2018.07.26(木)選手

【男子短距離欧州遠征レポート】選手インタビュー③ 山縣亮太(セイコー)

ロンドンダイヤモンドリーグ(以下、ロンドンDL)男子4×100mRへの出場をメインとして、その前後で各選手がヨーロッパを転戦した男子短距離欧州遠征。その期間中に実施した特別インタビューをお届けしていますが、第3弾は山縣亮太選手(セイコー)です。



山縣選手は今回、マドリッドを拠点とした本隊とは別に、7月13日、出場が決まっていたMeeting International de la Province de Liègeの開催地であるリエージュ(ベルギー)に日本から直接入って調整を行い、18日のレースに出場。序盤からリードを奪う走りで、10秒13(+0.2)をマークして優勝を果たしています。

翌19日にロンドンへ移動。当初は、その後、22日の4×100mRを走ったのちに、25日にカールスタッド(スウェーデン)で行われる100mに出場して帰国する計画でしたが、左大腿部の違和感により、ロンドンDL以降の予定をキャンセルすることを決断。20日にロンドンを発って、21日に日本に帰国しました。

7月20日の朝は、手配中だった日本への帰国便が急きょ決まり、その2時間後にはホテルをチェックアウトという慌ただしいスケジュールに。そんな状況にもかかわらず、ヒースロー空港へ出発する直前に時間をつくって、インタビューに応じてくださいました。

リエージュでは10秒13で快勝も
「違和感」を解消するために帰国を決断

―――リエージュでの優勝、おめでとうございます。レースには、どういう状態で臨んでいたのですか?

山縣:日本選手権のあと、ちょっと追い込んだ練習をやっていて、その疲労が少しありましたね。ただ、ヨーロッパに7月13日に入って、そこからは練習量を完全に落としていたので、すごく疲労感が残っているなか走ったというわけでもなく…という状態でした。

―――完全には仕上げてはないという感じ?

山縣:そうですね。ピークは、イメージ的にはもうアジア大会に向けていますから。なので、そのなかでの実戦的なトレーニングという位置づけでもありつつ、一方で「海外での試合を楽しみたい」というくらいの気持ちでヨーロッパには入りました。

―――レースは動画で拝見しましたが、序盤からリードを奪っての快勝でした。実際に走ってみて、いかがでした? 想定通りだったのでしょうか?

山縣:そうですね、ただ、まあ状況が状況だったので。

―――左脚の違和感ですね。不安はあった状態だった?

山縣:そうですね、若干というところでしょうか。走っていて痛いということはなかったのですが、なんかちょっと違和感があるなという状態でした。ウォームアップとか、そっち系のわりとゆっくりした動作のときに違和感を覚えることがあったんです。なのに、走るとあまり気にならないみたいな感じで。

―――外から見た印象だと、そういう状況だったことはわかりませんでした。

山縣:ただ、動きも、本当に調子がいいときに比べると、若干ずれみたいなのが生じていて、「なんかイメージと違うな」と感じるところもありました。それが今回、リレーをやめようと思った1つの要因でもあります。

―――その違和は、日本を出発する段階で、感じていたそうですね。帰国することにしたもののケガしたという状態ではなく、8月上旬の合宿にも問題なく参加できる予定ということですが、具体的にどんな状況なのでしょう?

山縣:本当におっしゃった通りで、ケガではないんです。実際にリエージュの試合も走れたわけですし、でも、違和感がある状態で、これ以上レースに臨み続けることは、よいとは思えなかったので。

―――(ケガの)リスク回避という意味での選択だった? リエージュまでは大丈夫だったけれど、この状態からさらに行くのは危ないという?

山縣:まあ、実際のところ、リエージュも可能性としてはどうだったかはわからなかったわけですが…。ただ、1本走ってみて、その違和感が、少し気になるレベルになってきたので、(これ以上、挑むのは)やはり得策ではないな、引き返せるうちに引き返したほうがいいなという判断をしました。

―――なるほど。帰国後は治療しつつ、体調を整えていく?

山縣:そうですね。こちらにいると治療の手段がないというのも、帰ることを決めた1つの理由です。

ウエイティングから出場なった100mも回避
「もっと強くなってリベンジを」

―――ロンドンDLでは、昨日(19日)、個人種目の100mでも、ウエイティングの状態から出場メンバーに入ることが決まったばかりでした。

山縣:そうなんですよ。

―――その直後の決断だけに、残念な思いもあったのではないかと思います。ダイヤモンドリーグでのレース、個人でも走りたかったのでは?

山縣:そうですね。でも、この状態で走っても、ただ出るだけになってしまいます。別に出るだけが目的ではないし、そして、やっぱり何よりも今年はアジア大会で結果を残したいという思いが強かったので、今回は取りやめました。ただ、本当にダイヤモンドリーグという、一アスリートとしては目標とする大会に出られるチャンスって、そう多くはないので、ぜひ出たかったんですけどね。

―――しかも、初のオリンピック出場で準決勝進出を果たした思い出のあるロンドンで、ですしね。

山縣:はい、ロンドンですし。でも、無理をするわけにはいかなかったですね。

―――そこは苦渋の決断でもあった…。

山縣:そうですね。まあ、でも、もっともっと…。まずは帰国して状態を良くして、練習を頑張って、もっと強くなって、ですね。そうしてまたリベンジしたいなという気持ちで、今はいます。

―――また、今回のロンドンDLでは、リレーが走れなくなってしまったことも残念でした。

山縣:はい。リレーをこのロンドンDLで日本チームとして走るということは、前から決まっていましたし、日本チームとして、かなり意気込んでいたところではあったので、その力になれないというのは大変残念だなと思います。ただ、今の日本チームは、僕だけじゃなく走れる選手がたくさんいて、層の厚さも強みになりつつあります。今回の遠征では、小池くん(祐貴、ANA)の調子がすごく上がってきていますし。そこは彼に任せて、しっかりやってもらえたらな、と思います。僕個人としては、走れないのは大変残念ではあるのですが、逆に、いろいろなパターンを試せるということで、チームとしてはチャンスになるかなとも思います。

―――日本チームがこれから世界で戦っていくために、チームとしての厚みをさらに増していける機会となるかもしれませんね。

山縣:はい。そう思います。

アジア大会は日本選手団の主将に任命
結果を出すことで役目を果たしたい

―――そうすると、日本に戻ってからは、まずは治療を行いながらトレーニングを進めて、その後、富士吉田(山梨)で行う陸連合宿に参加するという予定ですね。

山縣:はい、そうですね。

―――アジア大会に向けての計画は、変わりなく進めていける?

山縣:ああ、そこは、もう全く問題ないと思います。

―――それを聞いて安心しました。日本選手団の主将にも選ばれたことも発表されましたし。

山縣:そうなんです。ありがたいことに、選んでいただきました。なので、しっかりとそっちの役目も果たさないと…。といって、特に僕自身が何か特別やることはないと思うのですが、やっぱりね…(笑)。

―――結果を出すことが、やはり全体を活気づけることになるかと。

山縣:そうですね。結果を出す以外に、特に僕ができることはないかもしれませんが、とにかく責任のある立場になったので、しっかりやりたいな、と思います。

―――まずは、その違和感を解消させてください。帰国直前の時間のないなか、ありがとうございました。

(2018年7月20日収録)


構成・文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:日本陸連男子短距離スタッフ、児玉育美

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