2019.03.04(月)大会

【堀尾選手が初マラソンで日本人1位!】MGCファイナリスト4名決定!/東京マラソン2019レポート&コメント



 3月3日、東京マラソン2019が、アボット・ワールドマラソンメジャーズシリーズⅫ(12)、ドーハ世界選手権日本代表選手選考会、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズ2018-2019男子第4戦を兼ねて開催されました。レースは、予報よりも早く雨が降り出し、特に終盤では冷え込みが厳しくなる悪条件下に。そんななか、男子ではスタートから先頭集団でレースを進めたビルハヌ・レゲセ選手(エチオピア)が、ペースメーカーの外れた30km以降で首位に立つと、そのまま後続を突き放して、2時間04分48秒で優勝しました。日本人トップ争いは、初マラソンの堀尾謙介選手(中央大)が36km終盤で5位に浮上すると、そのまま逃げ切って2時間10分21秒でフィニッシュ。6・7位に今井正人選手(トヨタ自動車九州)が2時間10分30秒、藤川拓也選手(中国電力)が2時間10分35秒で続き、上位3選手がMGCファイナリストの座を手に入れました。また、日本人4位となる8位には、神野大地選手(セルソース)が2時間11分05秒で続き、ワイルドカードでのMGC出場権獲得を果たしています。

 女子は、前回2位の成績を収めているルティ・アガ選手(エチオピア)がセカンドベストの2時間20分40秒でマラソン初優勝。日本勢では、初マラソンの一山麻緒選手(ワコール)が2時間24分33秒・7位でフィニッシュして日本人トップとなりましたが、ワイルドカードでの出場条件となる2時間24分00秒にはわずかに及ばず、今大会でのMGC出場権獲得はなりませんでした。

 

 午後からと予報されていた雨が、午前7時過ぎには降り始めてしまうというあいにくのコンディションとなったこの日。天候雨、気温5.7℃、湿度57.1%(主催者発表によるスタート時のデータ、風は未発表)のなか、レースは午前9時10分にスタートしました。

 前日の段階で発表されたペースメーカーの設定は、男子は第1グループが1km2分57~58秒(フィニッシュタイム2時間04分29秒~2時間05秒11秒のペース)、第2グループが1km2分59秒~3分00秒(同2時間05分53秒~2時間06分35秒のペース)の2パターン、女子は第1グループが1km3分16~18秒(同2時間17分50秒~2時間19分15秒のペース)、第2グループが1km3分19秒~21秒(同2時間19分57秒~2時間21分21秒のペース)、第3グループが1km3分24~25秒(同2時間23分28秒~2時間24分10秒のペース)の3パターン。それぞれ最大で30kmまでつくことになりました。

 男子は、第1ペースメーカーが最初の1kmを2分48秒(速報値、以下同じ)で通過するという異様に速い滑り出しに。このグループについた15人ほどの選手は、縦に長く列をなして続く入りとなりました。その後、やや落ち着きはしたものの、大きく下っていくこともあって設定を上回るペースでレースは進み、第1グループは5km地点を14分38秒で通過。集団はペースメーカーを除き12人となり、日本人では、中村匠吾(富士通)、佐藤悠基(日清食品グループ)、大迫傑(Nike)の3選手が、集団の中央付近に位置しています。10kmまでに1人こぼれて11人となった先頭集団は29分09~11秒(この間の5kmは14分31~32秒、以下同じ)で通過。7km手前でいったん遅れてまた集団に戻っていたアジア大会銀メダリストで、12月に2時間04分43秒のアジア記録をマークしているエルハサン・エルアバシ選手(バーレーン)がここで2秒遅れる29分13秒での通過となり、その後は少しずつに差が開いていきました。先頭集団は15kmで9人となって43分56~58秒(14分46~47秒)を通過。16kmを過ぎたあたりから、出場選手中トップタイム(2時間04分15秒)を持つビルハヌ・レゲセ選手(エチオピア)がペースメーカーを追い立てるような位置をとったことでペースが上がり、これに2時間4分台の自己記録を持つ前回覇者のディクソン・チュンバ選手(ケニア)、セイフ・トゥラ選手(エチオピア)がついて、18.5km過ぎでいったん集団が2つに分かれそうな様相を見せましたが、その後、ノバート・キゲン選手(ケニア)が遅れた以外は再び一団となって20kmを58分45~46秒(14分48~50秒)で通過。しかし、依然としてレゲセ選手がペースメーカーにぴたりとつき、煽るような位置で進んでいきます。中間点は、レゲセ選手と日本の実業団に所属するビダン・カロキ選手(ケニア、横浜DeNA)が1時間02分02秒で通過。トゥラ選手、チュンバ選手が1時間02分03秒で、佐藤選手、日本薬科大で学ぶサイモン・カリウキ選手(ケニア)、中村選手、大迫選手が1時間02分04秒での通過と、日本記録を大きく上回るペースでレースは進んでいきました。





 
 変化が生じたのは、その直後。先頭は、中間点を過ぎて800mくらいまでの間に、ペースメーカーにぴったりつくレゲセ、チュンバ、カロキの3選手と、トゥラ、佐藤の2選手と、カリウキ、大迫、中村の3選手の小グループに分裂。22.5km手前では、3つめのグループにいたカリウキ選手が佐藤選手、トゥラ選手のグループに追いつき、5人(ペースメーカー2人)、3人、2人の隊列に。そして、このあたりで大迫選手が、徐々に中村選手につけなくなっていく様相を見せ始めました。25kmは先頭が1時間13分29~31秒(14分43~46秒)で通過。佐藤選手を含む4位グループが21秒遅れ、7位で中村選手が46秒遅れ、8位の大迫選手が53秒遅れで続く展開となりました。20~25kmのペースを15分36秒に落としていた大迫選手は、その後、さらに大きく失速して29km付近で途中棄権。レース後、「スタート地点から寒くなって、身体が動かなくなり、棄権せざるを得ない状況でした」と主催者を通じてコメントしました。

 優勝争いは、29km過ぎでチュンバ選手が遅れ始めて、レゲセ選手とカロキ選手の戦いに。30kmを1時間28分16秒で通過したレゲセ選手は、ペースメーカーが外れるとニットキャップを脱ぎ捨てギアチェンジ。カロキ選手を突き放しにかかります。レゲセ選手は、30kmからの5kmを14分41秒に上げて、35kmまでにカロキ選手との差を19秒に開くと、40kmまでは15分04秒に落としたものの、残り2.195kmを6分47秒でカバーし、2時間04分48秒でフィニッシュ。初マラソンでマークした2時間04分15秒に続くセカンドベストで、3戦目にしてマラソン初優勝を果たしました。レース後の記者会見では、「今日の気象条件は非常に厳しかったので、そのことが結果に影響していると思う。良好だったら2時間3分台で走れる自信を持っている」とコメント。また、「内心としてはどんどん行きたかった」とペースメーカーが外れる前から、もう少しペースを上げたい気持ちがあったことも明かしました。

 2位で続いたのはカロキ選手。レゲセ選手には2分の差をつけられたものの、自身初の2時間6分台となる2時間06分48秒のパーソナルベストをマーク。3位はチュンバ選手で2時間08分44秒、4位にはカリウキ選手が、初のサブテンとなる2時間09分41秒の自己新記録で、それぞれフィニッシュしました。

 一方、日本人トップ争いは、30km以降で劇的な展開を見せることとなりました。1km2分59秒~3分00秒でレースを進めた第2ペースメーカーのグループが、ほぼ設定タイム通りでレースを進め、序盤の30人近い大集団から徐々に人数を減らしつつも中間点を1時間03分24~29秒の間で14人の集団で通過。25kmまでに藤川拓也選手(中国電力)、堀尾謙介選手(中央大)、髙久龍選手(ヤクルト)、定方俊樹選手(MHPS)、今井正人選手(トヨタ自動車九州)、設楽啓太選手(日立物流)の6人からなる11位集団(日本人4位集団)を形成して、ペースを落とし始めた第1ペースメーカーの選手との差を縮めていくようになったのです。その後、設楽選手が大きく後退し、今井選手、定方選手もやや距離が空きましたが、30kmでは、藤川選手、髙久選手、堀尾選手が1時間30分41~42秒で通過。この5kmを16分台にペースダウンした7位の中村選手との差を1分01秒から21秒まで詰めて8位集団に浮上しました。そこから大学生の堀尾選手が前に出て、32km手前で中村選手を捉えると、藤川選手、髙久選手、今井選手も中村選手をかわします。35kmは堀尾選手が単独7位(1時間46分33秒)で通過。藤川選手が1秒差、髙久選手が2秒差で通過して、今度は、33.2km過ぎに4位争いから後退し、35kmを1時間45分55秒で通過していた佐藤選手を追うこととなりました。

 堀尾選手は、36km終盤で佐藤選手をかわして日本人首位の5位に上がると、40kmまでは16分台(16分26秒)までペースを落としましたが、この5kmと最後の2.195kmを3位のチュンバ選手や4位のカリウキ選手を上回るペースで走りきり、2時間10分21秒でフィニッシュ。学生選手としては初めてのMGCファイナリストとなりました。日本人2位となる6位で続いたのは今井選手。35km地点では13秒の差があった藤川選手に40kmで追いつくと、堀尾選手に9秒差まで迫る2時間10分30秒をマーク。その今井選手に5秒遅れの2時間10分35秒で7位(日本人3位)となった藤川選手とともにMGC出場権を手にしました。また、日本人4位には、16km過ぎで第2ペースメーカーの集団からいったん遅れていた神野大地選手(セルソース)が、30km以降で徐々に順位を上げ、35km以降は優勝したレゲセ選手に次ぐタイムでカバーして8位まで順位を上げると、2時間11分05秒でフィニッシュ。ワイルドカードでのMGC出場条件となる「上位2つの記録の平均が、男子2時間11分00秒以内」を満たすために必要であった2時間11分42秒をクリアして、28人目のMGCファイナリストとなりました(MGC出場権を獲得した日本人上位4位選手のコメントは別記)。

 30km以降で大きくペースを落とす形となった中村選手は、2時間14分52秒で14位(日本人11位)、佐藤選手は2時間15分07秒で15位(日本人12位)でのフィニッシュと、ほろ苦い結果に。しかし、凍える寒さのなか、設定を上回るペースで走った第1グループでは、上位を占めた4選手を除くと、外国招待選手もすべて失速して途中棄権に終わっています。優勝したレゲセ選手の強さばかりが際立つ結果となりました。
 

 女子は、海外招待選手が第1グループを形成し、前回2位でルティ・アガ選手(エチオピア)らが中心となってレースを展開しました。10km地点では33分04~11秒の間に11人が走る縦長の集団となっていましたが、15km以降は7人に絞られ、中間点を1時間09分44秒~45秒で通過。6人に絞られた状態で迎えた35~40kmの5kmでアガ選手が16分38秒にペースアップ。同じく16分台にペースを上げたヘレン・トラ選手、シュレ・デミセ選手(ともにエチオピア)にも8~10秒の差をつけると、ラスト2.195kmは7分19秒で走りきり、2時間20分40秒で快勝しました。

 日本勢では、初マラソンながら「(ワイルドカードでの出場権獲得条件となる)2時間24分00秒を切ってMGCを取るのが最低限の目標」とレースに挑んだ一山麻緒選手(ワコール)が、1km3分20秒のペースメーカーについてレースを進め、5kmを16分40秒、10kmを33分16秒(16分36秒)、15kmを50分03秒(16分47秒)、20kmを1時間06分45秒(16分42秒)、中間点を1時間10分29秒で通過するという果敢なレースを展開しました。「ペースメーカーについていけたのは28km地点まで。そこまでは楽しいなと思っていたが、そのあたりから脚に来てしまった」と、レース後に振り返った一山選手は、(ペースメーカーが外れて)単独走になってしまった30km以降で、「一人ぼっちになると押していけない面があるのだが、今日も自分に勝てずにペースダウンしてしまった」と、17分40秒、18分20秒と大きくペースを落としてしまいました。40kmの通過の際に「時計を見て、“ああ、ぎりぎりだな”と、そこでタイムを意識し始めた」と懸命に粘りましたが、2時間24分33秒・7位でのフィニッシュとなりました。

 33秒足りずに目標を達成できなかったことへの悔しさを見せつつも、記者会見では「今回、“これがマラソンだ”というのを身に沁みて感じることができたし、今日のような天候のなかで無事に走り切れたことは今後に生かせると思う」と収穫も大きかった様子。4月28日に行われるロンドンマラソンに出場する意向であることを表明し、「次は(MGC出場権を)絶対に取ります」と力強い言葉を聞かせてくれました。
 

 レース後の記者会見で、尾縣貢日本陸連専務理事は、「非常に厳しい(気象)条件だった。しかし、国内において、世界のトップランナー、世界のスピードに挑戦できるのは素晴らしい。この東京マラソンのチャレンジを繰り返すことによって、日本のマラソンは強化されると思う」と総括。瀬古利彦日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダーも、「暖かい雨ならよかったのだが、スタート時で5.7℃、今も(気温は)上がっていない。こうしたなかで記録を望むのはなかなか難しい。そんななか大迫くん、中村くん、佐藤くんは、日本記録にチャレンジするペースに挑んでくれた。今回はかなわなかったが、このチャレンジは必ず次に続くと思う」述べました。

 このほか瀬古リーダーは、「MGC出場権を獲得する選手が10人くらいは出るのではと思っていたが、残念ながら最低限の4人ということになった。若い堀尾くんは、まだまだ伸びる余地がある。今井くんはさすがベテランの力という印象。また、藤川くんは監督からはものすごくいい練習ができていて、2時間6分を出してもおかしくないということを聞いていた。また、神野くんもやっと今回、MGC切符を取ることができた。これまでの頑張りが実ってよかったなと思う」と各選手をねぎらうとともに、女子で日本人トップとなった一山選手についても、「後半の落ち込みがなければ、あと3分はいける。2時間21分30秒前後の力があると思う」と高く評価しました。

 


【MGC出場権獲得者コメント】

◎堀尾謙介(中央大)
5位 2時間10分21秒 =日本人1位

目標としては、サブテンのところにおいていて、順位に関しては、メンバーがメンバーだったので、意識せずにタイムだけを狙って走った。初マラソンだし、行けるところまで行って、ダメだったら本当にダメでいいかなという感じだったが、30km過ぎてもある程度余裕があったので、「それだったら自分で行こう」と思って前に出た。集団を抜け出したときは追い風で、給水をとって気持ち的にも身体的にもけっこう楽になったので、勝負をしかけるならここかなと思って行った。

30kmくらいまで1km3分を超えるかくらいのペースで行けていたので、そのときにはほんの少し、藤原正和監督の持つ記録(学生記録:2時間08分12秒、2003年)も頭をよぎったが、35km過ぎて一人旅となってからは、ペースを上げることができなかった。やはり監督の記録は偉大だなと思う。

日本人トップであることは、ゴールしたあとに、監督から教えてもらって、そのときに初めて知った。素直にまず「嬉しい」と言う気持ちと、「本当にこれは現実かな」という気持ちになった。

マラソンをやろうと思ったのは、大学3年のとき。実は、3年時の昨年も東京マラソンにはエントリーしていたのだが、箱根駅伝が終わってケガしてしまい断念した。今回は、箱根駅伝2区で先頭争いすることができていたのと、5000mでも今季学生トップの記録を出せていて、スピードもスタミナもついたので、これをマラソンで生かせるのではないかと思って出場を決めた。

この大会に向けては、箱根駅伝が終わってからは、全国都道府県駅伝に出ることが決まっていたので、1月5日から軽いジョグを始めて、都道府県駅伝の1週間前にスピード練習をやった。都道府県駅伝はいい結果でなかったが、その次の週の火曜日からマラソンに向けた練習として、1月後半から40km走をやったり、きついスピード練習をやったりする強化練習に10日間ほど取り組んだ。その後は、調整練習みたいな感じで、ペースを落としての距離走やジョグの量を少しずつ落とし、身体の状態を上げていくように合わせてきた。

監督からは、ずっと、「お前にはマラソンのセンスがある」と言われて続けていたので、その言葉を信じて、監督に組んでくれた練習をこなしてきた。前日にも「絶対にサブテンは行けるから、自信を持っていけ」と言ってくれて、それがあったからこそ、今回、30kmを過ぎてからの一人旅も行けたと思う。

とはいえ、タイトルとか勝つことには今まで縁がなかったので、こんな大きな大会で結果を残せて、素直に嬉しい気持ちでいっぱい。でも、マラソン選手としては、僕自身、まだサブテンランナーでもないし、チャレンジャー。次のマラソンは、たぶんMGCとなるので、そこではまたチャレンジャーとして、上の方にくらいついていきたい。今回のマラソンは、まだ100%練習が積めていない状態での結果。春からは、トヨタ自動車で競技を続けていく。MGC出場権を獲得している服部勇馬さんとかと練習し、MGCに向かっていくことができれば、今回のタイムは必ず超えられると思っている。

 

◎今井正人(トヨタ自動車九州)
6位 2時間10分30秒 =日本人2位

わりと早いうちから(集団から)離れてしまうレースとなった。今回は最低限MGCを取らないといけないということを強く思っていたので、もちろん前で勝負するという組み立てで臨んでいたが、それができない状況になったときに、すぐに(戦略や気持ちを)切り替えて走った。また、自分のなかでは、雨で寒かったというのは、逆に、自分の気持ちを保たせるためにはいい条件だったかなと思う。最後の最後まで何が起こるかわからないという状況があったので、それが実現したというか、そういう気持ちの部分が結果につながったのかなと思う。

ただし、勝負所で自分が先に離れてしまったという点は大きな課題で、やはりあそこを行けた上でさらにペースアップして、インパクトのある走りをできるのがベスト。それができていないということは、自分自身ではまだまだと思っている。ただ、自分のなかで過去のマラソンを振り返ったとき、結果的には後退していることもたくさんありながらも、自分のなかでは半歩でも1歩でも前進できていると思って競技をやってきた。そういう意味では、今回の結果も、前を見るきっかけになっているのではないかと感じている。

MGCは獲得できたが、一方で優勝したレゲセ選手との差の5分というのも、ゴールして一番に受け止めた。「こういう(悪い気象)条件だからね」と声をかけてくださる方も多くいるなかではあるのだが、そのなかでも世界のトップにいる選手であれば(身体が)動ける、結果を出せるということを、現実として受け止めなければならない。MGC出場権を獲得して1歩進むことにはなったが、手放しで喜んでいる場合ではない。

また、今までだと(集団から)離されてから弱い自分に勝てないことも多々あったのだが、今回のレースでは、「前へ、前へ」と自分を鼓舞し続けて、本当に前だけを見て走ることができたのが、とても大きいなと思っている。そして、「寒い、暑い」という条件のなかでは、(最終的には)精神的な面での勝負になるのかなと感じた。MGCは暑い中での勝負になるし、オリンピックはさらに暑い中で開催される。これから、それをイメージしたトレーニングを、しっかりとしていかなければならないなと思っている。

 

◎藤川拓也(中国電力)
7位 2時間10分35秒 =日本人3位

今回は、大会まで本当にいい練習ができていて、自分のなかでも2時間7分台を狙えるくらいの練習ができていたので、そこをターゲットにして走った。途中まではよかったが、こういうコンディションということもあり、途中からペースが落ちてしまった。そこでMGCというのが頭の中をよぎり、そこからはしっかり「粘って、粘って」という感じのレースとなった。なので、自分としては、タイムなどについては全然納得はいかないところなのだが、まずは権利を得たということで、ここからまた改めて取り組んでいこうと思っている。

スタミナ面でいえば、今回は格段に練習ができたなかでレースを迎えていた。(具体的には)過去3回のマラソンで一番良かったのは、昨年の別府大分毎日マラソンで、そこに向けた練習では2カ月間でやった40km走は2本だったが、今回は12月からの3カ月間で7本入れて、そのうち3本は実戦形式で入れることができていた。また、昨年の11月に10000mも27分台を出していて、マラソン練習をしながらもトラックのスピードも磨けていたことや、駅伝でも主要区間を走ることが多くて、そこで前を追っていく走りをしなければいけないという状況が続いていたので、精神的にも強くなった部分もあるのかなと思う。さらに、貧血気味だったので、昨年の8月から管理栄養士を個人的に契約して、食事や生活面を変えていったのも、今回の結果につながった要因ではないかと思う。

東京オリンピックの開催が決まったのは大学在学中のとき。そのころから「トラックでは厳しい、勝負するならマラソン」と決めていた。マラソンは今回で4回目だが、過去3回は思うようにいかず、実業団に入ってから1~2年目は結果も出なくて厳しい時期も続いたが、約3年間、ケガなく練習できていて、「練習を継続することが一番」と実感して、そのあたりを大切にしてきた。また、中国電力は地元の企業で、地域の方も応援してくれるし、会社の方々にも応援してもらえる。(それが支えとなって)弱気になったりしんどいなと思ったりする時期も、頑張らなきゃいけないなと(励みに思って取り組んで)くることができた。

 

◎神野大地(セルソース)
8位 2時間11分05秒 =ワイルドカード

15kmくらいでグループから離れてしまい、「今日もダメかな」という気持ちも一瞬よぎったのだが、今日はテーマとして「最後まであきらめない」という気持ちで走ろうと思っていたので、その気持ちだけで最後まで走りきることができた。MGC出場権を、今回の大会で絶対に取りたいということを最大の目標に掲げていたので、しっか獲得できたことを素直に嬉しく思う。

ケニアには1月中旬から渡航し、1カ月間トレーニングをしてきた。今回の練習では東京(マラソン)で絶対に結果を出すんだということで、2部練習だけでなく3部練習にも挑戦した。ケガが怖かった面もあったが攻めた練習をしてきたなかで、ケガをせずに順調に東京マラソン当日を迎えることができたのがよかったのかなと思う。

また、これまでのレース中には、何度も腹部の差し込みに苦しめられてきたが、今回は痛みが出なかった。これまで、その都度、いろいろな対策をやってきたのだが、その対策がなかなかうまくいかないことが続いていたので、今回は「それはもう起きるもの。そこも含めて、自分は勝負をしていかなければならないんだ」という気持ちで、何の対策もとらずに臨んでいた。今まで対策したなかで腹痛が起きたときに、がっかりして「これはダメだな」と思うレースもあったが、今回は「(差し込みが来ても」絶対にあきらめない」という強い気持ちをもって走ろうと思っていた。その考え方の変化が、今回、差し込みが起きなかったことにつながったのかなと思う。

(MGCを獲得できて)とりあえずホッとしたというのが今、一番の気持ち。大学を卒業してからも、僕にとってとても嬉しいことに、たくさんの注目をいただいて、それなのにマラソンで結果が出せないことが続いていたので、今回のレース前もプレッシャーは半端なかったというのが正直なところだった。そのプレッシャーに勝つことができたことで、きっと注目を浴びることになるであろうMGC前も、どんなに注目されてもしっかり(プレッシャーを乗り)越えられるんだということを証明できたと思うし、自信になった。これからは、自分自身の結果を出すというところに、もっともっと執着できると思う。

 
文:児玉育美/JAAFメディアチーム
写真提供:フォート・キシモト

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