日本陸連は、2020年東京オリンピックと、その後の国際大会における活躍が大いに期待できる次世代の競技者を強化育成する「ダイヤモンドアスリート」制度を2014-2015年から展開していますが、このたび新規認定者2名、継続認定者6名からなる第6期(2019-2020)指定競技者を選出。11月25日に、第6期認定式、第5期修了式を行いました。
第6期生となる「2019-2020ダイヤモンドアスリート」は、第4期からの継続認定となる塚本ジャスティン惇平選手(東洋大学1年、100m・200m)、クレイ・アーロン竜波選手(相洋高校3年・神奈川、800m)、中村健太郎選手(清風南海高校3年・大阪、やり投)、第5期から認定されている海鋒泰輝選手(日本大学1年、走幅跳)、出口晴翔選手(東福岡高校3年・福岡、400mH)、小林歩未選手(筑波大学1年・千葉、100mH)、そして新たに選出された鵜澤飛羽選手(築館高校2年・宮城、100m・200m)と藤原孝輝選手(洛南高校2年・京都、走幅跳)の8名(新規認定者のプロフィルは、https://www.jaaf.or.jp/news/article/13370/ をご参照ください)です。
また、第1期から認定を受けていた髙松智美ムセンビ選手(名城大学2年、長距離)、第3期から継続認定されてきた長麻尋選手(国士舘大学2年、やり投)、第4期から認定された宮本大輔選手(東洋大学2年、100m・200m)、井本佳伸選手(東海大学2年、200m・400m)、藤井菜々子選手(エディオン、競歩)の5名が、このたび満期での修了を迎えました。
認定式・修了式は、11月25日午前、東京・新宿区の「Japan Sport Olympic Square」(ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア)にある岸清一メモリアルルームにおいて、学業の都合により欠席となった鵜澤選手、中村選手、髙松選手を除く10名が出席して行われました。開会にあたって、このプログラム全体の統括も務める麻場一徳日本陸連強化委員会委員長が登壇。麻場委員長は、まず「ダイヤモンドアスリート事業も6期目となる。この間、スポンサー、サポーターの皆さまには物心両面からの温かいご支援をいただいた」と感謝の念を伝え、「ドーハ世界選手権には、修了生を含むダイヤモンドアスリート7名が代表として選考され、素晴らしい活躍をした。来年の東京オリンピックにおいても、我々日本代表の主力になることは間違いない。引き続き、ご支援ご指導をいただきたい」と挨拶。さらに、認定アスリートと修了生に向けては、「競技力だけでなく、社会人として、国際人として、日本の陸上界をリードしていっていただけたらと思う。皆さんの今後の活躍を心より期待する」と呼びかけました。
続いて、石塚浩タレントマネージャー統括により第6期認定アスリートと修了者が紹介され、プレゼンターとして招かれた男子走幅跳の橋岡優輝選手(日本大学)から、各選手に認定証および修了証が授与されました。その後、自身もこのプログラムの修了生である橋岡選手は、第6期認定アスリートに向けて、「私は、このダイヤモンドアスリートのプログラムを通して、さまざまな方々からお話を聞き、視野を広げることができた。また語学研修によって海外への不安を減らし、海外でチャレンジする機会を多くいただいた。この結果として、世界陸上で8位に入賞することができた。ダイヤモンドアスリートであることを重視し、これからも精進してください」と激励。修了者に向けては、「ここからがシニアの第1歩。よりいっそう気を引き締めて頑張ってください」とエールを送りました。
これを受けて、第6期ダイヤモンドアスリート代表としてクレイ選手が挨拶。ダイヤモンドアスリートに認定されて3年目となるクレイ選手は、まず「アジアユース、世界リレー、また世界選手権前にヨーロッパ遠征を行うなど国際大会も経験し、競技者としても人間としても大きく成長することができた」と今年度を振り返り、さらに「初めはダイヤモンドアスリートということにピンと来なかった部分もあったが、年を重ねるにつれて、注目される存在であること、また、たくさんの方から支援や応援をされていることを実感できるようになった。支援してくださっている皆さまに感謝申し上げたい」とサポートを受けている団体や企業への感謝を述べたあと、「すでにご存じの方もいると思うが、自分は来年からアメリカのテキサスA&M大学に進学することが決まった。ダイヤモンドアスリート像にも上げられているように、競技だけではなく、国際的に活躍できる人間になれるよう頑張りたい。いよいよ来年は東京オリンピックの年になる。ダイヤモンドアスリートしてこの大会に出場し、皆さまに活躍を披露できるよう努力していくので、これからも応援よろしくお願いします」と決意を述べました。
最後に、修了生を代表して藤井選手が登壇。藤井選手は、「ダイヤモンドアスリートとして、さまざまなプログラムを受けることで、人として、選手として成長することできた。特に、リーダーシッププログラムや語学研修では実践的な力を身につけることができた。私自身、東京マラソン財団様をはじめスポンサーの皆さまのおかげで、ドーハ世界選手権では7位に入賞することができた。東京オリンピックまで残りわずかとなったが、1人でも多くの選手が出場し、メダル獲得や入賞を目指したい。“日本陸上界を私たちが引っ張っていく”という強い気持ちを持って、今後も精進していく。応援よろしくお願いします」と挨拶し、認定式・修了式を締めくくりました。
【修了者コメント】
■長 麻尋(国士舘大学2年)
もともと人前で話したり、自分から発信したり行動したりということが得意ではなく、リーダーシップがとれるタイプでもなかったので、プログラムを受け始めたころは、いろいろな場面で困惑することも多かった。しかし、ここにいたからこそ「自分はまだまだだな」と気づくことができたように思う。どれだけ変わったかは自分ではよくわからないが、それでも「人から言われたことをやる」だけだった私が、以前に比べると、「もっとこうなっていきたい」「もっと自分で考えよう」「行動していこう」と考えられるようになってきた。それはダイヤモンドアスリートのさまざまなプログラムを経験したおかげだと感謝している。
認定されてからの3年間は故障が多くて思うような結果が残せず、苦しいことも多かった。しかし、ケガもようやく治って、今は「練習するのみかな」という状態まで戻ってきた。これからの冬季をしっかり練習して、来シーズンはいい結果が出せるように頑張りたい。
■宮本大輔(東洋大学2年)
あっという間の2年間だった。最初にダイヤモンドアスリートに選ばれたときは、まさか自分が選ばれるとは考えていなかったので、すごく驚いたし、ありがたいという気持ちがあった。そんななかで、さまざまなプログラムに参加することになったわけだが、例えば、いろいろな分野の方々の話を聞くことができたリーダーシッププログラムでは、自分にない考え方を知ることができ、すごく視野が広がった。また、高校3年の冬にフロリダのIMGに行ってアメリカ人コーチの方々から指導を受けた経験は、新しい自分を知るきっかけになるとともに、競技に対する意識をより高める機会になった。こうしたプログラムを経験したことで、実際の競技場面で、それまでの自分だったらどうしようもできなかっただろうというような状態に陥ったときに、違う視点で臨むことができるようになるなど、プラスになっている。本当に充実したプログラムだったと思う。
自分が取り組んでいる短距離は、非常にレベルが高く、簡単には勝負ができないということは十分にわかっているが、そのなかでも活躍してけるように、これからもしっかり練習して頑張っていきたい。
■井本佳伸(東海大学2年)
ダイヤモンドアスリートには、高校3年生ときに選んでいただいた(第4期)のが最初で、たくさんの経験をさせていただいたが、自分自身にとって何よりも一番大きなきっかけとなったのは、その一環で行かせてもらったアメリカ合宿。この合宿で取り組んだトレーニングによって、走っているときに脚が流れなくなり、スムーズに前でさばけるようになり、自分の走りが変わった。もし、合宿の機会がなかったら、ここまで記録は伸びていなかったと思うので、本当によかったと感謝している。
その一方で、競技実績としては、ダイヤモンドアスリートとして過ごした昨年、今年と、シーズン中に練習でケガすることが多かったため、満足のいく結果を残すことができていない点を悔しく思っている。来年は、そうした反省も生かしたプランを立てて、練習を組んでいきたい。
■藤井菜々子(エディオン)
今の自分があるのは、ダイヤモンドアスリートに認定してもらったおかげだと思っている。
2年の認定期間に、リーダーシッププログラムなどでいろいろな分野の方と触れ合う機会をつくっていただいたり、さまざまなプログラムを通じていろいろな種目の人と交流できたりしたことは、自分にとって、すごくいい刺激となり、モチベーションを高めてくれた。それらのすべてが自分の競技に、いい方向で役立っていると。
特に、私の場合は、長距離種目から本格的に競歩に取り組むようになったタイミングで、ダイヤモンドアスリートに認定していただいた。ダイヤモンドアスリートのプログラムを受けたことによって、意識や価値観もものすごく変わったように思う。トップレベルに行けばいくほど、どういう考え方をすればいいのか、実現のためにどうすればいいか、どんな人に聞いていけばいいのかなどが大切になってくるわけだが、そういったことに生きているなと思う。
今後は、来年の東京オリンピックに向かっていくことになるが、まずは2020年2月の日本選手権(20km競歩)で1枠が内定する。そこに、果敢に挑戦していきたいと思っている。また、今の記録である1時間28分58秒というタイムも大幅に更新したい。男子だけでなく、「女子も世界のトップレベルのレースができるんだぞ」というところを見せることができるよう頑張りたい。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォートキシモト
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