2017.05.18(木)その他

数字で楽しむ”セイコーゴールデングランプリ”04~男子100m編~


 
ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)、サニブラウン アブデルハキーム選手(東京陸協)に、日本人初の公認9秒台の期待がかかります。



これまで世界歴代で公認条件の9秒台で走った選手は、121人で、トータル845回です。(※ただし、この中には、のちにドーピング違反が発覚して特定期間の記録が抹消された選手もいますので、可能な限りそれらは回数の総数から除外した数字です。ですが、見落としもあるかもしれないため、少し総数が違っている可能性もあることをお断りしておきます)

9秒台の選手を輩出している国は26カ国



国別の9秒台の人数は以下の通りです(国籍に変更があった選手は、ベストを出した時のもの)。

1)50人 アメリカ
2)17人 ジャマイカ
3)8人 イギリス
4)7人 ナイジェリア
5)6人 トリニダードトバゴ
6)5人 南アフリカ
7)4人 カナダ
8)3人 フランス
9)2人 ジンバブエ
9)2人 ガーナ
9)2人 カタール
12)1人 15カ国
で、計26カ国。
※2つの国の記録を持っている選手を含めると27カ国

ナショナルレコードが10秒00の日本は、国別記録ではポーランドと並んで28位タイ(国籍変更で2つの国の記録を持っている選手がいるため)です。

個人ではアサファ・パウエルの97回が最多



個人別の公認条件での9秒台の回数のトップ10は以下の通りです(自己ベストの後ろの「D」は、ドーピング違反で処分を受けたことがある選手。記録が抹消された期間の9秒台はカウントしていません)。

-回数氏名等
1)97回アサファ・パウエル(ジャマイカ/自己ベスト9秒72/D)
2)53回ジャスティン・ガトリン(アメリカ/9秒74/D)
3)52回モーリス・グリーン(アメリカ/9秒79)
3)52回リチャード・トンプソン(トリニダードトバゴ/9秒82)
5)50回ウサイン・ボルト(ジャマイカ/9秒58)
6)39回マイク・ロジャース(アメリカ/9秒85/D)
7)38回タイソン・ゲイ(アメリカ/9秒69/D)
8)29回ネスタ・カーター(ジャマイカ/9秒78)
9)28回アト・ボルドン(トリニダードトバゴ/9秒86)
10)27回ヨハン・ブレイク(ジャマイカ/9秒69/D)
10)27回フランク・フレデリックス(ナミビア/9秒86)


20年間「惜しい」を続けてきた日本



日本人選手の世界歴代順位は、

122)10秒00 伊東浩司 1998年
134)10秒01 桐生祥秀 2013年
148)10秒02 朝原宣治 2001年
161)10秒03 末續慎吾 2003年
161)10秒03 山縣亮太 2016年
229)10秒07 江里口匡史 2009年
274)10秒09 塚原直貴 2009年
274)10秒09 高瀬慧 2015年
295)10秒10 ケンブリッジ飛鳥 2016年

です。

日本には9秒台の選手こそいませんが、世界歴代200位にあたる「10秒05以内(202人)」には、10秒03の末續選手と山縣選手までの5人が名前を連ねます。この10秒05以内に「5人」は、アメリカ(86人)、ジャマイカ(27人)、イギリス(14人)、ナイジェリア(10人)、トリニダードトバゴ(8人)に続き、カナダ・南アフリカと並んで6位タイ。

日本以外の上記7カ国は、9秒台の人数でも7位以内に入っています。さらに、日本の5人よりも少ない9位以下で「10秒05以内」が2人以上いる11カ国すべてからも、「9秒台」の選手が誕生しています。

ということで、日本は、1998年に樹立された日本記録10秒00から足掛け20年間で「9秒台まであと0秒01~0秒04以内」に迫った選手を5人輩出しながら、あと一歩及ばずに悔しい思いをしてきた唯一の国ということになります。

9秒台突入のカギは風にある



日本人初の公認9秒台の実現にとって、「風」は大きなポイントになるでしょう。

9秒台で走った世界の121選手が、自己ベストを出した時の風速別の分布(およびその累計人数)は、以下の通りです。

+2.0 8人
+1.9 4人(累計12人)
+1.8 9人(21人)
+1.7 7人(28人)
+1.6 8人(36人)

+1.5 3人(39人)
+1.4 7人(46人)
+1.3 7人(53人)
+1.2 5人(58人)
+1.1 3人(61人)

+1.0 8人(69人)
+0.9 8人(77人)
+0.8 4人(81人)
+0.7 2人(83人)
+0.6 5人(88人)

+0.5 1人(89人)
+0.4 4人(93人)
+0.3 5人(98人)
+0.2 8人(106人)
+0.1 3人(109人)

±0.0 1人(110人)
-0.1 1人(111人)
-0.2 4人(115人)
-0.3 --
-0.4 2人(117人)

-0.5 1人(118人)
-0.6 1人(119人)
-0.7 --
-0.8 2人(121人)

追風1.5m以上で全体の32.2%。追風1.1m以上で50.4%。追風0.5m以上で73.6%。向風での自己新は11人(9.1%)で、向風0.8mが最も不利な条件での自己ベストでした。

5月21日16時45分、等々力陸上競技場のホームストレートに2.0mを超えず2.0mに限りなく近い追風が吹けば、「9秒9台」を通り越して一気に「9秒8台」という可能性があるかもしれません。

※記録情報は2017年5月15日判明分
文:野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)

写真提供:フォート・キシモト 


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