20.95 2003年



【男子1500m】

「日本新」に期待!!

・予選/6月24日 14:35 2組5着+2
・決勝/6月25日 19:10


★「五輪出場」ならば、「57年ぶり」だが……★

五輪参加標準記録は「3分35秒00」で荒井七海(Honda)が5月29日にアメリカ・ポートランドでマークした17年ぶりの日本記録3分37秒05よりも2秒以上速い。6月15日現在の「WAランキング」の荒井の順位は58位(5大会の平均で1154ポイント)で、1国3人までの「ターゲットナンバー(出場枠)」の「45人」には「31ポイント」届いていない。荒井を指導する小川智監督は「参加標準記録はちょっと難しいと思うので、世界ランキングでの出場を狙っています」とのこと。だが、その道は非常に厳しい。

荒井が「WAランキング」で五輪出場を果たすため(45番目の選手を抜く)には、自身5番目のポイント(1139点)に最低でもあと158ポイントを上乗せしなければならない。日本選手権は大会のランク「Bカテゴリー」なので、優勝の順位ポイントが100。ということは、記録ポイントで「1197」を稼がなければならない。「1197点」は「3分33秒42」だ。つまり「3分35秒00」の「参加標準記録」を破るしかない。

と書くと、戦意をそいでしまうことになってしまうが、それが現実だ。

荒井が破った日本記録(3分37秒42/2004年)を持っていた小林史和さん(NTN。現、愛媛銀行監督)のその年の世界リストの順位は、68位。小林さんが破った日本記録(3分38秒24)は、石井隆士さん(日体大教)が1977年にマークしたもので、その年の世界リスト21位。荒井の3分37秒05は、6月20日現在の2021年世界93位である。44年間で日本記録は、1秒19進歩したが世界リストの順位は大きく下がった。

男子1500mで日本人選手が五輪にエントリーしたのは歴代で5人(うち1人は欠場)。最後に出場したのは、57年前の1964年・東京五輪の山口東一さん(東急)だった。


★日本記録のペースは?★

上述の通り「57年ぶりの五輪出場」には、「3分35秒00」の「参加標準記録」を破るしかなさそうだが、再度の「日本記録更新」を目指して積極的なレースをしてもらいたい。

石井さん、小林さん、そして荒井が日本記録を出した時の400m毎の通過タイムは以下の通り。

距離石井隆士(77)小林史和(04)荒井七海(21)
400m57.2(57.2)57.1(57.1)57.3(57.3)
800m1.56.2(59.0)1.55.5(58.4)1.56.1(58.8)
1200m2.56.2(60.0)2.53.7(58.2)2.54.4(58.3)
1500m3.38.24(42.0)3.37.42(43.7)3.37.05(42.7)

なお、荒井のラスト400mは、56秒9だった。
上記の400m毎の通過タイムと比較しながらレースを見るとより一層楽しめよう。


★日本選手権・決勝での「着順別最高記録」★

1)3.38.88 1991年
2)3.40.59 2005年/3.40.19 1989年=1位が外国人だったレース
3)3.41.19 1991年
4)3.41.42 1991年
5)3.41.84 1991年
6)3.41.85 1991年
7)3.42.20 1991年
8)3.43.21 1991年

上記の「着順別最高記録」には、30年も前の1991年のタイムが数多く残ったままだ。しかし、今シーズンは、荒井の3分37秒05の「日本新」を筆頭に3分40秒切りが3人に、上述の「日本選手権着順別最高記録8位以内」の記録を持つ選手が13人。参加資格記録での3分40秒以内も5人いる。
「3分40秒切りが続出」というレースを見せてもらいところである。


★高校生の佐藤圭太の「U20日本新」と「高校新」なるか?★

近畿インターハイ(6月17~20日)からの連戦となるが、4月10日に「U18日本新」で「日本人高校歴代2位」の3分40秒36で走った佐藤圭太(京都・洛南高3年)にも注目だ。6月18日の近畿大会1500mでは、最初から飛び出し日本記録並みの400m56秒、800m1分57秒のハイペースを刻んだ。1200m2分58秒、そして3分43秒54で2位に8秒近い差をつけて圧勝。20日の5000m(13分57秒64で優勝)から4日後が日本選手権1500m予選となるが、決勝に進んで「お兄さん選手」に引っ張られれば「不滅」と思われた「U20日本記録」で「高校記録(3分38秒49/佐藤清治/長野・佐久長聖高/1999.05.22)」の22年ぶりの更新もあるかもしれない。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト


▼【日本選手権】応援メッセージキャンペーン!あなたの言葉で東京の舞台を目指す選手の背中を押そう!
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▼東京2020オリンピック競技大会 代表選手選考要項
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