混成競技の印象
混成競技選手は、"どんなきっかけで混成競技を始めたのか?"そんなことが気になったことはないだろうか。陸上競技未経験者や混成競技に挑戦したことのない陸上競技者から、混成競技選手に対して「走・跳・投全部やらなくてはいけないから大変ですね」「10種目(もしくは、7種目)もこなすなんてすごいですね」などと聞く事がしばしばあり、混成競技に対する一般的なイメージは"敷居の高い競技"としての印象が強いことが窺える。
当然、混成競技のトップ選手は体力要素が高く、技術が研ぎ澄まされているため、それらのイメージは間違ってはいない。しかし、そのトップ選手が初めから競技レベルが高いことは“稀"であり、そもそも彼らが混成競技に取り組むきっかけは、適性がすでに備わっているからという訳ではない。何らかのきっかけにより、混成競技に挑戦し、その魅力や自身の可能性を感じた結果、日々のトレーニングの成果として現在の地位までたどり着いたのである。
混成競技に挑戦するきっかけ
混成競技に取り組む、挑戦するきっかけは選手それぞれである。例えば、「沢山の種目ができて楽しいから」「マンガを読んでこの種目に挑戦したくなった」「得意種目を伸ばしたかったから」「ケガやスランプを抜け出すきっかけとして体力要素を強化したかったから」「全国大会への道が近いと思ったから」「一度は挑戦してみたかったから」「指導者に勧められたから」など様々だ。混成競技には人々がイメージする敷居の高さなど存在せず、それは、陸上競技の花形種目でもあり、人々に馴染みのある100mなどと同じで気軽に挑戦できる種目なのである。
余談ではあるが混成競技の歴代記録やランキング表などを探すと混成競技以外を専門とする選手の名前や記録を見つけることができる。是非とも一度、探してみる事をお勧めする。
混成競技の魅力
混成競技から他の種目へ転向したり、混成競技と両立したりする選手も数多く存在する。その台頭として、女子200mで世界選手権2連覇(2015年北京、2017年ロンドン)を達成したダフネ・スキッパーズ(オランダ)は、七種競技でもオリンピック、世界選手権に出場している。十種競技の前世界記録保持者であるアシュトン・イートン(アメリカ)はダイヤモンドリーグに110mHや400mHなどで出場しており、混成競技と得意種目が相乗的に競技力向上に結び付いた選手の一人である。また、国内に目を向けてみると、インターハイ(八種競技)、日本ジュニア(現U20日本選手権)、全日本インカレの混成競技で優勝経験をもつ松下祐樹(ミズノ)は400mHに転向し、オリンピック(リオ)や世界選手権(北京)に出場するなど活躍をしている。これは、日本陸連の競技者育成指針にもあるように、他種目経験から自身にあった専門種目を見つけ、伸ばしていくモデルケースと言える。特に若い選手やそういった選手の指導にあたる指導者に広く知っていただきたいことである。
なお、日本では小学生の二種競技(コンバインドAおよびB)が2019年から導入された。中学生は四種競技、高校生は男子が八種競技、女子が七種競技など、年代別に混成競技種目が設けられているので、是非とも一度は混成競技へ取り組み、その魅力と可能性を一人でも多くの選手に感じてほしい。何といっても、混成競技は他の種目と比べて、十種競技なら10倍、七種競技なら7倍の「可能性」があり、それが「魅力」でもあるのだ。
写真:フォート・キシモト
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