2018.12.21(金)委員会

【競技者育成指針】説明レポート・コメント その2

【競技者育成指針】説明レポート・コメント その1 から



【競技者育成指針に基づく育成と強化戦略】
山崎一彦(強化委員会トラック&フィールドディレクター)


続いて、この競技者育成指針策定にあたって統括に当たった山崎ディレクターが、策定の背景や今後の方向性を示しつつ、具体例を挙げながら、指針について述べました。会議が各都道府県陸協と各協力団体の強化責任者を対象にしていたこともあり、特に、育成と強化戦略の側面に焦点が絞られての説明となっています。

本レポートをご覧になる方々に向けて、以下、少し補足します。

この競技者育成指針は、一人でも多くの人が陸上競技を楽しみ、極め、また、少しでも長く続ける、見たり支えたりするなどしてかかわり続けていけるよう、生涯を見通して長期的展望に立った競技者育成の方向性を具体的に示すものとなることを目指して策定されました。

詳しくは、リーフレット(http://www.jaaf.or.jp/development/model/)に記載されていますが、そこでは、日本陸連が目指すこれからの競技者育成の方向性として、以下の6項目が挙げられています。

<競技者育成の方向性>
1.陸上競技に接する幅広い機会の提供
2.基礎的な運動能力を適切に発達させるための活動支援
3.多様なスポーツおよび複数種目の実施を奨励
4.他者との競争、記録への挑戦を支援
5.あらゆる年齢区分における質の高いコーチングの提供
6.国際的な競技力向上のための適切な強化施策の実施
また、策定に当たっては、その過程において、特に、子どもや中学生、高校生年代の若い陸上競技者を取り巻く現状や課題について、さまざまな観点からの分析・検討がなされました。その結果、競技者がその育成過程において、心身ともによりよく成長していくことを促すために、年齢(学年)や発育発達段階を考慮した6つのステージに区分。各ステージにおける具体的な明文化しています。

<競技者育成のための6つのステージ>
・ステージ1:幼稚園・保育所など(0~6歳):楽しく元気に体を動かす(身体リテラシーの育成スタート)
・ステージ2:小学校期(6~12歳):楽しく陸上競技の基礎をつくる(身体リテラシーの継続的な育成)
・ステージ3:中学校期(12~15歳):陸上競技を始める・競技会に参加する
・ステージ4:高校期(15~18歳):競技会を目指す&楽しみのための陸上競技
・ステージ5:大学・社会人期(18歳~):ハイパフォーマンス陸上:高い(究極の)競技パフォーマンスを目指す/ウェルネス陸上:陸上競技を楽しむ
・ステージ6:生涯:アクティブアスレティックライフに向けて


尾縣専務からも説明があったように、この競技者育成指針は、「JAAFビジョン」に則っている。おそらく(指導に当たっている)先生方も私たちも同じ気持ちで現場の選手たちを指導していて、そのなかで、さまざまな問題点だったり疑問点だったりを感じてきたと思う。そこには、さまざまなこと…本当に小さなことから大きなことまで…があり、私たちではできないこともある。まずは、そういった事柄を整理して、きちんと根拠に基づいてつくったのが、この競技者育成指針である。

以前に、「タレントトランスファーガイド」(http://www.jaaf.or.jp/development/ttmguide/)を発行したが、そこでも年齢の問題だったり、育成期の問題だったりをはらんでいた。それらをうまく解決して、選手たちが長く楽しんで陸上競技を取り組んでいけるようにしたい。そうしたなかで、長く競技を続けていけば、競技力の高い選手は必ず出てくる。そういう思いもあって、まずは指針としてまとめた。

今回の「競技者育成指針」に挙げているのは、まだ抽象的で、原石ともいえる本当にベーシックな内容である。これから具体的に、ここにいらっしゃる強化責任者の皆さんと陸連が一緒になって形にしていくことが、一番の大きなミッションだと思っている。

どんどん変わっていく環境に対応して、私たち自身で陸上競技をより良くしていくことが大切。また、東京オリンピックがあるけれど、そのあとのことを考えた準備は、私たちがやっておかなければならない。東京オリンピックを機に「陸上競技ってすごいね」ともっと言われるようになってほしいと願っているが、もし、オリンピックで選手たちがメダルをたくさん取ったり多くの感動を与えるような活躍をしたりしても、それを見た人たちのすぐ近くに「周りに(陸上を)できる場所(環境)がない」ようでは、盛り上がりはそこで終わってしまう。
なので、これからの2年の間に、東京オリンピックで選手たちが活躍することを目指していくのと並行して、その東京オリンピックに影響を受けた選手や子どもたちが、地元ですぐに競技ができるような整備をしていきたい。そのためにも、私たち指導者がどんどん変わっていき、いい形をつくっていくことができればと思う。


◎発育発達段階であるステージ2~4を、より魅力的なものにする

ここでは、「育成と強化戦略」というところで話をさせていただく。今回、出席されている方々が一番多くかかわっているのは、主にステージ3(12~15歳:中学校期)とステージ4(16~18歳:高校期)、これに加えてステージ2(6~12歳:小学校期)ではないかと思う。これからの陸上界を考えていくとき、この「ステージ2、3、4」が核になってくる。これを陸連だけで何かをやるというのは無理。都道府県すべてでステージ2、3、4、特にステージ3と4を魅力的にしていくことを考えていきたいと思っている。

<ステージ2~4の年代と指針>
■ステージ2:小学校期(6~12歳):楽しく陸上競技の基礎をつくる(身体リテラシーの継続的な育成)
・学校体育(クラブ活動)や地域スポーツクラブ等での活動を通して、引き続き、運動遊びやスポーツ活動に親しみ、楽しさを味わうことを重視する。
・陸上競技の走跳投種目を導入しながら、スポーツスキルと体力のバランスのよい発達を促すことにより、身体リテラシーの育成を継続する。
・発育発達の個人差の影響が最も大きい時期であることから、他者との比較のみに偏ることなく、自己の記録に挑戦する「楽しさ」を通して運動有能感や自己効力感を養うことにより、その後の陸上競技の継続へとつなげる。
・より多くの子どもたちに陸上競技に接する機会を提供するために、種目設定や演出を工夫し、誰もが気軽に参加できる競技会を開催する。
・過度な競争や強化が助長され、子ども達への負担が高まることを避けるため、専門的なトレーニング方法や競技会への準備は避けるとともに、地元・地域(都道府県)レベル以下の競技会参加を推奨する。

■ステージ3:中学校期(12~15歳):陸上競技を始める・競技会に参加する
・学校部活動や地域スポーツクラブでの活動を通して、身体リテラシーの育成に配慮し、陸上競技の複数種目や他のスポーツを楽しむことを継続する。
・陸上競技に必要な技術や体力の発達を促すために、走跳投種目全般にわたるトレーニングを段階的に開始する。
・陸上競技のルールやマナー、トレーニング方法や競技会への準備などの基礎を学び始める。
・引き続き、発育発達の個人差は大きく、男女差も大きくなる時期であることから、それらが競技パフォーマンスに及ぼす影響を十分に理解し、バーンアウトやドロップアウトを起こさせないように注意する。
・オリンピック(シニア)種目にこだわらない種目(負荷)設定による競技会を開催する。
・地元・地域(都道府県)レベル以下の競技会参加を中心とし、個人の発育発達に応じたトレーニングや適正な競技会の出場回数を検討しながら、オーバートレーニングや競技会過多にならないように留意する。

■ステージ4:高校期(15~18歳):競技会を目指す&楽しみのための陸上競技
・陸上競技の最適種目への絞り込み(2 〜3種目)を開始し、単一の種目に特化した強化に偏ることなく、引き続き身体リテラシーの育成に留意する。
・高いレベルの競技会を目指し、最適種目のための技術・体力を高めるための専門的なトレーニングへ段階的に移行するとともに、競技会への準備を学び、実践する。
・個人の能力や競技レベルに応じて地域(都道府県)レベルから全国レベルの競技会へ参加する。
・オリンピック(シニア)種目にこだわらない種目(負荷)設定による競技会を開催する。
・トレーニングの専門化に伴いスポーツ障害等が発生しやすいステージでもあることを理解し、トレーニング負荷(トレーニングの量・強度など)や競技会参加(出場大会数、レース数、種目設定など)の調整によりオーバートレーニングを回避する。
・依然として発育発達の個人差が認められる時期であることから、競技パフォーマンスにこだわり過ぎないように配慮するとともに、競技力のピーク年齢を想定した長期的展望に立った育成計画を立案する。


◎指針やステージに応じた競技会、競技種目を設定する


現状で、ステージ3、ステージ4においては、多くの競技会が実施されているが、特にステージ3の段階の子どもたちでは、個人差がたくさん生じることが課題となっている。これは、年齢の差もあれば、同じ年齢でも生れ月によって違いがある。また、1年ごと、あるいは半年ごとで全く違うパフォーマンスが出てくるということも、実際に現場で指導に当たっておられる皆さんであれば、ご存じだと思う。成長によって日々身体が変わっていくなかで才能がいろいろと見え隠れしている状態。ここをまず見抜き、導いていくことが必要となってくる。

そんななか、まず、私たち陸連として進めていくことができるのは「競技会や競技種目の設定」である。

今までの実績としては、ステージ4にあたる高校のほうですでに進めている。8月末に大阪で実施している全国高校選抜陸上では、いろいろな種目をやったり、種目によっては高さや距離を変えてみたり、重さを変えてみたりしている(大会の目的・実施種目は、http://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1271/に記載)。現場はかなり困惑されたと思うが、そうした取り組みによって、我々コーチに変化があれば選手も変化するし、コーチングもまた変化していく。そういう形で進めていきたい。

また、ステージ3では、指針にも記載しているように、特にオリンピック(シニア)種目にこだわらない種目設定が必要になると考えている。この年代においては、結局は、種目を実施すること自体が負荷になってくるので、負荷をさまざまに変えながら、適正な負荷を考慮してやっていくことが重要である。

ジュニアオリンピックでは、今回、年齢区分を変えて、アンダー制での実施とした。従来の学年区分で行っている全日中やインターハイは、出場資格が年度区切りの4月生まれからとなっているが、西暦年で区切るアンダー制になると1月生まれからとなる。学年で区分すると、早生まれ(1~3月生まれ)の子どもたちが、成長期において極端に活躍ができないということがデータとしても出ており、そのために陸上競技から離れていくケースも見られたが、アンダー制で区分する競技会を行うことによって変化が生じる可能性がある。そういった意味で、特に中学校期では、(年度区切りでの参加資格となる)全日中で活躍する子、(アンダー制による参加資格となる)ジュニアオリンピックで活躍する子の2つがあっていいと考えている。まずは、たくさんの子どもたちが全国大会に出られる、たくさんの子どもたちが都道府県の大会に出ていける。そういう形になっていけばいいという考えで進めている。


◎陸上競技を「始める」「続ける」きっかけを増やす

先日、跳躍のミーティングがあった際に話題になったことだが、私の同級生で、走幅跳で今も日本記録を持つ森長正樹さん(日本大学、男子走幅跳オリンピック強化コーチ)が、自分は早生まれで、実は中学校まで野球をやっていて、中学3年のときに全日中に行けることになったことがきっかけで、高校に進む際、野球をやめて陸上を始めたと話していた。また、三段跳のオリンピアンである杉林孝法さん(金沢星稜大学、男子三段跳オリンピック強化コーチ)の場合は、彼も早生まれで成長が遅く、中学校では全然記録が伸びなかったが、身長が伸び始めた秋になって、やっと県大会に行けたことで、陸上を高校でも続けようと思ったそうである。

このように、この年代では、ちょっとしたきっかけが陸上競技を続けるかどうかに大きく影響してくる。現在、実際に統計をとっているところだが、どうやら県大会に行けたかどうかは、その大きなきっかけとなるようで、県大会に行けなかった子どもの大半は、そこで陸上競技をやめてしまう傾向がある。まずは県大会に出場する、あるいは入賞・優勝する者を増やしていく必要があるということ。オリンピック種目にこだわらず、さまざまな種目設定で実施することで、その人数は増やしていくことが可能となる。

出場資格の区分を変えたジュニアオリンピックでは、今後は、種目の設定も見直していければと考えている。また、将来的には、全日中についても、中体連と協力しながら一緒になって進めていければと思っている。

高校期にあたるステージ4についても、ステージ3に続いて、オリンピック種目(シニア実施種目)にこだわらない種目設定を検討していく必要があると考えている。また、このステージでは、自分の専門種目を1つに絞ってしまうのではなく、得意種目を2~3種目持ってそれらに取り組み、その後のステージで選択していけるような競技の取り組み方を促進していきたい。

今のところ、陸連がすぐに実施できるのは、競技会や種目の設定だが、今後は、この指針に則って、さまざまなことを変えていくことができればと考えている。具体的なものはまだできていない。しかし、この競技者育成指針を読んでいただければ、我々が目指そうとしている大きな方向性は受け取ってもらえると思う。先生方の力で、いい競技会、魅力ある競技会をつくっていただきたい。そのステージごとに、その年代の特徴に応じた種目設定を行うことで、選手たちにいい負荷をかけながら進めていけるようにしたい。それによって長く陸上競技を続ける選手を増やしていくことは、2040年までに世界3位となるための選手強化と同じであることを認識して、一緒に取り組みを進めていただければ思う。


◎300m、300mHの実施について

山崎ディレクターは、上記の説明ののち、競技設定変更の具体例として、すでに成果が表れ始めている110mHをU20規格で実施した例を挙げながら、今後、導入が予定されている300mと300mHについて、実施の理由や背景、期待される成果を説明しました。

・300m導入の背景:前半を20秒台で走れる400m選手を増やす
男子110mHは、インターハイではハイハードル(オリンピックと同じ正規の規格)で行われているが、これは、歴史的にはジュニアハードル(U20規格)での実施からハイハードルへと変わっていった経緯がある。そこで能力の高い選手たちが記録を残してきたわけだが、その一方で、世界記録と日本記録の割合でいくと短距離種目では一番開きがある状態となっている。これを解消していくために、U20年代の選手が、まずは「速く走る」ことを体感できるよう、U20日本選手権では110mHをU20規格での実施とした。当初は、反対する声もあったが、記録は大幅に短縮できており、今年は13秒1台の新記録(13秒19)が出て、上位選手が13秒3台で走るのは当たり前になってきた。この設定は、今後、変化することもあるかもしれないが、とにかく今は、「速くしよう」という戦略、そして、世界の入賞レベルの記録を早めに出していこうという戦略が、今のところ、うまく進められている状況にある。

強化戦略という点では、U18、U20年代からシニアへと一貫して練っていくことが必要である。そのなかで、現在、課題となっているのが男子4×400mR。もともと、男子のリレーでは、4×100mRよりも早く世界で入賞しており、以前は「4×400mRのほうが世界に近い」とも言われていた。しかし、2004年のアテネオリンピックで4位になって以降、なかなか成績を残せなくなってしまった。その背景には、世界の強豪国の走り方に変化が出てきていることが挙げられる。レースを分析すると、世界トップ3の国の選手は、2011年以降は、最初の入り(200m)を20秒台で入るようになってしまっているのに対して、日本は変化がない状態になっており、この結果、どうしても前半で後れをとり、それによって記録が出せない状態になっている形が続いている。

タイム短縮のためには「スピード化」は必須だが、どういうスピード化が求められるのかと考えたとき、上記の分析結果により、前半からスピードを出せるような戦略をとる必要があるということがわかった。2014年の仁川アジア大会では、藤光謙司選手(ゼンリン)や飯塚翔太選手(ミズノ)といった200mの選手を投入し、近年では一番速いタイムをマークして金メダルを獲得した。また、今年のジャカルタ・アジア大会においても、小池祐貴選手(ANA=当時)、飯塚選手を起用し、このレースで飯塚選手は44秒台のラップ(44秒64)で走っている。

世界選手権やオリンピックになると、前半を20秒台で入る力が必要で、そのためには200mのフラットレースで20秒台中盤くらいの記録は持っていないと対応できない。このような背景があり、男子短距離は、アジア大会では200mの選手を投入したが、来年の世界リレー、世界選手権では、こうした走力を持つ選手を必要としており、シニアにおいても、300mを重要視している。つまり、400mでは、スピードを出せる選手、またはスピードを意識しながらレース展開できることが求められており、育成の段階から、そうした植えつけが必要であるという考え方。速いスピードで耐えられることを植えつけていくことが求められるという状況である

こういう戦略で、ここ何年かは続けてきているが、来年のドーハ世界選手権、そして2020年東京オリンピックまでは、この方針で続けていくことを浸透させようということで、育成(アンダー)のほうでも、練習でよく使われている300mを種目として採用し、シーズン初めなどに気軽に試合に出られるようにしていきたいと考えている。現在、400mの世界記録保持者(43秒03)であるウェイド・バンニーキルク選手(南アフリカ)は、いつも世界選手権やオリンピックの前は300mで調整して400mに参戦し、優勝するとともに世界記録もつくった。300mを取り入れながら400mにつなげた成功例といえる。彼はまた、300mでも世界最高記録を持っており(30秒81)、100mは9秒台(9秒94)、200mは19秒台(19秒84)で走っている。U20年代のころは200mの選手で、そこから移行して400mで世界的な選手となっていることも含めて、1つの理想形といえる。我々も、その理想に近づけるようにしていきたいと考えている。

・300mH導入の背景:戦術変更を必要としない育成を目指す
会場準備に手間がかかるという問題もあり大変なのだが、導入をお願いしたいのが300mH。なぜ、300mHなのかというと、各ハードルクリアランスの際のタッチダウンタイムを測ると、高校年代で400mHを行うと、前半をゆっくり入って後半タイムを上げていくレースパターンとなってしまうから。その後、シニアで戦っていくようになったとき、高校で培ったレースパターンから大きく戦術を変えなければ、世界レベルには到達しないという現実がある。

私も大学の現場で指導しているが、パターンを変えて、もう1回やり直していくような形になるので、大学の年代でこの戦術を変えるのにとても苦労する。なので、そうならないようにすることが理想といえる。日本選手で、その必要がなかったのが為末大選手(高校記録49秒09→日本記録保持者47秒89)。彼の場合は、高校時代から走力(400m45秒94)があり、400mHでもシニアで戦っていくのと同じパターンの走りができていた。

育成の年代で300mHを実施することによって、レース戦術を変えなければならないプロセスが不要になるというのが、今回の戦略の1つ。実際に300mHで実施している全国高校選抜陸上においても、インターハイ、国体で勝っていない選手が、13歩のインターバルで勝っている。U18年代で300mHに取り組ませるところから、うまく戦略を練って、長期的に強化していければと考えている。

主要な大会ではまだ実施はできていないが、陸連が主催する年代別の競技会においては、300mや300mHを実施していこうとしている。また、現在、種目検討を進めているところである2020年の鹿児島国体では、最終承認には至っていないものの、300m、300mHを採用する方向で議論を進めている。それぞれの現場において、周知をお願いしたい。



【質疑応答、現場からの意見】

説明終了後には、質疑応答、意見交換が行われ、下記の内容が議論されました。

・300mHにおいて、強化では実施したいと考えているが、設置のポイントが取りにくいということで、なかなか技術・総務の理解を得ることが難しい。陸連としてもぜひ後押ししてほしい。

→会議に同席していた鈴木一弘競技運営委員長より、「施設用器具委員会の案件となるので、競技運営委員会と協力してできるだけ簡単に、速やかに設置できる方法を提案できるよう努力したい」との回答があった。


・300mHの設置位置の問題。現状で国内では、スタートから第1ハードルまでを45mにすることで、その後のハードル位置を元々の400mHポイントからすべて5mずらす必要があるため、煩雑になっている。しかし、海外では第1ハードルまでを50mにして、以降の設置に400mHのポイントを用いているケースや、ハードルの台数が日本よりも1台少ないケースなどが見られた。①第1ハードルまでを50mにすることを採用してもよいのではないか、②ワールドポイント制等で300mHが400mHのシミラー種目となる可能性があるのか? もし、ある場合は、そこで採用される規格に合わせたほうがよいのではないか。

→山崎ディレクターから「ワールドランキングについては、今のところ300mHは入っていない」との回答があったのちに、第1ハードルを50mにした場合のメリットとリスクが検討された。「1台目までの歩数が変わるため400mHと違ってしまう」という懸念もある一方で、「スピードを求めて導入することを考えると、よりスピード感を持って第1ハードルに入れて、かえって望ましいのではないか」という声も。また、競技運営上の面を勘案すると、従来の400mHの設置ポイントを使用できる50mでの実施を歓迎する意見も上がった。最終的に、山崎ディレクターから「ルールの問題にも関係してくることなので、一度持ち帰り、どうするのがよいのかを検討したい」との回答があった。


・男女混合4×400mRについて、国体で実施する場合、5日間の日程のなかで、決められた29名の枠のなかで設定していくというのは、どの県でも難儀していると思う。また、タイムテーブルを組む段階で、競技運営のほうから苦しいという意見も出ている。まだ決定ではないと思うが、こちらも検討を進めてもらいたい。

・男女混合4×400mRについて、国体で実施する場合はエントリー条件に配慮してほしい。リレーの現行の構成条件(成年2人、少年2人)では、競技者が少ない県ではエントリー自体ができなくなる。成年を1人にするなど柔軟に考えていただきたい。また、4×100mRも種目として残る場合、選手の負担も大きくなる。4×100mRの準決勝を実施するかどうかも含めて検討してはどうか。トップ選手をつぶさないような日程を考えてほしい。

→山崎ディレクターから「この意見も、競技者育成指針に沿って考えるなら指摘の通りで議論が必要。ぜひ検討させてほしい」との回答があった。


・国体で300mHを行う場合、各都道府県ともに現実問題として、選考会をどうするかという話になると思う。200m、400m、400mHなどの他種目でも出場資格を認めてほしい。

→山崎ディレクターより、「技術的に可能」として検討を進めるとの回答があった。


・300mや300mHの実施と強化戦略との関係の話は、非常にわかりやすく重要であることが理解できた。300mについては、出雲陸上と国体だけでなく、例えばグランプリシリーズなどで採用することも検討してはどうか?

→山崎ディレクターより「強化戦略上でも非常に重要なので、理解してもらえるなら300mは増やしていければと思っている」との回答があった。


・U18の日本戦選手権に4×100mRがあるが、年齢で区切っているため、資格を得られても高校1年生の早生まれは出場できない。競技者が非常に少ないチームでは、1人いなくなると出場自体ができないという事態が生じる。可能であれば、生年月日プラス学年という形で組み合わせることできないか。

→山崎ディレクターより、「個人種目については、ジュニアオリンピックをアンダー制のカテゴリーとしたことで、高校1年生の1~3月生まれも出場できることになった。高校1年生の活躍の場がないと聞いていたので、ここを目指すことが可能になったと考えている。一方で、リレーのほうは、そうした隙間が生じてしまう。今後、強化育成部と話をして検討したい」との回答があった。


【山崎ディレクターコメント(要旨)】

なお、今回、この競技者育成方針説明のセッションについては、メディアの立ち入りが許可され、公開のもとで行われました。セッション終了後には、山崎ディレクターが囲み取材に応じ、以下のコメントを寄せました。

特に、育成の年代おいては、シニアで実施している種目にこだわる必要はない。その時期には、選手の本当に適性は、まだわからないわけで、子どもたちがいろいろな選択をできる状況にあったほうが、より望ましい。特に陸上競技の場合は種目が多く、いろいろな選択ができることが特徴。それらをいろいろと選んで取り組んでもらいたい。それは、例えば、中学生の年代で、100mで9秒台を目指されても困るということ。将来的に9秒台で走れる競技者に育つためには、そこまでに、いろいろな運動を経験しておくことが大事。それを中学校のときに、やっておいてほしい。また、いつも100mのための練習をしていると、身体は金属疲労を起こしてしまう。そうならないために、「ハードルをやってみよう」「跳躍種目をやってみよう」「投てきをやってみよう」といったように、あらゆる動きをやることが必要な時期であることは、発育発達の観点から、どのスポーツでも言われている。陸上競技で「早期専門化」はやらないということである。

特に、子どもの場合は、早生まれだと、運動ではどうしても勝てない。そうすると自然に運動から遠のいてしまうもの。そこを、例えば、早生まれの子たちだけで競う機会を設けたら、勝つ経験を味わえるかもしれない。そういう“有能感”はとても大切。得意不得意は別として、小さいころに芽生える有能感というのは、大人がつくったルールによって植えつけられてしまうもの。子どもたちの有能感が育ちやすいように、さまざまなルールをつくりたいという思いがある。

この指針に則った取り組みが進めば、今後、もっと活躍する早生まれの子どもが増えていく可能性はある。陸上競技の場合は、今、わかっているのは、高校3年生くらいにならなければ、オリンピックや世界選手権に行けるかどうかは見えてこないということ。もし、突出する才能を持っていたとしても、それが表れ始める前、例えば中学時代に、「勝てないから」「記録が伸びないから」と競技をやめてしまうと、その才能は見いだされないままになってしまう。

つまり、中学年代では才能はまだ隠れていて、すべて見えているわけでないということ。才能が見えてくる前にあきらめてしまうことがないように、子どもたちが陸上を続けていけるような競技会を設定していきたい。レベル2~4の年代では、全国大会で、というよりむしろ県や地域レベルで魅力的な競技会を実施して、そこで「メダルがとれた、1番になった、入賞した」という経験を増やせるようにしたい。子ども自身も絶対に嬉しいはずし、そういうレベルであれば、周囲(親、指導者)も含めて過剰に頑張らないなかでの成功体験ができる。そうした機会を増やしていければいいと思う。

競技者育成指針を策定することになったのは、まず「JAAFビジョン」が出たことが背景にあるが、もともとはプロジェクトとして、ずっと以前から取り組んできたことが土台になっている。まず、タレントランスファーマップをつくったが、これだけでは足りないと思った。というのも、タレントトランスファーマップというのは一部分の話なので、もっと全体を見ていく必要があると考えた。そうしたなかで「JAAFビジョン」が出たので、それに則って進めていく形となった。

競技者育成については、陸連としては、今までも「競技者育成プログラム」を作成し、これを2年ごとに更新するなど、いろいろと努力してやってきている。しかし、それがなかなか広く伝わっていかなかったという面があり、また、プログラム自体にも全体統制がとれていないところがあった。それらを解消して、よりよく進めていくために、まずは、根幹となる指針を出そうということで、専務から指令があった。

指針自体は策定できたが、まだ、原石といえる状態で、ここからが本当の意味でのスタート。各論でやりたいことは、たくさん持っているが、まずは根拠に基づいて整理したにすぎない段階である。今後、この指針に基づき、競技会を変えるなどしていく。また、その具体的なロードマップも、これからつくっていくことになる。長い道のりになると思うが、今までの反省から、発行物をつくっても実行できないと仕方ないと考えている。まずは、この指針に基づいた競技会運営を進めようとしているが、さらに、指導者の育成、指導法の確立なども、やっていくべく動き始めている。


(文・構成、写真:児玉育美/JAAFメディアチーム)

※本内容は、12月3日に実施された全国強化責任者会議のなかで行われた競技者育成指針説明のセッションでの口頭発表、および質疑応答をまとめたものです。公表された競技者育成指針の概要や方向性を、より正確に伝えることを目的として、補足説明を加えるとともに、掲載順序の変更、口語表現の削除等を含め編集しています。

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