第104回日本選手権長距離から一夜明けた12月5日、日本陸連は前日の日本選手権で条件を満たして、東京オリンピック日本代表選手に内定した相澤晃(旭化成、男子10000m)、田中希実(豊田自動織機TC、女子5000m)、新谷仁美(積水化学、女子10000m)の3選手を招き、記者会見を行いました。
【各選手コメント(要旨)】
※登壇時の選手紹介順に記載■新谷仁美(積水化学)
来年、東京五輪が開催されるかはまだわからない状況だが、もし無事に開催されたら、最高のパフォーマンスを皆さまにお見せできるように、しっかり準備をしていきたい。オリンピックに対して特別な気持ちというものは、正直なところ、私にはない。仕事のうち、仕事のなかの1つとして、東京五輪、世界陸上、記録会というものもそれぞれ入っている。だから、「東京五輪だから、こういうことをしよう」とかいうものは一切ない。普段通り、しっかり準備していくということしか考えていない。
東京五輪に向けて、やってみたい練習は全くないが、やらなくてはならない練習はある。まず、中距離種目…1500mや3000mをしっかり克服しなければ、世界のスピード変化にはついていけないと思っているし、同時に、スピードの変化に対応できるような後半の脚をつくる意味で、(長距離種目でも)専門外のハーフマラソン、マラソンというところにもしっかりと目を向けていく必要があると思っている。また、筋力トレーニングについては、現在週に1~2回行っているウエイトトレーニングを、週2~3回という形に変えていきたいと思っているし、栄養面についても、サポートしてくださっている明治としっかりコミュニケーションをとって徹底していこうと考えている。
競技面に関して高めていくのはもちろんのことだが、地元開催ということで、特に日本人選手はすごく目立つことになる思うので、そういった意味では競技面よりも、アスリートとして、そして人間としてというものをしっかりする必要があると考えている。東京五輪は国民の皆さまと(アスリートが)同じ思いでなければ成立しないもので、誰か一人でやりたいというだけでは伝わないものだと思うので、アスリートとしての考え方や行動を、いい意味で高めていきたい。
■田中希実(豊田自動織機TC)
昨日は、苦しい思いをして、(オリンピック代表)権利を勝ち取ることができた。苦しかったぶん、安心とか嬉しいよりも、信じられないというか、まだ実感が湧かない部分がある。しかし、その権利を勝ち取るためもあって苦しい思いをしてきた。来年、もし(オリンピックが)開催されたら、そのぶん責任がかかってくると思うが、苦しい思いをしたぶん責任を持って、そのときの自分の力を出しきりたい。私も普段から世界陸上やオリンピックとかだけを意識して練習しているわけではないので、1年延期になっても、今まで通り変わらずに取り組み続けてきて、今年のような結果が出せている。来年に向けても、そういう取り組み方を続けていく。ただ、昨年よりも今年、今年よりも来年という形で取り組んでいくので、来年、そのときの最大限の力を…今よりも少しでも力をつけて(オリンピック本番に)臨めたらなと思う。開催が延期になったぶん、準備期間は長くなるので、今よりも強くなって臨めるのではないかと、自分自身へのプレッシャーというか期待というようなものがあるが、頑張りたい。
東京オリンピックに向けては、技術面や体力面の進化のほかに、ここまで精神面の弱さを自分自身で感じていたので、その部分を底上げしたい。苦しみ抜いて結果を出すということは大事だと思うが、苦しみ抜いて「苦しい」だけで終わるのではなく、最後でしっかり自分が笑顔になって結果を出すことによって、人の心を動かせるんじゃないかと感じている。昨日の走りについても、自分が苦しみ抜いたからの結果だけじゃなくて、運がよかった部分もあったんじゃないかと思っていて、まだまだ精神的なところとか体力にも技術にも自信がないところがある。全体的なところ、特に精神的なところは底上げしていきたいと思っている。
■相澤 晃(旭化成)
一夜明けて、まだ本当に自分が優勝したのかという気持ちで、すごく興奮というか、ドキドキしている。選ばれたからには結果を残すことが使命だと思っている。1つでも上の順位を目指して東京オリンピックではいい結果が残せるように頑張りたい。今年、東京オリンピックが延期になって、すごく自分に運が向いてきたなと感じていた。東京オリンピックは、自分にとって故郷の須賀川市(福島県)出身である円谷幸吉選手が前回の東京大会(1964年)で10000mとマラソンで活躍されていたことで、なにか縁を感じていた。自分も10000mで入賞できるように、これからもう一段階、もう二段階、しっかり自分自身を高めていきたい。
今回、日本新記録を出すことできたが、世界記録(26分11秒00、ジョシュア・チェプテゲイ=ウガンダ、2020年)と比べると、1分以上の差がある。今回に関して言うと、(1周)66秒をいかにきついと思わないで走れるかといったところに重点を置いて練習してきたが、そのベースをどれだけ上げていけるかが課題だと思っている。今後、苦手な5000mや3000mに焦点を絞って、しっかり練習していきたい。
この先、どんな試合があるかがまだ決まっていないので、具体的にどんな練習をするかは決まっていない。長い距離…駅伝からの流れで10000mがしっかり走れるように、まずはハーフマラソンを1本走りたいと思っている。また、今回、標準記録を突破したことで、10000mは来年の日本選手権以降まで走る必要はないので、まず5000mでしっかりタイムを出して、スピードの底上げをしていきたい。
オリンピックに向けては、自国開催ということで、日本人としてのプライドをもっと持てるように取り組んでいきたい。もちろん開催できるかどうかはまだわからない状況だとは思うが、(開催に)反対していた人も、「終わってみたらよかったな」と思ってもらえるようなパフォーマンスを見せられるように頑張りたい。技術的な面では、世界の大会ではペースの変化というのがすごく見られる。今回に関しては、そういうレースにはならないということで、削り合う(ライバルを減らしていく)レースのための練習をしてきたが、これからは、世界のレースで通用するような練習をしていきたい。
※本内容は、12月5日に実施された記者会見において、各選手が発言したコメントと質疑応答時の回答の一部を抜粋し、まとめています。
取材・構成:児玉育美(JAAFメディアチーム)
■第104回日本陸上競技選手権大会・長距離種目
開催日:2020年12月4日(金)
会場:ヤンマースタジアム長居
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https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1535/