2020.12.01(火)大会

【第104回日本選手権長距離】展望:女子トラック種目代表内定1号を懸けた大勝負。廣中VS田中で、日本新の可能性も!~女子5000m編~



トラックで行われる長距離種目の第104回日本選手権が12月4日、東京オリンピック代表選考会を兼ねて、大阪・ヤンマースタジアム長居において開催される。

新型コロナウイルスの感染拡大・緊急事態宣言発令の影響で延期を余儀なくされた当初の日程を、世界陸連(WA)が各国の公平性に配慮して設けたオリンピック参加にかかわる諸条件(参加標準記録、ワールドランキングポイント)の適用除外期間(4月6日~11月30日)が明けた直後となるタイミングに再設定。さらに、昨年から別日程で行っている10000mだけでなく、5000mと3000m障害も組み込むことで、長距離種目すべてをオリンピック代表選考レースとして実施できるようにした。

今回の内定条件は、各種目ともに「優勝者で、日本選手権終了時点に東京オリンピック参加標準記録を満たしている競技者」であること。すでに有効期間中に参加標準記録を突破している競技者は優勝を、まだ突破していない競技者は参加標準記録を上回っての優勝を目指して、勝負に挑むことになる。ここでは、各種目における注目選手や見どころをご紹介していこう。

※情報や記録・競技会等の結果は、11月23日時点の情報で構成。


■「東京2020オリンピック競技大会」日本代表選手内定条件まとめ
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202011/17_124348.pdf


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト


【女子5000m】

トラック長距離種目において、“代表争い最激戦区”といえるのが女子5000m。コロナ禍の影響で東京オリンピックの参加資格取得期間は一時中断(4月6日~11月30日)されたが、4月5日までの段階で、すでに田中希実(豊田自動織機TC、15分00秒01)、廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ、15分05秒40)、新谷仁美(積水化学、15分07秒02)の3名が参加標準記録(15分10秒00)を突破。7月から本格的な屋外シーズンがスタートした今季は、11月30日までは有効期間外の扱いなるが、この間に新谷と廣中が14分台突入を果たしたほか、新たに15分10秒切りを果たした者、大幅に自己記録を更新してきた者が複数現れている。有効期間が再開して最初のビッグレースとなる今回の日本選手権では、記録・勝負ともに非常にレベルの高いレースになること必至といえそうだ。

9月の全日本実業団で日本歴代2位となる14分55秒83をマークして今季日本リスト1位に立つ新谷が、10000mに照準を絞ったため5000mには出場しない。持ち記録や今季の各選手の動向からみて、優勝争いは、不測の事態がない限り、田中と廣中によって繰り広げられることになるだろう。参加標準記録突破済みの2人は、どちらが勝っても記録の如何を問わず即時内定となる。タイムテーブルから考えると「女子のトラック種目における内定第1号」となる公算が高い。

昨年のドーハ世界選手権決勝で、当時日本歴代2位となる15分00秒01(14位)をマークして東京オリンピック参加標準記録を突破した田中は、今季は、トレーニングの質を引き上げると同時に、連戦のなかで800m、1500m、3000m、5000mと種目を限定せずに次々とレースに出場していくことで、持久的な要素の底上げとともに、国際レースで勝ち残るために必須となる揺さぶりやペースチェンジに対応できるスピードの獲得に取り組んできた。「スタートから先頭に立った上で、最後にペースをさらに上げる」「中盤で切り替えて他選手を突き放す」「ラスト1周でパチンとスピードを切り替える」「徐々に先頭に追いつき終盤で先頭に立つ」といった具合に、個々のレースで、さまざまな展開に挑戦していることも特徴的で、こうしたなかで記録面では、1500m(4分05秒27)と3000m(8分41秒35)の2種目で日本新記録を樹立したほか、800mでは2分04秒66の自己新を、5000mもセカンドベストの15分02秒62をマーク。また、実績面でも10月に行われた日本選手権の中距離2種目に出場し、1500mで初優勝(4分10秒21)、800mも自己2位の2分04秒76で4位の成績を残すなど、着実なスケールアップを印象づけた。レースを重ねるなかで本番に向けて仕上げていくスタイルはこれまでと同じ。10月の日本選手権以降は夏場ほど大きく目を引く結果がなく、1500m日本新への経過と比較すると、“5000m仕様”へのブラッシュアップにはやや苦戦している印象も伺えるが、11月15日の静岡県長距離強化記録会には、スタート時間が13分間隔の設定で行われた3000mに2レース続けて出場し、9分09秒65、9分00秒84の記録を残している。

一方の廣中は、長崎商業高を卒業してJP日本郵政グループ所属1年目となった昨年12月に、山口で行われた長距離記録会において前述の15分05秒40(U20日本新記録)をマークし、最年少での参加標準記録突破者となった。1月に京都で行われた全国都道府県女子駅伝1区(6km)では、最後が上り坂となる難コースにもかかわらず、中盤で独走態勢に持ち込むと、従来の区間記録を5秒更新する18分39秒でタスキを中継。区間2位でレースを終えた田中(19秒13秒)に34秒の差をつけている。今季は、“コロナ自粛期間”明け直後はもうひとつの状態だったが、8月に実施した約1カ月の北海道合宿を経て、調子がぐんぐんと上がってきた。9月の全日本実業団ではジュニア3000mで8分52秒80(日本歴代9位)の自己新記録をマークすると、中1日空けて臨んだ5000mは、700m付近から先頭に立ち、1周72秒ペースで引っ張るレースを展開。トップが新谷に代わった中盤以降もよく粘り、14分59秒37でフィニッシュ(3位)し、日本人女子3人目の14分ランナーとなった。11月22日の全日本実業団女子駅伝1区(7.6km)ではスタート直後から首位に立つと、2.5km過ぎ以降を独走、区間2位に31秒の差をつけた(23分21秒)ことで、「廣中、強し」をさらに印象づけた。

当日のレースは、どんな展開になるのか。1500mや3000mのタイム差を考えると、廣中は、田中の切れ味鋭いスピードの切り替えを阻止したいはず。おそらく前半から飛び出してリードを奪い、ハイペースで押していく戦略を採るだろう。駅伝での走りを見てもわかるように、スタミナという点では廣中に分があると思われるだけに、終盤までに差が開くようだと、廣中に軍配が上がる可能性が高くなる。逆に、最後まで2人が並走するような展開になった場合は、オフからオンにスイッチを入れるかのような切り替えのできる田中が、俄然有利になってくる。タイミングを見計らって、狙い研ぎ澄ましての“乾坤一擲のスパート”を田中がどこで繰り出すか、そのとき廣中がどう対応するのか…。ラスト1周は、息を呑んで見守ることになるかもしれない。21歳の田中と、20歳になったばかりの廣中。この若い2人が序盤から速いペースを刻み、最後まで競り合った場合は、福士加代子(ワコール)が2005年にマークした14分53秒22を上回る日本新記録が誕生する可能性もありそうだ。

今回の10000mで新谷が代表切符を手に入れた場合、5000mでも“2枚目の代表切符”を狙って参戦してくる可能性があることを考えると、来年の日本選手権5000mでの勝負は、今回以上に熾烈なものになってくる。持ち記録で“4番手”以降となる選手たちは、この大会でもう一段階レベルを引き上げておきたいところだろう。

記録で、廣中・田中に続いているのは萩谷楓(エディオン)。廣中と同学年の社会人2年目だが、今季の躍進が著しい。有効期間外の扱いとなるものの7月のホクレンDCで参加標準記録を上回る15分05秒78(当時日本歴代6位)をマークしたほか、1500m(4分13秒14、8月)、3000m(8分48秒12、7月、日本歴代3位)でも自己記録を更新している。東京オリンピック女子マラソン代表に内定している一山麻緒(ワコール)も、萩谷同様に有効期間外の扱いながら7月に参加標準記録を上回る15分06秒66をマーク。今大会は10000mと5000mの2種目にエントリーした。5000m、10000mとレースが続くタイムテーブルということもあり、10000mのみの出場となる見通し。同じく2種目にエントリーしたMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)ファイナリストの安藤友香(ワコール)も10000mに絞ることになるだろう。前回覇者の木村友香(資生堂)は、15分19秒99(2019年)の自己記録を持つ選手。今季は苦戦が続いているが、昨年のドーハ世界選手権も経験しているだけに復調に期待したい。


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