2019.01.30(水)大会

【大阪国際女子マラソン】レポート&コメント:小原怜選手、日本人1位!中野円花選手、MGCファイナリストの仲間入りを果たす




第38回大阪国際女子マラソンは1月28日、本年秋に開催されるドーハ世界選手権日本代表選手選考会と、2020年東京オリンピック代表選考に向けた「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズ2018-2019」を兼ねて、大阪府大阪市のヤンマースタジアム長居陸上競技場をスタート・ゴールとする42.195kmのコースで行われました。

レースは、38km手前で単独トップに立ったファツマ・サド選手(エチオピア)が2時間25分39秒で優勝。2位には、昨年、MGC出場権獲得を果たしている小原怜選手(天満屋)が2時間25分46秒で続きました。

MGC出場権獲得を巡っては、準招待選手としての出場だった中野円花選手(ノーリツ)が、すでに出場資格を得ている小原選手を除く日本人1位でフィニッシュ。従来の自己記録2時間31分41秒を大幅に更新する2時間27分39秒(4位)をマークして、「日本人1~3位で2時間28分00秒以内」をクリアし、MGCファイナリストの仲間入りを果たしましたが、ほかに条件を満たす選手は現れず、この大会での新規獲得者は1名にとどまりました。

 

この大会では5人のペースメーカーが用意され、最大30kmまでつくことになりました。このうち3人が先導する第1グループの設定は5km17分00秒。これは1kmあたり3分24秒で、フィニッシュタイム2時間23分30秒前後を見込んだペースです。また、残る2人は、この大会におけるMGC出場権獲得条件(日本人1~3位で2時間28分以内、日本人4~6位で2時間27分以内)がクリアできるよう、5km17分15秒(1km3分27秒、フィニッシュタイム2時間25分30~40秒)のペースで行くこととなりました。

 

レースは、天候晴れ、気温8.4℃、湿度47%、東の風1.4m(主催者発表のデータによる)のなか、12時10分にスタート。最初の1kmは3分33秒(速報値、以下同じ)と、かなり遅い入りとなりましたが、その後、1~2kmを3分23秒、2~3kmは3分21秒とペースが引き上げられたことで、長居公園を出てあびこ筋に出た段階で、先頭集団は、ペースメーカー3人を除くと、海外招待選手5人、日本人選手4人の計9人に絞られる形となりました。日本勢は、すでにMGC資格を獲得している小原怜選手(天満屋)、2016年リオ五輪以来2年半ぶりのマラソンとなる福士加代子選手(ワコール)、2時間27分35秒の自己記録を持つ石井寿美選手(ヤマダ電機)、ネクストヒロイン枠での出場で今回が初マラソンとなる地元・大阪出身の大森菜月選手(ダイハツ)の4人がこの集団に。ペースメーカーのすぐ後ろに海外招待選手らが続き、その後ろに日本勢がつく隊列で、5kmを17分00秒(公式記録による、以下同じ)、10kmを33分59秒(この間の5kmは16分59秒)で通過していきました。

10km過ぎあたりから遅れがちな様子を見せていた石井選手が12km手前で引き離され、ペースメーカーを除く先頭集団は8人となりましたが、12.6km過ぎで福士選手が他選手と接触して転倒するアクシデントに見舞われてしまいます。福士選手は、すぐに立ち上がって走りだし、ほどなく集団の後方に戻りましたが、両膝やサングラスに隠れた右目の周辺から出血している様子も認められる厳しい状況となりました。

先頭集団は15kmを51分02秒(17分03秒)で通過。17km過ぎで、ユーニス・ジェプトゥー選手(ケニア)が後退したあたりから、徐々に振るい落としが始まります。19.5kmの給水ポイントを過ぎたところで、アベベチ、・アフェワーク選手(エチオピア)が遅れ、さらに大森選手も集団から後れをとるような様子が見られるなか、先頭は20kmを1時間08分03秒(17分01秒)で通過。大森選手は、その後、急落してきたスツメ・アセファ選手(エチオピア)をかわしますが、先頭集団との差は大きく開く形となり、以降は徐々にペースを落としていきました。

トップをいく7選手は中間点を1時間11分41~42秒で通過。ここでペースメーカー1人がレースを終え、22.4kmの折り返しを通過したところでもう1人のペースメーカーも抜けて、先頭はペースメーカー1人のほか、ボルネス・ジェプキルイ選手(ケニア)、ファツマ・サド選手(エチオピア)、小原選手、福士選手の4人に。しかし、集団の最後尾に位置していた福士選手が24km過ぎから徐々に遅れ始め、先頭が1時間25分04秒(17分01秒)で通過した25km地点での2秒差は、30kmで59秒差まで開いてしまう形となりました。

先頭グループは、その30kmを1時間42秒23秒(17分19秒)で通過し、最後のペースメーカーが外れ、首位争いはサド選手、ジェプキルイ選手、小原選手の3人に絞られました。ここで最初に動いたのは小原選手。30km通過直後の給水を利用してリードを奪うと、2選手を引き離しにかかりましたが、行ききることができません。小原選手はいったん3番手に下がり、ジェプキルイ選手・サド選手が前に出ましたが、その後は、3選手がほぼ横並びとなって先頭争いを繰り広げていきます。

35kmは、ジェプキルイ選手とサド選手が1時間59分55秒(ともに17分32秒)、小原選手が1時間59分56秒(17分33秒)で通過。その後の給水を終えた35.3km付近で、小原選手が3番手から一気に前に出て再びスパートしました。この仕掛けによってジェプキルイ選手は36km手前で遅れ始めますが、サド選手を引き離すことはできません。サド選手は、37km過ぎあたりから小原選手の横で並走を始めると、逆に37.7km付近でスパート。40kmを2時間17分45秒(17分50秒)で通過して小原選手との差を8秒に広げると、そのまま逃げ切り2時間25分39秒で優勝しました。小原選手は7秒遅れの2時間25秒46秒・2位でフィニッシュ。3位にはジェプキルイ選手が2時間26分01秒で続きました。

 

小原選手がMGC出場権をすでに獲得しているため、この大会でのMGCチケット争いは、小原選手を除く日本人1~3位で2時間28分00秒以内、同4~6位では2時間27分00秒以内がターゲットとなります。これを目指す選手のために17分15秒で刻むべく用意されたペースメーカーは、最初の5kmから17分31秒、17分06秒、17分15秒、17分26秒、17分24秒、17分47秒のラップで、ほぼ機能していない状況。しかし、30kmまではこのペースメーカーにつく形で、準招待選手の中野円花選手(ノーリツ)と阿部有香里選手(しまむら)、2016年リオ五輪マラソン代表の田中智美選手(第一生命グループ)、昨年のジャカルタアジア大会マラソン代表の田中華絵選手(資生堂)の4人が一団となってレースを進めていきました。

MGC出場権を巡っての日本人1位争いが大きく動いたのは30~35kmの区間でした。30km地点では、福士選手が先頭から59秒遅れで通過したあと、大森選手が1分41秒遅れ、さらに中野、阿部、田中智、田中華の4選手が2分07~08秒遅れで通過し、この段階ではこれらの6選手にMGC獲得の可能性がありましたが、その後、福士選手が、31.0kmを過ぎたあたりから立ち止まって屈伸しては再び走り出す仕草を繰り返すように。これに歩く動作も加わって35kmまでの5kmは24分02秒かかり18位まで後退。35.5kmでレースを取りやめました。また、30kmまで一団で進んでいた中野、阿部、田中智、田中華の4選手は、中野選手と阿部選手が2人で前に出て、両田中選手との差を広げていきます。2人はその後、大森選手に追いついて4位争いを展開しながら35km地点を迎えました。ややリードを奪い始めていた中野選手が2時間02分08秒で通過し、阿部選手と大森選手がそれぞれ1秒ずつ遅れて続きましたが、そこから中野選手がペースを上げ、単独4位に浮上します。中野選手は、40kmまでの5kmを17分57秒でカバーすると、最後の2.195kmは出場選手中最速タイムとなる7分34秒で走り切り、自己記録を4分02秒更新する2時間27分39秒(4位)でフィニッシュ。小原選手を除く日本人1位となり、MGC出場権を獲得しました。

中野選手に続いたのは阿部選手。単独5位を行くことになった35kmからの5kmで18分15秒までペースを落としましたが、ラスト2.195kmは中野選手に続き出場選手中2番目の7分38秒でカバー。しかし、2時間28分切りはならず2時間28分02秒で5位。わずか2秒足りずにMGC切符を逃す結果となりました。6位は田中華選手。2時間28分20秒以内でフィニッシュすれば、ワイルドカード(期間内の上位2つの記録の平均が、女子2時間28分00秒以内)により出場権を獲得できるところでしたが、記録は2時間28分42秒と22秒及ばず、こちらも手に入れることはかないませんでした。田中智選手は2時間29分03秒で7位、大森選手は2時間29分15秒で8位という結果に終わっています。

レース後の記者会見に臨んだ日本陸連の尾方貢専務理事と瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、「天候等の条件は悪くなく、また、メンバーからしても、複数の突破者が出てもおかしくない状況だった。前半も、中盤の走りも、そして展開を見ても悪くはなかった。なぜ、後半にこれだけの失速が起きたのかということを、我々はしっかり分析しなければいけない」(尾縣専務理事)、「寒かった、向かい風だったというのもあるかもしれないが、大記録を狙うわけではなく2時間28分という、いわば最低限の記録。あれだけの集団で展開していたにもかかわらず、(獲得者1名という)この結果というのはちょっとさみしい」(瀬古リーダー)と、それぞれに無念さを隠せない様子。瀬古リーダーは、2位となった小原選手に対しても、「いい持ちタイムを持っているだけに優勝してほしかったという思いがある。“勝負”という部分でまだ詰めが甘い」と、辛口の評価を寄せました。

優勝したサド選手は、小原選手の2度のスパートについたあと、38km手前で仕掛けた展開について、「スパートをかける力は残っていた。そこまでは(リードを奪った)小原選手の様子を見ていたわけだが、タイムを見るとちょっと遅くなっていると思ったので、これは自分が行かなければと思って前に出た」と振り返りました。また、東京オリンピックに向けての思いを問われると、「今回のタイム(2時間25分39秒)では、オリンピック代表に選ばれるのは、(2時間)19~21分台で走る選手がいる私たちの国では難しい。年間のランキングなども大切だが、まずはタイムが必要。これから自己記録を更新して、東京オリンピックに出ることを試みようと思っている」と答えました。

レース直後のインタビューで、「正直、不完全燃焼」とコメントしていた2位の小原選手は、レース後の会見でも笑顔は見られず、「今回は、“30km以降で勇気を持って仕掛ける”ことを課題に掲げていた。仕掛けてはみたが、行ききれなかったのは自分の弱さ。最後の勝負とか、そういう部分でまだ弱いところがあると思った」と振り返り、また、「(1秒差で代表入りを逃した)リオ五輪の悔しさを乗り越えられたか?」との質問には、「まだ通過点。乗り越えられたと言うためには、まだやっていかなければいけない部分がある」と答えていました。

なお、35.5kmで途中棄権した福士選手は、レース後、大会事務局を通じてコメントを発表。転倒は、前の選手と接触して起きたもので、脚をかばったために頭をぶつけてしまったこと。「25km手前で意識がモアーッとして」きたり、「足に乳酸がたまった感じがして」きたりしたため、「次のレースを考えて」途中棄権したことを明らかにしました。

このほか、今回初の試みとして導入された「ラップチャレンジ」(8位入賞者のなかから30~35kmのラップタイムが最も速かった選手に賞金を贈呈する)は、17分32秒をマークしたジェプキルイ選手が、サド選手と同記録ながら通過順位の差により受賞。賞金50万円を獲得しています。

 
 

【MGC出場権獲得者コメント】

◎中野円花選手(ノーリツ)
4位 2時間27分39秒 =日本人2位※
※MGC出場権獲得済みの小原選手を除き日本人1位

今日は、走る前から(同じノーリツの)小﨑まり先輩から「最低でも10kmまでは絶対に第2集団につくように」という指示が出ていたので、とりあえず10kmまでは集団につき、あとはきつくなったところでしっかり粘るレース展開をしようと考えていた。10km以降も思っていたよりつくことができたので、「これは挑戦するしかない」という気持ちで走った。

ハーフを73分くらい(2時間13分07秒)で通過したので、後半、「ここをしっかり粘れば、MGCはいけるかな」と思った。ただ、(MGC資格を取るためには)着順の関係もあって、自分がもし(日本人)4~6位だったら2時間27分00秒以内で走らなければならないので、それはちょっと厳しいかなとも思っていた。ラスト5kmくらいから沿道の方が、私の順位と今のタイムをずっと教えてくれて、その段階ではまだ30秒くらい遅かったのだが、自分のタイムがだんだんMGC(出場権獲得ライン)に近づいていき、ラスト2kmでチームの先輩たちが「残り10秒」と言ってくれたところで、「もう、これは脚が折れてもいくしかない」と思った。最後は、あまりタイムを考えずに、とにかく全力でゴールしようと走った。

正直なところ、MGC(出場権)が取れるとは思っていなかった。もともとベスト記録が低く、「最低でも(2時間)30分切り」と考えていたので、自分がMGCを取ったという実感もまだなく、これから実感が湧いてくるのかなという感じである。これからまた、まり先輩にたくさんアドバイスをもらって、さらにひと皮むけた姿を見せられたらいいなと思う。また、東京オリンピックに向かってという点では、自分よりもものすごく速い選手がたくさんいるし、自分はそのレベルにはまだ達していないと思っている。選考会の9月15日には、そういう速い選手の方々と、少しでも競えるように頑張りたい。

 

文:児玉育美/JAAFメディアチーム
写真提供:フォート・キシモト

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