2018.12.10(月)大会

【さいたま国際マラソン】レポート:今田麻里絵(岩谷産業)が日本人トップの4位



第4回さいたま国際マラソンが12月9日、埼玉県さいたま市のさいたまスーパーアリーナを発着点とする42.195kmのコースで開催されました。

2020年東京オリンピック代表選考に向けた「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズ2018-2019」として、2019年ドーハ世界選手権女子マラソンの日本代表選考会も兼ねて実施された代表チャレンジャーの部は、終盤で、ともにエチオピアからバーレーンに国籍を移しているシタヤ・ハブテゲブレル選手とダリラ・ゴサ選手とのマッチレースに。残り200mでスパートしたゴサ選手がハブテゲブレル選手を突き放し、2時間25分35秒で優勝しました。

日本選手は、4位でフィニッシュした今田麻里絵選手(岩谷産業)が自己新記録を更新する2時間29分35秒をマークして日本人トップとなりましたが、今大会におけるMGC出場条件となる「日本人1~3位で2時間29分00秒以内」のクリアはならず。この大会からのMGCファイナリストの誕生は、前回に続いて、今回も実現しませんでした。



今大会は、10~11月に実施される実業団駅伝各大会との重複を解消すべく、日程を従来よりも1カ月ほど後ろにずらしての開催に。また、他のMGCシリーズ指定大会に比べると起伏が多いとされていたコースについても、これまで上り基調だった終盤が下り基調になるように一部変更したほか、2大会ぶりにペースメーカーも導入されました。

レースは、午前9時の気象状況が、天候曇り、気温9℃、湿度35%、北の風1.1m(主催者発表のデータによる)と、12月下旬ごろの条件のなか午前9時10分にスタート。ペースメーカーには、第1回大会(2015年)で日本人トップとなる2位の成績を収めたこともある吉田香織選手(現TEAM R×L)のほか、ハーフマラソンで1時間7分台の自己記録を持つケニア人選手2名が起用され、1km3分27~28秒の設定(2時間25分30秒~2時間26分30秒想定)で、最長30kmまでトップ集団を先導することとなりました。

最初の1kmが3分23秒(速報値、以下同じ)と、設定を上回る入りとなったこともあり、先頭グループはその段階で、ペースメーカーを除いて9名(外国人招待選手4名と日本選手5名)となりました。その顔触れのまま、5kmを17分13秒で通過、10kmは34分33秒(17分20秒=この間の5kmのラップタイム、以下同じ)で通過しましたが、9km手前あたりから下門美春選手(埼玉陸協)がやや遅れ始め、先頭グループの日本選手は、床呂沙紀選手(京セラ)、清田真央選手(スズキ浜松AC)、今田麻里絵選手(岩谷産業)、吉冨博子選手(メモリード)の4名となります。起伏もあって、8~9kmが3分24秒、以下、1kmごとに3分45秒、3分29秒、3分35秒、3分17秒とペースが乱高下した影響を受けて、この間には出場した日本選手のなかでトップの持ち記録(2時間23分47秒)で2017年世界選手権代表の清田選手、自己記録が2時間32分00秒の今田選手、同じく2時間30分09秒の吉冨選手らが先頭から少し離される場面も。清田選手、今田選手は集団に戻ったものの、吉冨選手は14km過ぎで完全に遅れてしまう形となりました。

ペースメーカーを除いて外国人選手4名、日本人選手3名となった先頭集団は、15kmを51分54~55秒で通過しましたが、16kmまでに清田選手が大きく遅れてしまいます。20kmは、2時間26分台前半のフィニッシュタイムが見込める1時間09分22~23秒で通過。自己記録が2時間32分00秒の今田選手、2時間33分41秒の床呂選手にとってはかなりのハイペースの展開ですが、15kmを過ぎて段階でやや離れかけていた差を取り戻し、集団の後方についてレースを進めていきました。

20kmを1時間09分22秒で通過したところで、2時間24分16秒の自己記録を持つファツマ・サド選手(エチオピア)が脇腹を押さえながら立ち止まって脱落。ペースメーカーを除き6人となった先頭集団は、中間点を1時間13分09秒(速報値)で通過しましたが、23kmを過ぎたあたりから床呂選手と今田選手が徐々に遅れ気味となります。その差は、25kmの地点で14~15秒(1位は1時間26分46秒、4位の床呂選手が1時間27分00秒、5位の今田選手は1時間27分01秒で、それぞれ通過)に広がり、以降はこの2人が4・5位で日本人トップを争う展開となりました。

日本人トップを競う2人の並走は、29km過ぎの給水で今田選手が前に出ると、その差をじわりじわりと広げていきます。30kmでは2秒差だった2人の差(今田選手1時間45分09秒、床呂選手1時間45分11秒)は、そこから大きく広がり、35kmでは55秒差に。2時間03分09秒で通過した今田選手は、MGC出場権獲得圏内のペースを維持しますが、2時間04分04秒で通過した床呂選手はやや厳しい状態となりました。単独走となった今田選手は、35~40kmの5kmを18分18秒にペースダウンして40kmを2時間21分27秒で通過。この時点で、フィニッシュ予測時間は2時間29分13秒になってしまいました。残り2.195kmを8分08秒でカバーして、自己記録を2分25秒更新する2時間29分35秒で日本人トップとなる4位でフィニッシュしましたが、資格条件となる記録(2時間29分00秒以内)には35秒届かず、MGC出場権の獲得はかないませんでした。これに続いたのは清田選手で、37.7km地点で床呂選手をかわして2時間31分07秒(5位)でフィニッシュ。2時間32分11秒の自己新記録をマークした床呂選手が、日本人3位の6位でレースを終える結果になりました。

一方、優勝争いは、ペースメーカーが外れた30kmの段階で、前回2位で4月には2時間24分51秒の自己記録を出しているシタヤ・ハブテゲブレル選手(バーレーン)、2014年のユースオリンピック女子1500mで銅メダルを獲得したのを皮切りに、2015年世界ユース選手権で1500m2位)、2016年U20世界選手権では3000m2位、5000m7位の成績を残し、初マラソンとなった4月のローママラソンで2時間26分46秒(2位)をマークしている20歳のダリラ・ゴサ選手(バーレーン)、5000mでオリンピック、世界選手権でメダル獲得の実績を持つシルビア・キベト選手(ケニア)の3人に絞られました。35kmを2時間01分52秒で通過しましたが、35.6kmでキベト選手が脱落し、ここからはエチオピアからバーレーンに国籍を移したハブテゲブレル選手とゴサ選手のマッチレースとなりました。スプリント力に勝るゴサ選手を突き放すべくハブテゲブレル選手が先頭に立ってリードを広げようと、35~40kmを16分32秒までペースを引き上げますが、その差を開くことができません。2人はともに40kmを2時間18分24秒で通過、残り200mを切ったところでゴサ選手が前に出ると、一気に差を広げて2時間25分35秒の自己新記録で優勝。ハブテゲブレル選手は、3秒差で敗れた前回に続いて、またしても4秒差で2位(2時間25分39秒)でのフィニッシュとなりました。


目標として掲げていた2時間24分台突入は果たせなかったものの、2回目のマラソンを自己新記録で制したゴサ選手は、レース後の記者会見で、「風が正面から吹いていたので、それが私にとっては大変難しかった。このため、後方でレースを進め、フィニッシュが見えてきたところで1位になってやろうと思って走った」と振り返り、東京オリンピックに向けては、「スピード、持久力ともにしっかりとトレーニングを積みたい。出場種目は、マラソンになるかもしれないし、10000mになるかもしれない。いずれにしても優勝できたらいいなと思う。タイムは、マラソンであれば2時間20~23分を、トラック種目の場合もそれに匹敵する記録を目指したい」と意欲を見せました。



自己記録を大幅に更新して日本人1位の成績を収めたものの、わずか35秒でMGCファイナリストの座を逃した今田選手は、「日本人トップは嬉しいが、その半面、MGC出場権獲得を狙っていただけに、廣瀬永和監督の顔を見た瞬間に(悔しさから)涙が出てしまった。少し時間が経った今は、もっと悔しい気持ちがどんどん押し寄せてきている」とコメント。レースについて、「今回は、しっかりと練習してのスタートになっていたので、日本人トップと、MGC出場権獲得を第一の目標と考えていた。日本人トップ争いに加わっていくことを意識してレースを進めたが、思っていたより前半が早く、ハーフは自己ベストを上回るタイムとなった。後半の風の強さやアップダウンも把握していたので、不安もあったが、なるべく力を使わずに行くことを心がけた。京セラの選手(床呂選手)と一緒に走っているところでは、まだ2時間28分を切るタイムが見えていたので、2人で押していけたらと思っていたが、風と上り下りの影響で、特に左脚が痺れ始め、なかなかうまく動かなくなってしまった。しかし、マラソンは2本も3本も挑戦できるわけではないので、この1本を無駄にしたくないという気持ちだけで、ちょっとした可能性にかけて、最後まで走りきった。それが日本人1位につながったと思う」と振り返り、「MGCの切符は獲得できなかったが、実現の兆しは見えてきたので、また次回に挑戦できればいいなと思う」と前向きな言葉を残しました。



この結果について、「期待していたMGC獲得者がゼロに終わって寂しい思いがある」と述べた瀬古利彦・日本陸連強化委員会マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、日本人トップとなった今田選手について「2時間28分を切る力があると感じた。次の試合に期待したい」と評価しましたが、一方で、「全体的に見て、30kmから(5kmのラップが)18分かかってしまっている。まだまだスタミナが足りない。そのあたりをこれからの練習で解消してほしい」と要望。また、「この大会で、MGC獲得者が1~2人が出てくれればと考えていた」という河野匡長距離マラソンディレクターは、「この大会については、コースと風を考慮して、ほかの大会よりも設定タイムを1分遅くしているので、今日の風であればクリアしてくれるのではないかと思っていた。いろいろな理由はあると思うが、正直なところ私にとっては悔しい結果」とコメントしました。記録的に十分にクリアできると見込まれていた清田選手について、「初マラソンとロンドン世界選手権以降、ややマラソンを難しく考えているのかなという感じがした」と評価。今田選手、床呂選手については、「このコースで、自己記録を更新したことは評価できる」と述べました。また、「世界で戦うために我々が設定したタイムに、近づいてきている選手が育っていることに対しては一定の評価をしたいが、東京オリンピックを目指すためには、このタイムをクリアした上で戦えるようにならなければならない。今回の結果をもとに、さらにチャレンジする場合は、次の機会までにしっかりつくり上げてほしい」と、今後、予定されている大阪国際女子マラソン、名古屋ウィメンズマラソンに向けて、期待を寄せていました。


文:児玉育美/JAAFメディアチーム
写真提供:フォート・キシモト
写真:アフロスポーツ

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